ブリッジレポート
(3031:東証1部) ラクーン 企業HP
小方 功 社長
小方 功 社長

【ブリッジレポート vol.40】2017年4月期業績レポート
取材概要「小売店数、販売企業数ともに増加しているものの、国内流通額は前年比マイナスとなった。第2四半期から3四半期連続で前年同期を下回った客単価・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年7月11日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ラクーン
社長
小方 功
所在地
東京都中央区日本橋蛎殻町一丁目 14 番 14 号
事業内容
「企業活動を効率化し便利にする」を企業理念に、インターネット上でB to B(企業間電子商取引)市場「スーパーデリバリー」を運営。「売掛債権保証事業」も手掛ける。
決算期
4月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年4月 2,359 420 414 255
2016年4月 2,229 393 367 239
2015年4月 2,056 336 327 201
2014年4月 1,932 247 248 123
2013年4月 1,806 181 176 133
2012年4月 1,613 140 133 109
2011年4月 1,381 125 116 160
株式情報(6/30現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
657円 17,499,362株 11,497百万円 13.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
未定 - 17.14円 38.3倍 108.89円 6.0倍
※株価は6/30終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。ROE、BPSは前期末実績。
 
株式会社ラクーンの2017年4月期決算概要などについて、ご紹介します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
中小企業間の取引を便利でスムーズに行うためのサービスを提供する企業として、インターネット上でB to B(企業間電子商取引)市場である「スーパーデリバリー」というWebサイトを運営している。
「スーパーデリバリー」は、アパレル、雑貨を中心にメーカー、インポーター等の出展企業の取扱う商品を、全国の中小規模小売店に販売している。
2010年11月に売掛債権保証事業を行っている(株)トラスト&グロースを子会社化。これによって中小企業間決済事業を新たな事業ドメインと位置づけし、本格的に取組を開始し、更に2011年10月から、企業間取引を安心かつスムーズにする後払い決済サービス「Paid(ペイド)」の提供を開始している。2014年3月からは、第4番目のサービスとして、受注・発注を一元管理できるクラウド受発注ツール「COREC(コレック)」の提供を開始した。
また、「スーパーデリバリー」の越境EC版となる輸出販売サービス「SD export」を2015年8 月より、ネット完結型売掛保証サービス「URIHO」を2016年8月よりスタートさせた。
 
【経営理念】
経営理念を「企業活動を効率化し便利にする」に刷新した。企業間取引に関し、これまで培ってきた情報と決済に関するノウハウを活かし、企業活動を効率化し便利にする仕組みを今後も提案していくというビジョンを表している。

小方社長は創業後、企業としての方向性をしっかり定め、経営者としてやっていく決意を固めるまでは安易に人を増やすべきではないという考えから従業員を一人も雇用せず、自分一人で同社を運営してきたが、方向性と決意が定まった2000年に初めて正社員30名を採用した。
当時の日本のEC業界は、米国に先例がある訳でもなく、自らがゼロから作り上げていかなければならない黎明期であったが、この最初のメンバーが中心となって、日本のB to B ECを作り上げてきた。
同社においては、EC専門家の彼らが最大の経営資源であると小方社長は考えている。
今後、新しいビジネスモデルを創造していくにあたり、企業領域を明確にしていく必要性があると考え、経営理念を刷新することとした。
重要なポイントは以下の2点。
 
①事業領域の明確化の必要性
既存事業とのシナジーは特に意識しないが、同社のコア・コンピタンスであるノウハウを活用しながら、「中小企業向けB to Bインフラ」であること、「ECと決済の専門知識」を活かすものであること、に事業領域を絞りこむ。
 
②企業間取引のインフラサービス企業としての総合サービス化への転換
存在して当たり前のインフラとなるべく、今回の新サービス「COREC」に続き、第5、第6、第7と制限を設けず、新サービスを提供し続け、これまで以上に、よりインフラサービス業へと進化していく。
 
【事業内容】
「EC事業」、「Paid事業」、「保証事業」の3セグメントで構成されている。
 
(1)「EC事業」
「スーパーデリバリー」はファッション・雑貨業界のメーカーと小売店が出会い、継続して取引を行うことができるB to B(企業間取引)サイトである。サイトを利用することで、これまで取引のできなかったメーカーと小売店に新たな取引機会が生まれ、さらに新商品の紹介や受発注のやりとりも効率化される。また、代金はスーパーデリバリーが小売店から回収し、メーカーへまとめて支払うことから、未回収リスクのない取引の実現が可能となる。

