ブリッジレポート
(6826:東証1部) 本多通信工業 企業HP
佐谷 紳一郎 社長
佐谷 紳一郎 社長

【ブリッジレポート vol.14】2017年3月期業績レポート
取材概要「前回のレポートで「売上、利益共に第4四半期でどれだけ上積みを図れるかに注目したい。」と書いたが、第3四半期までの減収減益から一転、増収増益・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年6月6日掲載
企業基本情報
企業名
本多通信工業株式会社
社長
佐谷 紳一郎
所在地
東京都品川区北品川5-9-11 大崎MTビル
事業内容
コネクタ中心。通信やFAなどの産業機器向けで長年培ったコア技術を自動車や医療機器向けなどに展開。パナソニックと提携、生産の半分は中国
決算期
3月末日
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 17,205 1,425 1,476 1,542
2016年3月 17,119 1,301 1,237 1,364
2015年3月 16,639 1,415 1,565 1,440
2014年3月 14,824 932 975 1,479
株式情報(5/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,420円 12,051,036株 17,112百万円 15.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
27.00円 1.9% 91.27円 15.6倍 903.56円 1.6倍
※株価は5/25終値。発行済株式数、BPSは直近期決算短信より。ROEは前期実績。
 
本多通信工業の2017年3月決算概要、佐谷社長へのインタビューなどをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
通信インフラ、FA機器、民生機器、車載用途向けの電気コネクタおよび光コネクタの製造販売を行う。「Segments No.1」を掲げ、特定分野での高い競争力を追求している。長い歴史の中で培われた幅広い設計技術力、産業用機器向けで培った長期信頼性と堅牢性に関するノウハウ、多品種少量生産体制などが特長。子会社ではソフトウエア開発なども手掛けている。グループ認知度の向上に向けて、複数存在していたブランドを「HTK」に統一。グループは同社と連結子会社7社(国内2社、海外6社)の計9社で構成されている。(2017年3月末現在)
 
【沿革】
1932年5月に精密ねじ加工業として現在の東京都目黒区で創業。第二次大戦後は、日本電信電話公社(現NTT)の電話交換機用プラグ・ジャック、防衛庁向けプラグ・ジャックを始め、その発展形となるコネクタの製造販売を手掛け、業容を拡大。2001年に東証2部に上場した。だが、ITバブル崩壊で売上が急減。数度のリストラクチャリングを経て、成長路線への復帰と拡大発展をめざし、2008年に松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)と資本業務提携契約を締結。2014年2月、約80年に亘って本社を置いていた目黒から品川区へ本社を移転した。
2016年3月、東証1部に上場した。
 
【経営理念など】
特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事をめざし、「Segments No.1」を掲げている。
また、新中期経営計画「GC20」策定に際し、グループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。
豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。
 
【佐谷 紳一郎社長プロフィール】
佐谷紳一郎社長は1957年11月生まれの現在59才。松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)では事業戦略企画部門に在籍し、M&Aや他社とのアライアンス締結等に長年に亘り携わってきた。そうした中、コネクタ事業のアライアンス先として幅広い技術力・製品ラインアップを有する企業を調査している中、本多通信工業の実力に着目し、アライアンスを推進、2008年資本業務提携を実現させた。同年、取締役就任。2009年にはパナソニック電工を退社し、同社副社長に就任。2010年4月に同社社長に就任した。社長就任後は中期経営計画「Plan 80」を策定・実行。基本戦略として「Segments No.1」を設定し、複数のニッチ分野でNo.1となることを目指すと共に、様々な構造改革を断行し、黒字体質の確立、財務基盤の安定化を実現した。中期経営計画「DD15」で事業拡大と体質強化を進めた現在は、良い会社(Good Company)かつ過去最高業績更新をターゲットとする新中期経営計画「GC20」を推進中で、ワンランク上の企業作りに取り組んでいる。
 
