ブリッジレポート
(3667) 株式会社enish

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ブリッジレポート:(3667)enish vol.18

(3667:東証1部) enish 企業HP
安徳 孝平 社長
安徳 孝平 社長

【ブリッジレポート vol.18】2017年12月期第1四半期業績レポート
取材概要「4月に発行された新株予約権の目的は、資金調達ではなく、外部協力者に対するインセンティブである。新株予約権を購入した外部協力者3名や事業内容・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年5月16日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社enish
社長
安徳 孝平
所在地
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
決算期
12月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年12月 4,970 -361 -401 -340
2015年12月 5,482 -964 -1,004 -1,447
2014年12月 6,452 149 151 22
2013年12月 6,624 1,109 1,078 653
2012年12月 4,430 666 654 373
2011年12月 2,590 526 523 298
2010年12月 415 64 71 55
2010年1月 22 -40 -41 -41
株式情報(5/2現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,050円 7,800,800株 8,191百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - - - 190.12円 5.5倍
※株価は05/02終値。
 
enishの2017年12月期第1四半期決算と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
レストラン経営シミュレーションゲーム「ぼくのレストランII」やアパレルショップの経営シミュレーションゲーム「ガルショ☆」等の人気作品を有するソーシャルアプリの企画・開発・運営会社。「Link with Fun」というスローガンの下、「世界中にenishファンを作り出す」事をミッションとして掲げている。社名の「enish(エニッシュ)」は、人と人との縁(えん、えにし)に由来する。

基本方針は、「女性を軸に事業展開」、「ゲーム事業の強化」、及び「非ゲーム事業への投資」。女性向け事業を基本軸とし、ゲーム事業の更なる成長と非ゲーム事業の拡大により安定した収益基盤の構築を目指している。非ゲーム事業では、ファッションレンタルサービス「EDIST.CLOSET」、婚活アプリ「metune」、及びゲーム周辺事業といった新規事業を育成中である。
 
【沿革】
 
【ゲーム事業の概要】
ブラウザゲームの収益性を維持しつつ、ネイティブアプリでヒットを創出し、国内とアジアを中心にしたグローバル配信で業容拡大を図っていく考え。選択と集中及び収益性の維持を念頭に、「ぼくのレストランII」、「ガルショ☆」のブラウザゲーム2タイトルと、ネイティブアプリ「12オーディンズ」を運営しており、開発リソースはネイティブアプリに集中させている。
 
 
ネイティブゲームアプリ
バトルRPGゲーム 「12オーディンズ」
「12オーディンズ」は、世界を滅ぼしかけた魔龍の爪あとが残るウルザールを舞台に、プレイヤーは「約束の地」を求めて旅立つ。個性豊かなキャラクターとの出会い、交錯する思いと人間模様、徐々に明らかになっていくストーリー。ジョブシステムと多彩な装備やスキルを駆使した戦略性と共に、派手なエフェクトと3Dで表現される爽快なリアルタイムバトルを堪能できる。

2017年1月にリリース1周年を迎え、累計ダウンロードが200万ダウンロードを突破した。Funmily社との独占ライセンス契約の下、提携先を通して、台湾・香港・マカオでの配信も決まっている。
 
尚、ネイティブアプリとは端末にダウンロードして楽しむアプリで、主にスマートフォン向けに提供されている。一方、ブラウザゲームはダウンロードせず、GREE、mixi、Mobage等のプラットフォームにアクセスしてブラウザ上で楽しむ。いずれも無料で楽しむ事ができるが、ゲームを進める上で有効なアイテム等を購入した場合、課金が発生する。ブラウザゲームでは、ユーザーへの課金及び料金回収はSNSを運営するプラットフォーム事業者に委託し、同社はその対価としてシステム利用料等を支払っている。
 
※ リリース後の「運営」が事業成否のポイントとなるモバイルゲーム
モバイルゲームは、①ゲームを通してプレイヤー同士がコミュニケーションを図る、②基本的には無料でゲームを進めながらアイテム等で課金、③原則無料のためスマートフォンさえあれば気軽に遊べる、④ゲームにゴールがない、⑤リリース後ゲーム進行に合わせて新機能の追加実装、⑥キャラクターやアイテムを追加して運営していくスタイル、といった特徴を有し、パッケージで提供されるゲームと異なり、「リリース」よりもリリース後の「運営」が事業成否のポイントとなる。

「運営」とはゲーム内イベントの運営であり、そのゲームの育成対象となるアイテムやキャラクター等を獲得できる収集イベント、キャラクターを成長させるための育成イベント(育成専用のアイテムの配布等を実施)、及び育成したアイテムやキャラの力を試す活用イベントの3つ。中でも、他のユーザーとの戦いや協力でゲームが進行し、リアルタイムでのランキング表示もある活用イベントは、ユーザーの注目度も高く、最も売上が大きくなる。
 
