ブリッジレポート
(6552) 株式会社GameWith

スタンダード

ブリッジレポート:(6552)GameWith vol.1

(6552:東証マザーズ) GameWith 企業HP
今泉 卓也 社長
今泉 卓也 社長

【ブリッジレポート vol.1】会社概要および2017年5月期業績レポート
取材概要「会社設立から4年でのスピード上場となったが、この間、同社はゲーム情報の専門メディアとしての信頼度を高め、より多くの利用者に活用されるよう・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年9月12日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社GameWith
社長
今泉 卓也
所在地
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
決算期
5月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年5月 1,581 657 654 465
2016年5月 994 330 329 220
2015年5月 389 127 124 94
株式情報(9/8現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,795円 8,200,000株 22,919百万円 39.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 64.11円 43.6倍 173.83円 16.1倍
※株価は9/08終値。
 
2017年6月30日に東証マザーズに株式を上場したGameWithの会社概要と2017年5月期決算の概要及び2018年5月期の見通しについて、今泉社長のインタビューと共にブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ゲーム情報メディア「GameWith」の運営・管理を行うメディア事業を展開。「GameWith」はゲーム攻略情報、ゲームのレビュー、コミュニティ機能、及び動画配信等のコンテンツを提供。ゲームに必要な記事や機能を提供する事でユーザーを集客し、広告枠を広告主に提供する事で収益をあげている。
 
【沿革】
2013年、マンションの一室でスタート。ブラウザからアプリへと、ゲームを楽しむ環境が変わり、スマホゲーム自体の内容が高度化する中、ゲームの攻略情報のニーズが高まりつつあった事が起業の背景にある。「本当に知りたいゲームの情報を得られる場所が存在すればもっとゲームを楽しむ事ができる」という想いから、同年6月にゲーム情報サイトの運営を目的とする(株)GameWithを設立。同年9月にゲーム情報メディア「GameWith」をリリースした。当初はゲームの攻略情報を中心にユーザー同士が分からない事を質問しあうQ&Aサイトだったが、2014年5月に攻略記事の本格的な作成体制を構築。これを契機にページビューが急増した。その後、2015年9月にゲームレビューを開始し、2016年9月にゲーム攻略等の動画実況に係る広告事業を開始。2017年3月にはコミュニティ機能の提供も開始している。
会社設立から4年後の2017年6月に東証マザーズに株式を上場した。
 
 
【事業内容 - ゲームユーザーとゲーム会社の間に立って、両者にとって必要なものを事業化 -】
ゲーム情報メディア「GameWith」を通してゲームに必要な記事や機能を提供する事でユーザーを集客すると共に、広告枠を広告主に提供する事で収益化している。インターネット広告市場は高い成長を続けており、またスマートフォンにおける広告市場も高い成長が続いている。
 
 
ゲーム情報メディア「GameWith」の主なコンテンツ
「GameWith」の主なコンテンツは、ゲームを有利に進めるための情報を提供する「ゲーム攻略」、ゲームを見つけるための情報を提供する「ゲームレビュー」、ゲームユーザー同士で交流できる機能を提供する「コミュニティ」、専属のゲームタレントがYouTube等で動画を配信する「動画配信」の4つ。ゲーム攻略情報で集客したユーザーをゲームレビュー等の各サービスへ循環させる事で、相乗効果を生み出している。
 
ゲーム攻略
主にスマートフォンゲーム等の攻略情報に関する記事を提供している。人気ゲームの上位ランカーをライターとして採用・教育し、組織的に記事作成を行う事で、イベントに素早く対応し、正確な記事を高頻度で更新する仕組みを構築。ゲーム内でのイベントやアップデー卜に合わせて夕イムリーに記事を提供している。

同社に所属するライターがゲーム夕イ卜ル毎にプロジェクトチームを編成し、実際にゲームを攻略して記事を作成。ゲームに特化したライターが複数人で記事を作成する事で質の高いゲーム攻略情報の提供を可能にしている。それぞれのゲームの上位ランカーの中でも、トップ0.1%に入るゲーマーを厳選採用し、入社後はそのゲーマーを教育・研修、マニュアル、記事作成ツール、分業化等、整備された社内体制の下で、ライターとして育成していく。
新しいゲームがリリースされると、需要がピークアウトしてきたゲームのライターがアサインされるが、もともとゲームの素養が高い人材のため、新しいゲームでも高いパフォーマンスを示してくれるという。