【事業内容】
事業セグメントはコネクタ事業と情報システム事業の2つ。
 
 
◎コネクタ事業
<コネクタとは?>
電子回路や光通信において配線基板同士を接続し、電気や信号を繋ぐために用いられる部品・器具のこと。基板をはんだ付けや圧着で接続した場合、分断時にはケーブル切断等が必要になり再接続は困難となるが、コネクタを使用した場合、手または簡易的な工具を用いて容易に繰り返し脱着することが可能であるため、ほぼ全ての電子機器で使用される。
 
<利用分野>
長年の経験で培われた高い技術力により、以下の6分野を中心に付加価値の高く、顧客志向のコネクタを始めとした製品をラインアップしている。
 
 
2017年3月期の分野別売上構成比率(全売上高に対する構成比)は、車載分野35%、FA分野19%、通信分野17%、民生分野11%となっている。
最も構成比の高いで車載分野において、安全性や運転性能向上の観点から車載カメラやセンサの搭載台数が増加しているカーエレクトロニクスの成長に対応して投資や製品開発を進めている。
 
◎情報システム事業
通信分野でのソフトウエアの重要性が高まる中、1983年に事業をスタート。
システム開発から保守運用まで幅広いソリューションを展開している。なかでも仮想化(*)サーバの構築では業界屈指の技術を有し、クラウドコンピューティングの広がりに貢献している。
世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れている。
 
*仮想化とは?:1台のサーバ(物理サーバ)を複数台の仮想的なサーバ(仮想化サーバ)に分割して利用する仕組み。それぞれの仮想化サーバではOSやアプリケーションを実行させることができ、あたかも独立したコンピュータのように使用することが可能となる。
サーバ台数の適正化や消費電力を含めた運用管理コストの低減など、企業のITコスト見直しニーズに対応し、注目が集まっている。
また、仮想化環境下ではハードウェア等を新たに購入しなくても新サーバを容易に追加することができるため、ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応するというITシステムニーズに対する有効なソリューションの一つとなっている。
 
【特徴と強み】
① 幅広い設計技術力
前述のように、同社のコネクタは、様々な分野で用いられている。
同社は、日本電信電話公社(現NTT)を始めとした多くの顧客からの様々なニーズに対応したカスタマイズによる製品作りに長年取り組んできた。この「顧客密着度の高さ」が、同社の幅広い設計技術力の源泉である。
 
② 長期信頼性と堅牢性
制御装置に用いられる「1.27mmピッチコネクタ」、FTTH(Fiber To The Home:光通信のための光ファイバーを家屋内に引き込むこと)に用いられる「シャッター付きSC形プラグ」、プロジェクタに用いられる「高耐圧電源用コネクタ」などで強みを持っている。
これらは、顧客から長期信頼性や堅牢性が求められる分野であり、長年に亘って培ってきた同社の技術力や製造能力が顧客に高く評価されている証となっている。こうした強みを活かし、安全性という面でハードルの高い車載分野での売上を大きく伸ばしている。
 
③ 多品種少量生産
同社は現在約4,000品目のコネクタを生産しているが、このうちの月間生産個数が1万個未満の品目数は94%を占める。また生産金額ベースでも1万個未満の生産が62%、1万個以上が38%と、多品種少量生産が同社の特長となっている。
こうした状況に対応し、国内工場、海外工場の2つの車輪で最適なものづくりを行っている。
国内工場(安曇野工場:旧松本工場)は1万個未満の多品種少量生産の拠点。今後も同社の得意技を磨き、迅速な納入を行うため国内で稼動を続ける。
海外工場(深圳工場)は1万個以上の中量品の一気通貫生産を行い、機動力を高め世界で戦うための拠点とする。

一方、多品種少量生産ながらも短納期を実現させ、顧客から発注を受けたら1週間以内での製品配送を確約する「1weekデリバリーサービス」に2013年から積極的に取組んでいる。
現在の取扱品目数はシステム化を進めた安曇野物流ハブの完成によりそれまでの倍にあたる約1,000品目に拡大している。
 
