ブリッジレポート
(2593、25935:東証1部) 伊藤園 企業HP
 
 

【ブリッジレポート vol.2】2018年4月期第2四半期業績レポート
取材概要「8月は統計開始以来3番目の長寿台風(台風5号)の上陸に加え、東京の日照時間が過去最低、連続降水量21日間(仙台は36日間)を記録する等で・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年12月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社伊藤園
社長
本庄 大介
所在地
東京都渋谷区本町3-47-10
事業内容
茶葉製品・緑茶飲料最大手。ルートセールス方式。傘下にタリーズコーヒー、チチヤス等。優先株式発行。
決算期
4月末日
業種
食料品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年4月 475,866 21,774 21,524 13,693
2016年4月 465,579 17,243 15,074 8,615
2015年4月 430,541 11,393 11,229 7,292
2014年4月 437,755 21,100 20,518 12,096
株式情報(12/12現在データ)
<普通株式>
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
4,430円 88,707,691株 392,975百万円 10.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(実) EPS(実) PER(実) BPS(実) PBR(実)
40.00円 0.9% 108.77円 40.7倍 1,105.09円 4.0倍
<優先株式>
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,132円 33,782,454株 72,024百万円 10.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(実) EPS(実) PER(実) BPS(実) PBR(実)
50.00円 2.3% 118.73円 18.0倍 1,110.09円 1.9倍
※株価は12/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
伊藤園の2018年4月期上期決算と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
緑茶飲料、コーヒー飲料、野菜飲料等の飲料(ドリンク)や茶葉(リーフ)の製造・販売を中心に、子会社を通してタリーズコーヒー等の飲食店経営及びフランチャイズ(FC)展開やサプリメントの製造・販売等も手掛ける。国内では、「お〜いお茶」等の緑茶飲料市場で33%(2016年12月時点)のトップ・シェアを有する。「世界のティーカンパニー」を目指し、ニューヨークを中心に米国、オーストラリア、中国、東南アジア地域で、「」ブランドの確立と新しい緑茶市場の開拓に取り組んでいる。
 
【経営理念 「お客様第一主義」】
“すべてのお客様を大切にすることが経営の基本である”とする「お客様第一主義」を経営理念として掲げている。

お客様とは、同社とかかわる、消費者、株主、販売先、仕入先、金融機関、更には地域社会等のステークホルダー。ステークホルダー全てをお客様と位置付け、それぞれの意見や要望に真摯に向き合い、常にお客様の立場に立った対応を図る事を経営の根幹としている。
 
【創業以来変わらない五つの製品開発コンセプト】
製品開発のコンセプトは、「自然」、「健康」、「安全」へのこだわりと、マーケティング施策の徹底、そしておいしさの追求。主力製品の「お〜いお茶」では、前身の「缶入り煎茶」(1985年発売)から、原料と製法にこだわり、無香料・無調味の自然のままのおいしさを引き出している。

自然    :自然の素材を活かした製品
健康    :健康的な生活をサポートする製品
安全    :安全で安心して楽しめる製品
良いデザイン:美味しさをストレートに伝える
       デザイン
おいしい  :幸せを感じるおいしさ
 
【事業概要】
事業は、リーフ(茶葉)やドリンク(飲料)の製造販売を行うリーフ・ドリンク関連事業、タリーズコーヒージャパン(株)によるスペシャルティコーヒーの飲食店経営及びFC展開の飲食関連事業、及びMason Distributors,Inc.(米国フロリダ州)が手掛けるサプリメントの製造・販売等のその他の事業に分かれる。
17/4期は同社の単独売上高がリーフ・ドリンク関連事業売上高の84.5%(連結売上高の78.1%)を占めた。単独売上高の構成比は、茶葉9.1%、飲料90.0%、その他0.9%。
 
