ブリッジレポート
(4592:東証マザーズ) サンバイオ 企業HP
森 敬太 社長
森 敬太 社長

【ブリッジレポート vol.4】2017年1月期第2四半期業績レポート
取材概要「外傷性脳損傷のグローバル治験が認められ、日本国内での治験が2016年9月にスタートしたことは、同社にとって極めて大きな前進である。今期も積極・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年10月18日掲載
企業基本情報
企業名
サンバイオ株式会社
社長
森 敬太
所在地
東京都中央区明石町8-1 聖路加タワー28F
事業内容
中枢神経系疾患領域の再生細胞薬を開発するバイオベンチャー。米国で創業、日本を核に再編
決算期
1月末日
業種
医薬品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年1月 1,174 -1,125 -1,172 -988
2015年1月 3,229 2,248 2,228 1,736
2014年1月 204 -584 -587 -589
株式情報(10/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,466円 44,907,407株 65,834百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 - -81.62円 - 118.72円 12.3倍
※株価は10/5終値。発行済株式数、BPSは直近決算短信より。
 
サンバイオグループ(サンバイオ株式会社及びその米国子会社であるSanBio Inc.)の2017年1月期第2四半期決算概要および開発の進捗状況等をお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
未だ有効な治療法のない慢性期脳梗塞など中枢神経系疾患等を治療する再生細胞薬を開発するバイオベンチャー。世界の再生医療の中心地である日本とアメリカに拠点を構え世界的な事業展開を図る。確立された量産化技術、競争優位性を高める特許戦略なども大きな強み。適応疾患と地域の拡大という掛け算による成長を目指す。
 
【沿革】
麒麟麦酒株式会社(現 キリンホールディングス)で研究開発を行っていた森 敬太氏(サンバイオ株式会社 代表取締役社長)は、自ら新しい事業に挑戦したいと考えていたところ、旧知の友人で、大手コンサルティング会社ボストンコンサルティング・グループのコンサルタントを経て、製薬企業向け営業支援を行う(株)ケアネット(2150、東証マザーズ)の創業に携り同社副社長であった川西 徹氏(サンバイオ株式会社 代表取締役会長)と、起業に関して意気投合した。
将来の方向性など様々な議論を行うなか、2人とも大学時代に農学部でバイオテクノロジーを専攻していたこともあり、「バイオの世界で、新しい分野、新しい市場を創り出す」ことに目標を定めた。具体的な分野として将来性の大きい「再生細胞薬」に注目し、その製品化・事業化を目指して、2001年2月、SanBio, Inc.を米国カリフォルニア州に設立した。

創業にあたり、慶應義塾大学 岡野 栄之(ひでゆき)教授(脳神経領域の再生医療、iPS研究で世界の第一人者。現在、慶應義塾大学医学部長、日本再生医療学会理事ほか)の研究分野に着目し、協力を願い出たところ快諾を得て、同氏の紹介もあり、2002年12月、神奈川県内の国公私立大学の研究成果を企業に橋渡しする技術移転機関「よこはまティーエルオー株式会社」から、現在の開発品の基本技術となっている基本シーズに係る知的財産の譲渡を受けた。岡野氏は創業科学者としてサンバイオの創業以来、科学的な見地からのアドバイスを提供している。一方、米国では、再生医療分野での強力なネットワークを通じて、各分野の有力なアドバイザーや、優秀な研究員を獲得し、再生細胞薬の開発、製造及び大量生産技術の確立を進めてきた。

サンバイオは、同社の開発する再生細胞薬の開発・販売について、大手製薬会社との提携を模索していたが、2009年12月に再生細胞薬「SB623」の日本における脳梗塞用途の開発専用実施権許諾契約を帝人株式会社と締結。翌2010年5月には脳梗塞について、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration以下、FDA)から臨床試験開始の承認を取得した。一方、2010年9月には大日本住友製薬株式会社と米国及びカナダにおける脳梗塞用途のオプション契約を締結。

2011年1月には米国において「SB623」の慢性期の脳梗塞を対象とした臨床試験(フェーズ1/2a)を開始し、2013年8月には被験者18名に「SB623」の投与を完了し、SB623の安全性と統計学的に有意な有効性データが確認された。

2012年12月に京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞の開発でノーベル賞を受賞したことに加え、2014年11月に改正薬事法及び再生医療新法が施行され、再生医療等製品について早期承認制度がスタートしたのを契機に、再生医療分野での日本の存在価値が世界的に急速にクローズアップされるなか、これを絶好の機会と捉え、日本を経営の中心に米国を研究開発の拠点に世界的な事業展開を図るべく、2013年2月、日本にサンバイオ株式会社を設立。2014年1月には、サンバイオ(株)を親会社、米国のSanBio, Inc.を完全子会社とする企業再編を行い、2015年4月東証マザーズ市場に上場を果たし、日本におけるバイオベンチャーIPOとしては最大規模の73億円を調達した。

