ブリッジレポート
(6638:東証1部) ミマキエンジニアリング 企業HP
池田 和明 社長
池田 和明 社長

【ブリッジレポート vol.3】2017年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「上期決算は表面的には為替の影響を受けて減収・減益となったが、新製品の寄与で順調に販売を伸ばしている事が確認できた。充実したインクの・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年12月20日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ミマキエンジニアリング
社長
池田 和明
所在地
長野県東御市滋野乙2182-3
事業内容
広告・看板向けインクジェット(IJ)プリンタで世界首位級。工業製品・部品向け、生地・衣料品向けが拡大中。
決算期
3月末日
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年3月 47,840 3,194 2,756 1,631
2015年3月 46,637 4,491 3,753 2,522
2014年3月 40,362 2,957 1,668 884
2013年3月 31,090 936 79 132
株式情報(12/6現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
689円 30,140,210株 20,767百万円 10.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10.00円 1.5% 29.61円 23.3倍 487.29円 1.4倍
※株価は12/6終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
ミマキエンジニアリングの2017年3月期上期決算と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
開発型企業を標榜し、広告・看板等の製作、工業製品・部品等の加飾、布生地へのプリント等に使われる業務用インクジェットプリンタ及びインクを中心に、カッティングプロッタ等の開発・製造・販売・保守サービスを手掛けている。連結子会社16社とグループを形成しており、製造拠点を日本と中国に置き(この他台湾でインクを製造)、販売は、日本、欧州、北米、アジア・オセアニア、中南米、アフリカに展開。海外での売上が売上全体の75%を占める。
 
【経営ビジョン】
1. 独自技術を保有し、自社ブランド製品を世界に供給する「開発型企業」を目指します。
2. 顧客に満足いただける製品を素早く提供する小回りの利いた会社を目指します。
3. 市場に常に「新しさと違い」を提供するイノベーターを目指します。
4. 各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土を目指します。
 
同社は「新しさと違い」の提供を経営ビジョンの一つに掲げ、独自のインクジェットプリント技術とカッティング技術を駆使して革新的な製品を開発し、業務用インクジェットプリンタ市場を創造開拓してきた。今後も、顧客志向の開発型企業としてイノベーター精神を継承しつつ、デジタル・オンデマンド印刷の新たな市場を創造する真のグローバル企業を目指していく考え。
 
【事業内容】
事業は、業務用インクジェットプリンタ、カッティングプロッタ、インク等の単一事業。主な製造拠点を日本と中国に置き、販売は日本の他、欧州、北米、アジア・オセアニア、中南米、アフリカに展開。販売方法は、ディーラーや代理店経由が中心だが、地域密着・顧客密着の方針の下でエンドユーザとの接点を重視している。売上の中心は海外で、16/3期の海外売上比率は74.6%。エリア別売上構成比は、日本25.4%、北米15.9%、欧州29.6%、アジア・オセアニア20.0%、その他9.1%。
 
ビジネスフィールドと製品
同社の製品は、広告看板(サイングラフィックス:SG)、工業製品(インダストリアルプロダクツ:IP)、衣料品(テキスタイル・アパレル:TA)の3つの市場で使われている。

SG市場は、塩ビシート、バナーシート、ウィンドウフイルム等を主なプリント素材とし、広告看板、ウィンドウグラフィックス、カーラッピング、ソフトサイン等のプリントに使われる。IP市場は、プラスチック、アクリル、ガラス、金属、木材等を主なプリント素材とし、UV硬化インクの特性を活かし、工業製品の加飾の他、ギフトやノベルティ等でのプリントに使われている。TA市場は、ポリエステル、レーヨン、綿、絹等を主なプリント素材とし、縫製前の生地(テキスタイル)やTシャツ等の既製服(アパレル)など布地にもプリントできる。
 