 
2017年3月期のROEは前期を上回り15.0%となった。総資産回転率、レバレッジは低下したがマージンが改善した。
2020年に向けた目標とする経営指標に「ROE 13%以上」を掲げている。
原価低減や新製品開発によるマージンの向上に加え、在庫水準のコントロールによる総資産回転率の向上にも取組んでいく考えだ。
 
 
2017年3月期決算概要
 
 
下期回復で増収増益。修正計画を大きく上回る。
売上高は前期比0.5%増の172億5百万円。営業利益は同9.5%増の14億25百万円。
車載分野の商流変更と円高が進行した第1四半期(4−6月)の影響により第3四半期までは減収減益であったが、その後の円安効果、車載分野の増販、FA分野の回復、体質強化で売上、利益ともに反転し、増収増益となった。
当期純利益は繰延税金資産の計上により上場来最高となった。
売上高、営業利益共にITバブル以降の最高を記録した。
売上高、利益共に修正予想を上回り、利益は期初予想も上回った。
 
 
*FA
第3四半期までは減収だったが、中国版インダストリー4.0と言われる「中国製造2025」による自動化投資の恩恵を受けたほか、FAコンポーネント向けも好調に推移し、通期では増収となった。
 
*通信
国内FTTH向け在庫調整が終了し反転に向かったが減収となった。
 
*民生
中国監視カメラ向け需要が増加しているが、減収となった。
 
*車載
車載カメラ用が続伸。年間1,000万個生産を突破した。数量ベースでは2桁成長となった。
 
*情報システム
クラウドなど新たな運用系案件や大型案件により増収となった。
 
 
現預金、売上債権、たな卸資産の増加で流動資産は前期末比14億87百万円増加。有形固定資産は減少したが、投資その他の資産が増加し固定資産は同1億17百万円増加し、資産合計は同16億5百万円増加の149億13百万円となった。
仕入債務の増加、長期借入金の減少等で負債合計は同4億10百万円増加し40億23百万円。
利益剰余金の増加で純資産は同11億95百万円増加し、108億90百万円となった。
この結果、自己資本比率は前期末比0.2%上昇し、73.0%となった。
 
 
たな卸資産の増加などで営業CFのプラス幅は縮小。固定資産の取得による支出の減少で投資CFのマイナス幅は縮小し、フリーCFのプラス幅は拡大した。
配当金支払額の増加で財務CFのマイナス幅は拡大。
キャッシュポジションは上昇した。
 
(4)トピックス
◎株主還元方針を改定
同社は以前より全てのステークホルダーとの強固な信頼関係の構築に注力しているが、株主還元の充実を目的として基本方針を以下のように変更した。(リリース:2017年4月27日)
 
 
◎自己株式取得を実施
株主還元方針の改定と同時に、新しい株主還元方針の下、自己株式の取得をリリースした。
 
取得する普通株式の上限:15万株(自己株式を除く発行済株式総数に対する割合:1.24%)
取得価額の上限:1億5,000万円
取得期間:2017年5月12日から2017年10月31日まで
株式の取得方法:東京証券取引所における市場買付
 
取得した自己株式は、M&Aおよび取締役等に対する株式報酬制度で活用する。
 
◎コーポレートガバナンスについての取り組み
①社外取締役2名体制へ
2017年6月26日開催の定時株主総会において新たに花澤 隆氏を社外取締役として選任する予定だ。
花澤氏は、日本電信電話(株)の取締役を経て、同社の重要なグループ企業、エヌ・ティ・ティ アドバンステクノロジ(株)の代表取締役社長に就任(2016年6月、同社取締役相談役を経て退職)。通信分野での学識と経験により公的機関の委員を歴任してきた。同社では経営および技術面でのアドバイスを期待している。
これにより独立社外取締役は2名体制となる。
 