2014年6月、米国において「SB623」のフェーズ1/2a臨床試験の結果を受けて、FDAから次のフェーズ2bの臨床試験実施承認を取得したのを機に、同年9月には、大日本住友製薬株式会社が先に締結したオプション契約を行使し、米国及びカナダにおける「SB623」の脳梗塞用途の共同開発をスタートしている。

一方、米国での外傷性脳損傷疾患を対象としたフェーズ1臨床試験については、2013年5月にFDAから試験開始の承認を取得し、治験の準備を進めていたが、その後、2015年4月には、先に実施された脳梗塞を対象とした臨床試験の結果を受けフェーズ1をスキップしフェーズ2からの臨床試験開始の承認を取得。2015年10月に外傷性脳損傷のフェーズ2(被験者52名、二重盲検試験)の被験者募集が開始されている。本試験は、2016年4月に日本においても独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)から臨床試験実施の許可がおりたことから、現在、日米合わせて52人の被験者を対象としたグローバル治験となっている。

また、北米における慢性期脳梗塞のフェーズ2b(被験者156名、二重盲検試験)の臨床試験が、2015年12月に被験者募集を開始、2016年3月に最初の被験者の組み入れを実施するなど、開発は着々と進展している。
 
【サンバイオグループと開発体制】
沿革で触れたように、同社グループは、サンバイオ株式会社とその連結子会社SanBio. Inc.(米国カリフォルニア州)の2社から構成されている。
再生細胞薬の研究開発については、2001年の創業以来一貫して、米国SanBio, Inc.の世界最高の開発・製造チームが中心になって手掛けているが、世界を見据えた事業展開を視野に、現在日本においても開発体制の拡充を進めている。
 
創業科学者の岡野栄之氏は脳神経領域の再生医療及びiPS細胞研究における世界の第一人者で、従来の「脳は再生しない」という常識を覆した。同社に対しては、創業時から科学的見地からのアドバイスを提供している。
FDA元長官、スタンフォード大学元学長、米国国立衛生研究所(NIH)老化研究所元所長らをアドバイザーに迎え、開発に必要なアドバイス、ネットワーク拡大をサポート。
スタンフォード大学、ピッツバーグ大学、ニューヨーク大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、ノースウェスタン大学などの先端医療を進める研究機関とも連携し、再生医療という先端分野に必要な強力なネットワークを構築している。
チーフ・メディカル・オフィサー兼リサーチ・ヘッドのダミアン・ベイツ医師は、世界で初めて「他家」細胞医薬品のFDA承認取得を成功させた人物。再生医療の「自家」移植については承認が下りているものが複数例あるものの、「他家」については、同氏の実績がいまだ唯一のFDA承認となっている。(「他家」「自家」については、【事業内容とビジネスモデル】にて後述)
製造責任者であるマイク・マクグローガン氏は、前職において世界で初めて再生細胞薬の量産化に成功しFDAの治験承認を獲得した実績のある人物。同氏は、サンバイオにおいて10年かけて治験実施とその後の販売に必要な量産技術の確立を成し遂げた。その量産技術は、他社の追随を許さないサンバイオ独自のものである。
2016年4月、同社の製造担当シニアバイスプレジデントに、Jay Stout博士が就任した。同氏は、前職で生物学的製剤の開発及び量産化において25年以上の経験・実績を有する業界屈指の人材。今後、サンバイオにおいて、製造プロセス開発、生産、品質管理から臨床細胞の調製、そして最終的な品質保証に至るまで、製品製造にかかわる全般業務を担当する。
 
【企業理念】
慢性期(※1)脳梗塞、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、パーキンソン病、脊髄損傷、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズ(※2)の高い疾患を対象に再生細胞薬による治療法を確立することで、世界中のこれら疾患を抱えた患者の治療・身体機能の改善に寄与することをグループのミッションとしている。
※1 慢性期:同社では、脳梗塞や外傷性脳損傷において、発症もしくは受傷後6カ月あるいは6か月以上が経過したものを慢性期と定義している。
※2 アンメットメディカルニーズ:未だ有効な治療法がない治療ニーズ。
 