 
2017年12月期第1四半期決算
 
 
「12オーディンズ」の1周年企画実施に伴い広告宣伝費が一時的に増加
売上高は前年同期比17.9%減の10億43百万円。ブラウザゲームは前期に実施した不採算タイトルのクローズや「ドラゴンタクティクス」譲渡の影響で売上が減少したが、イベントやコラボ等きめ細かな運用を実施した成果で「ぼくのレストラン2」や「ガルショ☆」を中心に想定通りに推移した。一方、ネイティブアプリは、リリース1周年を迎えた「12オーディンズ」(累計200万ダウンロードを突破)が、人気アニメ「アルスラーン戦記 風塵乱舞」とのコラボレーションやプロモーション強化の成果で堅調に推移した。

営業損失は前年同期の41百万円から2億02百万円に拡大した。労務費・外注費を中心に売上原価が減少し、販管費も全般には減少したが、「12オーディンズ」の1周年企画の実施に伴い広告宣伝費が1億74百万円と前年同期(56百万円)及び前期四半期(1億12百万円)を大きく上回った。

また、新規事業として取り組んでいる非ゲーム事業において、ファッションレンタルサービス「EDIST.CLOSET」が、人気スタイリストやアパレルとコラボレーションした旬のコーディネイトセットが評価され会員数を伸ばした(16/12期第2四半期から17/12期第1四半期にかけて会員数が3倍に拡大)。
 
 
 
 
第1四半期末の総資産は前期末に比べて2億70百万円減の19億07百万円。未収入金の回収等で現預金が増加する一方、売上債権、借入金、純資産等が減少した。流動性に富んだ良好な財務体質は維持されており、自己資本比率は77.8%(前期末77.4%)。
 
(3)第9回 新株予約権の発行
4月28日に外部協力者3名に対して総数1,800個の新株予約権を発行した。発行の目的は、新たに外部協力者と共同で開発するネイティブアプリの配信及び関連サービスに関する事業により生じる収益の最大化及び中長期的な企業価値の増大を目指すに当たっての外部協力者へのインセンティブの付与である。この新株予約権は有償で発行され、同社株価が行使価額(502円)の50%を下回った場合に行使を義務付ける旨の行使条件が設定されている。つまり、株価変動リスクを既存株主と同様に外部協力者にも負わせた。

新株予約権の払込金額は1個当たり900円のため(1株当たり9円)、新株予約権の発行に伴う払込金額の総額は1,620,000円。新株予約権1個の行使に当たり普通株式100株が交付されるため、全てが行使されると180,000株を交付する事になり、この株数は第1四半期末の発行済み株式数7,800,800株の2.3%に相当する。また、1株当たりの行使価額は502円のため、全てが行使された際の調達金額は90,360,000円となる。
 
新株予約権の割当対象者   外部協力者3名
新株予約権の発行総数 1,800個(全てが行使された際の交付株数180,000株)
1個当たり払込金額 900円(1個当たり100株を交付)
行使価額 502円(全てが行使された際の調達金額90,360,000円)
行使期間 2017年4月28日~2027年4月27日(10年間)
尚、行使条件の発動水準を新株予約権の行使価額の50%を下回った場合と設定した理由として、同社の過去の株価推移(2016年1月4日以降の最高値が848円、最安値383円と5割強の変動)を考慮の上、上記事業の重要メンバーとして株価水準へのプレッシャーを意識しつつ同社に関与する適切な水準が本新株予約権の行使価格の50%であると判断した、としている。
また、本新株予約権1個あたりの発行価額900円は、第三者評価機関である(株)プルータス・コンサルティングが、同社の株価情報等(本新株予約権の発行を同社取締役会で決議した2017年4月13日の前日の東京証券取引所における同社株価の終値502円、株価変動性78.43%、配当利回り0%、無リスク利子率0.038%)や、この新株予約権の発行要領に定められた条件(行使価格502円、満期までの期間10年、株価条件)に基づいて、一般的なオプション価格算定モデルであるモンテカルロ・シミュレーションによって算出した結果を参考に決定した。新株予約権発行に係る取締役会において、全監査役より、払込金額が特に有利な金額に該当しない旨の意見を得ていると言う。
 
 
基本方針と取り組み
 
基本方針は、「女性を軸に事業展開」、「ゲーム事業の強化」、及び「非ゲーム事業への投資」。女性向け事業を基本軸とし、ゲーム事業の更なる成長と非ゲーム事業の拡大により安定した収益基盤を構築していく。
 
ゲーム事業の強化
選択と集中により、新規ネイティブアプリにリソースを集約する。ネイティブアプリについては、現在、運営しているバトルRPGゲーム「12オーディンズ」の大規模アップデートが2017年春に予定されている他、今夏には、独占ライセンス契約の下、中国の大手メディア文化産業グループによる中国での配信も始まる。大規模アップデートでは、親しみやすいUIの採用等、ユーザー層の拡大に向けた取り組みが進められている。また、新規タイトルは、17/12期下期のリリースを目指して女性向けゲームの開発を進めている。
一方、ブラウザゲームについては、「ぼくのレストランII」と「ガルショ☆」の2タイトルに集中する(2017年4月に「プラチナ☆ガール」を(株)ビジュアライズへ95百万円で譲渡した)。