また、2014年5月には、同社が作成した攻略情報に対して一般ユーザーから募った意見や間違いの指摘を反映させるべく、ゲーマーのためのクラウドソーシング「GameWorks」を開始。より正確性の高いゲーム攻略情報の提供を目的としている。この他、2016年5月には、攻略情報に関連するアプリをリリース。従来Webサイトで提供を行っていた攻略情報をアプリ化してリリースする事で、ユーザーはより快適に同社のコンテンツを利用する事ができるようになった。ゲームの共闘メンバーの募集に係る自動マッチング機能等も設けている。2017年8月末現在、9つのiOSアプリと1つのAndroidアプリをリリースしており、今後もユーザー数、ページピュー数等、同社の基準に照らして新たな展開を検討していく。
 
ゲームレビュー
利用者が新たにゲームを始めるきっかけとなるゲームのレビュー情報を提供。新作ゲームの情報が発表されると同社所属のライターがレビュー記事を作成する(一部のゲームについては自社スタジオで動画制作も行い、よりゲームの良さが伝わりやすいレビュー記事が作成される)。ゲーマーはレビュー記事をみる事でリリース前から新作ゲームの内容を把握する事ができるだけでなく、「GameWith」の事前登録機能を利用する事で新作ゲームがリリースされた際には通知を受け取る事もできる。
また、ゲームレビューでは、ゲームの紹介記事の他、速報性に優れた同社独自のランキング情報や網羅的なゲームのデータベースが提供されている。アプリストアにはない付加価値を提供する事で、「GameWith」上で優先的にゲームを探してもらうための差別化戦略を行っている。
 
コミュニティ
会員登録(無料)する事でゲーマー同士がコミュニケーションを取る事が出来る機能を提供。同じゲームでプレイするゲーマーを繋げる事でゲームへの熱量を向上させる事を目的としており、メディア全体の活性化や媒体価値の向上に繋がるだけでなく、ゲーム自体をより長くプレイしてもらうことでゲーム会社にも寄与する。
 
動画配信
当初、同社所属の攻略情報のライターが、ユーザーに分かりやすく攻略情報を伝えるために動画配信をしていたが、現在はリアルタイムでのゲームプレイ動画の配信や動画ならではの魅力的なコンテンツの企画・運営を行っている。なお、これらの動画出演者は、主に同社所属の攻略情報のライターから選出しており、動画配信者の発掘・育成からプロモーションまで行えることも同社の強みとなっている。同社所属の動画出演者による動画再生数が増加してきた事を踏まえて、2016年9月から動画中に広告を挿入する事で広告収入を得ている他、動画出寅者がゲームのブロモーションだけでなく、商品の販売促進を行うサービスも広告商材として販売している。
 
 
ゲーム情報メディア「GameWith」を介した広告収入
同社はコンテンツを提供するなかで、広告主または広告代理店に対して、アドネットワーク等を利用した「ネットワーク広告」または「タイアップ広告」として広告枠を販売する事等で収益を得ている(アドネットワークとは、広告媒体のWebサイ卜を多数集めて形成される広告配信ネットワークの事)。

ネットワーク広告は、「GameWith」のインターネット広告枠の他に、動画配信を行う際の広告枠や攻略情報アプリ内の広告枠を、アドネットワークを通して販売する事で広告収入を得るもの。
一方、タイアップ広告は広告主となるゲーム会社との相対の交渉の下で行う広告であり、アプリゲームの認知度向上やユーザーの定着率向上等を目的としたプロモーションの一環としてゲーム会社は同社に広告を発注。
同社はゲームレビューのサービスとして無料でアプリゲームの紹介を行っているが、ゲーム会社が同社に広告を発注することで、より付加価値の高いサービス(バナー広告やゲーム紹介動画を含む記事広告、ゲームの攻略情報の作成・管理・運用等)を提供。これにより同社が無料で提供しているゲームレビューでは効果が限定的となる各ゲームの認知度向上やユーザーの定着率改善に向けた施策となる。なお、タイアップ広告は17/5期に体制が整備されたばかりで、販売力の強化はこれからである。
 