スーパーデリバリーに参加するためには、同社の審査をパスする必要がある。
この点、同業他社の中には「数=取引量の拡大」を最優先とし、ネット小売店を中心に緩い審査基準で加盟店を数多く集める事に注力しているところもあるが、同社の場合は、「質」と「数」のバランスを重視するため小売店に関しては、ネット小売店ではなく、実際に店舗を運営している小売店であるか?などを中心に審査を行っている。
また、サプライヤーに関しても、質の高さを重視している。スーパーデリバリーの立ち上げ当初は質の高い、ブランドを確立したサプライヤーは、他のそうでないサプライヤーと共に並べられるのを嫌がり、参加を拒むケースもあったが、現在では他のサプライヤーの質も高い事が理解され、そうしたことは無くなっている。小売店にとっても、質の高いサプライヤーと取引出来る点が大きなメリットとなっている。
B to C取引と異なり、B to B取引は、取引量を拡大させるためには、リピート取引を如何にして拡大させるかがカギとなるため、マーケットのクオリティ向上が最も重要であると同社は考えており、この点が同業他社との大きな違いの一つとなっている。

また、同社はEC企業ではあるが、他社が、ECのマーケットプレイスを開設・運営するシステム会社という側面が極めて強いのに対し、同社はただ単にそれにとどまらず、アパレル・雑貨を中心とした商品知識、業界知識がきわめて豊富な点も、他社との違いとなっている。
「スーパーデリバリー」の収益は、出展企業から得る出展基本料(月額4万円)、会員小売店から得る小売店月会費(月額2千円)、出展企業からのシステム利用料(会員小売店に卸した商品代金の10%)の3つから成っている。

商品は出展企業が会員小売店に直接配送するが、代金に関しては同社が出展企業の代わりに会員小売店から代金を回収し、出展企業に支払うため、売上高として商品代金を計上し、システム利用料を控除した額を売上原価として計上する総額計上を行っていたが、2015年4月期第1四半期より、売上表示を従来の総額表示から純額表示に変更した。純額表示における売上高は、出展企業から徴収するシステム利用料売上となる。
サービスの種類も増加しておりインフラサービス提供企業としてのポジショニングを明確にすることが目的。またマーケットプレイス事業を手掛ける同業他社との比較も容易になり投資家のメリットも大きいと判断した。

2017年4月末での各種経営指標は、会員小売店数 70,520店舗(前期末比18,148店舗増)、出展企業数1,189社(同51社増)、商材掲載数637,652点(同78,380点増)となっている。

2014年3月には、受注・発注を一元管理できるクラウド受発注ツールサービス「COREC(コレック)」を同事業内でスタートさせた。2017年1月末のユーザー数は9,719社となっている。
また、2015年8月には「スーパーデリバリー」の越境EC版となる輸出販売サービス「SD export」をスタートさせた。
 
(2)Paid事業
「Paid」は企業間取引の非効率な管理プロセスや内在する信用リスクを解消する決済サービス。
Paidを利用することで、バイヤーはすべての加盟企業と締め支払いで取引が可能となり、効率的にかつ運転資金にゆとりを持った取引が実現できる。サプライヤーは登録するバイヤーと代金未回収のリスクや請求督促の手間なく決済ができ、効率的かつ安全で顧客に喜ばれる取引が可能となる。
加盟企業数は2017年4月末には2,200社を超えた。前期(累計)の取扱高は、前期比23.7%増加の165億85百万円(うち、グループ内取引高 68億34百万円)となった。
 
(3)「保証事業」
11年4月期第3四半期から子会社化した(株)トラスト&グロースにおいて行っている事業である。「T&G売掛保証サービス」は、取引先が倒産した場合に、あらかじめ保証を掛けておけば、保証の枠の中で同社が損害分を代わって支払いするサービス。審査に際して、取引先に対する直接的なヒアリングや取引先からの申し込みなどは一切必要がない。独自の与信判断により90%以上の高い承認率を実現し、審査依頼から2営業日程度で回答も得られる。更に、顧客の商習慣に合わせた保証内容のカスタマイズが可能と利便性も高い。
加えて、2016年8月からは、中小企業向けネット完結型の売掛保証サービス「URIHO」をスタートした。
売掛債権保証以外に事業用家賃保証も手掛けており、事業も順調に拡大していることから2017年4月期第2四半期より「売掛債権保証事業」から「保証事業」にセグメントの名称を変更した。
2017年4月末の保証残高は113,49百万円(前期末比24.4%増)となっている。
 
