ブリッジレポート
(8130) 株式会社サンゲツ

プライム

ブリッジレポート:(8130)サンゲツ vol.9

(8130:東証1部,名証1部) サンゲツ 企業HP
安田 正介 社長
安田 正介 社長

【ブリッジレポート vol.9】2017年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「残念ながら通期業績を下方修正し、中計最終年度の業績目標達成はやや難しい状況となっているが、その後に向けた布石を着実に打っている点は・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年12月13日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社サンゲツ
社長
安田 正介
所在地
名古屋市西区幅下1-4-1
決算期
3月末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年3月 133,972 9,112 9,463 6,393
2015年3月 132,050 8,031 8,506 4,402
2014年3月 131,978 8,952 9,475 5,459
2013年3月 123,150 8,020 8,393 4,806
2012年3月 118,518 7,095 7,180 4,151
株式情報(11/21現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,937円 67,177,349株 130,122百万円 5.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
50.00円 2.6% 87.29円 22.2倍 1,587.86円 1.2倍
※株価は11/21終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期末実績。
 
株式会社サンゲツの2017年3月期第2四半期決算概要などをご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
壁紙、床材、カーテンなどインテリア商品の専門商社最大手。商社ではあるがデザインや機能など製品の企画・開発から手掛ける「ファブレス企業」。安定した業績を生み出すビジネスモデル、主要商品の高いシェア等が強み。中期経営計画において資本コストを上回るROEの早期実現を掲げる。
グループ企業に、エクステリア商品の専門卸「株式会社サングリーン」、照明器具の企画、設計、製造、販売を行う「山田照明株式会社」の2社を有する。
 
【沿革】
1849年(嘉永2年)、表具(布や紙などを張って仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖など)を商う「山月堂」創業。1953年、創業家により株式会社山月堂商店として株式会社化。1970年代後半以降、東京、福岡、大阪を始め全国で事業展開。1980年、名古屋証券取引所市場第2部に上場。1996年、東京証券取引所市場第1部上場。海外にも進出し、トータルインテリアを供給するブランドメーカーとしての地位を確立する。
2014年4月、安田正介氏が初めて創業家メンバー以外から代表取締役社長に就任。第1期(創業)、第2期(株式会社化)に次ぐ、第3期(第3の創業)として位置づけ、新たなステージに臨む。
 
【企業理念】
新たなステージに臨む同社では、変革のチャレンジを進める上で、2016年4月、新ブランド理念を含めた企業理念を再構築した。

以下の、「社是」、「企業使命」、「サンゲツ三則」に新しい「ブランド理念」を合わせ、企業理念としている。

<社是>
誠実

<企業使命>
インテリアを通じて社会に貢献し、豊かな生活文化の創造に寄与します。

<サンゲツ三則>
創造的デザイン・信頼される品質・適正な市場価格

<ブランド理念>
ブランドステートメント「Joy of Design」を掲げ、ブランドパーパスとして「私たちは、新しい空間を創りだす人々にデザインするよろこびを提供します。」と謳っている。

インテリア商品の作り手と使い手、同社に関連する全てのステークホルダーとともに、新しい価値創造のよろこびを分かち合うことを目指す考えだ。
 
【市場環境】
◎概観
同社の主力商品である壁紙や床材の出荷状況は国内建設市場の動向に影響される。人口減少や家族構成の変化による新設住宅着工戸数の減少やデフレ経済における販売の低下で国内インテリア市場は下のグラフの様に、縮小傾向にある。
 
 
一方、下のグラフは、同社売上高、国内インテリア市場、新設住宅着工戸数(国土交通省発表)の推移を比較したもの。
同社の売上高及び国内インテリア市場の動向は、新設住宅着工戸数にほぼリンクしてきたが、リーマンショック後の動きを見ると、市場全体及び新設住宅着工件数はリーマンショック前の水準にまで達していないのに対し、同社売上高は2000年頃の水準にまで回復している。
 