 
【同社を理解する上でのポイント】
同社の事業内容を理解するには、細胞、脳の再生、再生医療など知っておくべきポイントがいくつかある。
 
<細胞>
ヒトの体は37兆個以上、200種類以上の細胞で構成されていると言われている。
ヒトは、もともとは1つの受精卵から始まり、分裂、増殖を繰り返しながら、神経細胞、心筋細胞、肝細胞など、成体を構成する様々な細胞に分化(変化)していく。
ヒトの体の中には、このように最終的に分化した細胞と分化途上の細胞が存在しており、前者を体細胞、後者を体性幹細胞と言う。
体性幹細胞としては、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞などがあり、これらは、限定された範囲内で各種の細胞に分化する。例えば、造血幹細胞は、骨髄に多く存在することが知られており、白血球や血小板など全ての血液系細胞を作り出しているが、通常、他の異なる細胞種には分化しない。
 
<脳の再生>
胎生期(受精から約9ヶ月)においては、ヒトの脳には神経細胞の元となる神経幹細胞が存在し、それが活発に分裂・分化することで、新たな神経細胞が活発に生み出されている。しかし、この分裂能力は成体(成人の体)では消失し、大人の脳では新たな神経細胞は生み出されないと考えられてきた。
しかし、近年の研究で、成体の脳にも神経幹細胞は存在し、新たに神経細胞やその他の細胞を作る能力があることがわかってきた。
これを発見し脳神経細胞を再生させることに成功したのが同社創業科学者の岡野栄之氏である。
 
<ES細胞・iPS細胞 対 間葉系幹細胞(MSC)>
ES細胞(胚性幹細胞:Embryonic stem cell)は、幹細胞に比べると、より多くの種類の細胞に分化する能力があり、理論上は、心筋、神経、肝臓、血液など体内の全ての種類の細胞に分化することが可能。
体性幹細胞は限られた範囲内でしか分化できないのに対し、ES細胞では分化できる範囲が格段に広いのが大きな特徴である。
ES細胞は、不妊治療の過程で不要になった余剰胚から作製するケースが多いようだが、受精卵を使用することに関して各国で様々な倫理的議論がなされている。中絶胎児由来の細胞を使用する場合、倫理面で問題視する声も少なくない。
一方、2007年に、京都大学の山中伸弥教授が発明した受精卵を使用しない新たな万能細胞が、「iPS細胞(人工多能性幹細胞、induced pluripotent stem cell)」である。ヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作製することに成功している。
iPS細胞は心筋、神経、肝臓、血液など様々な細胞に分化するという点でES細胞とほぼ同等の性質を持っているが、ES細胞のような倫理上の問題は無い反面、無制限に増殖するためがん化リスクが指摘されている。
一方、健常人の骨髄液から採取される間葉系幹細胞(MSC)は、古くから骨髄移植に使用されており、倫理面での問題はなく、ガン化の報告もない。他の細胞に分化する能力を持つ一方、体内に移植されると1か月以内に消失する。(サンバイオの例では)非臨床試験で成長因子を出す等して、神経細胞の回復を促す。
 
 
<再生医療>
①再生医療とは
再生医療とは、損傷を受けた生体の機能を、細胞や、細胞外マトリクスや成長因子などを用いて復元または活性化させる医療。具体的には、患者に患者本人若しくはドナーの幹細胞を移植し、目的の細胞に分化したり、既存の細胞に作用したりすることで疾患を治療するもので、従来はなし得なかった根本的な治療を可能にすると言われている。
 
②世界が注目する日本の事業環境
経済産業省の資料によると、2012年に国内90億円、海外1,000億円だったと推計される再生医療市場は、2050年にそれぞれ2.5兆円、38兆円規模に拡大する見込み。

2006年、2007年に山中教授がiPS細胞に関する画期的な成果を上げる一方で、米国では2009年3月にオバマ大統領が、ブッシュ政権が禁じていたES細胞への連邦政府助成を解禁する法案に署名するなど再生医療における研究競争が激化する中、日本では「激化する研究競争を勝ち抜き、患者のための臨床技術とするためには、産学官が一体となった強力な体制が必要不可欠」(「再生・細胞医療の現状及び課題 2012年9月26日 厚生労働省 医政局研究開発振興課」より)との認識が強まり、「再生医療」は日本再興戦略の重要テーマの一つとして掲げられることとなった。

そうした動きに応じて、2014年11月25日には医薬品医療機器等法(薬事法が改正・名称変更された。以下、改正薬事法とも使用)や再生医療等安全性確保法が施行され、再生医療の承認に向けた法体系が確立された。特に、改正薬事法に導入された早期承認制度においては、これまで5〜8年かかった臨床試験から承認までの期間が3年半と短くなった。また、再生医療等安全性確保法においては細胞培養加工の外部委託が認められたことも極めて画期的で、多くの海外企業がアライアンス等を通じて日本での事業開始を表明するなど、日本の再生医療を取り巻く環境は世界が注目するところとなっている。
 