 
【独自のビジネスモデル   −ESGに対応するバリューチェーン−】
調達 ⇒ 製造・物流 ⇒ 商品企画・開発 ⇒ 営業・販売、といった事業の流れが、ESGに対応している事が同社ビジネスの特徴である。「調達」では、高品質な茶葉の安定調達を目的に茶産地育成事業を手掛けており、この活動が、持続可能な農業(S)や雇用創出(S)、更には環境保全型農業(E)の実現につながっている。「製造・物流」では、茶殻リサイクルシステムによって、持続可能な資源利用(E)を実現している。製造後に排出される茶殻を、肥料や飼料等での利用はもちろん、茶配合ボード、茶配合樹脂、茶入り紙製品、更には茶殻配合建材にリサイクルしている。「商品企画・開発」では、「黄金烏龍茶」や「カテキン緑茶」等に象徴されるように、健康に資する(S)健康配慮商品の開発に力を入れている。「営業・販売」では、気候変動対応・温暖化防止(E)及び地域社会や環境と調和したサスティナビリティ(S)に配慮した環境配慮型営業車の導入、お茶の入れ方セミナーによるお客様への知識(茶文化)の提供(S)や「お〜いお茶新俳句大賞」による日本の伝統文化の伝承・教育での活用(S)、更には「お茶で日本を美しく。」キャンペーンでの、文化保存(S)、環境保全・水循環・生物多様性の保全(E)、「お〜いお茶とおにぎりアクション(TABLE FOR TWOとの取り組み)」(S)等の取り組みを進めている。
 
 
【茶産地育成事業   −茶葉の安定調達と社会貢献−】
国内では就農者の高齢化と後継者不足のため就農人口が減少し、耕作放棄地が広がる一方で茶園面積の減少が進んでいる。また、茶園の3割が樹齢30年以上と高齢化していると言う。このため同社は、耕作放棄地の活用及び生産農家の後継者育成や雇用の創出等による地域への貢献と、より高品質な原料茶の安定調達を目的に茶産地育成事業を行っている。

茶産地育成事業は、「契約栽培」と耕作放棄地等を茶園に造成してお茶の生産者を育成する「新産地事業」が二本柱。「契約栽培」は、1970年代から続いており、茶農家との間で同社が茶葉を全て買い取る契約を結ぶと共に、同社の農業技術部が、苗木の選定から茶園づくり、そしてその茶園を機械化、IT化により低コストで管理できる栽培指導をしている。一方、新産地事業は2001年から開始したもので、国内の耕作放棄地等を活用して、新たにお茶の栽培を始める生産者を育成する。茶園の造成と茶葉の生産は地元の市町村や事業者が主体となって行ない、同社は「契約栽培」と同様に技術・ノウハウを全面的に提供すると共に生産された茶葉を全て買い取る。九州は平地が多く機械化による大規模栽培に適しているため、労働時間が静岡の1/3以下の農園もあると言う。

また、現在は、京都府や鹿児島県等で抹茶原料(てん茶)の契約栽培も本格展開している。伊藤園抹茶の特長は、鮮度(鮮やかな緑色)と豊かな風味。独自の加工技術による良質な抹茶は幅広い用途で使用されている。

18/4期は佐賀県(大分、長崎、宮崎、鹿児島に次ぐ5県目)で「新産地事業」を開始した。運送・倉庫業を営む企業が設立した農業法人による茶園及び荒茶工場の運営をサポートしている。
 
 
【ブランド力を高める出店戦略   −ブランドを発信−】
お茶の楽しみ方を伝承すると共に、「お茶の伊藤園」の価値向上と売上拡大を念頭に出店戦略を進めている。この一環として、9月に東京・三越日本橋本店 本館地下1階食品フロアに「日本橋 和の茶 伊藤園」をオープンした。同店は、国内のお茶の生産農家に赴き選りすぐった日本全国の希少なこだわりの茶葉(緑茶・紅茶・ウーロン茶)をはじめ、茶畑単位で考えたシングルオリジン(単一品種・単一生産者)のお茶を取り揃えた。また、合わせるドライフルーツやハーブの産地にもこだわり、すべてが国産素材。日本の伝統“茶文化”を感じてもらう事を意識した直営店舗である。