 
これは、民間住宅以外に、非住宅市場の開拓に注力してきたことによるものである。
 
 
国土交通省発表の建設投資の推移によれば、民間住宅投資に比べ、民間非住宅建築投資は、金額は民間住宅投資よりも低いものの、直近では10兆円を回復し2000年レベル近辺まで上昇している。ただ、新設の事務所の床面積は横這いながらも、店舗の床面積は再び減少傾向にある点は気にかかる。
一方、一般財団法人 建設経済研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2016年10月27日発表)によれば、民間非住宅建設投資の対前年度伸び率は2015年度5.6%増(見込み)であったものの、2016年度(見通し)0.8%増、2017年度(見通し)0.0%増とほぼ横這いが続くと予想されている。ただ、着工床面積は前年度比で、事務所5.7%、店舗3.5%と堅調な増加が見込まれている。
少子高齢化・人口減少の進行で住宅着工戸数は長期的には減少傾向にあり厳しい状況であろうが、2020年の東京オリンピックを控え、民間非住宅市場の開拓に関しては単価低下という懸念はあるものの、堅調な市推移が当面は続くものと考えられる。
 
◎同業他社
インテリア、内装材を扱う主な同業他社としては以下の3社が上げられる。
 
前回レポート時から、同社、住江織物、リリカラが売上、営業利益予想を下方修正した。
(東リは売上を下方、営業利益を上方修正)
その中でも同業他社に比較してPBRが1倍を上回っているのは同社のみとなっている。
 
【事業内容】
壁紙、床材、カーテン、椅子生地などインテリア商品の企画開発及び販売が中心事業。生産設備を持たない「ファブレス経営」が特色だが、単なる商社ではなく、扱う商品はすべて自社で企画・デザイン・開発を行っている。子会社を通じてエクステリア事業、照明事業も展開している。
 
 
①「インテリア事業」
(2016年3月期 売上高 115,140百万円、営業利益 8,873百万円)
◎主な取扱商品
 
商品数は約13,000点と他に類を見ない多彩なラインアップを誇っている。
主力の壁紙で商品数は約5,000点。2年毎に見本帳の更新を行っているが(カーテンは3年毎)、旧い商品を見本帳から外し、新しい商品に入れ替える所謂「改廃率」は壁紙で50~55%程度だが、同業他社では35~40%以下という事だ。商品を入れ替えるのは、容易ではない。廃止されたデザインの商品は破棄しなければならないため無駄が発生してしまうが、見本帳の鮮度もユーザー満足度を高める重要な要素であり、効率と鮮度のバランスを取ることができるのは、同社の体力や長年に亘るノウハウの蓄積によるものだろう。
 
◎営業体制
名古屋の本社の他、全国に8か所の支社、53か所の支店・営業所・事務所を持ち、重要な営業拠点として9か所のショールームを有している。
 
 
最終的に商品を納入し、売上を立て、代金が入金されるのは上図右の川下の内装仕上げ段階で、主な相手先は代理店を通じた内装工事業者やインテリアショップ、建材店となるが、その前工程での商品PRも重要だ。
住宅やビルが竣工するまでには、発注者(施主)、設計事務所、デザイン事務所、ゼネコン、サブコン、ハウスメーカーなど、数多くのプレーヤーがかかわっており、インテリアをデザインや機能から最終的に選択する意思決定は川上から始まっているケースも多数ある。

そのため、同社では見本帳、TVCM、ショールームなど様々な機会を通じて商品のPRを行っている。もちろん「待ち」のみでなく、法人営業部(全国的に法人顧客をカバー)をはじめとした全国の営業員約450名が、各担当先に足を運び情報提供・収集、提案を行っている。
主として代理店を経由した販売スタイルをとっているが(名古屋を中心とした中部地域の一部では直接販売)、顧客数は中部地域だけで約6,000社。代理店を通しているので正確な数字は把握できていないが、全国の顧客数は数万社にのぼる。
 
◎物流体制
全国13か所に物流センターを含めた物流施設を保有している。
東・名・阪・福はほぼ全商品が常に在庫されており、出荷点数は一日6万点に上るが、欠品率は1日平均で約0.14%(約70点程度)となっている。当該地区での欠品であり、周辺の物流センターから即座にカバーする事で、納期待ちを依頼する事はレアケースである。
内装の工期に合わせた「Just in Time」を全国物流ネットワークによって実現している。
仕入先は約100社と広範囲に亘っている。
 
②「エクステリア事業」
(2016年3月期 売上高 14,712百万円、営業利益 367百万円)
2005年に子会社化した株式会社サングリーンが門扉、フェンス、テラスなどのエクステリア商品を国内で販売している。
 