 
改正薬事法の下、2015年9月2日にテルモ(4533、東証1部)の重症心不全の病態改善のための骨格筋芽細胞シートが、同年9月18日にはJCRファーマ(4542、東証1部)の造血幹細胞移植後に発症する重篤な合併症に対する治療製品が製造販売の承認を受けた。どちらも申請から承認まで1年程度という短期間であった。
 
【事業内容とビジネスモデル】
主に脳神経に係る疾患である、慢性期脳梗塞、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性、網膜色素変性、パーキンソン病、脊髄損傷、アルツハイマー病等のアンメットメディカルニーズの高い疾患を対象とした再生細胞薬の開発、製造、販売を手掛けている。
 
<再生細胞薬>
①再生細胞薬とは
同社グループは上記疾患を対象とした再生医療において、「再生細胞薬」の投与による治療を目指している。
サンバイオの再生細胞薬は、患者自身の細胞の再生機能を高め、病気・事故等で失われた身体機能の自然な再生プロセスを誘引ないし促進させ、運動機能、感覚機能、認知機能を回復させる効能が期待される医薬品である。
 
②他家移植 対 自家移植
再生医療に使用される細胞としては、「自家(じか)移植」と「他家(たか)移植」の2種類がある。

「自家移植」は患者本人から細胞を採取して加工・培養し、元の患者に移植し、治療するもの。これには、移植細胞の生着と栄養分を送るための血液供給機構が必要となる。さらに必要に応じて調製、加工、培養される。

「自家移植」による再生医療としては、前述のテルモの骨格筋芽細胞シートがこれにあたる。
患者の大腿部より筋肉組織を採取。組織内に含まれる骨格筋芽細胞を培養してシート状にし、そのシートを元の患者の心臓表面に移植することにより、重症心不全の病態改善が期待できるというもので、培養する細胞は患者自身から採取する自家細胞のため、理論的には免疫拒絶反応がないことが特徴として挙げられる。しかしながら、自家培養であっても、培養に使用される材料によっては免疫反応が起こる場合もあるという。自家移植は一般的に、「細胞調製に時間と手間がかかる」、「個人間のばらつきが大きい」などの点が指摘される。

他方、「他家移植」の場合は、健康なドナーから採取した細胞を加工・培養して量産化する。一人のドナーから数千人分の治療薬を製造することが可能であるため、自家移植に比べて、より低コストで治療できる。「他家移植」は、安全性および免疫適合性の問題をクリアできれば、多くの疾患に対する再生医療としてより良い選択肢となる。
 
 
同社は「他家移植」の再生細胞薬を量産化し、「薬」として供給することを想定している。

同社グループのミッション『再生細胞薬を用いて世界中のアンメットメディカルニーズの疾患を抱えた患者の治療・身体機能の改善に寄与する。』を実現するためには、「医薬品」として大量に生産し、既存の物流に乗せて世界中に届けることができる「他家移植」を採用している。
 
 
③量産化について
再生細胞薬の実用化にあたっては、量産化技術の確立がカギを握るが、サンバイオはすでにその点をクリアしている。
 
 
同社グループでは、再生細胞薬の量産化技術が確立されている点は前述の通りだが、凍結保存された製品は、既存の医薬品のサプライチェーンに乗り、病院まで運ばれ最後に融解され患者に投与される。
しかしながら、再生医療関連企業で量産化まで技術を確立できている企業は非常に少ない。従来の薬に比べて構造が複雑なものを取り扱う再生医療ビジネスにおいては、実用化に至るまでに「量産化」という超え難い「死の谷」が存在する。同社は、その「死の谷」をすでに超えているという点で、他社を大きくリードしていると言えよう。
 
④再生細胞薬「SB623」
現在は、「SB623」の慢性期の脳梗塞および外傷性脳損傷を対象とした開発が最も進んでいる。当面は、「SB623」の適応疾患拡大に注力する模様だが、将来的には、「SB623」のほか、「SB618」や「SB308」といった異なる機能を持った細胞薬の開発も進めていく。
 
 
 
(1)「SB623」の効能
「SB623」は神経機能を再生する作用を持つ可能性を持つ治療薬で、体の自然な再生プロセスを促進させ、病気やケガで失われた運動機能、感覚機能及び認知機能の再生を目標としている。具体的な発現作用としては、①神経細胞をまもる、②神経細胞をつくる、③血管をつくる、④炎症を抑える等があり、これまでの研究によると、これらが複合的に作用することが示唆されている。