 
2017年5月期決算
 
 
前期比59.1%の増収、同98.7%の営業増益
売上高は前期比59.1%増の15億81百万円。各種施策によるページビュー(PV)単価の改善や新たなサービスの寄与でネットワーク広告収入が増加する中、タイアップ広告収入も堅調に推移した。

利益面では、主にコンテンツを制作するライターやシステム等の開発人員の増員に伴う労務費等の増加で売上原価が5億64百万円と同39.6%増加したものの、売上総利益率が64.3%と5.0ポイント改善。人件費・人材採用費(主に管理部・広告事業部の増員)、地代家賃、広告宣伝費、及び支払報酬(コンサルティング費用等を含む)を中心にした販管費の増加を吸収して営業利益が6億57百万円と同98.7%増加した。営業外費用に株式交付費2百万円を計上したものの、税負担率の低下もあり、当期純利益は4億65百万円と同111.2%増加した。
 
 
期末総資産は前期末に比べて6億04百万円増の18億15百万円。好業績を反映して5億04百万円のフリーCFを確保する等、現預金と純資産が増加した。決算期末から1か月後の6月30日に東証マザーズに上場しており、上場に伴う公募増資(50千株)及びその後のオーバーアロットメントの売出に係る第三者割当増資(110千株)により、2億82百万円強の資金を調達した。
 
 
 
2018年5月期業績予想
 
 
前期比30.9%の増収、同20.1%の営業増益予想
売上高は前期比30.9%増の20億70百万円。内訳は、ネットワーク広告が16億44百万円、ゲーム会社を中心に広告枠等を販売するタイアップ広告が3億46百万円(その他1億70百万円)。ネットワーク広告は攻略タイトル数の増加を主な増収要因としており、ページビュー単価は若干の改善を見込むに留まった。

営業利益は同20.1%増の7億87百万円。売上原価については、ライターやエンジニアの増員で労務費や地代家賃が増加する他、サービスの拡充に伴うトラフィックの増加でサーバ利用料も増加する見込み。販管費については、前期に実施した増員による人件費の増加や、地代家賃及び支払報酬の増加を見込んでおり、営業費用全体で12億83百万円と同38.7%の増加を見込んでいる。この他、営業外費用に上場に伴う株式交付費を織り込んだ。一方、特別損益は見込んでいない。
 
 
(2)基本戦略
スマートフォン広告市場の拡大が見込まれる18/5期の基本戦略は、「PV単価の改善」と「コミュニティの収益化」。前17/5期は、広告運用体制の強化、広告枠の増枠、及び表示方法の最適化、といったに取り組みにより、PV単価の引き上げに成功した。18/5期も、引き続き、これら施策を講じる事で「PV単価の改善」を図る。「コミュニティの収益化」では、ゲーム攻略等からの誘導によるコミュニティの集客強化とコミュニティの機能追加及びアプリ化でユーザー数の増加を図り、広告の掲載によるマネタイズ化につなげる。
 
 
 
今泉社長に聞く
 
6月30日に上場したばかりの同社。期待を集めたIPOだったため、社名を耳にされた投資家の方は多いだろうが、未だ同社に関する情報は多いと言えない。そこで、六本木の本社にお邪魔して、会社設立の経緯や強み、更には成長戦略について、今泉社長にお話を伺った。
 
今泉卓也社長は1989年3月19日生まれの28歳。慶應義塾大学経済学部の卒業ながら、ブラウザゲームの開発を手掛けたエンジニア。大学卒業後に在学中からゲーム開発のエンジニアとして参画していたゲーム会社のCTO(最高技術責任者)に就任。しかし、スマートフォンの普及でゲームの主流がブラウザゲームからスマホアプリに移行しつつある事を踏まえてそのゲーム会社を解散。2013年6月に、新たにゲームの攻略情報メディアの運営を目的とする株式会社GameWithを設立した。
 
【起業を念頭にIT技術を習得】
まず、創業の経緯からお話頂けますでしょうか。慶應義塾大学経済学部ご出身でありながら、エンジニアとしてゲーム開発のご経験もお持ちであると聞いています。
大学2年の頃から自分で会社を作りたいと考えていました。自分でサービスをつくり、そのサービスを事業とする会社です。インターネットに興味を持っていましたから、会社を作るのであればIT企業、そうであれば自分でもエンジニアリング・スキルを身に着ける必要があると考えました。しかし、周りにエンジニアリング・スキルを持っている方がいませんでしたし、仮に見つけられたとしてもその人の仕事を見ているだけでは面白くありません。自分で会社を作るからには、自分が主体となってITサービスをつくりたいと考えていたので、大学2年の頃からエンジニアリング・スキルの勉強を始めました。そして3年になると、実際にエンジニアとしてアルバイトを始めていました。
 