③「照明事業」
(2016年3月期 売上高 4,119百万円、営業利益 -128百万円)
2008年に子会社化した山田照明株式会社がダウンライト、Zライトなどの一般照明器具を国内外で販売している。
 
 
中期経営計画に基づく資本政策を発表し、「資本コストを上回るROEの早期実現と、中長期的にはより高いROE水準(8~10%)の達成を目指す。」と述べている。
具体的には、「2014年度下期より最短3年間、最長5年間で自己資本の金額を2014年3月末比で100億円~200億円の圧縮を目指す。」ということであるが、2017~2019年度の目標としているROE 8~10%を達成するためには、資本政策の実施と同時に、売上高当期純利益率の一段の向上も必要となるだろう。
 
【特徴と強み】
①安定した収益を生み出すビジネスモデル
同社は製造部門を持たない「ファブレス経営」の先駆けとも言うべき存在で、製造部門を持たないため固定費負担が小さい。また、商品数13,000点、仕入先100社以上、顧客数万件と、多くの面で分散が効いており、建設市場動向に連動する景気敏感型企業でありながら業績変動は決して大きくなく、設立以来赤字決算を行ったことが無い。
 
②「創る」・「提案する」・「届ける」
「創る」
同社は商品の製造を行ってはいないが企画・デザイン・開発は自社で行っている。昭和40年に初のオリジナル壁紙を発売。
先々代の社長時代の昭和48年に制定以降、現在も守り続けられているサンゲツ三則にある「創造的デザイン」に力を入れており、積極的な投資を行っている。
同社で様々なデザインをベースに約25名の企画担当者が、デザインを練り上げ、同社オリジナルデザインを開発している。担当者育成は海外の展示会への参加、営業の意見のヒアリング、デザイン顧問とのディスカッションなど、OJTで行っている。若い感覚をより積極的に採用していく方針だ。
商品ラインアップは他社には例を見ない約13,000点。また2~3年ごとに定期的に改訂する約30種類の見本帳も他社にはない同社の大きな特徴。
 
 
「提案する」
同社の営業スタッフ数は全従業員数のおよそ3分の1に当たる約450名で、業界最大である。
全国63拠点で前述のような、提案営業を展開している。9か所のショールームには約45名のショールームスタッフが在籍。また、各商品を組み合わせた室内空間を顧客にイメージしてもらうためのデザインボードを作成するインテリアデザインスタッフが約40名おり、その提案力も業界最高水準となっている。
 
 
「届ける」
先述の様に、商品の全点常備在庫を行い、内装工期に合わせて「Just in Time」を実現する全国の物流ネットワークを有するのは同社の強みである。
ただ、全点在庫は一方で過剰在庫や低効率につながりかねず、同社の様な注文に応じて正確に加工して出荷する加工物流において、ロス率を上げない正確な加工技術とスピードが重要な要素となる。
通常、壁紙は1ロール50m。30mの注文があった場合、同社の場合は正確に30mでカットして出荷し、加工後残った素材は次の注文に合わせ効率的にカットし、なるべく無駄が出ないように加工する。こうした加工技術は同社が長年蓄積してきた貴重なノウハウによるものである。
 
 
 
2017年3月期第2四半期決算概要
 
 
微増収・減益、計画も下回る。
売上高は前年同期比1.1%増の649億円。3セグメント共に増収で、インテリア事業における各部材も売上は前年を上回った。原価低減努力などで粗利率が0.5ポイント改善し、粗利は同2.9%増と増収率を上回ったが、今期から着手したBPO(Business Process Outsourcing)移行費用、M&A関連費用などを始めとした販管費の増加を吸収できず、営業利益は同22.0%減少の35億円となった。ウェーブロックホールディングスの持分法による投資利益1.6億円が計上されたため経常利益は同16.7%減少の39億円。物流拠点移転に伴う特別損失0.6億円を計上した一方、退職金制度の一部を確定給付型から確定拠出型に変更したことによる退職給付制度終了益1億円を特別利益に計上し、当期純利益は同11.0%減少の28億円となった。
 
(2)外部環境
新設住宅着工戸数は2016年4-9月前年同期比6.0%増、新設住宅着工床面積も同4.1%と堅調だった。
一方、景気敏感な要素が大きいリフォーム需要は同期間9.0%のマイナスと同社では推定している。
非住宅分野は、前々期、前期の着工床面積減(それぞれ10.4%減、6.5%減)が影響し、今上期の内装工事量は前年同期比マイナスで特に首都圏が低調だった。
 