「SB623」の現在の中心的な対象疾患である脳梗塞は、脳の血管が詰まることで、その先の神経組織に栄養が届かなくなり、細胞が機能を失ったり死んでしまう病気である。脳梗塞は、発作後数時間までの急性期には血栓溶解剤も有効だが、それを過ぎるとリハビリ以外に対処方法はなく、さらに6〜12カ月を過ぎた慢性期に入ると多くの場合、リハビリによる改善効果も期待できないと言われる。

同社グループでは、米国で2011年から慢性期の脳梗塞患者に対して、2年間の「SB623」の安全性と有効性を確認するためのフェーズ1/2a臨床試験(フェーズ1とフェーズ2の一部を同時に行い、再生細胞薬の安全性と有効性を同時に確認したため、フェーズ1/2aとしている。)を実施し、2014年2月に最後の投与患者の投与後6カ月の効果測定が完了した。この結果、副作用は認められないこと(安全性)、脳梗塞患者の運動機能が改善したこと(有効性)が確認され、同年6月には次の臨床試験のステップ(フェーズ2b)に進むことについての承認をFDAより得た。
 
 
このグラフはフェーズ1/2aの臨床試験の結果の一部を、運動機能の効果を測定するための代表的な指標であるFugl-Meyer Motor Scale(フューゲルマイヤーモータースケール)で表したもの。横軸は「SB623」投与後の経過月数、縦軸は運動機能の改善度合いを示す。投与後月数が経過するほど機能改善が進んでおり、かつ効果が持続していることが分かる。
 
 
投与前と投与後の機能改善例として、「車いすが必要な患者が歩けるようになった」、「動かなかった腕が上がるようになった」、「うまく話すことができなかった患者がスムーズに話すことができるようになった」等の事例が確認されている。同社HPでは患者の改善の様子を動画で見ることが出来る。
https://www.youtube.com/watch?v=E4WXwhTp7Ow&end=215
 
(2)「SB623」の投与方法
投与方法は、慢性期脳梗塞の場合、定位脳手術と呼ばれる既に脳神経外科では広く普及した手技により、局所麻酔で安全に投与される。
 
 
長期入院も不要で、臨床試験では被験者は一日入院し、投与翌日には退院している。投与に当たっては免疫抑制剤も不要で、通常の医薬品と同様に、同一の製品を全ての患者を対象に使用することが可能である点も大きな特徴だ。
 
(3)開発の進捗
◎慢性期脳梗塞
米国においてはフェーズ1/2aの2年間の経過観察期間が2015年8月に終了した。次のフェーズ2b へ進むに当たり、2015年9月には最初の治験施設との契約締結により共同開発パートナーである大日本住友製薬からマイルストン収入5百万ドルを受領した。2015年12月に、フェーズ2b(患者数156名)の被験者募集を開始し、2016年3月8日には最初の被験者の組み入れを実施した。これにより大日本住友製薬から5百万米ドルのマイルストンを受領した。

現在は、脳梗塞発症後6か月から5年が経過した運動機能障害がある慢性期の患者を対象に全米60施設で156症例を目標に、治験施設の開設、患者募集を進めている。日本においてはライセンスアウト先の帝人が開発を担っている。
 
◎外傷性脳損傷
慢性期脳梗塞に次ぐ「SB623」の疾患ターゲットとしては外傷性脳損傷用途の開発も進んでいる。

外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭に強い衝撃が加わり脳が傷つくことによって起こる疾患で、半身の麻痺や感覚障害、記憶障害等の他、行動や感情のコントロールが困難になる高次脳機能障害といった深刻な後遺症が残る。改善を期待できる期間は脳梗塞よりもやや長いものの損傷後半年から1年程度にとどまり、それを超えると有効な治療法が存在しないとされている。なお、米国で救急受診する患者数は年間約250万人で、後遺障害を抱える人の数は米国だけでも530万人に上ると推計されている。

外傷性脳損傷は、損傷部位や症状が脳梗塞に似ているほか、SB623の投与方法も同様であることから、SB623の適応疾患として可能性が期待されるが、そうしたこともあり、フェーズ1をスキップし、フェーズ2から治験を開始することでFDAと合意し、その後、2015年10月に被験者募集を開始している。
日本においては、2016年3月7日付で外傷性脳損傷を対象とした治験届を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出し、その後審査期間の30日が経過したことにより、臨床試験の実施が可能となった。