独学でエンジニアリング・スキルを身に着けたのですか。
そうですね。大学生活の半分くらいは、アルバイトも含めてエンジニアリング・スキルの勉強に費やしたと思います。
 
GameWith設立の前に、エンジニアとして仕事をされていたそうですね。大学卒業後にGameWithの前身の会社を作られたのですか。
大学4年の頃です。ベンチャーキャピタル主催の「インキュベイトキャンプ」(起業家と投資家の合同経営合宿)というインキュベーションイベントに参加した事がきっかけで、ゲーム会社の設立を考えている方と知り合いました。ソーシャルゲームの市場が生まれ、ブラウザゲームのプラットフォームが伸びていた頃です。
当時は、個人でITサービスを開発して提供していたのですが、黒字化させ事業を継続していくイメージが持てず、起業に踏み切れずにいました。そんな中でインキュベーションイベントに参加した訳ですが、声をかけてくれた方はゲーム会社でプロデューサーを経験され、実際にヒット作を手掛けた実績もある方で、イラストレイタ―等の必要な人材とのコネクションも持っていました。
私はフリーのエンジニアとしてアルバイトをしていましたから、大学を卒業するまでのアルバイト感覚での参画でしたが、そこではゲーム開発を中心にゲームを中から見る機会に恵まれ非常に多くのことを学びました。そしてリリースしたゲームが初日に100万円以上の売上を上げた事もあり、「ゲームって、凄いな」と、ゲームというビジネスに魅力を感じました。そして「この会社を伸ばせるところまで伸ばしてみたい、成果にコミットして責任のある仕事をしたい」と考え、大学卒業と共に入社しました。
 
1日で100万円以上の売上ですか?
そうです。あの頃のゲームは市場が急拡大していたこともあり、創業して数ヶ月の会社でも1日で100万円以上の売上が上がりました。伸びている市場で時流に合ったビジネスをやる事が大切だとこのとき強く感じました。
 
そして、ブラウザゲームからスマホゲームに移行する事で環境が変わっていった訳ですね。
大学を卒業してCTOになったの2012年ですが、2013年頃からブラウザゲームの勢いがなくなり、アプリゲームが伸びてきました。まさにゲームを楽しむプラットフォームがブラウザからアプリに入れ替わる頃で、我々のゲームの売上も減少し始めました。毎月売上が減少し、このままでは赤字になることが避けられないといった状況です。「新しいゲームを作っても、ブラウザゲームでは…」、「作るのであれば、アプリゲームを作らないと…」と考えましたが、ブラウザゲームとアプリゲームでは求められる技術や人材が違う事は理解していました。ブラウザゲームは、ゲームというよりどちらかというとWebサービスです。これに対して、スマホゲームはコンシューマーゲームのような作り方が求められます。更にゲームの開発に掛かるコストも上がっていて、ブラウザゲームであれば、2,000万円ぐらいで1本つくれたのですが、スマホゲームになると1本リリースするのに1億円くらいかかる、といった感じでした。今はもっと必要ですが。
 
ブラウザゲームで複数のヒット作を持っていたものの、未だにスマホゲームを軌道に乗せる事ができず苦戦している会社を実際に見ていますから、非常にリアリティのあるお話しでした。
当時の会社はそれほど余剰資金がありませんでしたし、仮に資金調達をしてゲームをリリースしても、以前のように作れば売れるという状況ではありませんでした。ゲーム開発は、単純に5本製作して、そのうち1本でも当たれば良しといったビジネスに変わっていきました。「5本をつくるのは無理だから1本で勝負」という事になったらギャンブルですし、そもそも資金力のない会社がやるビジネスではありません。そこで2013年に赤字になる前に会社を解散することを選びました。
 