②役員に対する株式報酬制度の導入
中長期視点での成長戦略や構造改革への果敢な取り組みを促すとともに、企業価値向上への意欲を高めることを目的として役員に対する株式報酬制度を導入することとした。

現在の役員報酬は、職位や職責に応じた基本報酬(64%)と賞与(会社や個人業績に連動した業績連動報酬36%)から成っているが、改定後は、基本報酬(51%)、賞与(29%)に加え、20%の株式報酬を上乗せする。
株式報酬の内訳は今期より10%の譲渡制限付き株式報酬と、他の株式報酬10%から構成される。後者については適切な方式を継続して検討する。
 
 
2018年3月期業績予想
 
 
増収増益を予想
売上高は前期比4.6%増の180億円の予想。引続き車載分野が牽引するほか、FA、情報システムが貢献する。
営業利益は同12.3%増の16億円を計画。設備や人材などへの投資を拡大させるが、増収効果、合理化、生産性向上により吸収し、2桁の増益を見込む。
前期の繰延税金資産計上の反動があるほか、実効税率が上昇し、当期純利益は同28.7%減少の11億円の予想。
配当は9期連続増配の27.00円/株(前期比1円増)を予定している。予想配当性向は29.5%。
為替の前提は、期中1USD = 108円、期末 104円。(前期実績はそれぞれ、108円、113円)
 
(2)各分野の見通し
各分野の見通しは以下の通り。引き続き、FA、車載、情報システムが上向き。通信、民生は横這い。
 
 
今後の取り組み
 
中期計画GC20における「仕込みのSeason1」の最終年度となる今期、全てのステークホルダーからの信頼と期待の下で持続的に成長することができる「良い会社」を目指して、「①事業面における成長力改革」および「②基盤面における働き方改革」の両面での改革に着手する。
 
①事業面での取り組み:成長力改革
事業面では、GC20の目標完遂に拘った積極果敢な事業展開を進めると共に、2032年に迎える創業100周年に向けた長期ビジョンを見据えた着実な第1歩を踏み出す。

同社では、この長期ビジョンを『収益の源泉を「モノづくり」から「コトづくり」へ転換』としている。
つまり、これまでのコネクタの製造・販売やシステム開発の受託に留まらず、同社のコアコンピタンスを磨き上げることを通じて、同社ならではの新たな価値を創造・提供し、顧客満足度を高めて、更なる成長を図るというものだ。
 
 
*業務用コネクタの成長力改革
同社の伝統芸、お家芸とも言える「多品種少量モノづくり」を更に極めてサービス事業に進化させる
ポイントは3つ。
①多品種少量の深耕
高効率化、省人化、極少量化を目指してIoT、3Dプリンタ、AI、ロボットなど新技術を積極的に導入し、取扱品目1000品目の1weekデリバリー、2weekハーネスなどに代表される同社の得意とする「多品種少量生産」を磨き上げる。

②サービスの事業化
コネクタなど電子部品の業界では、品目によっては供給側の事情で生産を中止してしまい、顧客は代替品などで対応せざるを得ないなど、調達に大いに苦労するというケースが散見される。
こうした状況に対し同社は、品目によっては少量であっても長期供給を顧客に約束し、短納期で納品する体制を構築。顧客に新たな付加価値を提供する。

③次世代技術の開発
光分野や電気分野で、産業特化型新製品や新コア技術の導入を進める。

サービス事業化への変革を軸に16年度86億円の売上を、2020年度には115億円まで拡大させる。
それに向け、Season1には少量短納期サービス拡充や物流ハブの建設などの仕込みを行ってきたが、今期は、長期供給保証に向けた基盤構築、少量効率生産への省人化・合理化投資、8K対応アクティブ光コネクタの商品化のために4億円の投資を行う。
 