外傷性脳損傷を対象とした治験は、現在日米のグローバル治験として進められており、2016年7月、フェーズ2臨床試験において米国で最初の被験者の組み入れを実施した。日本については、2016年9月には治験を開始している。
2017年1月期中に、日米あわせて約30施設において、被験者合計52人を対象に被験者の組み入れを急ぐ。
今後、改正薬事法における早期承認制度を最大限活用することで、SB623の日本での早期販売を目指す考えだ。

<同社スタッフの声>
チーフ・メディカル・オフィサー兼リサーチ・ヘッド ダミアン・ベイツ氏
「サンバイオの再生細胞薬SB623については、慢性期脳梗塞の患者様に対して運動機能の改善効果が確認されており、非臨床データでは外傷性脳損傷への応用の可能性も示唆されています。現在当社では、世界で初めてとなる他家由来の再生細胞薬を使った外傷性脳損傷を対象とするグローバル治験フェーズ2が、日本でも治験許可がおりたことにより、日米双方で進んでいます。今後、他の疾患への適応拡大も積極的に検討してまいります。」

日本の臨床開発部長兼メディカル・ディレクターである金子健彦氏
「日本においても、SB623が臨床開発の段階へと前進することができたことを大変嬉しく思っております。運動障害に苦しんでおられる患者様に一刻も早く貢献できるよう、SB623の臨床開発を進めてまいります。」
 
◎加齢黄斑変性
「SB623」は強い神経保護作用を持つと考えられることから、網膜疾患への適応可能性が期待されている。

黄斑(おうはん)とは網膜の中央にあり、ものを見るために一番重要な部分。ものの形、大きさ、色、立体性、距離などの光の情報の大半を識別している。加齢とともに徐々に網膜の細胞が死滅する結果、視力が低下したり、ものの見え方に支障が出るのが加齢黄斑変性症である。そのなかでも患者数の多いドライ型については、根本的な治療法が存在しない。

患者数が多く、新たな治療法の確立が待たれている同疾患に対して、同社は、特に加齢黄斑変性(ドライ型)および網膜色素変性をパイプラインに入れ開発を進めている。

同社では、網膜変性の動物試験(非臨床試験)の結果をもとに、2014年1月に、FDAとINDミーティング(新薬の臨床試験申請前の情報提供)に向けた事前ミーティングを実施した。現在は今後米国で臨床試験を実施するために必要な非臨床試験の追加データについて準備を進めている。
 
<ビジネスモデル>
①概要
大学等の研究機関から技術を取得して同社が製造開発、非臨床試験、臨床試験を実施し、医薬品の販売網を有するパートナー製薬会社に開発権及び販売権をライセンス許諾する。契約に応じて、①契約一時金、②マイルストン収入、③開発協力金、④ロイヤルティ収入、⑤製品供給に係る収入等を得るビジネスモデルとなっている。
技術導入、研究開発・試験、製品製造については、委託先である大学等研究機関、研究受託機関、製造受託機関等に対し適宜委託費用を支払う。なお、ライセンス許諾については、ヒトでの安全性と有効性を確認する段階まで自社で開発を進めたうえで検討するとしており、製品価値の最大化を目指している。
 
 
*上記は、既存提携先の大日本住友製薬株式会社との間の契約を例に、いくつかの収入形態をまとめたもの。

収入は、開発段階においては、①契約一時金、②開発マイルストン収入、③開発協力金のいずれか、又はすべてで構成され、製品上市後は、売上マイルストンに関する②販売マイルストン収入、④ロイヤルティ収入、⑤製品供給収入が主な収入形態となる。④ロイヤルティ収入、⑤製品供給収入は製品売上の一定割合として支払われるため製品売上に比例して増加することとなる。
 
 
 
②パートナー製薬会社との提携状況
現在、「SB623」の脳梗塞用途の開発、製造、販売については、パートナー製薬会社として、北米においては大日本住友製薬株式会社と、日本においては帝人株式会社と、それぞれ契約を締結している。
 
 
加えて、大日本住友製薬株式会社とは対価の受取条件については以下の様に取り決めている。
 
脳梗塞の米国・カナダ、日本以外の国や地域における開発権・販売権、また、他の疾患に関する開発権・販売権についても最適なパートナー製薬会社との提携を検討していくとしている。
 
【特徴と強み】
①巨大なターゲットマーケット
同社の再生細胞薬の対象となる疾患は、世界的に旧来の医療では対応できなかった中枢神経系領域が中心であるため、対象患者数が多いことが見込まれる。

脳卒中患者数は米国においては約660万人と言われている。日本では、厚生労働省「2014年 患者調査」(2015年12月発表)によれば、2014年の脳血管疾患(脳卒中)総患者数は推計で117万9千人。前回調査(2011年)の123万5千人から若干減少してはいるがおおよそ国民の100人に1人という割合となっている。
 