それでGameWithを立ち上げる事になった訳ですが、実感していた市場の変化を踏まえて、ゲーム開発ではなく、ゲーム周辺ビジネスと言いますか、ゲームユーザーに対してサービスを提供する事業を選ばれた訳ですね。
ゲーム開発については、スタートアップの事業ではなく資金力のある会社が行う事業であると考えました。また、将来的にテレビゲームの会社が主力になっていくだろうと考えていました。
 
【GameWith設立】
目の前のゲーム市場の動向が冷静に分析され、その後のゲーム市場をしっかりとイメージできていた訳ですね。
コンテンツとしての魅力は非常にあるので、ゲーム市場は伸びていくと考えていました。伸びていくゲーム市場の中で、ゲームをつくらずにビジネスはできないかと考えた末に行き着いたのがゲームの攻略サイトでした。既にゲームの攻略サイトはありましたがテレビゲームが中心でした。ただ、テレビゲームの攻略サイトを見る人は、当たり前ですが、まずテレビゲーム機を買って、次にテレビゲームのソフトを買った人ですから、サイトを見てもらうまで大きなハードルが二つあります。これに対してスマートフォンでゲームをする人は、既にゲーム機(スマートフォン)を持っていて、なおかつ無料でゲームができます。おそらくテレビゲームとスマホゲームのプレイヤー人口では、スマホゲームのほうが大きかったのではないでしょうか。当時はゲームのクオリティでスマホゲームはテレビゲームに大きな差がありましたが、クオリティは数年内で追いつくだろうと。そうなると、スマホゲームの市場は更に拡大していく可能性がある。しかも、そこに強いプレイヤーはいないという状況でした。ゲーム攻略でプレイヤーが集まる場所をつくり、そこに新作ゲームを探す機能やゲーマー同士がコミュニケーションを取る事ができるコミュニティ機能等を加えてゲームのプラットフォームを作っていこう、そう考えてGameWithを立ち上げました。
 
ゲーム会社で経験を積まれ、苦労もされただけあって、非常にわかりやすいというか、ビジョンが明確でしたね。市場分析も正確です。それだけにGameWithは順調に立ち上がり、大きな苦労もなく、マザーズにスピード上場となった訳ですね。
全く苦労がなかった訳ではありませんが概ね順調でした。市場の動向をきちんと読むことに努め、ある程度読み通りになった事は事実です。当社がゲーム攻略事業に参入した時はプレイヤーの数も多くなかったので市場拡大の流れに乗る事もできました。その後は市場が拡大していくと新たに参入してきた競合も現れましたが、早期に対策を取り、サービスの改善等の差別化戦略に取り組んできました。具体的には会社設立から半年ほどで差別化のために記事のクオリティを改善するための組織体制に着手しました。優れたゲーマーの採用、ゲーマーをライターとして活動させるための研修やツールの準備、業務効率の改善のためオペレーションの研鑽などに取り組んできました。こうしたことの積み重ねが、今では当社の大きな優位性になっていると思います。
また、組織体制を整備した後は、ゲーム攻略だけではなく、サービスの多角化も進めました。現在のゲーム攻略以外の主要なサービスとしてはゲームレビュー、コミュニティ、動画配信が挙げられます。コミュニティはスタートしたばかりですが、既にゲーム攻略、ゲームレビュー、動画配信では相乗効果が見られます。このように様々なサービスを行うことで、単なるゲーム攻略サイトではなく、メディアとしてブランディングもできたと感じています。
 
なるほど。ただ、個人的には、御社はゲーム攻略のイメージが強いです。動画配信やゲームレビューは、どのような状況でしょうか。
利用者の方に当社のサービスを知ったきっかけを聞いてみると、動画配信と答える方が多いです。特に10代で多いですね。このように収益など業績だけではなく、当社の知名度の向上という観点からみると、動画配信の当社のサービスへの貢献は大きいです。「意識せずにゲーム攻略サイトを使っていたけど、動画配信を見て、それがGameWithだと気づいた」とか、動画に出演しているタレントを見て、「この人、GameWithの人なんだ」といった感じです。当社は、ライターだけでなく、動画配信に出演するタレントの育成も行っています。当社がゼロから育成したタレントの中には、ゲームに関する分野でトップクラスの再生数を稼ぐYouTuber(YouTubeに動画を投稿する人)も生まれています。