様々な素材に印刷可能な特殊なインクの開発と美しくプリントするためのヘッドコントロール技術
業務用インクジェットプリンタの場合、プリント対象となる素材が特殊(樹脂、金属、木材、布等)なため、搭載するインクも素材に応じた多種多様なインクが必要になる。また、屋外でも色あせない、水に流れ落ちない、こすっても落ちない等、プリント対象物の用途に応じた機能性も求められ、同社は、こうした機能性インクの開発をインクメーカーの協力を得ながら進めている。
素材や用途に応じた多種多様なインクを開発するケミカル技術の蓄積が同社の財産であり、この特殊な機能性インクを安定的に吐出する技術や美しくプリントするためのヘッドコントロール技術等と共に同社の強みとなっている。
 
 
グローバル展開
既に説明した通り、主な製造拠点を日本と中国に置き、販売は日本の他、欧州、北米、アジア・オセアニア、中南米、アフリカに展開している。密度の高い顧客情報をリアルタイムで入手し、その多様なニーズを素早く製品開発へ反映する体制を整備するべく、地域密着の販売・保守サービス網の再構築(ディーラーや代理店とのパートナーシップの強化)に取り組んでいる。この一環として、IP市場向けでは、顧客(プリンタユーザ)の持ち込み素材にプリントするための最適条件をテストするラボセンターの整備をワールドワイドで進めている。また、TA市場向けでも、各産地によって水や入手できる薬剤、後処理機が異なるため、最適な条件を現地でテストするためのラボセンターの整備を進めている。
 
 
【ポジショニングと市場拡大要因】
ポジショニング   特殊素材に印刷できるプリンタで売上世界第1位
同社の資料によると(調査会社調べ)、大判インクジェットプリンタの世界市場(大判=A1サイズ以上。CAD、屋内ポスター等の水性IJPを含む)は2014年で302千台、1,945億円。同社は、台数ベースで、ヒューレット・パッカード、キヤノン、セイコーエプソン、ローランドDG、武藤工業に次ぐ第6位だが、金額ベースでは、ヒューレット・パッカード、キヤノン、セイコーエプソンに次ぐ第4位。ただ、上位3社は紙に印刷するプリンタがほとんどで、特殊素材に印刷できるプリンタでは同社が売上世界第1位と推測される。同社はイノベーターとして、SG、IP、TA市場に向けて業務用プリンタをいち早く開発・販売し、つねに市場をリードしてきた。
 
市場拡大要因   オンデマンド生産や少量多品種生産の流れが追い風
既にデジタルプリントが普及しているSG市場に加え、近年では、IP・TA市場でも版を使用した従来のアナログ印刷からデジタルプリントへと移行が進んでいる。版を必要としないデジタルプリントのメリットは、企画から商品化までの時間を大幅に短縮できる上、在庫を抱える事なく受注動向を確認しながらプリントするオンデマンド生産が可能な事。また、デジタルプリントの普及が進むにつれ、従来からの生産コストの安い地域でのアナログ印刷による大量生産から、商品を短納期で提供でき、かつ輸送費を抑える事ができる消費者の近くでのデジタルプリントによる少量多品種生産へのシフトもあり、デジタルプリントによる生産拠点はグローバルに拡大しつつある。
 
 
2017年3月期上期決算
 
 
為替の影響を除いた実質ベースで、前年同期比5.7%の増収、同50.2%の営業増益
売上高は前年同期比4.6%減の228億85百万円。印刷のデジタル化が進んでいるSG市場向けが円高と競争激化で減少した事が響いたが、市場の拡大と前期に投入した新製品の寄与等でIP市場向け及びTA市場向けは円高の影響を吸収して増加した。売上構成比は、SG市場向け44.5%(前年同期50.7%)、IP市場向け32.8%(同29.1%)、TA市場向け11.8%(同10.4%)、保守部品7.5%(同6.9%)、その他3.4%(同2.9%)。

品目別では、製品本体が同9.4%減の113億98百万円(売上構成比49.8%)、インクが同1.4%減の77億05百万円(同33.7%)、保守部品等のその他が同5.1%増の37億81百万円(同16.5%)。インクや保守部品等が過半を超えた。

