ブリッジレポート
(8130) 株式会社サンゲツ

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ブリッジレポート:(8130)サンゲツ vol.7

(8130:東証1部,名証1部) サンゲツ 企業HP
安田 正介 社長
安田 正介 社長

【ブリッジレポート vol.7】2016年3月期業績レポート
取材概要「前期の売上高は過去最高を更新したが、安田社長は中計での取り組み効果が未だ明確に現れていないと考えている。今期も非住宅建設床面積の縮小・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年7月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社サンゲツ
社長
安田 正介
所在地
名古屋市西区幅下1-4-1
決算期
3月末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年3月 133,972 9,112 9,463 6,393
2015年3月 132,050 8,031 8,506 4,402
2014年3月 131,978 8,952 9,475 5,459
2013年3月 123,150 8,020 8,393 4,806
2012年3月 118,518 7,095 7,180 4,151
株式情報(7/7現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,923円 68,306,807株 131,353百万円 5.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
50.00円 2.6% 92.23円 20.8倍 1,587.86円 1.2倍
※株価は7/7終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期末実績。
 
株式会社サンゲツの2016年3月期決算概要などをご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
壁紙、床材、カーテンなどインテリア商品の専門商社最大手。商社ではあるがデザインや機能など製品の企画・開発から手掛ける「ファブレス企業」。安定した業績を生み出すビジネスモデル、主要商品の高いシェア等が強み。中期経営計画において資本コストを上回るROEの早期実現を掲げる。
グループ企業に、エクステリア商品の専門卸「株式会社サングリーン」、照明器具の企画、設計、製造、販売を行う「山田照明株式会社」の2社を有する。
 
【沿革】
1849年(嘉永2年)、表具(布や紙などを張って仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖など)を商う「山月堂」創業。1953年、創業家により株式会社山月堂商店として株式会社化。1970年代後半以降、東京、福岡、大阪を始め全国で事業展開。1980年、名古屋証券取引所市場第2部に上場。1996年、東京証券取引所市場第1部上場。海外にも進出し、トータルインテリアを供給するブランドメーカーとしての地位を確立する。
2014年4月、安田正介氏が初めて創業家メンバー以外から代表取締役社長に就任。第1期(創業)、第2期(株式会社化)に次ぐ、第3期(第3の創業)として位置づけ、新たなステージに臨む。
 
【企業理念】
新たなステージに臨む同社では、変革のチャレンジを進める上で、2016年4月、新ブランド理念を含めた企業理念を再構築した。

以下の、「社是」、「企業使命」、「サンゲツ三則」に新しい「ブランド理念」を合わせ、企業理念としている。

<社是>
誠実

<企業使命>
インテリアを通じて社会に貢献し、豊かな生活文化の創造に寄与します。

<サンゲツ三則>
創造的デザイン・信頼される品質・適正な市場価格

<ブランド理念>
ブランドステートメント「Joy of Design」を掲げ、ブランドパーパスとして「私たちは、新しい空間を創りだす人々にデザインするよろこびを提供します。」と謳っている。

インテリア商品の作り手と使い手、同社に関連する全てのステークホルダーとともに、新しい価値創造のよろこびを分かち合うことを目指す考えだ。
 
【市場環境】
◎概観
同社の主力商品である壁紙や床材の出荷状況は国内建設市場の動向に影響される。人口減少や家族構成の変化による新設住宅着工戸数の減少やデフレ経済における販売の低下で国内インテリア市場は下のグラフの様に、縮小傾向にある。
 
 
一方、下のグラフは、同社売上高、国内インテリア市場、新設住宅着工戸数(国土交通省発表)の推移を比較したもの。
同社の売上高及び国内インテリア市場の動向は、新設住宅着工戸数にほぼリンクしてきたが、リーマンショック後の動きを見ると、市場全体及び新設住宅着工件数はリーマンショック前の水準にまで達していないのに対し、同社売上高は2000年頃の水準にまで回復している。
 
 
これは、民間住宅以外に、非住宅市場の開拓に注力してきたことによるものである。
 
 
 