 
「目標とする経営指標」にROEを掲げてはいないものの、ROEを意識した経営を行っている。
Paidの収益化、「COREC」の立ち上がり、またその後の新サービスなど、ITを駆使したサービス拡大の過程でROEはさらに上昇する余地が大きいと会社側は考えている。
 
 
2017年4月期決算概要
 
 
3事業とも増収。販管費増を吸収し増益。
売上高は前期比5.8%増加の23億59百万円。3事業共に増収だった。
営業利益は同6.9%増の4億20百万円。SD export、Paid、URIHOへの広告投資、事業税の税率引き上げ等により、販管費が増加したが保証事業において保証履行額が減少し粗利率が改善した。
EC事業のソフトウエア減損損失32百万円を特別損失に計上したが、当期純利益も増益となった。
計画に対しては売上がやや未達、利益はほぼ計画通りだった。
 
 
◎EC事業
売上高は前期比1.8%増の16億11百万円。営業利益は同0.4%減の2億22百万円。
引き続き質の高い会員小売店及び出展企業を獲得した上で、客単価や稼働率の向上を図り、両者の継続した取引拡大による流通額増加に取り組んでいる。
会員小売店増加策として「民泊物件.com」と業務提携契約を、西武信用金庫とビジネスマッチング契約を締結したほか、「一般社団法人日本ホームステージング協会」との業務連携を開始した。
ただ、従来の会員小売店への流通が伸び悩み、国内流通額は前期比0.5%の減少。

海外流通額(SD exportと日本語版サイトでの海外向け流通額の合算)は同63.3%増。
新たな配送方法として台湾、香港向けに船便程度の料金で利用できる航空便を導入したほか、アジアに特化した化粧品口コミプラットフォーム「COSMERIA」との相互連携を行った。

この結果、「スーパーデリバリー」全体の流通額は前期比2.6%増の98億34百万円となった。

「COREC(コレック)」は、より多くの企業にCORECの全機能を活用してもらうために2016年11月からサプライヤーの有料プランの月額料金を9,800円から1,980円に変更した。期末のユーザー数(サプライヤーとバイヤーの合計)は11,092社となった。
 
◎Paid事業
売上高は前期比21.2%増の4億27百万円。営業利益は同36.9%増の27百万円。
引き続き、加盟企業の獲得増加と獲得した加盟企業の稼働率の向上に取り組んでいる。
今期は今後の成長をより加速するための投資期間と位置づけており、Paidの認知度・知名度の向上および加盟企業数増加のため積極的な広告投資や人員の増加を図っている。
また、サービスの利便性、信頼性の向上を図り、獲得した企業の稼働率の向上のためのシステム投資を行っている。
GMOペイメントゲートウェイ株式会社が提供する「BtoB EC向け決済パッケージ」等、様々なサービスにPaidが導入されたほか、近年増加しているサブスクリプション型(月額、年額など定額の継続課金)のビジネスモデルに対応するサービスとして、請求を自動化できる新プラン「Paid 定額自動請求」の提供を始めた。
加えて、信頼性向上のため情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO27001」を取得した。
2017年4月末の加盟企業数は2,200社を超え、取扱高は同23.7%増の165億85百万円となった。外部取扱高、外部売上高はそれぞれ97億50百万円(同50.8%増)、2億49百万円(同45.3%増)と順調に増加している。
 
◎保証事業
売上高は前期比8.1%増加の7億20百万円。営業利益は同51.2%増の1億68百万円。
売掛債権保証サービスの保証残高は期中伸び悩んだ場面もあったが、使いやすさ向上のために会員サイトの機能及びデザインをリニューアルした他、利用すればするほど利用料金が得になる新プラン「売上保証」の開始等、様々な取り組みにより保証残高は回復した。
事業用家賃保証サービスの保証残高も順調に増加。また、2016年8月よりスタートした中小企業向けネット完結型の売掛保証サービス「URIHO」の保証残高も堅調に拡大した。
この結果、保証残高は前期末比24.4%増の113億49百万円と、初めて100億円を突破した。
保証履行額の減少により原価率が改善し大幅な増益となった。
 