 
アルツハイマー病は53万4千人、パーキンソン病(2011年)は14万1千人。
後者2疾患の総患者数は脳卒中よりも少ないが、特にアルツハイマー病の患者数は近年急速に増加しており、有効な治療法に対するニーズは高まっている。
 
 
この他、加齢黄斑変性、網膜色素変性等、既存の医療・医薬品では対処できない多くの神経系疾患に対する再生細胞薬の有効性が広く認められれば、同社は世界的な巨大マーケットを開拓するとともに、多大な社会貢献を果たすこととなろう。
 
②競争優位性を高める特許戦略
開発及び製品販売に伴う収入の極大化を目指すため、再生細胞薬の開発に必要な知的財産を全て自社で取得することを特許戦略の基本方針としており、開発を進めている再生細胞薬(SB623、SB618、SB308)の基本特許は全て取得済みだ。

現在、以下の様に主要市場全てで基本特許を取得済みであり、今後は米国・カナダにおける大日本住友製薬、日本における帝人の様な有力なパートナー製薬企業との契約締結を進め、世界各地における臨床試験、製造開発、製品販売に向けた基盤の整備を進めていく考えだ。
 
 
医薬品の特許には「物質特許」、「製法特許」、「製剤特許」、「用途特許」の4つがある。
このうち物質特許は物質そのものを保護する特許で、医薬品の特許のなかで最も重要で権利範囲の広い特許として取得に大きな費用と時間が必要になる。物質特許を取得できれば、開発した医薬品を独占的に製造・販売することができるため、同社グループでは「物質特許」の取得に最も力を注いでいる。
 
③製品供給権を確保
他社からライセンス導入して研究開発を行う創薬ベンチャー企業の場合、多くはパートナー製薬会社が製造を担い創薬ベンチャー自らが製品供給権を保有していないため、製品販売後の売上は製品販売に伴うロイヤルティ収入のみとなってしまう。

これに対し同社の場合、再生細胞薬は、他社からのライセンス導入品ではなく、基礎段階から自社で研究開発を行ってきた独自製品である。そのため、パートナー製薬会社との関係においては、再生細胞薬の製造を同社が担うため、製品販売後は製品販売に伴うロイヤルティ収入に加え、製品供給の対価として製品供給収入も獲得することが可能であり、収益源がより多角化している点も注目される。
 
④確立された量産化技術&再生細胞薬の安全性
前述の様に、加工培養、製造、保存、輸送、投与までの技術は既に確立されており、製品販売後の量産に対応できる段階に達している点も大きなアドバンテージとなっているほか、倫理上の問題を指摘されるES細胞や、がん化リスクのあるiPS細胞に比べ安全性が高いと考えられる点からも、臨床現場から受け入れられやすいと想定できることも同社の差異化要因である。
 
 
2017年1月期第2四半期決算概要
 
 
開発は着実に進展。研究開発を継続
売上高は、前年同期比66.4%増の6億84百万円。北米において大日本住友製薬株式会社と締結している「SB623」の共同開発及びライセンス契約によるマイルストン収入5百万米ドル(米国の慢性期脳梗塞の臨床開発フェーズ2bにおける最初の被験者の組み入れ完了により受領)及び開発協力金収入により大幅に増加した。
研究開発費は予算未達となったため、営業損失は計画比で大幅に縮小し6億10百万円となった。
円高により保有外貨資産において為替差損5億83百万円(前期は為替差益83百万円)を計上したため、経常利益は12億28百万円の損失となった。
 
 
現預金の減少で流動資産は前期末に比べ15億68百万円減少し、資産合計も同15億59百万円減少の67億11百万円となった。
長短期借入金の減少等で負債合計は同5億29百万円減少し13億74百万円となった。
利益剰余金の減少により純資産は同10億29百万円減少し53億36百万円となった。
自己資本比率は前期末の77.0%から2.4ポイント上昇し、79.4%となった。
 
 
税金等調整前四半期純損失は拡大したが、為替差益が為替差損に転じたこと等から営業CFのマイナス幅は縮小した。定期預金の払戻による収入により投資CFはプラスに転じ、フリーCFも同様プラスに転じた。前年同期にあった株式の発行による収入が無くなったため財務CFはマイナスに転じた。キャッシュポジションは低下した。
 