国土交通省発表の建設投資の推移によれば、民間住宅投資に比べ、民間非住宅建築投資は、金額は民間住宅投資よりも低いものの、2000年レベル近辺まで上昇している。ただ、新設の事務所の床面積は横這いながらも、店舗の床面積は再び減少傾向にある点は気にかかる。
一方、一般財団法人 建設経済研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2015年10月21日発表)によれば、民間非住宅建設投資の対前年度伸び率は2014年度の2.2%増(見込み)に次ぎ、2015年度(見通し)1.3%増、2016年度(見通し)2.2%増と、緩やかな回復傾向が続くと予想されている。
少子高齢化・人口減少の進行で住宅着工戸数は長期的には減少傾向にあり厳しい状況であろうが、2020年の東京オリンピックを控え、民間非住宅市場の開拓に関しては比較的良好な市場環境が当面は続くものと考えられる。
 
◎同業他社
インテリア、内装材を扱う主な同業他社としては以下の3社が上げられる。
 
同業他社に比較して収益性および株価評価の高さが際立っている。
 
【事業内容】
壁紙、床材、カーテン、椅子生地などインテリア商品の企画開発及び販売が中心事業。生産設備を持たない「ファブレス経営」が特色だが、単なる商社ではなく、扱う商品はすべて自社で企画・デザイン・開発を行っている。子会社を通じてエクステリア事業、照明事業も展開している。
 
 
①「インテリア事業」
(2016年3月期 売上高 115,140百万円、営業利益 8,873百万円)
◎主な取扱商品
 
商品数は約13,000点と他に類を見ない多彩なラインアップを誇っている。
主力の壁紙で商品数は約5,000点。2年毎に見本帳の更新を行っているが(カーテンは3年毎)、旧い商品を見本帳から外し、新しい商品に入れ替える所謂「改廃率」は壁紙で50~55%程度だが、同業他社では35~40%以下という事だ。商品を入れ替えるのは、容易ではない。廃止されたデザインの商品は破棄しなければならないため無駄が発生してしまうが、見本帳の鮮度もユーザー満足度を高める重要な要素であり、効率と鮮度のバランスを取ることができるのは、同社の体力や長年に亘るノウハウの蓄積によるものだろう。
 
◎営業体制
名古屋の本社の他、全国に8か所の支社、55か所の支店・営業所・事務所を持ち、重要な営業拠点として6か所のショールームを有している。
 
 
最終的に商品を納入し、売上を立て、代金が入金されるのは上図右の川下の内装仕上げ段階で、主な相手先は代理店を通じた内装工事業者やインテリアショップ、建材店となるが、その前工程での商品PRも重要だ。
住宅やビルが竣工するまでには、発注者(施主)、設計事務所、デザイン事務所、ゼネコン、サブコン、ハウスメーカーなど、数多くのプレーヤーがかかわっており、インテリアをデザインや機能から最終的に選択する意思決定は川上から始まっているケースも多数ある。

そのため、同社では見本帳、TVCM、ショールームなど様々な機会を通じて商品のPRを行っている。もちろん「待ち」のみでなく、法人営業部(全国的に法人顧客をカバー)をはじめとした全国の営業員約400名が、各担当先に足を運び情報提供・収集、提案を行っている。

主として代理店を経由した販売スタイルをとっているが(名古屋を中心とした中部地域の一部では直接販売)、顧客数は中部地域だけで約6,000社。代理店を通しているので正確な数字は把握できていないが、全国の顧客数は数万社にのぼる。
 
◎物流体制
全国13か所に物流センターを含めた物流施設を保有している。
東・名・阪・福はほぼ全商品が常に在庫されており、出荷点数は一日6万点に上るが、欠品率は1日平均で約0.13%(約70点程度)となっている。
内装の工期に合わせた「Just in Time」を全国物流ネットワークによって実現している。
仕入先は約100社と広範囲に亘っている。
 
②「エクステリア事業」
(2016年3月期 売上高 14,712百万円、営業利益 367百万円)
2005年に子会社化した株式会社サングリーンが門扉、フェンス、テラスなどのエクステリア商品を国内で販売している。
 
③「照明事業」
(2016年3月期 売上高 4,119百万円、営業利益 -128百万円)
2008年に子会社化した山田照明株式会社がダウンライト、Zライトなどの一般照明器具を国内外で販売している。
 
 
中期経営計画に基づく資本政策を発表し、「資本コストを上回るROEの早期実現と、中長期的にはより高いROE水準(8~10%)の達成を目指す。」と述べている。
具体的には、「2014年度下期より最短3年間、最長5年間で自己資本の金額を2014年3月末比で100億円~200億円の圧縮を目指す。」ということであるが、2017~2019年度の目標としているROE 8~10%を達成するためには、資本政策の実施と同時に、売上高当期純利益率の一段の向上も必要となるだろう。
 