また、11月には、お茶を通じて日本の「和」を伝承する和カフェ「上野 茶寮 伊藤園」を、東京・上野フロンティアタワー地下1階 松坂屋上野店内にオープンした。茶道のお点前にも実際に使用されているお茶会用の抹茶を使用した「抹茶(菓子付)」や「抹茶ソフトあんみつ」をはじめ、同社のお茶の専門店で取り扱う茶葉を使用したドリンク等を堪能できる。

この他、6月に兵庫・大丸神戸店地下1階に「Le monde du thé (ル モンド・デュ テ:世界のお茶)」をオープンした。日本茶の他、紅茶、中国茶、ノンカフェインティーといった世界のTEA約100種類をラインナップした。パリの老舗パティスリー〈ラデュレ〉の紅茶ブランド「テ・ラデュレ」もラインナップの一つ。
 
 
2018年4月期上期決算
 
 
前期比3.0%の増収、同1.2%の営業増益
上期の国内飲料市場は、堅調に推移した第1四半期(5-7月)に対して、台風や長雨で8・10月が前年同月を下回る等、第2四半期(8-10月)は厳しいものとなった。カテゴリー別では、茶系飲料、野菜飲料、果実飲料が堅調に推移する一方、ミネラルウォーター、スポーツドリンク、コーヒー等が苦戦した。同社の国内販売も国内飲料市場に沿った動きとなったが、販売数量は市場を上回る伸びを示した。
 
 
海外も含めた同社グループの売上高は前年同期比3.0%増の2,658億83百万円。このうち伊藤園(単独)は同1.7%増の2,083億38百万円。実演販売「大茶会」の全国展開や10月1日の「日本茶の日」を主軸にしたイベント等の成果でリーフが同7.8%増と伸び、主力4ブランドに注力したドリンクも同1.1%増と堅調に推移。粉末青汁の好調でその他も同11.3%増と伸びた。ドリンクの内訳は、「お〜いお茶」が同3.1%増加する等で日本茶・健康茶が同0.4%増、「ジャスミンティー」を中心に中国茶(同4.2%増)、「青汁」(同9.3%増)や「理想のトマト」(60.3%増)等が伸びた野菜飲料(同7.3%増)、果実飲料(同11.8%増)が増加した他、「TULLY'S COFFEE」も同2.3%増加した(主に自動販売機を中心に展開している「Wコーヒー」の苦戦でコーヒー全体では同2.1%減)。国内子会社では、タリーズコーヒーの売上が同6.6%増加したものの、チチヤスが西日本での天候不順の影響等で同1.2%の減収。海外は、販売が軌道化してきた米国事業が同16.2%増(ドルベース9.4%増)と伸び、その他海外事業も同24.3%増加した。

利益面では、「お〜いお茶」の増産効果や原料・資材コストの低減で伊藤園(単独)の売上総利益率が47.2%と0.8ポイント改善し連結売上総利益率の改善に寄与。販管費は、運送費が同8.3%増加した他、主力商品のリニューアルで広告宣伝費も同5.5%増加したが、悪天候にもかかわらず主力商品の販売が好調だったため、販売手数料は同3.5%の増加にとどまった。
 
 
 
 
上期末の総資産は前期末に比べて18億51百万円増の3,042億56百万円。流動比率224.7%(前期末214.1%)、固定比率90.2%(同94.3%)、自己資本比率47.1%(同44.8%)。
 
 
営業CFは在庫の積み増等で前年同期比減少したものの、112億46百万円を確保した。投資CFについては、自動販売機のリースから自社保有への切り替えによる設備投資の増加を反映した。
 
 
2018年4月期業績予想
 
 
前期比3.5%増収、同3.8%の営業増益予想
売上高は前期比3.5%増の4,925億円。2017年の国内飲料市場を前年並みの3兆7,700億円とみており、下期もリーフ、ドリンク共に堅調な推移が見込まれる伊藤園(単独)が通期で同2.5%の増収。国内シェアが5位から4位に上昇する見込み。チチヤスは上期の苦戦で通期の売上見通しを引き下げたが、通期で同2.1%の増収。タリーズコーヒー、米国事業、その他海外は通期の売上見通しを上方修正した。
営業利益は同3.8%増の226億円。主力商品の売上増による伊藤園(単独)の売上総利益率の改善等で連結売上総利益が期初予想を上回る見込みだが、販管費の上振れで相殺。販管費は、販売手数料や運送費等を積み増しして余裕を持たせたため、期初予想に変更はなかった。