利益面では、円高が差し引き12億89百万円の減益要因になった(通貨別の影響額は概算で米ドル△4億円、ユーロ△8億円、その他△1億円)。具体的には、円高の影響を除いたベースでの増収効果6億39百万円やプロダクトミックスによる原価率改善効果4億73百万円に加え、対USドルでの円高による海外生産品の仕入原価の低減6億15百万円や対ユーロでの円高による欧州子会社の販管費の減少5億88百万円があったものの、円高による売上減少の影響24億92百万円をカバーできなかった。
また、販管費では研究開発費(1億89百万円増)や販売促進費(63百万円増)が増えており、厳しい円高の中でも先行投資には余念がなかった。最終利益の減少率が大きいのは、個別決算の未実現利益に係る税効果会計の影響による。

上期の平均為替レートは、1米ドル=105.33円(前年同期 121.80円、13.5%の円高)、1ユーロ=118.21円(前年同期 135.07円、12.5%の円高)。
 
 
SG市場向け  売上高101億84百万円(前年同期比16.3%減、為替の影響排除後6.7%減)
2016年4月に発売したエコインクの新製品のLED-UV硬化インクジェットプリンタ「UJV55-320」(プリント幅が3.2mの幅広)の販売台数が全世界で増加する等の成果があったものの、前年同期に価格訴求した製品が伸びた反動に加え、中国の低迷や先進国での競争激化、更には円高の影響を吸収できなかった。為替の影響を除くと6.7%の減収。
 
IP市場向け  売上高74億96百万円(前年同期比7.2%増、為替の影響排除後19.4%増)
ノベルティ、スマホ等の分野の開拓に寄与した小型(デスクトップ)分野は参入が増えてきたが、フラットベッドタイプの大型モデル「JFX200-2513」が、工業印刷、建材、家具等のマーケットの開拓に成功して主力機種に成長してきた事に加え、2015年11月に発売したフラットベッドタイプの高画質モデル「UJF-7151 plus」が高いプリント精度が評価され販売台数を伸ばした。円高を吸収しての増収であり、為替の影響を除くと19.4%の増収。
 
TA市場向け  売上高27億円(前年同期比8.0%増、為替の影響排除後17.2%増)
インクのラインナップが整備された事で2015年7月に発売したテキスタイル捺染インクのエントリーモデル「Tx300P-1800」(綿や絹へのプリント)が主力機種に成長してきた他、2016年2月に発売した大型昇華転写プリンタ「TS500P-3200」(化繊へのプリント)も増収に寄与した。ファストファッションからピュアテキスタイルへの展開に向けたラインナップの拡充が成果をあげている。円高を吸収しての増収であり、為替の影響を除くと17.2%の増収。
 
 
日本   売上高62億54百万円(前年同期比6.7%増)
業務用インクジェットプリンタでトップシェアの日本は、デジタル化の進展を追い風に、IP市場向け、TA市場向けが増加した。デジタル化が進んでいる上、同社のシェアも高いSG市場向けは減少したが、今後、オリンピック関連の需要が期待される。
 
北米   売上高31億98百万円(前年同期比14.3%減、為替の影響排除後0.9%減)
シェアの高くない北米は、販売チャネル改革を進めている。SG市場向けが大手他社の攻勢に押されたが、IP市場向け、TA市場向けは増加。販売チャネル改革の成果が顕在化しつつあり、為替の影響を除くと横ばいにとどまった。具体的な課題が明確になり、下期以降、課題への対応が進む見込み。
 
欧州   売上高66億87百万円(前年同期比5.5%減、為替の影響排除後8.0%増)
シェアの高い欧州は、為替の影響を最も大きく受けたが、イギリスのEU離脱の影響等はなく、ドイツやイギリス等で売上が増加。同5.5%の減収にとどまり、為替の影響を除くと同8.0%の増収。SG市場向けが苦戦した他、TA市場向けでの取りこぼしもあったが、IP市場向けの好調で吸収した。
 
アジア・オセアニア   売上高42億86百万円(前年同期15.2%減、為替の影響排除後4.7%減)
総じてシェアの高いアジア・オセアニアは為替の影響に加え、中国でのSG市場向けの低迷が響き(中国が4〜5億円の減収)、同15.2%の減収。為替の影響を除いても同4.7%の減収。ただ、足元、中国には底打ち感がある。