*車載用コネクタの成長力改革
得意の信頼性技術を深化させ活躍するフィールドを自動車のみならずモビリティ全体へ拡大させる。

カメラ用コネクタの供給力倍増、コスト対応力の強化など「製造力強化」に加え、カメラ用コネクタ顧客の拡大に加え、アジアローカル企業や欧米顧客へのアプローチを強化し「顧客基盤の拡充」を図ると共に、次世代カメラへの採用、カメラ用に留まらないネットワーク用コネクタへの展開、安全性や信頼性技術の深耕による「商品展開」に注力する。

Season1では、タイ販社設立や製造拠点(ラオス)確保などASEANでの事業体制を確立したほか、高速タイプのデジタル商品の開発を進めてきた。
今期は自動化および新製造拠点の設立、イーサネット用新商品開発、品質モニタリングシステムの導入などに4.5億円を投資する。
16年度売上高60億円を2020年度100億円まで引き上げる。
 
*情報システムの成長力改革
「Hybrid Cloud分野」においてはニッチNo.1である仮想化を基盤に、「IoT分野」では創業分野を基盤に、「セキュリティ分野」では映像セキュリティを基盤に、この3分野をニッチNo.1化し、営業利益率10%の利益体質を実現する。

各分野においてニッチNo.1を目指すに当たっては、AIやビッグデータ、ブロックチェーンなど新技術を積極的に取り込むと共に、生産性向上にも取組む。
Season1においては高付加価値ソリューション提供により営業利益率は5.2%から6.4%に1%以上上昇させることができた。
今期は、新技術取得、積極的な人材採用(新卒もキャリアも)、残業上限の設定など働き方改革に向け0.5億円を投資し、16年度26億円の売上、6.4%の営業利益率に対し、2020年度売上高35億円、営業利益率10%の実現を目指す。
 
②基盤面での取り組み:働き方改革
持続的な成長が可能な「良い会社」を目指し、人事制度改正と生産性向上に取り組む。
 
 
 
 
佐谷社長に聞く
 
佐谷社長に、今後の取り組みにおける「業務用コネクタおよび車載用コネクタの成長力改革」のポイント、人材育成の取り組みなどについてお話を伺った。
 
Q:「業務用コネクタにおける成長力改革の詳細、ポイントは何でしょう?」
A:「最大の強みである多品種少量生産に更に磨きをかけて高付加価値を与え、収益性を向上させるとともに競争優位性をより強固なものにする。」
 
当社最大の強みである多品種少量生産に更に磨きをかけて業務用コネクタに高い付加価値を与えることで、当社の競争優位性をより強固なものとすることができると考えている。

コネクタを含む電子部品の業界では、メーカーは通常大口のロットで生産・納品するが、ある程度の期間が経ったら供給側の事情で生産を中止(廃版)する事が良く見られる。
当社でも、今から7年ほど前、業績回復のための構造改革の一環として、製品の絞り込みを進め、売上で10億円相当の品目の生産を中止したことがあった。
実はこの中にはお客様のことを考えれば止めるべきでなかった品目も含まれており、その後お客様には大変迷惑をかけてしまったという自責の念、反省の想いがある。

そこで、全てのステークホルダーとの信頼関係構築を通じた「良い会社」を目指す当社としては、供給者として責任を持って製品をお届けし、お客様に迷惑をかけないことは最も重要な取り組みの一つであり、また当社の独自性を発揮し、競争力の強化にもつながるものであると考え、品目によるが、長期供給をお客様にお約束し、少量でも短期間で納品することを事業化することとした。
つまり、単にコネクタを製造販売するのではなく、長期供給保証付きというサービスを新たな付加価値として提供するものだ。

サービス事業化にあたっては、様々な創意工夫や今までにない発想での取り組みが必須となる。
コネクタ製造のための各種素材を大量に購入し、既存の設備や技術で月産で1万個、100万個のコネクタを生産することは決して難しいことではないが、同じく素材を仕入れて、適切なコストで、5個、10個という少量のコネクタを製造することは極めて難しい。