次にゲームレビューは、ゲームを探すために利用するサービスですが、利用者は「ゲームを探している人」と属性が明確ですから広告効果が高い事が特長です。当社のユーザーが利用するサービスは主にゲーム攻略ですが、徐々にゲームレビューの利用者も増えており、これらのサービス間のシナジーも顕在化しています。
 
コミュニティの成長性については、いかがでしょうか。
コミュニティは、2017年3月に開始したもので、これから市場を創っていくサービスです。具体的な数値をお話しする事はできませんが、当社の成長戦略の中心になると考えています。ゲームにおいては、未だゲーマー同士がコミュニケーションを取るといった文化が確立していません。しかし、コミュニティがあれば、同じゲームを楽しむ仲間と盛り上がりますし、ゲームをしていない時でもコミュニティを見ることでコミュニケーションを楽しんでもらえます。ゲーム攻略はゲームで行き詰った時に利用されるものなので、ゲームに行き詰まらないと利用されません。これに対してコミュニティであれば、利用者に気が向いた時や空いている時間に気軽に利用してもらえます。このようにコミュニティを活性化させることで、これまで取り切れていなかった利用機会を取ることが可能です。当社の場合、ユーザー数については、日本のゲーマー人口を考えると取り切っていると言えますが、ユーザー一人当たりの接触頻度や接触時間を上げる余地はまだまだあり、ユーザーの接触頻度や接触時間に応じて増加するページビュー数は広告収入の増加に繋がります。
 
【更なる成長に向け、先ずは既存サービスの強化】
東証マザーズ上場時に発表された「成長可能性に関する説明資料」では、成長戦略として、既存サービスの成長、コミュニティ:PV・広告反応率の向上と並び、新規サービスを挙げています。
新規サービスの一つとして挙げている有料会員サービスの開始は、まだ2~3年は先になると思います。当社が収益を得る先は企業や広告代理店等であり、利用者から収益を得るビジネスモデルはまだできていません。有料会員サービスは、単に既存のサービスを有料化するのではなく、有料会員には新しい付加価値を提供しようと考えています。そのためには利用者がお金を払っても利用したくなるような直接的なメリットが必要だと考えています。例えば、当社の有料会員だけがもらえるアイテムや、ゲームの課金が10%オフになるといった金銭的なメリット等、直接的なインセンティブを与える事ができる体制が整ってからサービスを開始したいと思います。
 
既存サービスの強化とはどのような事に取り組まれるのでしょうか。
具体的には、ネットワーク広告のPV単価の引き上げとゲームレビューや動画配信による広告営業の強化です。
PV単価の改善は、大きな増収インパクトになります。既にPV単価については、広告運用の体制を見直すことで右肩上がりに伸びています。
ゲームレビューや動画配信については、これから広告収入を増やす余地が大きいと考えています。例えばゲーム攻略の収益はネットワーク広告で、アドテクノロジーを使って広告を自動配信するものです。これに対してゲームレビューや動画配信は、主にゲーム会社を対象とした対面営業を行うタイアップ広告による収益を得ています。これには営業部門の組織的かつ地道な営業活動が必要です。当社の営業部門は、これまで人数も十分ではなく、組織的な営業活動ができていませんでした。ゲームレビューと動画配信で予算割もなく、それぞれが売りやすいものを売っていた、という感じでしたが、今期からコンテンツを制作する部門毎に予算を割り振り、販売目標についてもコミットしてもらいます。需要はありますから、売ろうとすれば売れる状態だったのですが、やり切れていませんでした。今期はそれをきちんとやっていきます。
また、コンテンツを制作する部門が販売目標を担うことには、収益に対するコミットを高める以外にも効果があると考えています。例えば商品開発にしても、これまでは営業部門が行っていましたが、今期から部門毎に需要を踏まえた商品開発を行うことでより需要に則した商品開発が可能になります。タイアップ広告は販売の仕方や提案内容によって決まることが大きいため、この販売体制の変更は収益面でも大きく貢献するものと考えています。
 