売上構成比は、日本27.3%(前年同期24.4%)、北米14.0%(同15.6%)、欧州29.2%(同29.5%)、アジア・オセアニア18.7%(同21.1%)、その他10.7%(同9.5%)。
 
 
上期末の総資産は前期末に比べて9億75百万円減の451億57百万円。借方では現預金や売上債権が減少し、貸方では自己株式の取得(5億35百万円)や円高の影響による為替換算調整勘定の減少(△7億55百万円)で純資産が減少。借入金の返済で有利子負債も減少した。仕入債務の減少は4月より支払手形を電子記録債務(電債)にシフトしたため。電債が含まれるその他流動負債が37億79百万円増加した。自己資本比率32.3%(前期末33.9%)。
 
 
CFの面では、運転資金が増加したものの、EBITDA(利払前、税払前、償却前の営業利益)20億58百万円で吸収して15億19百万円の営業CFを確保した。投資CFは、デモンストレーション用の自社製品や金型等の固定資産の取得を中心に11億15百万円のマイナス。自己株式の取得、借入金の返済、及び配当金の支払い等で財務CFも8億47百万円のマイナスとなった。上期末の現金及び現金等同等物の残高は101億13百万円(前期末109億92百万円との比較で8億79百万円の減少)。
 
 
2017年3月期業績予想
 
 
通期で前期比1.1%の増収、同42.1%の営業減益予想ながら、為替の影響を除くと、12.7%の増収、52.4%の営業増益と順調
売上高は前期比1.1%増の483億50百万円。円高が55億53百万円の減収要因になるが、これを吸収しての前期比増収。市場別では、M&A効果や新製品の寄与等でTA市場向けが同22.7%増加する他、IP市場向けも同9.1%の増加が見込まれる。また、同8.3%の減収が見込まれるSG市場向けも、下期は底打ち感が出てくる。

営業利益は同42.1%減の18億50百万円。円高が30億17百万円の減益要因(概算影響額:米ドル△10億円、ユーロ△18億円、その他△2億円)となる中、国内外での営業・サービス拠点の拡充等で人件費(2億75百万円増)や減価償却費(1億57百万円増)が増加する。1円の為替変動が営業利益に与える影響は(12ヶ月換算)、USドルが56百万円、ユーロが86百万円。
尚、為替の前提を、1ドル=105.00円から100.00へ、1ユーロ=120.00円から110.00円へ、それぞれ修正した。このため、実質的には業績予想の上方修正である。

期末配当は、1株当たり5円を予定しており、上期末配当5円と合わせて年10円となる見込み。
 
 
SG市場向けは、北米等で人気のあるカット機能を備えたカット&プリントの「CJV300シリーズ」や「CJV150シリーズ」の販売強化、及び全世界で販売台数が伸びているLED-UV硬化インクジェットプリンタ「UJV55-320」(3.2mの幅広)の寄与等で下期は前年同期比0.9%の増収(上期比5.0%の増収)。通期では前期比8.3%減の208億82百万円だが、為替の影響を除くと前期と同水準である。

IP市場向けは、フラットベッドタイプの大型モデル「JFX200-2513」(工業印刷、建材、家具等)やフラットベッドタイプの高画質モデル「UJF-7151 plus」(工業印刷、パッケージ印刷)による需要の開拓(用途の拡大)で売上が増加。下期は前年同期比10.8%の増収が見込まれ、通期で160億13百万円と円高の影響を吸収して同9.1%増加する見込み。為替の影響を除くと同18.0%の増収。

TA市場向けは、10月に子会社化したラ・メカニカ社(後述)のハイエンド製品(テキスタイル捺染インクジェットプリンタの高速モデル)を、ミマキエンジニアリングの販路に乗せ欧州や北米で拡販を図る。下期は前年同期比35.6%の増収が見込まれ、通期で65億55百万円と円高の影響を吸収して同22.7%増加する見込み。為替の影響を除くと同40.4%の増収。
 