(3)開発の進捗状況
①慢性機脳梗塞
<良好な臨床試験フェーズ1/2aの試験結果>
前回のレポートで紹介したように、米国での臨床試験フェーズ1/2aの試験結果を専門誌Strokeに論文発表した。
「SB623」を投与した患者16例について、複数の有効性評価項目(European Stroke Scale、National Institutes of Health Stroke Scale、Fugl-Meyer Total Score 及びFugl-Meyer Motor Function Total Score など)において統計学的に有意な運動機能の改善が示され、機能の改善は投与後6〜12か月後も継続した。
 
<臨床試験フェーズ2bは順調に進展>
前述のように、フェーズ2bは2回のマイルストン収入の受領を含め順調に進展している。
臨床試験フェーズ2bは、被験者として脳梗塞発症後6か月から5年が経過した運動機能障害がある患者を対象に、投与症例数156、投与細胞数250万個、500万個、対照群の3グループで行う二重盲検試験、治験施設全米約60施設で実施されている。

患者に関しては、UCSF ( University of California, San Francisco)と協同でWebやSNSを使用して募集を進めている。
 
②外傷性脳損傷
こちらも前述の通り日米グローバル治験の許可を取得するなど、順調に進展している。
フェーズ2試験デザインは以下の通り。
 
被験者は、外傷性脳損傷受傷後12カ月以上が経過した運動機能障害がある患者を対象
症例数は52
投与量は、250万個、500万個、1,000万個、対照群の4グループ
施設数は日米で約30施設
 
日本での試験は今期に入り大きく進展している。
予定している5施設のうち1施設で治験を開始した。
すでに2施設でIRB(※)の承認を取得している。
2016年9月には東京でInvestigator Meeting(治験担当医師に対する治験説明会)を開催した。
最初の被験者組入れを予定している。
 
(※)IRB:治験実施機関が治験を実施する際に厚生労働省に届け出た治験デザインを審査する中立的な組織。治験の倫理性、安全性、科学的妥当性を審査する。
 
慢性期脳梗塞同様、米国ではUCSFを通じて患者を募集しているほか、日本でもウェブとコールセンターを開設して募集を行っている。
 
 
2017年1月期業績予想
 
 
業績予想に変更無し。先行投資を継続し開発生産体制を拡充
業績予想に変更はない。売上高は前期比24.6%減の8億86百万円の予想。
事業費用は同104.4%増加の47億円の予想。米国における慢性期脳梗塞の臨床試験フェーズ2b及び外傷性脳損傷向けのフェーズ2が開始されたことに伴い臨床開発費用が前期に比べて大幅に増加するほか、日本においても外傷性脳損傷プログラムの進展を見込む。
日米の2つのプログラムのフェーズ2試験完了に必要な費用のほぼ全額を計上する。また、引き続き、臨床試験の進展および研究開発人員の増強も図っていく。このため、研究開発費用は同129.1%増の38億83百万円を見込んでいる。この結果営業損失は前年同期より26億89百万円拡大し、38億14百万円の予想。
 
(2)今後の展望
「開発の幅とスピードを拡大しグローバルNo.1へ。」
前期2016年1月期は仕込みの時期と位置付け、IPOを果たし資金を調達するとともに、開発から量産・販売を見据えた体制に移行するための人員の採用を進めた。

今期2017年1月期は飛躍の年となる。
米国において慢性期脳梗塞のフェーズ2bが進展するのに加え、外傷性脳損傷に関しては日米グローバル治験がスタートし、日本でも開発が始まった。まさにグローバルNo.1に向け経営を加速させる期と位置付けている。
 
(3)事業戦略
外傷性脳損傷の国内治験が2016年9月にスタートしたことは、2つの大きな意義があると会社側は考えている。

一つは、サンバイオグループが再生医療製品に関して高い開発能力を有していることを証明できたことだ。
今後、日本の早期条件付き承認制度を活用して「SB623」の製品化を進めると同時に、グローバルな開発体制を活かし国内外からの導入品を国内外で開発していくビジネス展開の可能性がより現実的になってきた。

もう一つは、「SB623」が国内での治験実施可能な品質水準にあることを証明できたことである。
日本の治験基準は国際的にも厳しく、その中で治験を開始することができたということは、外傷性脳損傷に次ぐ、他の疾患への国内開発の扉を開いたことを意味する。
 
 
今後の注目点
 
本文中でも触れたように、外傷性脳損傷のグローバル治験が認められ、日本国内での治験が2016年9月にスタートしたことは、同社にとって極めて大きな前進である。
今期も積極的な研究開発および人員増のために赤字を見込む。実際の製品化および上市にはまだ暫く時間がかかるだろうが、国内における慢性期脳梗塞向け開発状況も含め、今後の進捗に注目して行きたい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書
同社は最新のコーポレートガバナンス報告書を2016年5月10日に提出している。
 
 
 
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