ブリッジレポート
(3778:東証1部) さくらインターネット 企業HP
田中 邦裕 社長
田中 邦裕 社長

【ブリッジレポート vol.11】2017年3月期業績レポート
取材概要「「更なる成長に向けた経営資源(「ヒト」、「モノ」、「カネ」)の確保に目途がついた」と言うのが、創業20周年を迎えての田中社長の感想。「ヒト・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年5月30日掲載
企業基本情報
企業名
さくらインターネット株式会社
社長
田中 邦裕
所在地
大阪市中央区南本町1-8-14 堺筋本町ビル9F
(2017年6月1日付で大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪 タワーA 35階に移転)
事業内容
東京、大阪、北海道の3エリアでデータセンターを運営。
業界大手。自社所有の郊外型大規模データセンターを活かし、
AIインフラ提供やIoTプラットフォーム(データ収集)事業に参入。
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 13,961 1,018 804 548
2016年3月 12,086 976 822 553
2015年3月 10,576 964 857 516
2014年3月 10,045 736 633 353
2013年3月 9,482 867 812 479
2012年3月 9,164 873 808 556
2011年3月 8,584 1,225 1,194 572
2010年3月 7,812 748 723 567
2009年3月 7,106 392 349 374
2008年3月 6,478 85 -25 -632
2007年3月 4,703 -271 -346 -493
2006年3月 2,758 210 197 105
2005年3月 1,930 133 132 70
株式情報(4/27現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
855円 37,620,256株 32,165百万円 9.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2.50円 0.3% 14.09円 60.7倍 202.26円 4.2倍
※株価は04/27終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
さくらインターネットの2017年3月期決算と2018年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京(西新宿、東新宿、代官山:いずれもフロア単位の賃借)、大阪(堂島:フロア単位の賃借)、北海道(石狩:土地建物保有)の3エリアでデータセンターを運営し、サーバの設置スペースと電源やネットワーク回線等を提供するハウジングサービスとサーバ環境(コンピュータリソース)をインターネット上で提供するホスティングサービスを手掛けている。多くのホスティングサービス事業者がインフラ(データセンター施設)を外部に依存するのに対して、同社はインフラを自社で保有する事で高収益を追求しており(価格競争力の源泉となる)、このインフラをハウジングサービスの提供にも活用する事で稼働率を上げ固定費リスク(インフラ保有リスク)を軽減している。
 
【企業理念】
同社は、下記のミッション、ビジョン、バリューを企業理念として定め、これを実現することによって、全てのステークホルダーから価値ある企業として支持される事を目指している。
 
コーポレート・ミッション 使命
私たちは、人々とビジネスの可能性を広げるデータセンターサービスの提供を通じ、インターネットによってひらかれる創造性と驚きに満ちた未来の実現に貢献します。
コーポレート・ビジョン  目指す姿
サービス 高品質で低価格なITプラットフォームと革新的で面白いインターネットサービスの提供
インフラストラクチャー スケールメリットと柔軟性を兼ね備えたコスト競争力の高いITインフラの実現
テクノロジー 価値あるサービスの実現とインターネットの発展に寄与する先進的な技術の探究
コーポレート・バリュー  重視する価値観
・質の高いサービスを生みだす絶えざるイノベーション
・コストパフォーマンスを支える卓越したオペレーション
・すべての活動のベースとなる良質なコミュニケーション
 
【沿革】
1996年12月23日、京都府舞鶴市にある、国立舞鶴工業高等専門学校でさくらインターネット創業。1999年8月、レンタルサーバサービスと専用サーバサービスの提供を目的とした、さくらインターネット(株)として設立。同年10月に大阪(大阪市中央区)と東京(京都豊島区)にデータセンターを開設し、ハウジングサービスを開始した。2005年10月に東証マザーズに株式を上場した。2008年2月に双日(株)と資本提携し(持分法適用会社となる)、2011年2月には双日(株)のTOBに賛同し資本関係を強化すると共に(連結子会社となる)、改めて業務提携契約を締結。同年11月にはクラウドコンピューティングに最適化した日本最大級の郊外型大規模データセンターを北海道石狩市に建設。2015年4月に(株)Joe's クラウドコンピューティングを、2016年5月にゲヒルン(株)を2017年1月にエヌシーアイ(株)を子会社化。2017年3月に公募増資と(株)双日の株式一部売出し等により持分法適用会社となる。
 