設備投資は117億円(前期81億円)を計画しており、リース償却費70億円(同70億円)、減価償却費59億円(同54億円)を業績予想に織り込んだ。
 
 
 
 
ブランド戦略
 
 
【お〜いお茶(リーフ)】
同社の資料によると、緑茶リーフ(包装茶+バラ茶+簡便性)市場は緩やかに市場が縮小しており、2013年は2,506憶円だったが、2017年の見通しは2,335憶円。ただ、市場が縮小しているのは包装茶及びバラ茶で、同社が力を入れており、圧倒的なシェアを有するとみられるティーバッグやインスタント等の簡便性製品の市場は伸びている。
 
 
この上期は、簡便性ブランドの認知度向上に向け、「氷水出し緑茶」の実演販売「大茶会」の全国展開が好評を博した他、30年ぶりとなるリーフの単独CMの放映や「日本茶の日」(10月1日)に合わせた全国流通小売業の店舗でのイベント開催(開催期間中のリーフ売上は前年同期比30%増)等の成果で、簡便性製品が前年同期比10%増加した。
尚、10月1日は豊臣秀吉が京都の北野天満宮で大茶会を開催した日であり、「日本茶の日」は同社の申請により、日本記念日協会が認定した。
 
【お〜いお茶(ドリンク)】
 
緑茶飲料市場は、2003年から2004年にかけての大手飲料メーカーの相次ぐ参入で急拡大し、2005年には4,470億円のピークをつけた。2006年以降は、緑茶ブームが一巡し、ミネラルウォーターブーム、熱中症対策も兼ねたスポーツドリンクブームと続く中で緑茶飲料市場は2010年にかけて縮小したが、この間、トップブランドの同社は着実に売上を伸ばしシェアを上昇させた。2011年以降は市場が回復に向かい同社のシェアは若干低下したが、2005年のシェア29%を大きく上回るシェアを維持していた。2016年にシェアが33%に低下したのは2015年以降のビール系大手飲料メーカーの商品リニューアルに伴う販売攻勢によるものだが、2017年に入ると販売攻勢の勢いが沈静化し市場は落ち着きを取り戻した。シェア低下に際しては、特に「濃い茶」が影響を受けたと言う。

2017年は再びシェアが上昇する見込み。この上期は悪天候で厳しい事業環境となる中、中身・容器・容量をリニューアルした「お〜いお茶」が前年同期比3.1%増加した。容器・容量をリニューアルしたPETボトルの525及び600ミリリットル商品については、同7%近く販売数量が増えたようだ。また、ドリンクの「氷水出し緑茶」の貢献も大きかったと言う。この結果、2017年の緑茶飲料市場は2005年のピークと肩を並べる規模に回復するとみられるが、同社のシェアは34%と前回ピークの29%を大きく上回る見込みだ。

緑茶飲料市場は有望市場だが、大手飲料メーカー(サントリー「伊右衛門」、コカ・コーラ「綾鷹」、キリン「生茶」等)が力を入れる厳しい市場だ。しかし、同社は大手飲料メーカーの攻勢で一時的にシェアを落としても短期間でシェアを回復させてきた。上記グラフから、競争の厳しい緑茶飲料市場だが、短期的なシェアの変動はあっても、市場拡大の恩恵を最も受けてきたのはマーケットリーダーである同社だった事がわかる。
 
ほうじ茶
ドリンクでの有望市場は緑茶だけでなく、ほうじ茶市場も、その一つ。ほうじ茶飲料市場は、過去10年で約5倍に拡大した(2005年〜2016年、同社調べ)。ほうじ茶はカフェイン少なめで、女性を中心に人気がある。これまで、ほうじ茶ドリンクでは同社が独走していたが、大手飲料メーカーが参入準備を進めている。しかし、リーフ、ドリンク、パウダー(粉末)等、様々なカテゴリーへの展開により、ほうじ茶においても伊藤園のブランドは着実に浸透している。ファミリーマートへのほうじ茶パウダーの供給はその象徴だ。ファミリーマートでカウンター販売される「ほうじ茶ラテ」用に同社のほうじ茶パウダー(粉末)が採用され、ファミリーマートの国内全店舗で“伊藤園のほうじ茶を使った「ほうじ茶ラテ」”として、12月19日から販売される。