なるほど、サービス面で差別化を図るための組織体制の整備は進んでいるものの、販売面といいますか、営業面での体制整備は緒に就いたばかりという訳ですね。一方、PV単価は上げようとして、思い通りに上げる事ができるものなのでしょうか。
説明会で使った資料でいえば、前期(17/5期)の実績から考えて少なくとも200くらいまでの引き上げは可能だと考えています。200であれば、年初の頃の倍です。これまではとにかくユーザー体験の向上に注力しており、広告単価を上げていく体制が十分ではありませんでした。こちらについても、ようやく組織的な体制が整い、PV単価の引き上げに取り組めるところまできました。説明会資料には、PV単価向上施策の一つとして「運用体制の強化」を挙げていますが、これまでは「運用体制がなかった」といった方が実態に近いです。それまではネットワーク広告の運用についても外部の広告会社に全面的に依存していましたが、今年の1月から体制を整え、現在は5人体制のチームを作り、自社でPDCAを回しながら広告運用を行っています。
 
 
この結果、当社のアドネットワーク広告の課題が浮き彫りになり、各種政策を実施してきました。例えばこれまでは広告を出すべきスペースに広告枠が貼られていなかったという事もありました。その広告が貼られていなければ、PVから収益が生まれることはありません。現在、複数社の広告ネットワークを利用していますが、時間単位で各ネットワークのパフォーマンスを測って、パフォーマンスのいいネットワーク(PV単価の高いネットワーク)を優先する等、ネットワーク間で競争原理を働かせていく事を考えています。
 
順風満帆に見えても、成長のための課題は多そうですね。いい意味で発展途上であり、それが魅力でもあると思います。質問が抽象的になって恐縮ですが、長期的には、どのような会社にしたいとお考えですか。
ゲームに関するインフラというか、ゲームと名の付く事業の全てにGameWithが関わっているようになりたいです。現在、ゲームレビューや動画配信でユーザーを集め、ゲーム攻略やコミュニティでユーザーを定着させる事でゲーム業界に関わっていますが、今後は更にこの範囲を広げていこうと思っています。例えばゲームに関する人材サービスの提供はその一つで、ゲーム会社ともWin-Winの関係を築けるのではないか考えています。私たちはゲーム業界においてはまだメディアとして関わっているだけで、できていない分野や展開可能な分野は数多くあります。
 
なるほど。多くのユーザーが集まり、ゲームに関する大量のデータも集まる訳ですから、新たな事業展開の余地やシナジーを活かせる分野は多いのでしょうね。最後に、株主還元についてのお考えと、株主・投資家の皆様へのメッセージをお願いします。
現在当社は成長投資を行うべきステージにおり、これから様々な事業を展開していく中で資金が必要になります。このため株主の皆様に対しては、配当ではなく企業の成長で報いていきたいと考えています。ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。
 
そうですね。御社は、キャッシュ・フローが安定しており、財務内容も流動性に富んでいますが、マザーズ上場を機に成長速度を加速させていこうという訳ですからね。それでは、株主・投資家の皆様へのメッセージをお願いします。
当社はゲーム関連のビジネスを手掛けていますが、ゲーム業界全体を対象にポートフォリオを構築しています。そのため個別のゲームに依存することなく、ゲーム業界全体の成長に業績をリンクさせてきました。これからもゲーマーに楽しんでもらえるコンテンツの提供とゲーム会社の支援を通してゲーム業界の発展に貢献していきたいと考えています。今後も皆様のご期待にお応えするべく、一層の企業価値の向上に努めてまいりますので、引き続きご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
 
ゲームというと、変動が激しいというイメージがありますが、御社の事業はプラットフォーム事業であって、ゲーム開発ではありませんから、その違いを理解する必要がありますね。御社が主に取り扱っているアプリゲーム市場は引き続き成長が期待できますし、スマホ広告市場も更なる拡大が見込まれています。こうした中、御社においては、主力のゲーム攻略では体制が整っており、既にサービスの多角化にも着手しています。また、収益面においてもネットワーク広告の改善やタイアップ広告の需要の取り込み等、課題を認識した上で手をうっている事がわかりました。完成度の高い部分がある一方で、伸びしろも大きいという事だと思います。
本日は貴重なお時間を頂き、また、丁寧なご説明有難うございました。今泉社長とGameWithの益々のご活躍とご発展をお祈り申し上げます。
 