【事業内容】
事業は、ハウジングサービス、ホスティングサービス、及びドメイン取得サービスやSSL取得サービス(独自ドメインによるサーバ証明書の取得代行)等のその他サービスに分かれ、17/3期の売上構成比は、それぞれ18%、69%(専用サーバ22%、レンタルサーバ21%、VPS・クラウド26%)、13%。
 
ハウジングサービス
同社が運営するデータセンター内に、顧客所有の通信機器類を自由に設置できるスペースと、インターネット接続に必要な回線や電源などを貸与するサービス。ラック単位で設置スペースを貸し出す「ラック貸し(回線、電源等も提供)」が中心だったが、自社で土地建物を保有する石狩データセンターの稼働に伴い「スペース貸し」(大規模ハウジング)を開始した。
 
ホスティングサービス
専用サーバサービス、レンタルサーバサービスの物理ホスティングと、VPSサービス、クラウドサービスの仮想ホスティングに分かれる。
 
専用サーバサービス
同社が所有する物理サーバを専用で利用できるサービス(「さくらの専用サーバ」)。専門知識を要するサーバのメンテナンス等の負担があるものの、独自にサーバの設定が可能である事や、ソフトウェアのインストールに制約が無い事等、レンタルサーバサービスと比べて自由度の高い点が特徴。専用サーバは、クラウド・VPS等の仮想サーバの普及により売上が減少していたが、新サービスの導入以降、パフォーマンスの安定性や高性能なDB・ストレージの活用といった機能面でのメリットやクラウドに比べ規模拡大に伴い料金が増加しにくいコスト面での優位性から、特に高速処理が要求されるAI分野での利用等で見直されつつあり、クラウド(仮想サーバ)と専用サーバ(物理サーバ)を併用する顧客も増えている。
尚、新サービスはクラウドサービスの対抗商品として2012年2月にサービスを開始した。物理サーバをクラウドのように利用できる一方、仮想化技術を用いた通常のクラウドに比べて性能やセキュリティが各段に優れる(最少プランは従来価格のままでサービススペックを2倍以上に引き上げた)。台数制限がなく、複数台構成も可能で、申し込みから最速10分で利用できる。
 
レンタルサーバサービス
同社が所有する物理サーバと豊富な機能をメンテナンス不要で利用できるサービス。1台の物理サーバを専用で利用できるサービス(「さくらのマネージドサーバ」)と1台の物理サーバを複数の顧客が共同で利用するサービス(「さくらのレンタルサーバ」)を提供。サーバの設定やソフトウェアのインストールに一定の制約があるものの、専門知識を要するサーバのメンテナンス等は同社が代行するため、利用者は作業負担を大幅に軽減する事ができる。
 
VPS・クラウドサービス
仮想化技術により、物理サーバ上に複数の仮想サーバを構築し、そのひとつひとつが専用サーバのように利用できるサービス。基本的に仮想サーバ1台毎の単体契約となるサービス(「さくらのVPS」)と、契約の中で複数台サーバの申し込みとそのネットワーク設定を可能とし、日割や時間割での課金が可能なサービス(「さくらのクラウド」)を提供。物理サーバ(専用サーバサービスやレンタルサーバサービス)よりも自由度が高く、かつコストパフォーマンスに優れる。
 
 
 
2017年3月期決算
 
 
VPS・クラウド、高火力コンピューティング(専用サーバ)を中心に売上が増加し、先行投資負担を吸収
売上高は前期比15.5%増の139億61百万円。新規顧客の獲得と既存顧客の利用増でVPS・クラウドの売上が前期比36.1%増と伸びる中、高火力コンピューティングの成長で専用サーバの売上が同10.1%増加。NCI社の連結もあり、ドメイン・SSL取得サービス等のその他の売上も増加した。
利益面では、エンジニアの増員・平均報酬の引き上げや石狩データセンター(以下、石狩DC)やサービス機材の減価償却費・リース料等の増加による売上原価の増加を吸収して売上総利益が同23.0%増加。社内システム開発エンジニアや子会社営業員の増員及び組織体制見直しによる手数料の原販区分の変更等による販管費の増加を吸収して、営業利益は11/3期以来となる10億円超えとなった。経常利益がわずかに減少したのは、公募増資(オーバーアロットメントによる第三者割当増資分含む。以下同じ)に係る費用の発生や支払利息の増加等による。
期末従業員数は前期末に比べて156名増の495名。同社が、エンジニア63名、営業・販促3名を増員(管理2名減)した他、子会社従業員数が92名(このうちNCI社81名)増加した。
 