この他、上期は、若者に人気のフォークデュオ「ゆず」のプレミアムコンサートや、「恋する俳句プロジェクト」(恋愛をテーマとした俳句を掲載した季節・数量限定の「お〜いお茶 秋のLoversボトル」による展開)が若者に好評だった。また、「食」を通じて世界の食料・健康問題の解決に取り組んでいる、TABLE FOR TWOが実施した「おにぎりアクション2017」に、「お〜いお茶とおにぎりアクション」として参加した。
 
【むぎ茶(リーフ、ドリンク)】
むぎ茶リーフ市場は横ばいだが同社は42%のシェアを有しており、成長市場であるむぎ茶ドリンク市場でも47%のシェアを有する。同社の「健康ミネラルむぎ茶」は2016年もノンカフェイン茶系飲料の数量ベースでNo.1を維持した(同社調べ。2016年1月〜12月)。むぎ茶リーフではミネラル入りのティーバッグを開発し市場開拓に取り組んでいる(従来からむぎ茶ドリンクはミネラル入り)。同社は、春夏の暑さ対策に加え、秋冬の水分補給を念頭に、通年でのミネラル補給を提案している。
 
【野菜・コーヒー飲料】
同社が38%のシェアを有する野菜飲料市場は、血糖値を下げる効果が報道されているトマト飲料をけん引役に、2015年から2017年にかけて年率10%以上の成長が見込まれている。同社は、「1日分の野菜」の好調に加え、「理想のトマト」や「青汁」で需要の取り込みに成功している。「青汁」は、これまでの有糖が中心だったが、無糖の市場が拡大しており、同社はドリンク・パウダーの両カテゴリーで売上を伸ばしている。

コーヒー飲料は、従来からのショート缶(126〜200ミリリットル)市場が縮小する一方、同社が「TULLY’S COFFEE」で市場を開拓した201〜599ミリリットル缶市場が伸びている。ここにきて市場拡大が顕著なのが、500ミリリットルのPETボトル市場である。同社も「TULLY'S COFFEE Smooth black MEDIUM」で電子レンジで再加温可能なPETボトルを販売しているが、来春には、ボトルを一新したブラックとラテの新製品を投入する予定だ。
また、子会社のタリーズコーヒー及びコーヒー豆の製造・販売を行うDistant Lands Trading Co.(米国ワシントン州シアトル近郊。以下、DLTC社)との連携を強化して、緑茶同様に農園から製品に至るサプライチェーンの構築に取り組む。DLTC社は自社管理の農園で収穫されたコーヒー豆を使いGMS等のPBや外食向け卸しを手掛けている。今後も、農園から製品に至るサプライチェーンの構築による国内外での品質とブランドの向上に努める。
 
【グローバル展開】
紅茶等も含めた茶市場(茶飲料、茶リーフ、緑茶リーフ)は世界にも広がっており、2011年から2016年にかけて34%拡大した。特に無糖・高付加価値緑茶の成長余地は大きく、同社は米国と中国を重点市場と位置付けてグローバル展開を進めている。この上期は、グローバルティーバッグが米国で前年同期比76%増、前期の下期から販売を開始した中国では前期下期比93%増。ドリンク(お〜いお茶)も、それぞれ、12%増、27%増と伸びた。

また、インバウンドの取り込みに向け、空港での展開も強化しており、現在、羽田(茶寮 伊藤園)、成田(FaSola伊藤園)、新千歳(Tax Free 伊藤園)、福岡(GIFT SHOP 伊藤園)の4空港に出店している。羽田空港では国際線ターミナル内の「茶寮 伊藤園」に加え、この夏に到着階にタリーズコーヒーを出店した(国内店舗で上位5位に入る好調と言う)。この他、グローバルな認知度の向上と各国のバイヤーとの商談を目的に、千葉県・幕張メッセで開催された第1回“日本の食品”輸出 EXPO(2017年10月11日〜13日)に出展した。
 