 
①インテリア事業
増収・減益となった。
社外の若手デザイナーを積極的に起用し商品開発の活性化を図り、多品種・多様化する市場ニーズに対応した主力見本帳を発売し、市場への訴求に努めた。また椅子生地総合見本帳「UP(アップ)」を発売し、インテリア空間におけるデザインや機能など新たな提案に取組んだ。

<壁装材>
リフォーム需要の低迷などで売上高は前年並みにとどまった。中価格帯が低調で価格低下が進んだが、数量ベースでは3%程度伸びている。
高付加価値商品を掲載した主力見本帳「リザーブ」を5月に発刊した。「ペットとともに暮らす」や「子どもと一緒に遊ぶ」など5つのコンセプトに基づいたコーディネートレシピを提案し、消費者が自身の嗜好を明確にし、選定しやすい工夫が好評だった。また賃貸住宅市場においてアクセントクロスをコーディネートし、住空間の価値向上を提案したほか、リフォーム専用見本帳「リフォームセレクション」もリフォーム事業者へのきめ細かい営業活動により、順調に売り上げを伸ばしている。

<床材>
非住宅分野における商業施設や宿泊施設ならびにオフィスの新築や改装需要の獲得に努め、カーペットタイルやフロアタイルが好調だった。一方、医療施設分野の着工床面積が前期24.3%減少と落ち込んだため長尺シートは苦戦した。
9月に一般住宅向けクッションフロア「H-FLOOR」とマンションの廊下やベランダに施工するノンスリップシート「ノンスキッド」を発刊し、持家、貸家、マンション市場の開拓に注力した。この「H-FLOOR」見本帳は3名の新進気鋭のデザイナーとのコラボレーションによるデザイン開発を行ったもので、過去に無いデザインが高く評価されている。

<ファブリック>
前期に発刊したカーテン見本帳「サンウィンク」「ACカーテンファブリックス」のコーディネート提案などのセミナーの開催やインテリアショップへの展示提案などを通じた拡販に努めた。また5年ぶりに「デザイン」とメンテナンス性など「機能」が充実した椅子生地総合見本帳「UP(アップ)」を9月に発売し、家具メーカーや設計事務所などへの積極的な営業展開を開始した。
 
②エクステリア事業
売上は前年並みだったが、利益は3割増加した。
他社との競争が激化するなか、営業管理体制の再構築と工事力を強化した。また関東地区が堅調に推移した。
 
③照明事業
増収で損失幅は縮小した。
昨年から専門特化したソリューション営業を継続したことで、宿泊施設や公共施設での受注が拡大した。また、株式会社サンゲツの法人営業部との情報共有などシナジー効果を高める営業体制を強化した。
 
 
定期預金を解約し低リスクの短期運用商品へシフトしたため、現預金が減少し有価証券が増加。売上債権が減少し、流動資産は前期末に比べ39億円減少。ロジスティックセンター新設などで固定資産は同35億円増加した結果、資産合計は同3億円減少して1,388億円となった。
仕入債務の増加等で、流動負債は同16億円増加。退職給付に係る負債の減少などで固定負債は同4億円減少し、負債合計は同11億円増加の318億円となった。純資産は利益剰余金の減少等で同15億円減少し、1,069億円となった。自己資本比率は前期末に比べ0.9%低下し、77.0%となった。
 
 
売上債権減少と仕入債務増加で営業CFのプラス幅は拡大した。
ロジスティックスセンターの新設、新基幹システム構築に伴う資産の取得、BPO開始に伴う業務委託料前払などで投資CFはマイナスに転じ、フリーCFもマイナスとなった。
自己株式取得額の減少で財務CFのマイナス幅は縮小した。
キャッシュポジションは減少した。
 
(5)トピックス
◎米国の壁装材製造販売会社を買収
2016年11月14日、米国の壁装材製造販売会社であるKoroseal Interior Products Holdings,Inc.社(以下、Koroseal社)の全株式を取得した。(正式にはサンゲツが新設するSangetsu USAの子会社)
 