 
 
(2)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末に比べて74億17百万円増の260億05百万円。借方では、公募増資等(2,910,300株を発行し、27億23百万円を調達)により現預金が増加した他、石狩DC3号棟の建設や同2号棟の増床、及びサーバ・ネットワーク機器投資等で有形固定資産が増加した。借方では、石狩DC3号棟投資にかかる借入金やサーバ・ネットワーク機器等のリースに伴うリース債務が増加した他、公募増資で純資産が増加した。自己資本比率29.3%(前期末23.8%)。
 
 
公募増資で調達した資金の使途は、AI等分野向けサーバサービス(高火力コンピューティング)に係る設備投資23億11百万円、IoT分野のモジュールに係る運転資金への充当2億54百万円、ネットワーク機器等の設備投資1億58百万円。
また、公募増資と共に、双日(株)が売出しを行い、直接保有比率が40.2%(間接保有12.9%比率と合わせた保有比率53.2%)から28.1%(間接保有はなくなった)に低下し、さくらインターネット(株)との関係が親会社からその他関係会社に異動した。資本関係は希薄化されるが、両社の関係は良好であり、業務提携関係は継続していく考え。
 
 
税金等調整前当期純利益(7億96百万円)や減価償却費(15億98百万円)等で18億52百万円の営業CFを確保した。一方、投資CFは、石狩DC3号棟建設及び2号棟増床や第3四半期に受注したスーパーコンピュータ案件(後述)の機材購入等で、営業CFの黒字を上回る54億10百万円のマイナス。公募増資及び借入で資金を賄った。
尚、石狩DC3号棟の投資金額は43億円。1号棟の500ラック、2号棟の600ラックに対し、3号棟は1,924ラック。ラックは夏以降の増設となるため、第4四半期は建物の減価償却費のみが計上された。
 
 
※ スーパーコンピュータ案件
第3四半期に受注したスーパーコンピュータ案件とは、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と先端素材高速開発技術研究組合(Hi-Mat)が共同運営するスーパーコンピューターシステムの受注の事。産総研・Hi-Matが共同運営する「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」向けスーパーコンピューターシステムに高火力コンピューティング基盤が採用された。

スーパーコンピューターシステムにおいても、「顧客所有からサービス利用へ」と意識やニーズが変化している事に加え、石狩DCのエネルギー効率の高さも訴求ポイントとなり、受注に成功した。2017年4月に1,024台のサーバの提供を開始し、売上規模は5年総額で約21億円。提供規模は合計32,768コア、総理論演算性能は約1.153ペタフロップス(PFLOPS)。ペタフロップス(PFLOPS)とは、コンピュータの処理能力の単位。Petaは1000兆(10の15乗)であり、毎秒1000兆回の浮動小数点演算ができる事を表す。
 
 
第4四半期は減価償却費・リース料の増加や大阪本社移転費用の計上に加え、NCI社の子会社化もあり、営業費用が増加
連結したNCI社の寄与(売上高約5億円)に加え、高火力コンピューティングの初期費用売上の計上や機材販売の増加で売上高が40億72百万円と第3四半期比21.0%増加した。連結売上高のうち、6億54百万円は子会社の売上高である(第3四半期の子会社売上高は1億02百万円)。
一方、利益面では、販売用機材の増加やエンジニアの増員等による売上原価の増加で売上総利益率が低下する中、人件費の増加や大阪本社移転費用(仲介手数料、賃料)の計上等による販管費の増加が負担となり、営業利益が1億94百万円と同17.4%減少。公募増資にかかる費用の計上で営業外費用も増加した。
 
 
第4四半期は、ハウジング、専用サーバ、VPS・クラウド、及びその他にNCI社の売上が上乗せされている。もっとも、VPS・クラウドはNCI社の寄与にかかわらず順調に売上を伸ばしており(2016年11月に20百万円/月の大口顧客の解約があったが、2017年2月には、この穴を埋めた)、専用サーバについても、既存の専用サーバ、高火力コンピューティング共に売上が増加した。
 
 
 