【特徴と強み】
①安定した収益を生み出すビジネスモデル
同社は製造部門を持たない「ファブレス経営」の先駆けとも言うべき存在で、製造部門を持たないため固定費負担が小さい。また、商品数13,000点、仕入先100社以上、顧客数万件と、多くの面で分散が効いており、建設市場動向に連動する景気敏感型企業でありながら業績変動は決して大きくなく、設立以来赤字決算を行ったことが無い。
 
②「創る」・「提案する」・「届ける」
「創る」
同社は商品の製造を行ってはいないが企画・デザイン・開発は自社で行っている。昭和40年に初のオリジナル壁紙を発売。
先々代の社長時代の昭和48年に制定以降、現在も守り続けられているサンゲツ三則にある「創造的デザイン」に力を入れており、積極的な投資を行っている。
同社で様々なデザインをベースに約20名の企画担当者が、デザインを練り上げ、同社オリジナルデザインを開発している。担当者育成は海外の展示会への参加、営業の意見のヒアリング、デザイン顧問とのディスカッションなど、OJTで行っている。若い感覚をより積極的に採用していく方針だ。
商品ラインアップは他社には例を見ない約13,000点。また2~3年ごとに定期的に改訂する約30種類の見本帳も他社にはない同社の大きな特徴。
 
 
「提案する」
同社の営業スタッフ数は全従業員数のおよそ3分の1に当たる約450名で、業界最大である。
全国63拠点で前述のような、提案営業を展開している。8か所のショールームには約45名のショールームスタッフが在籍。また、各商品を組み合わせた室内空間を顧客にイメージしてもらうためのデザインボードを作成するインテリアデザインスタッフが約40名おり、その提案力も業界最高水準となっている。
 
 
「届ける」
先述の様に、商品の全点常備在庫を行い、内装工期に合わせて「Just in Time」を実現する全国の物流ネットワークを有するのは同社の強みである。
ただ、全点在庫は一方で過剰在庫や低効率につながりかねず、同社の様な注文に応じて正確に加工して出荷する加工物流において、ロス率を上げない正確な加工技術とスピードが重要な要素となる。
1ロール50mの壁紙があり、30mの注文があった場合、同社の場合は正確に30mでカットして出荷し、加工後残った素材は次の注文に合わせ効率的にカットし、なるべく無駄が出ないように加工する。こうした加工技術は同社が長年蓄積してきた貴重なノウハウによるものである。
 
 
 
2016年3月期決算概要
 
 
増収増益。売上高は過去最高を更新。
売上高は前期比1.5%増の1,339億円。カーテン、その他が減収だったが、壁装材、床材は堅調だった。ただ減収だったカーテンも、上期は2ケタ減収だったが、下期の投入した新製品が好調で、下期は前年比を上回った。
増収効果、前期(15/3期)後半からの販売価格の改定、原油価格安に伴うコスト見直しなどで粗利率は0.9ポイント改善し、粗利も同5.3%増加した。
物流拠点移設や物流体制見直しに伴うコンサル費などによる物流費増や、東京品川のショールーム開設費用など施設設備関連費用増があったが、TVCMの見直しなど経費削減も進めた結果、営業利益は同13.5%増の91億円となった。
前期にあった減損損失が大きく減少し、当期純利益は同45.2%増加の63億円となった。
売上高は6期連続増収で過去最高を更新。当期純利益も1991年3月期の62.3億円を抜き過去最高を記録し、現在進行中の中計の目標63億円を1年前倒しで達成した。
期初予想に対して売上は若干の未達だったが、利益は超過した。
 
 
①インテリア事業
商品企画開発関連組織の増強を通じ、より市場のニーズに沿った商品開発体制を整備、強化した。また、感性に訴える新ブランド「process#100」を立ち上げ、デザインや機能性の高い付加価値商品を発売し、訴求した。さらに、非住宅市場での営業力強化として法人営業部の増強を行い、特に大型物件での採用獲得に努めた。
<壁装材>
汎用タイプに比べて機能性・デザイン性に優れ、顧客満足度の高い中級価格帯の壁紙見本帳「ファイン1000」を発刊し、少子高齢化で縮小する住宅市場において、よりプレミアム感を演出したいというニーズに対応した。
また、ホテルや商業施設において、和モダンテイストの和紙や漆などの付加価値商品の販売を強化した結果、商業施設や宿泊施設などでの採用が拡大した。