中国配信の提携先は下記の通り。
上海东方明珠迪尔希文化传媒有限公司
所在地 :中国(上海)自由貿易試験区内
設立 :2014年6月28日
役員 :董事 兼 総経理 山口 哲也(D2C国際事業室)
主な事業内容   :スマートフォンゲームの開発及びパブリッシング
 
非ゲーム事業への投資
ゲームに続く収益の柱として、新規事業の育成・拡大に向けた投資を継続していく。「EDIST.CLOSET」では、展示会等の施策を展開し更なる会員数の拡大を図ると共に、商品構成の見直しやサイトの改善に取り組む。「metune」では、人気占い師「イヴルルド遙華」さんが全面監修する婚活アプリを2017年4月26日にリリースした。運命占いをベースにマッチングする独自のサービスを展開していく。ゲーム周辺事業は17/12期上期のリリースに向け準備が進められているが、提携先への配慮から詳細な説明を控えている。

尚、「イヴルルド遙華」さんは、前向きなアドバイスが口コミで広がり、モデルやヘアメイク、エディター等の業界で絶大な支持を得ている今話題のフォーチュンアドバイザー。西洋占星術、タロットをはじめ、人生の流れを24の節目で区切る「フォーチュンサイクル」等、幅広い占いを独学で研究している。「ELLE ONLINE」(ハースト婦人画報社)や「VoCE」(講談社)に占いコンテンツを提供しており、著書に「運命のフォーチュンAmulet」(小学館)等がある。東京・代官山に鑑定ルームを開設している。
 
今後の注目点
4月に発行された新株予約権の目的は、資金調達ではなく、外部協力者に対するインセンティブである。新株予約権を購入した外部協力者3名や事業内容の詳細は分からないが、競争激化でゲーム各社を取り巻く環境が厳しさを増す中での新たな事業手法であり、興味深い。同社は売上の減少に歯止めがかかれば、広告宣伝費いかんで営業利益を計上できる体制が整ってきているだけに期待も高まる。この他にも、「12オーディンズ」の大規模アップデート及び中国配信、会員数を増やしている「EDIST. CLOSET」や4月にリリースされた「metune」の収益寄与等、好材料は多い。下期の黒字転換に道筋をつける事ができるか、第2四半期決算に注目したい。
 
 
 
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書   更新日:2017年04月06日
基本的な考え方
当社は、企業価値を継続的に高めていくためには、迅速な意思決定や適切な業務執行と共に、経営の健全性と透明性を高める経営監視システムを強化し、機能させることが極めて重要だと認識し、ステークホルダーの信頼維持のため、コーポレート・ガバナンスの充実に努めています。
 
<実施しない主な原則とその理由>
■原則4-8 独立社外取締役の有効な活用
当社は、取締役会における議論が一層活性化し適切な意思決定が行われることや、その監督機能を強化することなどを目的として、独立社外取締役を1名選任しております。しかしながら、変化の激しい事業環境中、事業規模を鑑みながら、今後、コーポレート・ガバナンスをさらに充実させるため独立社外取締役が複数名となるよう候補者の検討を行っております。

■原則4-9 独立社外取締役の独立性判断基準及び資質
当社は、独立性に関する基準又は方針は定めておりませんが、選任にあたっては、一般株主と利益相反が生じるおそれがないものとすることを選任基準のひとつと考え、東京証券取引所が定める独立性基準を参考にとしております。

■原則5-2 経営戦略や経営計画の策定・公表
モバイルゲーム事業を取り巻く環境の変化が激しく、当社の業績も短期的に大きく変動する可能性があること等から、具体的な数値目標を算出することが困難となっているため、決算業績及び事業の概況のタイムリーな開示に努め、具体的な数値目標については開示を見合わせます。
 
<開示している主な原則>
■原則1-4 いわゆる政策保有株式
当社は、モバイルゲーム及び周辺サービス事業に注力するため、当面は、上場株式を保有しない方針であります。なお、今後、政策保有をする場合、中長期的な企業価値向上の観点から、個別に賛否を判断いたします。

■原則1-7 関連当事者間の取引
関連当事者取引については、取引条件及びその決定方法の妥当性について取締役会で審議し、意思決定を行う方針であります。
また、取締役会での意思決定後も、経理部門が取引の内容等の事後的なチェックを実施しています。

■原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針
当社は、株主との建設的な対話を促進するため、経営陣幹部等を中心に様々な機会を通じて株主と対話を持つよう努めております。
また、広くIR活動を行うため、IR担当役員として取締役執行役員管理部長を指定し、IR担当部署として管理本部経営企画を指定するとともに、経理、総務等の関連部門と有機的な連携に努めております。
アナリストや投資家および株主にタイムリーに情報提供するとともに、お問い合わせに迅速かつ適切に対応するよう努める一方で、対話に際してのインサイダー情報の管理を徹底するよう努めております。なお、株主の意見や懸念につきましては、必要に応じて経営陣幹部や取締役会に報告しております。