第4四半期はスーパーコンピュータ案件機器購入等の設備投資を行う一方、公募増資及びスーパーコンピュータ案件用借入を実施。
 
 
 
 
 
2018年3月期業績予想
 
 
前期比38.2%の増収、同3.1%の営業増益予想
売上高は前期比38.2%増の193億円。市場拡大を追い風にVPS・クラウドの高い成長が続く中、高火力コンピューティングの売上が増加する他、4月には「さくらのIoT Platform(sakura.io)」の正式版の提供(課金)が始まる。また、前期の第4四半期に連結したNCI社が通期で寄与する(年商20億円程度の事業規模)。
営業利益は同3.1%増の10億50百万円。石狩DC3号棟の減価償却の本格化やサーバ・ネットワーク機器の増加による減価償却費・リース料の増加、IoTモジュールの原価・販売手数料の計上、前期の増員・平均給与引き上げによる人件費増、大阪本社移転、更には期初からのNCI社の売上原価及び販管費の発生もあり、営業費用が182億50百万円と同41.0%増加する見込み。

設備投資は57億円を計画。内訳は、データセンター16億円(石狩1-2号棟5億円、同3号棟3億円、その他設備8億円)、サーバ・ネットワーク機器35億円、IoT関連1億円(この他、モジュール等の仕入約10憶円)、事務関連3億円、その他(システム等)2億円。
 
 
ハウジングが微減から横ばいの推移にとどまるものの、IoT関連(約15億円増)やセキュリティ商材を中心にその他の売上が前期比2.1倍に拡大する他、高火力コンピューティング(約5.5億円増)の寄与に加え、既存サービスも増収トレンドにある専用サーバが同23.0%増加。また、VPS・クラウドが市場拡大を背景に同32.2%増と伸びる他、継続的な機能追加でレンタルサーバの売上も同10.4%増加する見込み。子会社では、前期の第4四半期に連結したNCI社が通期で寄与する。
 
 
(2)18/3期の取り組みと成長イメージ
成長に向けた同社の基本方針は、成長する環境に身を置き、成長する分野に集中投資する事。同社の資料によると、同社が事業領域とする国内データセンター専業事業者市場は2015年から2020年にかけて年率16.8%の成長が期待でき(調査会社調べ)、また、新たに取り組みを開始したIoTやAIの分野は、2020年にインターネットにつながるモノの数が530億個(IoT)に、世界のデジタルデータ量が2010年の40倍に、それぞれ拡大し、2025年にはコンピュータの性能が人間の脳をシミュレーションできるほどに高まると言う(総務省「平成26年版・27年版情報通信白書」)。

この結果、全ての分野・産業でデータを核としたビジネスモデルの変化が予想され、その際、あらゆる産業で増大するデータの受け皿となるのがデータセンターである。同社は、IoT・AI分野への集中投資、インフラとなる石狩DCへの集中投資、パフォーマンス最大化のための人材投資、更には成長企業の取り込み(M&A)によるグループシナジーの創出に取り組む事で成長につなげていく考え。
 
成長分野への投資 :IoT
同社のIoTサービスである「さくらのIoT Platform(sakura.io)」がターゲットとするのは、生産性改善や効率化を目的とした工業分野のIoT(狭義IoT)領域ではなく、商業やコンシューマ等の広義のIoT領域である。総務省「平成28年度版情報通信白書」によると、コンシューマ分野のデバイス数は、2015年現在で既に50億個に達し、2020年までの5年間で年率15%以上の成長が見込まれる。「コンシューマ分野の需要は、工業分野と異なり、変動が激しいが、確実に広がっていく(低単価だが母数が大きい)」と言うのが同社の考えだ。
 
特徴  「つなぐ」、「ためる」、「活用する」を、One Stop・低価格で提供する「さくらのIoT Platform(sakura.io)」
同社のIoTサービスである「さくらのIoT Platform(sakura.io)」は通信ができるプラットフォームである。具体的には、データを送受信するための通信環境(通信モジュール、通信インフラ)とデータの保存及び処理に必要なシステムをOne Stopで提供するもので、IoTの活用に際して開発負担が重い通信とデータ連携をカバーしている事が強みである。言い換えると、「つなぐ」、「ためる」、「活用する」を、ワンストップ・低価格で提供できる。
当面は蓄積されたデータはクローズとするが、長期的には、“データ取引所”のような取引を収益化する仕組みを構築し、ユーザー間で自由にデータ取引ができるようにしたいと考えている(データのオープン化)。
 