<床材>
賃貸住宅市場の拡大とともに、高い印刷技術でリアルな木目を表現した塩ビタイルの売上が伸長した。さらに、ホテルの宴会場などのリニューアルで特注デザインのカーペットが採用されるなど、商品のラインナップや社内のコーディネート機能の充実によって採用される物件の幅が広がった。

<カーテン>
2015年9月にロールスクリーンやバーチカルブラインドを掲載した見本帳「サンウィンク」を発刊した。また、11月に従来のイメージを刷新して発刊したカーテン見本帳「ACカーテンファブリックス」では、価格政策を見直し、市場動向やニーズに合わせた商品展開と販促活動を強化した。こうした取り組みにより下期は前年水準まで回復したものの、上期における減少幅の影響から、通期では減収となった。
 
②エクステリア事業
積極的な営業力・物流力強化に努め、開設2年目の横浜支店では売上が大きく伸長し、中部地区にとどまらず、関東地区での販売力が着実に強化された。下期からの新設住宅着工戸数の回復もあり売上は前期並みとなったが、利益は減少した。
 
③照明事業
オフィスやホテルなど非住宅分野に絞り、設計事務所や照明デザイン事務所への営業活動を強化した。また、省エネ提案だけでなく、LEDの特性を活かした光の質や制御機能といった高付加価値商品の開発に注力するとともに、
東京ショールームの全面リニューアルを起点とした商品提案や、インテリア事業と共同での営業活動を活発化した。この結果、非住宅施設分野及びLED商品の売上が伸長し増収となったが、成長に向けた基盤整備にかかる経費の増加と部材在庫評価減により、営業損失に転じた。
 
 
有価証券の減少により流動資産は前期末に比べ107億円減少。有形固定資産(土地)や投資有価証券の取得などにより固定資産は同69億円増加した結果、資産合計は同38億円減少して1,392億円となった。
仕入債務の増加等で、流動負債は同37億円増加。退職給付に係る負債の増加などで固定負債も同26億円増加し、負債合計は同63億円増加の307億円となった。
純資産は利益剰余金の減少等で同102億円減少し、1,080億円となった。
自己資本比率は前期末に比べ5.1%低下し、77.9%となった。
 
 
利益および仕入債務の増加などで営業CFのプラス幅は拡大した。
預金の払戻増などで投資CFもプラス幅が拡大し、フリーCFは大幅に拡大した。
自己株式の取得および配当支払いの増加により財務CFのマイナス幅は拡大した。
キャッシュポジションは上昇した。
 
 
2017年3月期業績見通し
 
 
小幅の増収、利益は前期並み
売上高は前期比4.5%増の1,400億円を予想。住宅、リフォーム、非住宅ともに不透明な環境を想定している。特に、非住宅は前々年度、前年度の着工床面積減少の影響が懸念される。そうした環境の下、壁紙や床材の主力見本帳の発売、業務体制の見直し、営業部門の人員と機能の強化、小型ショールームの新設などを行う。
前々期および前期の増益のベースとなった価格改定や仕入れ単価削減は今期想定しておらず、販管費増をカバーするための売上増が重要と考えている。営業利益は同1.2%減の90億円の予想。
粗利率はほぼ前年並みに対し、物流設備の新設などにより販管費が同6.7%増加する。
配当は前期比2.50円/株増配の50.00円/株を予定。予想配当性向は54.2%。
 
 
 
安田社長に聞く
 
安田社長に前期決算のレビューも含めた中期経営計画「Next Stage Plan G」の進捗などを伺った。
 
「トップラインの伸びには不満が残る。商品力および営業体制の強化に注力する。」
2016年3月期の売上高は過去最高を記録したとはいえ、増収率は小さなものであり、不満が残る。
事業戦略の再構築において「商品開発体制の強化」を掲げ、新体制発足後、スタッフを拡充し従来とは違う新しい見本帳を順次リリースしているが、お客様からは高い評価を頂いている。ただ未だ明確な売上増効果には結びついているとは言い難く、営業体制の強化も含め、トップラインの拡大に注力する。」
 