 
日本は、IP市場向けのフラットベッドタイプの大型モデル「JFX200-2513」で建材や家具等の開拓を進める。下期は前年同期比0.2%の増収と小幅な増加にとどまるが、半期ベースの増収基調が維持され通期では125億57百万円と前期比3.4%の増収が見込まれる。

北米は、チャネル改革の成果が徐々に表れてくる事とラ・メカニカ社製品の現地販売店への拡販で下期は同5.9%の減収ながら、為替の影響を除くと同11.2%の増収。通期では68億38百万円と同10.0%の減収ながら、為替の影響を除くと同5.3%の増収が見込まれる。

欧州は、ラ・メカニカ社の子会社化効果に加え、上期の反省を活かした案件の確実な取り込みで、下期は同4.4%の増収(為替の影響を除くと23.1%の増収)。通期では140億59百万円と同0.6%の減収ながら、為替の影響を除くと15.7%の増収。

アジア・オセアニアは、インド等の市場開拓に加え、中国も、急激な回復は見込めないものの、底打ち感がある。下期は同11.4%の増収に転じ、通期では同2.6%減の93億36百万円。
 
(3)設備投資、減価償却費、開発投資
設備投資は当初33億17百万円を予定していたが、28億83百万円(前期27億32百万円)に4億円圧縮する。円高を踏まえて不要不急な投資を延期する考えだ。内訳は、本社基幹システム構築4億73百万円、デモ機(同社製品)7億29百万円、金型2億47百万円、その他経常的投資約15億円。減価償却費16億57百万円(同15億40百万円)、開発投資33億95百万円(同35億31百万円)を業績予想に織り込んだ。
 
 
「長期ビジョン:M1000」の進捗状況
 
「長期ビジョン:M1000」では売上高1,000億円の達成を目指しており、SG市場向け売上高を17/3期予想比約2倍の400億円に、IP市場向け売上高を同約2倍の300億円に、TA市場向け売上高を同約3倍の200億円に、それぞれ拡大させる考え(この他、保守等のその他で100億円)。IP分野、TA分野といったモノづくり分野におけるインクジェットプリンタの普及率は数%で伸びしろが大きく、特に潜在需要が顕在化しつつあるTA分野は最も大きな成長が期待できる。また、モノづくりのあり方を革新する技術である「IoT」とフルカラーの立体造形技術である「3Dプリント」にも力を入れる。同社はカッティング技術とインクジェット技術をベースにカット&プリントでデジタル化を推進し、売上高500億円に業容を拡大させたが、「長期ビジョン:M1000」の達成に向け、既存領域であるカット&プリントにおけるトップ企業と、成長領域である「IoT」と「3Dプリント」における先駆者を目指していく。
 
 
SG市場はIP市場やTA市場に比べてデジタル化が進んでいるが、案内看板等は東京五輪に向け需要の増加が見込まれ、需要が増えているラッピング広告は耐候性に加え、伸縮性も要求される特殊なインクが必要となる。また、屋内広告では、前項の画像の様な印刷物にはカッティングプロッタ(カット&プリントの複合機)が必要となるが、特殊インクやカット&プリントを必要とする分野は大手プリンタメーカーでは参入が難しい分野であり、ビジネスチャンスがある。また、チャネル改革として、北米と中国の市場の販売チャネルの再構築とインド市場の開拓に取り組む他、インクを含めた製品ラインナップの拡充と製品レンジの拡大に取り組んでいく。
 
チャネル改革
他のエリアはトップシェア、もしくはトップに順ずるポジションにあるのに対して、北米シェアは中位にとどまっていた。そのため、ここ1〜2年はチャネル改革に取り組み、販売代理店の入れ替え等を進めた。具体的には、これまでは、多くのメーカー製品を扱う大手販売代理店に依存していたが、地域密着の中小規模な販売店への切り替えを進めている。北米の既存の販売代理店は、ここ数年でその半分程度を入れ替えたが、新たな販売代理店の売上はようやく拡大基調となり、上期の為替の影響を除いた売上高は前年同期比0.9%の減少にとどまった。下期以降は、この効果が本格化してくる見込みである。
また、中国とインドでもチャネル改革に取り組んでいく。中国では、これまで良好な事業環境に支えられ、旺盛な需要を受けて販売を行っていたが、今後は提案営業を強化する考えで販売店ネットワークを整備していく。一方、インドでは、合弁解消の和解が成立するまでは、契約の縛りがあり販売すらできない状況だったが、5月に和解が成立したことで、成長市場であるインドでの販売が可能となったため、代理店のネットワーク構築に取り組んでいく考え。
 