料金  通信モジュール1台に付き月額60円
2016年4月に開始した「さくらのIoT Platform α」、これを引き継いで同年11月から開始した「さくらのIoT Platform β」を経て、2017年4月に正式版のサービスが開始された。料金(税別)は、通信に必要な通信モジュール(1台8,000円)を購入する必要があるが、プラットフォーム利用料金(LTEネットワークに接続)は通信モジュール1台に付き月額60円と極めて安価。この他、データ保存料金(ライトプラン:月額50円)が必要となるが、現在は無償提供中である。携帯キャリア(MNO)の場合、スマートフォンによるLTEネットワークへの接続料は月額数千円と高額。仮想移動体通信事業者(MVNO)の一部では、少量のデータ通信であれば同数百円程度の利用料で済むケースがあるが、同数百円でも数十億単位のデバイス接続を想定するIoTでは負担が大きい。同社のサービスは、「多くの通信をプラットフォーマーとして支えていく」と言う考えの下、機能や通信容量が限られるが、数多くのデバイス接続が可能だ。
 
強みを活かし、パートナーと共に顧客の事業化、拡販を加速
デバイス開発、サービス開発、セールスチャンネルでパートナーシップを組み、各パートナーとの連携を強化して顧客の事業を支援していく。この4月には、(株)jig.jp(福井県鯖江市)と、福井県鯖江市の「つつじバス」のバス乗降者データの可視化システムを共同開発した(同社がデータ通信のための「さくらのIoT Platform β」を提供)。「つつじバス」は既にバスの運行管理システムを運用しているが、既存のシステムに新たな機能を組み込む際の開発コスト負担は大きい。このため、新たに乗降者データの可視化システムを開発した訳だが、「さくらのIoT Platform」を利用する事で極めて低コストでシステムを構築できたと言う。
 
成長分野への投資 :高火力コンピューティング
高火力コンピューティングのターゲットは、膨大なデータを大量の計算資源を使って処理する分野。具体的には、AI・機械学習、計測分析、映像編集といった分野であり、いずれの分野も高性能なコンピュータを大量に必要とする。このため、「速い、安い、落ちない、すぐ手に入る」と言う同社の強みをいかんなく発揮できる。しかも、こうした分野での取り組みは、ゲームやアプリ等のIT企業から、大学・公的研究機関等の文教分野や非IT企業にも広がっている。某大ヒット映画(映像編集)での同社の実績は今さら説明するまでもないが、この他にも、既に説明した産総研・Hi-Matが共同運営する「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」(文教分野)や三井住友海上火災保険(株)の損害車両画像から修理費の見積りを自動算出するプログラム等の開発向けにも高火力コンピューティングを提供している。
 
スタートアップ支援の強化
同社は、インフラリソースやノウハウ等の提供、或いはサービスの共同開発等を通して新たなビジネスを創出し共に成長するべく、起業家、サービス開発者、学生等(=スタートアップ)を支援している。この一環として、2017年2月にスタートアップが活発な福岡に拠点を開設し、4月には福岡市、福岡地所(株)、(株)アパマンショップホールディングスとの共同事業として、官民共働型スタートアップ支援施設「FUKUOKA growth next」を開設した。
 
【成長イメージ】
既存分野と新たな成長分野の両輪で成長を実現していく考え。既存分野とは、レンタルサーバや専用サーバ等の安定成長分野であり、これをベースに今後の成長分野と位置付けているVPS・クラウドで売上の上積みを図る。そして、中長期では新たな取り組み分野であるIoT・AI等で売上を伸ばしていく考え。更にその先には、データ取引所等、データへのアクセスに不可欠なプラットフォーマーをイメージしている。
 
 
(NCI社は、2017年5月に社名をアイティーエム株式会社に変更している。)
 