「新しいブランドコンセプトを発表。社内外に向けて新しいサンゲツをアピールしていく。」
今年4月、新しいブランドコンセプトを対外発表した。
ブランドステートメントを「Joy of Design : 私たちは新しい空間を創りだす人々にデザインするよろこびを提供します。」とし、これに合わせて、ロゴやシンボルマークも変更した。また、新ブランドコンセプト発表に合わせて全国ショールームの呼称もリニューアルし、品川のフラッグシップ・ショールームを「sangetsu design site」、リフォーム需要を対象とした地方型の小型ショールームを「sangetsu design studio」とした。
これらは対外的に「新しいサンゲツ」をアピールするものであることはもちろんだが、「全社で新しいサンゲツを創り上げていく。」という社内に向けたメッセージでもある。
 
「社員の意識には着実に変化が現れている。」
中計では事業基盤の整備として組織の見直し、人事制度改革を掲げたが、これらはほぼ実行済となっている。
昇格の増加、給与制度の変更に加えて、「新しいサンゲツを創り上げていく。」という社内の空気の変化によって、「決められたこと、言われたことを確実にこなす。」だけでなく「自ら進んでビジネスを創り出す。」というように、社員の意識にも着実な変化が生まれている。今回地方に2か所の小型ショールームを開設したのも、社員からの要望によるものだ。
 
「必要十分な品質管理体制を整備する。」
ファブレスメーカーとして必要十分な品質管理体制を整備するために、品質管理技術室の人員体制を強化している。品質管理を担当する室長の他、試験研究担当、壁装技術担当、床材技術担当を外部から採用した。
商品開発に対する技術支援体制を強化するほか、不具合削減のための品質管理の強化、仕入先に対する実査制度の導入、自社による品質クレームの調査能力の向上を図る。
クレームの削減は収益性の改善に大きく寄与するものであるため、品質管理に関しては今まで以上に強化する。
 
「中国市場の開拓においては、ブランド確立のため日本と同じ機能を保有する。」
2016年4月、中国・上海市に現地法人「山月堂(上海)装飾有限公司」を設立した。
中国の壁紙出荷量は日本の倍以上と既に巨大な市場が存在する。
加えて、中国における壁面仕上げ材は現在、塗装仕上げが85%で、壁紙は8%に過ぎないが、今後デザイン性に対するニーズが増大する中、壁紙需要は着実に拡大すると考えている。
この「山月堂(上海)」は在庫・配送・ショールーム・施工機能を併せ持つ本邦型現地法人である。
仮に、短期的に売上、利益を上げるだけであればここまでの機能を持たず、代理店を使用し、施工も現地企業と提携して行うなどすればよいが、当社では「日本の壁紙」のブランドを確立する事を目指しており、そのためにはこれらの機能全てを自社所有のものとして展開しなければならない。
少々時間がかかることにはなるが、巨大市場において「サンゲツブランド」を確立することが、収益性確保の上でも不可欠であるので、じっくりと取り組んでいく。
 
 
今後の注目点
前期の売上高は過去最高を更新したが、安田社長は中計での取り組み効果が未だ明確に現れていないと考えている。今期も非住宅建設床面積の縮小、消費税率引き上げの延期など、外部環境は不透明ではあるが、社員の意識も着実に変わりつつある中で、新見本帳、新ショールームを通じた商品効果がいつ頃から現れるのかに注目したい。
 
 
 
<参考:中期経営計画 Next Stage Plan G>
 
2014年を「第3の創業」と位置付け、新しいステージに立つ同社の今後のビジョンや方向性を示すため、「中期経営計画(2014-2016) Next Stage Plan G」を策定した。
同計画の目標を、「事業体制の再整備と強化を進め、将来の成長のための仕込みを行い、サンゲツの次のステージを切り拓く3年間」としている。
 
 
 
これに加え、「4)創業以来の理念・社是・考えの継承」の4つを具体的な施策として掲げ進めて行く。
 
将来の成長のための基盤整備に先行投資を行いつつ、史上最高益の更新を目指す。
 
インテリアは、既存事業においてリニューアルや大規模改修、病院や介護関連施設への注力を進めると共に、高付加価値商品へのシフトやカーテン事業の売上回復を見込んでいる。
新規事業や海外事業は仕込みの時期であるため、販管費のみを見込んでいる。
エクステリア事業は限定的な拡大を前提としており、照明事業は安定的な事業基盤の確立を優先するステージであり、収益の拡大は見込んでいない。

◎2017~2019年度 目標
この中期経営計画をベースに、次の中期経営計画の最終2020年3月期には、「新規事業・海外事業・連結会社での本格的な収益の実現」、「インテリア事業収益の着実な拡大」、「新たな資本政策の導入」により、「ROE 8~10%の達成」を目標としている。