 
今後の注目点
8月は統計開始以来3番目の長寿台風(台風5号)の上陸に加え、東京の日照時間が過去最低、連続降水量21日間(仙台は36日間)を記録する等で国内の飲料販売数量が前年同月比5%減少した。また、10月は2週連続で台風が上陸し(21号、22号)、東京では土曜日全てが雨となり、西日本でも1946年の統計開始以来、過去最多の降水量を記録する等で国内の飲料販売数量は同4%減少した(同社資料より)。こうした事業環境では、同社も販促費の積み増しによる在庫調整を強いられる。このため、18/4期上期は売上の伸び悩みによる相対的な固定費負担の増加と販促費の増加で利益が大きく落ち込むはずだった。しかし現実は前期比3.0%の増収、同1.2%の営業増益。この背景にあるのは、2016年のシェア低下による全社的な危機感である。同社は「お〜いお茶」を半年近くかけて容器を含めた商品の磨き込みを行い5月にリニューアルを行った。リニューアル効果と危機感をバネにした営業展開で業界全体が苦戦を強いられる中で結果を出した。これがマーケットリーダーの強さなのだろう。
今後は、「ほうじ茶」も楽しみだ。なぜなら大手飲料メーカーが参入準備を進めているからだ。緑茶飲料市場も有望市場だが、大手飲料メーカーが力を入れる厳しい市場だ。しかし、大手飲料メーカーの攻勢で市場が拡大する中、一時的にシェアを落としても、シェアを回復させ、市場拡大の恩恵を最も受けてきたのは、マーケットリーダーである同社だった。リーフ、ドリンク、パウダー(粉末)等、様々なカテゴリーへの展開により、ほうじ茶においてもブランドは着実に浸透している。
 
 
 
<参考:ESGとSDGsの取り組み>
 
【「持続可能な開発目標SDGsを伊藤園CSR/CSVへ導入】
同社グループは、12/4期に、組織の社会的責任に関するガイドラインである「ISO26000」に沿ったCSR体系を整えた。「ISO26000」では、「組織統治」、「人権」、「労働慣行」、「公正な事業慣行」、「環境」、「消費者課題」、「コミュニティへの参画及びコミュニティの発展(コミュニティ課題)」の7つの中核主題が示されており、このうち、「環境」、「消費者課題」、「コミュニティ課題」については、同社自らが取り組むべき課題の解決と社会的な課題の解決との同時実現を目指す共有価値の創造(CSV:Creating Shared Value)にもつながるため、同社グループは、これらを合わせて、「CSR/CSV」経営として推進してきた。
 
 
こうした中、2016年に国連において、「持続可能な開発目標(SDGs)」(17の目標と169のターゲット)が採択された。同社は「世界のティーカンパニー」を目指す上で、この採択が持続可能性(サステナビリティ)の共通言語になり得ると考えており、ISO26000による「CSR」と「CSV」の併用の体系に「SDGs」を組み込んでグループに関連する社会課題の理解を更に深めていく考え。

例えば、茶産地育成事業は、地域の雇用創出・活性化や生産者の経営安定化に寄与すると共に、高品質な茶葉の安定調達につながっている。この活動はISO26000でいうコミュニティ課題における同社の代表的なCSV活動であり、SDGsとの関連では「持続可能な消費と生産」、「持続可能な農業」、更には「持続可能な地域づくり」の目標にも寄与すると同社は理解している。この他、社員が地域社会の方と共に持続可能性について学ぶ事ができるよう工夫を加えつつ人材育成に取り組んでいる他、社会課題でもある地方創生や国際的スポーツイヤーズにおけるレガシー創出での文化プログラムの推進等でも本業を通じて貢献している。