例えば金型の置き換え。
異なった品目製造のために通常は1日かかる金型の置き換えを1時間で行えるような段取りを工夫したり、あるいは、今設置されている金型に、アダプターの様なパーツを取り付けると別の金型になる「カセット金型」を開発したりする必要がある。
また、少量用のプレス技術や組立プロセスも開発・構築しなければならないし、近年発展著しい3Dプリンターの活用も欠かせない。部品のそのものを3Dプリンターで製造することに加え、金型を3Dプリンターで製造するという事も視野に入れている。
今期以降研究開発などの基盤整備を進め、来期から始まるSeason2にはいくつかの製品シリーズに絞って部分的にでもスタートしたいと考えている。

サービス事業化といっても、その対価をサービス料で受け取るという事ではない。
「長期保証・少量短納期」について、お互いメリットがあると理解し、喜んでいただけるお客様に、様々な創意工夫についての相当の価値を織り込んだ「fair value」でご提供する。
高付加価値製品の供給による収益性の向上と、顧客との関係強化はコネクタ事業の安定・拡大に大きく寄与することになるだろう。
「お客様にとってなくてはならないHTK」を目指していきたい。
 
Q:「車載用コネクタに関してはいかがでしょうか?」
A:「よりハイレベルな安全性要求にしっかりと対応するとともに、モビリティ全体に活躍の場を広げていく。」
 
当社はここ数年で、車載用、中でもカメラ用コネクタの開発を進め、販売数量を大きく伸ばしてきた。
ご存知の様に、自動車部品にはその性格上、極めて高水準の安全性・信頼性が要求されるが、当社の車載用コネクタはそのニーズに十分対応している事はこれまでの実績から明らかだ。

ただこれまで車載カメラはより快適なドライビングをサポートするアクセサリ的な意味合いが強かったが、今後、自動運転技術が本格化する中では、自動車の基本性能である、走る、曲がる、止まるに大きな影響を与える重要保安部品としての位置付けが強まっていくため、要求水準は益々高度化することとなるだろう。

安全性への対応によってこれまでも当社の知見や技術は鍛えられてきたが、その基盤をベースに今後もより一層のレベルアップを目指し、並行して活躍のフィールドを自動車に限らずモビリティ全体に拡大させていく考えだ。

まずはターゲットと考えているのは鉄道分野だ。
部品供給が10年、20年と長期にわたるため安定収益につながり、比較的高い収益性が期待できる。
現在既に蓄電池用コネクタをTier2として納入しているが、車載用コネクタで培った安全性に関する知見や技術を横展開し、鉄道分野でもより安全性が求められる分野で新市場開拓に取り組んでいく。
 
Q:「働き方改革、人創りへの取り組みについてお聞かせください。」
A:「従業員に対し働きやすい環境を提供することは経営としての大きな責務。次世代経営層育成にも取り組んでいる。」
 
重要なステークホルダーである従業員に対し働きやすい環境を提供することは経営としての大きな責務だ。
2017年4月から長時間労働対策を始め、育休制度の多様化など様々な仕組みを導入している。

特に情報システム分野を担っている子会社(株)HTKエンジニアリングは、その業務の性格上、労働時間の管理が大きな課題となっているが、いわば「人」が全ての同社において、今後安定的に優秀な人材を確保・育成していくためには、環境整備が急務となっている。導入にあたり様々難しい面も予想されるが、人手不足が今後ますます進行する中、当社と同時に、同レベルの制度を開始することとした。

人材育成の観点からは、前期よりコーチング能力向上のための幹部育成プログラムをスタートさせた。
次代の当社を担う40代から50代の執行役員や若手取締役など25名を対象に、単なる研修ではなく実際の業績、成果に結び付けるという観点で、「どうやって部下や一緒に仕事に取り組んでいるスタッフの能力を引き出すか?」という課題に取り組んでもらっている。
真の「良い会社」を目指す上では、全階層における人材育成が最重要課題であり、今後もこの分野に対しては積極的な投資を行っていく。
 