製品ラインナップの拡充と製品レンジの拡大
これまではプリント幅が1.3〜1.6m幅の市場に力を入れてきたが、2〜5m幅の大型看板(幅広・高速)市場にも参入し深堀していく。インクについても、環境に優しい、よりエコなUVインクの開発を強化して差別化を図る。また、3D戦略として、立体看板市場へも参入していく。
 
 
【IP市場】
IP市場では紫外線(LED)照射で固まるUV硬化インクを使うプリンタが使われており(素材を問わずプリントが可能)、同社は小型のUV硬化インクプリンタで、ノベルティ、カード(ICチップは熱に弱いため、熱を使わないUV硬化インクが最適)、スマートフォンケース等の小物類へのプリント市場を開拓してきた。
今後伸びる市場として注目しているのが、デジタル化の進展が2%程度と言われているパッケージや5%程度と言われているラベルの分野である。ラベル分野は、開発・製造が難しい金や銀のインクをラインナップしている事が強みだ。また、成長市場である高い精度が要求される時計の文字盤のプリントでも、同社のプリンタが使われている。この他、有望な市場として、メンブレンスイッチや自動車のメータパネル等の分野も同社は注目している。

ただ、工業用途で使用するためには、密着度等を考慮して素材や使用目的に応じたインクの選択(同社はUV硬化インクだけで4種類をラインナップしている)が必要であり、下地を処理するプライマー(下地用塗料)等も含めて、素材毎の密着性を事前にテストする必要がある。同社が8月に開設したIPラボセンターでは、こういった事前テストを行える他、ニーズに合わせた提案も行っている。IPラボセンターは、上海、インド、オランダ、ドイツ、アメリカ、ブラジル等の主要拠点で開設を予定している。
また、IoT戦略として、人手に頼る部分の多いプリント業界の現状を踏まえ、IoTの活用による生産ラインにおけるインクジェットプリンタの自動化・無人化・高速化に取り組んでいく。
 
 
今後  ラベル・パッケージ等、工業用途(IPラボセンターを活用した新用途・新市場の開発)
 
 
 
TA市場では、生産コストの安い地域でのアナログ印刷による大量生産から、商品を短納期で提供でき、かつ輸送費を抑えられる消費者の近くでのデジタル印刷による少量多品種生産へとシフトする動きがあり、裁断・縫製加工前の生地や既製服を問わずデジタルプリントの活用が増えている。
 
「消費地戦略」と「生産地戦略」を両輪にTA市場のデジタル化を主導
同社はフルラインナップ戦略を推進する。具体的には消費地と生産地の双方に対応できる製品群をフルラインナップする事で、アナログ印刷からデジタル印刷への移行を主導していく。
「消費地戦略」では、都市部でのフル・カスタマイズ印刷やファストファッション業界等の多品種少量生産を対象とし、「TS300P-1800」や「Tx300P-1800B」といったエコ(水不要。後述)で経済的(版不要)な昇華転写や捺染顔料インクを使う機種戦略を進める。一方、「生産地戦略」では、中国、インド、エジプト、パキスタン等、アナログプリントによる大量生産地を対象とし、イタリア子会社ラ・メカニカ社製品「Pro series」で補完しつつ、高速プリントモデルの拡販を図る。ラ・メカニカ社製品については、子会社化に先立つ2016年9月から、「Tiger-1800B」、「Leopard-1800B」、及び「Fox-1800B」の販売を開始している。尚、アナログプリントでの捺染はプリント後に蒸して、その後、水洗浄が必要なため、水を汚してしまう。
 