 
今後の注目点
会社設立から4年でのスピード上場となったが、この間、同社はゲーム情報の専門メディアとしての信頼度を高め、より多くの利用者に活用されるよう取り組んできた。今後は、これまでの取り組みと並行して、ゲームに関連する分野での収益機会の拡大と収益力の強化にも取り組んでいく考え。会社設立から4年の若い会社でありながら、完成度の高い会社との印象が強かったが、話を聞いてみると、収益力の強化はこれからだった。収益機会の取り込みと共に、今後の展開に期待したい。
なお、同社に所属する専属のライターは、ゲームをする事を職業としている。同社は、自身が好きな「ゲーム」で生活する事ができ、「ゲーム」が職業であると自信をもって言える人を輩出できるようになってきた訳だ。経営理念として「ゲームをより楽しめる世界を創る」を掲げているが、この経営理念には“ゲームに携わる事で幸せになってもらいたい”という想いも込められているという。今泉社長は、ゲームのエンジニアだが、エンジニア・スキルの習得が起業のためのものだっただけに、視野は広く、経営者として、ゲーム市場を冷静かつ客観的に、ご覧になられている。ただ、ゲームはかなり好きそうで、クールな外見に似合わず、市場動向等については熱っぽく語られた。経営理念に込められた想いが、建前ではない事が良く分かった。
 
 
 
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書        更新日:2017年6月30日
基本的な考え方
当社は、「ゲームをより楽しめる世界を創る」というミッションのもと、ゲームに携わる全ての人や企業にとって最適な環境を作る事業運営体制の構築に向け、健全性と透明性が確保された迅速な意思決定を可能とする体制の整備を進めるとともに、コンプライアンスの徹底やリスク管理を含めた内部統制の強化を図っております。これらの取組みを通じて、コーポレート・ガバナンスのさらなる充実を目指し、企業価値の最大化に努めてまいります。
 
<実施しない原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則の全てを実施しています。
 
<開示している主な原則>
【原則1-4 いわゆる政策保有株式】
当社は、取引・協業関係の維持・拡充のための手段として、他社の株式を取得・保有する場合があります。当該保有に関しては、企業価値向上につながることを政策保有方針の基本とし、発行会社と当社事業における中長期の協力関係の維持・強化、取引関係等の円滑化及び事業機会の創出・発展に資する可能性から判断します。
政策保有株式の議決権の行使については、(1)発行会社が当社の政策保有方針に適う目的・事業を有していること、(2)企業活動の適時かつ適切な情報開示を行っていること、(3)持続的な成長につながる事業基盤を有していることなどを総合的に勘案し、議案の内容と中長期的な企業価値の向上について検討し、「職務権限規程」に定める然るべき決裁者が賛否を判断します。

【原則1-7 関連当事者間の取引】
当社は、当社の取締役が利益相反の疑義がある取引を行う際は、法令及び取締役会規則に則り取締役会の承認を得ることにより、適切に監視しております。なお、利益相反の疑義がある取引を実行した場合には、法令の定めに基づき、重要な事実を適切に開示します。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、企業価値の持続的成長を目的とし、株主とのより強固な信頼関係を構築するため、コーポレート・ガバナンス、経営戦略、資本政策、業績・財務状況、サービス内容とそのリスク等について、中長期的な視点から、株主との建設的な対話を継続する体制を整備しています。

- 株主との対話は、代表取締役社長による統括のもと、個別面談については実施責任者である経営企画室長が、面談の目的と効果、株主の属性などを考慮の上、代表取締役社長及び取締役管理部長等の参加も含め、対応者と対応方法を検討、実施しております。
- IR担当者は、事業部門や管理部門をはじめとする社内各部門から必要情報を収集するとともに、緊密な社内連携を通じて、わかりやすい説明を工夫し、株主との対話を充実させています。
- 当社は株主の皆様に、当社の経営方針、コーポレート・ガバナンス、戦略、事業の現状などについて、理解を深めていただく活動を継続しています。
- 機関投資家との対話としては、個別面談の他、半期毎の決算説明会を適宜開催しております。また、ホームページの株主・投資家向け専用ページを通して、これらのイベント情報を個人投資家へも開示するとともに、個人投資家向けの会社説明会も開催しています。
- 株主との対話を通して把握した株主の関心や懸念などは、部門長以上の経営幹部に随時報告し、経営分析や情報開示のあり方の検討などに生かしております。
- 株主との対話においては、社内規則の定めるところに従い、インサイダー情報を適切に管理しております。
- 当社では決算情報に関する対話を控える「沈黙期間」を設定しております。