 
今後の注目点
前回のレポートで「売上、利益共に第4四半期でどれだけ上積みを図れるかに注目したい。」と書いたが、第3四半期までの減収減益から一転、増収増益で着地した。引き続き好調な車載分野に加え、足下、盛り上がりを見せる設備投資を背景としたFA分野の伸長がその背景だ。短期的には、やや過熱感も感じられる設備投資とFA分野の動向が注目ポイントとなろう。

中期的には、「サービス事業化」の取り組みに期待したい。
同社のコアコンピタンスである多品種少量生産を更に磨き上げた「長期供給保証・少量短納期」は、同社の競争優位性を更に強固なものとするだろう。
実際のスタートはまだ先となるが、顧客の評価を聞いてみたい。
 
 
 
<参考1:中期経営計画「GC20」(前回レポートより)>
 
全てのステークホルダーから信頼と期待をされる「よい会社」であるとともに、過去最高の売上、利益を更新し持続的成長企業へのスケールアップを目指すのが2021年3月期を最終年度とする新中期経営計画「GC20」。
 
(1)基本コンセプト
GC20の基本コンセプトは、『事業戦略として「Segments No.1戦略の深耕」、プラットフォーム戦略として「コンパクト経営の追求」により価値を創造し続けるGood Companyを目指す。』というもの。
また、Good Companyを持続的なものにするのが、グループ企業理念とコーポレートガバナンス基本方針である。
 
(2)グループ企業理念
今回のGC20策定に際し、同社ではグループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。
豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。
 
 
(3)コーポレートガバナンス基本方針
金融庁と東京証券取引所により策定された「コーポレートガバナンス・コード」が2015年6月1日から適用されるのに先立ち、2015年5月22日、「コーポレートガバナンス基本方針」を公表した。
株主を始めとした全てのステークホルダーとの信頼関係構築のためのコーポレートガバナンスの重要性を深く認識したうえで、最良のコーポレートガバナンスを実現することが自社の責務であると宣言している。
 
(4)事業戦略
特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事を目指すのが「Segments No.1戦略」。
これまでも同社では、様々なNo.1商品を生み出してきたが、現在の形ではそれぞれの商品の持続性・継続性は不十分と考えている。

そこで、それぞれのNo.1商品を核に水平展開と次世代化で「Segments No.1 領域」を創り出し、特長のある価値を提供する事で持続的成長を目指していく。




その展開モデルは、現在のSegments No.1商品/サービスを核に、次世代商品やサービスを創出し、顧客の具体的な欲求である「ウォンツ」を解決するというもの。
同社の強みである、スピード、カスタム対応、少量短納期、周辺技術を差異化要因とし、新たな顧客、新たな市場への展開を図る。
 
分野別のSegments No.1 戦略は以下の通りである。
 
①業務用コネクタ Segments No.1 戦略:サービスとの融合戦略で顧客価値を倍化
長年培ってきた堅牢性や長期信頼性というハードの強みに、少量短納期、カスタマイズに加え、コネクタに付随する適切なハーネスもあらかじめ接続するワンストップ受注といった「サービス」を融合させ、顧客満足度を引上げる。
世界的にIoT、4Kや8Kの高画質化ニーズが高まる中、通信分野(海外における光通信化)、FA分野(グローバルな生産性向上ニーズ)、業務分野(セキュリティニーズ)において、堅牢性や長期信頼性といったノウハウの展開や高速POFによる市場創出により、通信分野やFA分野で規模と収益性を堅持する。
 
 
②車載用コネクタ Segments No.1 戦略:ADASコネクタへ進化させ、将来価値を倍化
自動車の安全系機能の進化スピードは目を見張るものがある。
自動車の目となる車載カメラも、パーキングアシストなど「撮る」機能から、ADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)というコンセプトの下、車線検知、歩行者認識、衝突防止といった「測る」機能がより重要になると同時に、各自動車メーカーに限らずGoogleなど大手IT企業も含め、自動運転システムの開発が加速している。