伊ラ・メカニカ社(La Meccanica Costruzione Tessili-S.P.A)の子会社化
2016年10月、伊ラ・メカニカ社(La Meccanica Costruzione Tessili-S.P.A、資本金517千ユーロ)の株式517,000株を取得し100%子会社化した(2016年6月に契約締結)。伊ラ・メカニカ社はハイエンドモデル(高速・高額)を中心としたテキスタイル捺染インクジェットプリンタの有力メーカーだが、イタリア国外に販路を持たなかった。株式取得日付で商号を「Mimaki La Meccanica S.p.A」(以下、ラ・メカニカ社)に変更し、同社の役職員3名が社長を含めた取締役に就任した。
子会社化のポイントは、①高速モデル製品開発の加速、②TA市場における圧倒的な製品ラインナップ、及び③開発製造拠点を欧州に確保、の3点。子会社化によって、SG市場から展開してきたミマキエンジニアリングは、その実績を活かして中速からエントリーモデルを中心に製品ラインナップを拡充させてきたが、今後はラ・メカニカ社の開発力をバックボーンとしてハイエンドモデルの製品開発を加速させる(①)。また、TA市場において生産地で求められる大規模生産と消費地近くで求められる小規模生産の両面で製品ラインナップの整備が進んだ(②)。更に、ファッション情報の発信地であり、市場規模も大きい欧州(イタリア)に開発拠点を確保した事で、TA市場のデジタル化をグローバルに推進できる体制も整った(③)。
 
9月からラ・メカニカ社「Pro series」の販売を開始
ラ・メカニカ社の株式取得は6月に契約を締結しており、9月から「Pro series」としてラ・メカニカ社のベルト搬送方式ダイレクト捺染インクジェットプリンタ(高速レンジモデル)「Tiger-1800B」、「Leopard-1800B」、及び「Fox-1800B」の3機種を販売している。「Pro series」は、薄手素材や伸縮素材でも安定した生地搬送を実現するベルト搬送方式を採用しており、ベルト貼り付けローラーやシワ検知センサー、ジャムセンサーによる安定した布搬送機構をはじめ、安定したインク吐出を可能にする脱気モジュールを搭載する等、高い設計技術による安定したプリント稼働を実現する。また、多彩な布の種類や状態を考慮し、プリント後の収納方法に対応する繰り出しや巻き取りユニット等が充実している事も特徴だ。
3機種は、同社の中速デジタル捺染インクジェットプリンタ「Tx500-1800B」(ドラフトモード:最高プリントスピード140/h)と、2016年4月に発表した高速デジタル捺染インクジェットプリンタ「MM700-1800B」(ドラフトモード:最高プリントスピード800/h)の中間となるプリントスピードを備える。このうち、高精細モードでの最高プリントスピード390/hを誇る「Tiger-1800B」はプリントヘッド8基を2列搭載し、その生産スピードを活かし、これまでアナログ印刷で行われていたような大量生産に対応したモデル。同244.5/hの「Leopard-1800B」はプリントヘッド8基を1列搭載し、サンプル作成から小ロット生産まで幅広い用途での使用が可能。一方、「Fox-1800B」は、プリントヘッドを4基1列にする事で「Leopard-1800B」よりも価格を抑え、省スペース化したモデルである。
 
 
SG市場から展開してきたミマキエンジニアリングは、その実績を活かして1時間当たり50〜150屬離廛螢鵐搬度の機種を品揃えしてきたが、TA市場に的を絞って製品開発を進めてきたラ・メカニカ社は同300〜500屬旅眤機種に強みを持つ。ラ・メカニカ社の子会社化によりフルラインナップ体制が整った事で、10人程度の小規模工場から、テキスタイル生産地に所在する数千人規模の工場まで幅広く提案できるようになった。(ミマキエンジニアリングは、フルラインナップ化により提案力の面で同業他社と差別化することができた)。なお、高速機種の先行メーカーは大企業の社内印刷部門やプリントショップ等を対象としたプロダクションプリンティング(商用プリントサービスよりも規模が小さい軽印刷)から業務用プリンタに参入してきたメーカーであり、同社は専門能力で勝る。
 