 
非住宅市場を対象に、壁紙(商品別売上高構成39%)、ホワイトボードタイプの壁装材のプレゼンテーションサーフェイス(同15%)など、と壁装材の製造販売を行っている。壁紙では全米トップシェア。
また、全米最大規模の営業人員(125名)を有し、米国内のデザイナー設計事務所等の内装材料決定権者から施工会社施主までをカバーする営業体制を構築している。
生産体制として、ケンタッキー州ルイビルに工場物流設備を持つ。ルイビルにはUPS(United Parcel Service,Inc.)の貨物中継拠点があり、物流拠点として利便性に優れている。
 
*市場環境
北米における非住宅建設市場は、ホテル、事務所、商業施設など今後も堅調な推移が予想される。
 
 
また、北米の壁紙市場は年間出荷量1億1,000万㎡と、数量ベースでは日本市場(6億7,000万㎡)の6分の1の規模ではあるが、金額ベースでは約半分と同社では推定しており、単価、付加価値の高い市場である。
 
 
*Koroseal社買収の狙い
①米国非住宅市場への参入
前述の様に北米の非住宅市場は堅調な推移が見込まれている。
Koroseal社は全米最大規模の営業体制を持つ非住宅市場の壁紙取扱トップ企業。サンゲツ同様、多段階多層セールス向けスペック活動を展開し、多くの有力な顧客及び納入先をグリップしている。
このM&Aによりサンゲツは北米市場への有力なアクセスルートを獲得した。
壁装材を中心に幅広い内装材商品の拡販も可能であろう。
 
②調達力の強化
非住宅向け壁紙では米国最大手のKoroseal社がサンゲツグループに加わったことにより、グループ全体の調達力は更に高まる事となる。
後段の安田社長へのインタビューにあるように、内装材ビジネスは、多数・多様な顧客に対し、多数・多様な商品を取り揃え、複層的・複合的な市場を対象に、多数・小ロットで取引を行うため効率は決して良くないビジネスであり、規模を確保する事が重要になる。その意味で、今回のM&Aは世界規模の資材メーカーとの間におけるサンゲツの交渉力アップに大きく寄与することとなろう。
 
 
2017年3月期業績見通し
 
 
業績予想を修正。増収・減益。
上期実績を踏まえ業績予想を下方修正した。売上高は前期比2.3%増の1,370億円を予想。下方修正したが、新築住宅着工は好調、首都圏での大型内装工事取引増を予定しているほか、各種施設・住宅で使用される床材の新見本帳・新商品投入効果を見込む。
営業利益は同12.2%減の80億円を計画。予想売上高減に伴い、売上総利益も期初計画比9.5億円減少することに加え、販管費は引き続き受注業務のBPO、物流設備の統廃合、買収案件等追加経費が発生する。
配当予想に変更は無い。中間25.00円/株、期末25.00円/株で前期比2.50円/株増配の50.00円/株を予定。予想配当性向は57.3%。
 
 
 
中期経営計画「Next Stage Plan G」の進捗状況
 
今上期の主要な進捗状況は以下の通り。
 
<Value Chainの強化>
◎受注業務の一部をBPO
同社では顧客または代理店からの発注を、「電話」、「オンラインシステム」、「FAX」の3ルートで受注していたが、このうちFAXによる受注をBPOすることとし、2017年1月より移行を開始する。完全移行は2017年6月の予定。
現在FAX受注には正社員及び派遣社員合計約170名が従事しているが、これを完全にBPOすることにより、顧客(代理店、内装仕上げ事業者)に対する販売活動および、設計事務所、施主、ハウスメーカー等へのスペック活動に従事する人員を創出し、顧客サービスと営業活動を強化し、収益効果を目指す。
 
<商品・機能の強化>
◎物流拠点の統廃合
物流の最適化を目指し、出荷作業の効率化、物流拠点と営業拠点の分離、老朽化した設備の新鋭化、SCMの構築を進めている。
集荷を中部ロジスティックセンターと北関東ロジスティックセンターに集中させ、集荷拠点センターの整備と拠点間輸送を行う。
 
◎施工力の強化
東洋紡株式会社の子会社で東洋紡フェアトーン株式会社が建装事業および内装仕上業を分割した新会社をサンゲツが2016年12月末付でサンゲツが100%子会社として譲受することとした。
フェアトーン社は設立以来33年間、ゼネコンや事務機器メーカー、オフィス店舗設計会社等での豊富な施工実績を有している。
また、東京と大阪を中心に「東洋紡フェアトーン(株)安全協力会」を組織し、施工を実質内製化しており、即応態勢が確立している。
フェアトーンには経験豊富な施工管理者も在籍しており、サンゲツでは施工能力強化を通じてホテル等非住宅市場において更なる受注獲得を目指す考えだ。
 