こうした取り組みが社外からの評価につながっており、例えば、競争戦略面で評価された2013年の「ポーター賞」受賞の他、2015年度には、茶産地育成事業が「食品産業優良企業等表彰 農林水産大臣賞」、2017年には、「第5回プラチナ大賞」で「大賞」及び「経済産業大臣賞」を受賞。また、リサイクルができるアルミ箔を使用しない常温流通可能な新・環境配慮型紙パック飲料容器が「地球環境大賞 環境大臣賞」、「お茶で日本を美しく。」等のCSR活動が「日本水大賞 経済産業大臣賞」等の受賞につながり、同社の持続可能な社会づくりに対する貢献への評価が高まっている。
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書     更新日:2017年12月01日
基本的な考え方
当社グループの経営理念は、「お客様第一主義」であります。伊藤園グループ基本綱領の中で、伊藤園グループは企業の永続的な成長・発展と企業価値を高めるため、国・地域社会・消費者・株主・販売先・仕入先・金融機関等の利害関係者と協調し、企業の社会的責任を果たすことを経営の根幹としております。この経営理念が、当社グループの企業倫理の基本的な考え方であり、コーポレート・ガバナンスを支える不変の真理であります。当社グループはこの理念に基づき、全ての利害関係者の信頼に応え、持続可能な社会の実現に向けた経営を全役員及び全従業員一丸となって積極的に推し進めます。適切なコーポレート・ガバナンスを実現するために、監査役会設置会社である当社は、監査役が当社グループ会社の代表取締役あるいは担当取締役または従業員に対し、営業の状況、意思決定のプロセス等の確認を行い、監査を実施しております。監査役は、取締役会に毎回出席し、監査の状況につき会社全般または、個別案件ごとに客観的、且つ公平に意見を述べると共に監査役会での監査方針に従い取締役の業務執行を監査しております。
 
<実施しない主な原則とその理由>
【補充原則4−10(1)】 取締役の指名・報酬などの重要な事項について、例えば、任意の諮問委員会を設置することなどにより、独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。
当社においては、取締役の指名・報酬などの事項について、任意の諮問委員会は設置しておりませんが、以下の理由で、取締役の指名・報酬等の重要事項に関して、社外取締役の適切な関与・助言は得られているものと考えております。
(1)取締役・監査役候補者の指名および選任について、社外取締役を含む取締役会が定めた指名方針に基づき、取締役会で審議の上決定されること、また、(2)報酬の決定について、株主総会で決議された取締役の報酬総額の枠内において、社外取締役を含む取締役会で定めた報酬決定方針に基づき、報酬が適正に決定されること。
 
<開示している主な原則>
【原則1−4】株式の政策保有および政策保有株式に係る議決権行使に関する基本方針
当社は、取引先との関係強化等の観点から、当社グループの中長期的な企業価値向上に資することを目的として、取引先の株式等を取得し保有することができるものとし、保有意義や合理性の認められないものは原則として保有しないこととしております。
上記に基づき保有する上場株式等(以下「政策保有株式」)のうち、主要なものについて、保有するうえでの中長期的な経済合理性や、取引先との総合的な関係の維持・強化の観点からの保有効果等について検証し、取締役会において報告を行います。 政策保有株式にかかる議決権の行使については、各議案の内容を精査し、当社及び保有先の企業価値の向上に資するものか否かを総合的に判断した上で適切に行います。(当社ガイドライン第13条(株式等の政策保有に関する方針))

【原則1−7】関連当事者間の取引
当社がその役員や主要株主等との取引を行う場合には、当該取引が当社及び株主共同の利益等を害することが無いよう、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な場合を除き、当該取引についてあらかじめ取締役会に付議し、その承認を得るものとしております。(当社ガイドライン第12条(関連当事者間取引の管理体制)

【原則5−1】株主との建設的な対話に関する方針
当社は、経営陣幹部等による株主との建設的な対話を通じて、株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行います。(当社ガイドライン第15条(株主との建設的な対話に関する方針)
 
 
 
本資料は、情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。
このレポートは当社が信頼できると判断した情報源(当該発行会社が作成した会社説明資料等)の情報に基づき作成したものですが、その正確性について当社が保証するものではなく、また当資料の一部また全部を利用することにより生じたいかなる損失・損害についても当社は責任を負いません。
本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあります。また本資料の内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。
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