 
今後の注目点
上期決算は表面的には為替の影響を受けて減収・減益となったが、新製品の寄与で順調に販売を伸ばしている事が確認できた。充実したインクのラインナップも含めて、積極的な新製品の開発・投入による新規分野や新規用途の開発は同社の特徴である。業務用インクジェットプリンタ専業の大手他社と比べると、同社がデジタル化の予兆を捉え、フルラインでの製品供給を念頭に、SG市場向けから、IP市場向けやTA市場向けへ展開し、独自のマーケットを開拓してきたのに対して、他社はSG市場中心に展開してきた。このため他社の方が利益率は高かったが、昨今、SG市場の競争が激化する中、IP市場向け及びTA市場向けで同社が優位性を保持し続けることが重要に思われる。
また、米国、中国、インドでの販売チャネル改革が進んでいる事も確認できた。特に米国は下期から成果が表れてくる見込みだ。更に伊ラ・メカニカ社の100%子会社化で、開発製造拠点を欧州に確保すると共に、TA分野でのフルラインナップ体制も整った。同社に限った事ではないが、表面的な数値にとらわれるのではなく、内容の精査が大切である事を改めて認識した。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書      2016年6月22日更新
<実施しない各原則とその理由>
補充原則1−2−4.議決権電子行使プラットフォームの利用、株主総会招集通知の英訳
平成28年3月末基準で、当社の株主構成に占める機関投資家の株式保有比率は9.8%、海外投資家の株式保有比率は3.8%であり、相対的に低い水準にあると考えております。今後、機関投資家または海外投資家の株式保有比率が20%を超える状況となった場合を目安に、議決権電子行使プラットフォームの利用や株主総会招集通知の英訳等について、検討を進めてまいります。なお、海外投資家に当社概況をご理解いただくべく、英文の事業報告書(Business Report)を毎年2回(6月と12月)発行し、自社ウェブサイトに掲載しております。
 
補充原則4−1−2.中期経営計画へのコミットメント
当社では、毎年3月の取締役会において事業単年度の計画(経営戦略、数値計画等)に加え、3ヶ年計画についても決議することとしております。ただし、事業単年度の必達計画は業績予想として数値を公表しておりますが、3ヶ年計画につきましては数値を公表しておりません。これは、当社グループが「新しさと違い」を提供するイノベーターとして新たな市場と顧客を創出する業態であり、1年ごとのローリングにより3ヶ年計画を策定しているため、株主や投資家の皆様に対してコミットメントできる中期的な数値計画の見通しを公表することが困難なためであります。このことを踏まえ、株主や投資家の皆様に当社グループの中長期的な成長展望をご理解いただくための情報開示のあり方として、数値予測を伴った中期経営計画の公表は差し控え、経営戦略やビジョン等の定性情報のみを随時公表することとしております。
 
<開示している主な原則>
原則1−4.上場株式の政策保有
当社は、投資先企業との事業上の関係を総合的に勘案のうえ、当該株式を保有することが中長期的な観点より当社グループの企業価値向上に資すると取締役会が判断した場合に限り、上場株式を政策保有することとしております。政策保有株式につきましては、必要に応じて継続保有の是非について取締役会に付議することとしております。また議決権行使につきましては、その議案が当社の保有方針に適合するかどうか、投資先企業の企業価値向上につながるかどうか等を総合的に勘案して行っております。
 
原則1−7.関連当事者間の取引
当社は、関連会社(子会社、持分法適用会社等)との事業取引を除き、関連当事者間の取引を行わないことを原則としております。
(例外的に関連当事者間の取引が発生する場合の手続きを示すと共に、明らかに必要性・合理性が認識でき、会社の利益を害する恐れのない場合は、代表取締役社長の決裁後に取締役会で報告する、また、関連当事者に該当する取締役に対し、毎年、経理部が関連当事者間の取引報告を求め、その有無の確認を行っている、としている)。
 
 
 
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