ADASを構成するものは、車載カメラに加え、センサ、ミリ波レーダー(ミリ波帯の電波を用いて100m程度の範囲の状況を探知可能なレーダーシステム)、レーザー、ECU(エンジンコントロールユニット:エンジンの運転制御を電気的な補助装置を用いて行う際に、それらを総合的に制御するマイクロコントローラ)、電子ミラー、カーナビ、HUD(Head Up Display:フロントガラスに運転者向けの基本的な情報の画像を提供する)など、多岐にわたり、その全てがデジタル高速伝送により情報のやり取りが行われ、コネクタの活躍するシーンはますます拡大する。

こうした流れの中、車載カメラ数量は2014年度から2020年度で約3.5倍の14,000万個に、ADAS市場も同期間に2.5倍の7,700億円に急成長すると見られており、同社では高速伝送、小型化などコネクタメーカーならではのノウハウを注入したADAS用コネクタを開発し、急成長市場に投入する。

販売は、北米のTier1(自動車部品メーカーのうち、自動車メーカーに直接納入する一次サプライヤー)メーカーへの参入を狙う。また、製造においては中国、東アジアに次ぐ拠点づくりの検討を開始している。
 
 
③情報システム Segments No.1 戦略:インテグレーションで事業価値を倍化
サーバ効率化のための仮想化において業界屈指の技術を有しており、現在はクラウドコンピューティングの広がりの中、世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れ高付加価値の一括案件の獲得を進めている。今後は、データの収集から分析までを一括して請け負うビッグデータ基盤ソリューションを提供し、特徴あるSegments No.1の獲得を目指す。
成長市場において、企画から運用までフルサポートする総合提案で収益性の向上にも取り組む。
 
 
(4)プラットフォーム戦略:コンパクト経営の追求
以上の様な事業戦略の下で営業利益率の向上を目指す同社だが、繰越欠損が無くなること等から今後の実効法人税率の上昇は避けられず、市場の期待に応える水準のROE、ROAを実現するためには「資産の軽量化/高回転化」、具体的には総資産回転率の引き上げが重要な課題となる。
前期の同回転率は1.39回だったが、以下のような取り組みによって1.4〜1.5の達成を目指す。
 
ROICを意識した事業投資。設備は小型、省スペースおよび転用が可能なものとする。またEMSの活用など、社外リソースとの共創を進める。
ロスや無駄をなくしての生産性向上。製造や業務品質の向上。遊休資産や過剰在庫の極小化に取り組む。
CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮
機動的な資本政策
 
(5)目標とする経営指標
2016年3月期から2018年3月期までの「貯めのSeason1」と、2019年3月期から2021年3月期までの「収穫のSeason2」の2つの期間から構成される「GC20」において、以下のような経営指標の達成を目指している。
 
 
(6)よい会社に向けて
全てのステークホルダーからの信頼と期待の下、組織力と人材力の強化に最注力し、持続的成長を遂げる「よい会社」を目指す。
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
同社は最新のコーポレートガバナンス報告書を2017年4月27日に提出している。
 
 
 
 
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
このレポートは当社が信頼できると判断した情報源(当該発行会社が作成した会社説明資料等)の情報に基づき作成したものですが、その正確性について当社が保証するものではなく、また当資料の一部また全部を利用することにより生じたいかなる損失・損害についても当社は責任を負いません。
本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあります。また本資料の内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。
投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。
Copyright(C) 2017 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved.

« ブリッジレポート:(2714)プラマテルズ vol.24 | ブリッジレポート:(6033)エクストリーム vol.1»

ブリッジレポート(バックナンバー)
アンケート
ブリッジメール
アラート申込み
CLOSE