<地域的拡大>
◎ショールームの新設
仙台、沖縄、金沢の3か所に地方型ショールームを新たに設置した。
地元ビルダー、工務店、リフォーム店、設計士に対し、大きな現品サンプルや体感コーナーで商品を確認しながら柄決めを行うなど、高付加価値商品の販売機会創出につなげていく。
2016年度上期来場者、接客件数ともに全体で20%増加した。
 
 
安田社長に聞く
 
安田社長に足元の状況、海外戦略の狙い、進捗状況などを伺った。
 
*今期業績動向について
通期業績見通しを下方修正したが、各商品のシェアは維持しており、厳しい外部環境の中で同業他社比較の観点では健闘したと考えている。
また、当社ではキャッシュ創出能力の向上に注力しているが、その指標であるCCC(Cash Conversion Cycle、※)はこの3年間で着実な改善を示している。
 
 
「中期経営計画(2014-2016) Next Stage Plan G」の最終年度にあたる2017年3月期の目標「売上高 1,400億円、当期純利益63億円」は下方修正したが、今期末まで積み上げに全社挙げて邁進する考えだ。
 
*海外展開について
Koroseal社の買収は当社の海外戦略にとって大きな意味を持っている。
内装材ビジネスは、多数・多様な顧客に対し、多数・多様な商品を取り揃え、複層的・複合的な市場を対象に、多数・小ロットで取引を行うため効率は決して良くないビジネスであり、規模を確保する事が重要になってくる。
そのためにも日本国内だけでなく海外市場での調達・販売を進めていく必要があり、全米トップの同社買収は、仕入先の多様化、販売チャネルの強化という点で大きなシナジーが見込まれる。また、同社の収益性の高さもM&Aに踏み切った大きな要因だ。
2016年4月に設立した中国現地法人「山月堂(上海)装飾有限公司」は11月現在で社員6名となり積極的な受注活動を開始している。
日系の設計会社、内装工事事業者などから、日本品質の壁紙を在庫して販売に臨んだことについて歓迎してもらえている。中国事業はまだまだ始まったばかりではあるが物流設備も整い、着実に前進している。
 
 
今後の注目点
残念ながら通期業績を下方修正し、中計最終年度の業績目標達成はやや難しい状況となっているが、その後に向けた布石を着実に打っている点は注目される。短期的には市場環境が厳しい中、改善傾向にある子会社を含めたグループとして今期着地に向けどれだけ上積みを図れるか、中長期的にはKoroseal社のM&A、を始めとしてフェアトーン、山月堂(上海)の収益寄与がいつ頃から顕在化してくるのかを注視したい。
 
 
 
<参考1:中期経営計画 Next Stage Plan G>
 
2014年を「第3の創業」と位置付け、新しいステージに立つ同社の今後のビジョンや方向性を示すため、「中期経営計画(2014-2016) Next Stage Plan G」を策定した。同計画の目標を、「事業体制の再整備と強化を進め、将来の成長のための仕込みを行い、サンゲツの次のステージを切り拓く3年間」としている。
 
 
これに加え、「4)創業以来の理念・社是・考えの継承」の4つを具体的な施策として掲げ進めて行く。
 
将来の成長のための基盤整備に先行投資を行いつつ、史上最高益の更新を目指す。
 
インテリアは、既存事業においてリニューアルや大規模改修、病院や介護関連施設への注力を進めると共に、高付加価値商品へのシフトやカーテン事業の売上回復を見込んでいる。新規事業や海外事業は仕込みの時期であるため、販管費のみを見込んでいる。エクステリア事業は限定的な拡大を前提としており、照明事業は安定的な事業基盤の確立を優先するステージであり、収益の拡大は見込んでいない。

◎2017~2019年度 目標
この中期経営計画をベースに、次の中期経営計画の最終2020年3月期には、「新規事業・海外事業・連結会社での本格的な収益の実現」、「インテリア事業収益の着実な拡大」、「新たな資本政策の導入」により、「ROE 8~10%の達成」を目標としている。
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
同社は最新のコーポレートガバナンス報告書を2016年11月21日に提出している。

<実施しない主な原則とその理由>
同社はコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施している。