 
現預金の増加などで流動資産は前期末に比べ5億61百万円増加。固定資産は投資その他の資産(投資有価証券)の増加で同35百万円増加し、資産合計は同5億96百万円増加の55億66百万円となった。
買掛金の増加などで負債合計は同4億66百万円増加の36億58百万円となった。
利益剰余金の増加等で純資産は同1億30百万円増加の19億7百万円。
この結果自己資本比率は前期末の35.7%から1.5ポイント低下し34.2%となった。
 
 
利益の増加、減損損失の計上などで営業CFのプラス幅は拡大。投資有価証券の取得による支出により投資CFのマイナス幅は拡大。フリーCFのプラス幅は拡大した。
配当金支払額の増加で財務CFのマイナス幅は拡大した。
キャッシュポジションは上昇した。
 
(4)トピックス
◎取締役会の実効性に関する評価結果を公表
「コーポレートガバナンス・コード」に基づき、取締役会のより一層の機能向上を図ることを目的として、取締役会の実効性について分析・評価を実施し、その結果を公表した。

(分析・評価の方法)
全ての取締役及び監査役に対し、評価の趣旨等を説明したうえで、「取締役会評価に関する質問票」を配布し、得られた回答を基に取締役会において、自己評価結果の分析及び今後の課題について議論した。
 
質問票の主な項目は以下のとおり。
● 取締役会の構成に関する質問
● 取締役会の運営に関する質問
● 取締役会の議題に関する質問
● 取締役会を支える体制に関する質問
 
(分析・評価結果の概要)
質問項目全般にわたり概ね適切であることが確認され、取締役会の実効性は確保できていると評価した。
一方、取締役会の実効性を更に高めるための今後の課題は、以下のとおりであるとの認識が共有された。
● 取締役会の構成について、独立社外取締役の増員及び国籍、性別に対する多様性確保の検討
● 中期経営計画についての議論の活性化
● 事業に影響する主要なリスクについての理解度の向上及び議論の活性化
 
(今後の取り組み)
同社取締役会は今回の分析・評価結果を踏まえ、取り組むべき課題に対応していくとともに、中長期的な課題については、引き続き取締役会で検討していくことで取締役会の更なる実効性の確保を図り、コーポレートガバナンス体制の強化と中長期的な企業価値の向上に努めていく。
 
 
2018年4月期業績予想
 
 
引き続き成長分野への集中投資を実施も、増収・2桁増益。
売上高は前期比8.1%増の25億50百万円の予想。EC事業では海外流通額の拡大、国内流通額の回復を見込んでいる。Paid事業、保証事業は引き続き順調に拡大の予想。
営業利益は同16.4%増の4億90百万円。成長分野としてPaid事業、越境EC「SD export」に保証事業「URIHO」も加え、引き続き広告宣伝費やシステム開発費等を集中的に投下する方針だが、2桁増益を見込んでいる。
配当は現時点では未定。
 
(2)各事業への取り組み
①EC事業
成長余力の大きい海外市場における流通額拡大を図る。
そのためには、継続して「知名度向上」、「仕組み改善」、「商品拡大」への取り組みが必要。
国内流通に関しても、引き続き民泊事業者やホームステージャーなど小売以外の様々な事業者に対し積極的なアピールを推進し、低調な伸びとなっている流通額を拡大させ、成長路線への回帰を目指す。
 
②Paid事業
加盟企業数の増加と稼働率向上による取扱高の増加を目指す。
GMOペイメントゲートウェイ株式会社の「BtoB EC向け決済パッケージ」拡販のための営業連携を強化するほか、既存提携先との関係強化にも取り組む。
また、「Paid 定額自動請求」を積極的にプロモーションする。
 
③保証事業
「URIHO」についてはターゲット企業に対する効果的なマーケティング活動を実施し、クライアント数を増加させる。
順調に拡大している事業用家賃保証も積極的なセールスを展開する。
 
 
今後の注目点
小売店数、販売企業数ともに増加しているものの、国内流通額は前年比マイナスとなった。第2四半期から3四半期連続で前年同期を下回った客単価の低迷がその主たる要因のようだ。会社側は今期の回復を見込んでおり、主力事業であるだけに短期的にはその動向が注目される。
一方、「SD export」はEC事業に占める割合はまだ10%未満ということで本格的寄与はまだ少し先ではあるが、商品流通がアジア圏以外にも広がりつつあり、拡大スピードはさらに上昇することとなろう。
Paid、COREC、SD export、URIHOとシンプルでありながらも誰も手を付けていなかった大きなマーケットを対象とした革新的なサービスを継続的に生み出し続ける同社の次の一手に注目したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2016年7月25日
 
 
 
 
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
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