 
今後の注目点
「更なる成長に向けた経営資源(「ヒト」、「モノ」、「カネ」)の確保に目途がついた」と言うのが、創業20周年を迎えての田中社長の感想。「ヒト」の確保については、3期ほど前から働きやすさの改善に取り組むと共に採用を強化してきた。働きやすい環境を整備し離職の起こりにくい職場にする事が長期的に重要であるとの観点から取り組みを進めてきたが、離職の起こりにくい環境は社員の紹介による採用にもつながり、ロイヤリティの高い人材の採用につながっていると言う。「モノ」の面では、石狩データセンター3号棟が竣工した。石狩データセンターの消費電力は都内にある同社データセンターの50%と言う。IoTやAI等の分野では大量のデータを高速で処理する必要があるため、今後、速いコンピュータを安価な料金で利用できる石狩データセンターが存在感を高めていくものと思われる。また、好不況の波の中で淘汰・再編を繰り返してきたデータセンター業界だが、企業が絞られてきた事で、最近では淘汰・再編の話題が減ってきた。同社にとっては、残存者利益を享受して成長につなげるチャンスである。この3月には、成長に必要な資金(「カネ」)の調達も完了した。
17/3期は15.5%の増収ながら、営業利益は4.3%の増加にとどまり、18/3期も売上高が38.2%増と伸びる中で、営業利益は3.1%の増加にとどまる見込み。しかし、同社は引き続き売上高の成長を重点課題として先行投資を継続していく考え。IoTやAI等の分野は2020年までが勝負と言われており、この間にIoTやAIのインフラとしてデファクトスタンダードのポジションを確立するべく、アクセルを踏み込んでいく。もっとも、18/3期は増益率が低いとは言え、4期連続の営業増益が見込まれる。同社は売上高の成長を重点課題としつつも、利益を伸ばし確実に配当を実施していく考えだ。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書        更新日:2016年6月27日
基本的な考え方
当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方は、当社が企業規模を拡大していくのに並行して、経営管理組織の整備を推進し、各部門の効率的・組織的な運営及び内部統制の充実を図ることであり、その基本姿勢を基に現在まで努力してまいりました。特に、インターネット業界は、目に見えない多数の利用者に対して通信施設を開放しており、世界中のインターネット利用者を市場として成立している事業でありますので、他業界以上の大きな社会的責任を背負っております。当社におけるコーポレート・ガバナンスの確立は、このような社会的責任を果たしていくことを可能にする経営基盤であると考えております。
 
<実施しない主な原則とその理由>
原則4-9 独立社外取締役の独立性判断基準及び資質
株主総会招集通知、有価証券報告書及びコーポレート・ガバナンス報告書に記載しております。今後選任基準を策定することを検討いたします。
 
<開示している主な原則>
原則1-7 関連当事者間の取引
関連当事者との取引については、少数株主の利益保護のため、関連当事者以外と取引を行う場合と同様、当社の社内諸規程に基づいて取引の可否を決定しております。なお、関連当事者との取引については、より慎重に判断を行うためにその取引金額の多寡に関わらず、取引内容についてその取引の合理性や取引条件の妥当性等の検証を行い、その結果を取締役会に報告し、取締役会において十分に審議しており、少数株主の利益を害することとならないよう体制を整えております。
 
原則3-1 情報開示の充実
(1)企業理念、経営戦略、経営計画
   企業理念や中期的な目標をホームページや説明会資料にて開示しております。
    企業理念  :https://www.sakura.ad.jp/corporate/corp/ideology.html
    説明会資料 :https://www.sakura.ad.jp/ir/library.html
(2)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方について
   本報告書 I.1の「基本的な考え方」に記載しております。
 
原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針
当社は、取締役(CFO)をIR担当取締役とするとともに、経理財務部にIR担当者を配置しております。株主や投資家に対しては、四半期毎に決算説明会を開催しております。決算説明会の資料及び説明会の動画を弊社ホームページに掲載することにより、個人投資家に向け当社に対する理解度向上に向けた取り組みを行っております。
株主との対話(面談)の対応は、経理財務部のIR担当者が行っております。また、株主の希望や面談を行う株主の株式数に応じて、社長や取締役(CFO)が面談に対応しております。
なお、対話を通じた株主からの意見については、適時開示担当部署が集約し、経営陣に共有する仕組みを構築しております。投資家との対話の際は、当社の持続的成長、中長期における企業価値向上に関わる事項を対話のテーマとすることにより、インサイダーの情報の管理に留意しております。
 
 
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
このレポートは当社が信頼できると判断した情報源(当該発行会社が作成した会社説明資料等)の情報に基づき作成したものですが、その正確性について当社が保証するものではなく、また当資料の一部また全部を利用することにより生じたいかなる損失・損害についても当社は責任を負いません。
本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあります。また本資料の内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。
投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。
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