ブリッジレポート
(3189) 株式会社ANAP

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ブリッジレポート:(3189)ANAP vol.14

(3189:JASDAQ) ANAP 企業HP
家髙 利康 社長
家髙 利康 社長

【ブリッジレポート vol.14】2018年8月期第2四半期業績レポート
取材概要「同社は今後の取り組みとして「①再生プロジェクトの推進」、「②自社サイトの再強化」、「③AIを最大限に利用」の3つを掲げている。このうち・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年5月23日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ANAP
社長
家髙 利康
所在地
東京都渋谷区神宮前2-31-16
決算期
8月末日
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年8月 6,845 202 201 187
2016年8月 7,078 -60 -68 -20
2015年8月 8,115 -485 -459 -884
2014年8月 8,844 -480 -459 -386
2013年8月 8,590 402 621 261
株式情報(4/10現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,323円 4,365,732株 5,775百万円 13.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00 0.4% 70.26円 18.8倍 365.20円 3.6倍
※株価は4/10終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。ROEは前期実績。
BPSは第2四半期実績。
 
株式会社ANAPの2018年8月期第2四半期決算概要などについてご紹介します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
女性を主要顧客層とし、「ANAP」ブランドを中心としたカジュアルファッションを提供。常にお客様目線を大切にし、おしゃれを楽しみたい女性のニーズに応えるため、欲しいものが手頃な価格でいつでも手に入る、ファッションを「オンタイム」で楽しめる「現在(いま)」を提案することを企業理念として掲げている。「ブランド認知度の高さ」、「オンラインショッピングサイトの販売力」も大きな強み。「SS(春夏)ブランドからの脱却」、「フルシーズン型ブランドへの進化」を目指している。AIを利用した作業効率向上と外販による事業展開にも取り組んでいる。
 
 
1992年、現 取締役会長の中島 篤三氏が「株式会社エイ・エヌアートプランニング」を設立し、小売業をベースとしたマーケット・イン型企業として店舗を展開。個性的でリーズナブルな普段使いの衣料品を展開する「ANAP」は、ファッションに敏感な10代~20代の女性から高い支持を得る。
一方、当初より同社専務取締役であった現 代表取締役社長の家・利康氏が運営する「株式会社ヤタカ・インコーポレーテッド」は、製造・卸によるプロダクト・アウト型企業として自社ブランドを展開していたが、フランチャイズとして「ANAP」ブランドの販売にも参画し、フランチャイズ11店舗を出店。両社は緊密な協力関係を構築していった。
両氏ともにファッション業界を取り巻く時代の変化を感じる中、お互いの強みを融合させることにより強力なシナジー効果を追求することができ、それが今まで以上に顧客目線を重視した経営に繋がると判断し、2006年8月、両社は合併。翌2007年、社名を現在の「株式会社ANAP」に変更した。

「ANAP」をメインブランドとしながら、コンセプトの異なる多種多彩なサブブランドを展開して、幅広い顧客ニーズをとらえると共に、原宿、渋谷など首都圏を起点としつつ、イオンモールなど大型ショッピングモールへの出店も進めて全国へ店舗を展開。
2002年1月には独自の自社ブランド販売サイト「ANAPオンラインショップ」を開設するなど、業界の中でもインターネット販売にいち早く着手し、2013年9月には、(株)スタートトゥデイ(東証1部、3092)が運営するアパレル専門ネット通販「ZOZOTOWN」への出店も開始。2013年11月、東京証券取引所JASDAQ市場に上場した。
 
【企業理念など】
企業理念として以下のコンセプトを掲げている。
 
常にお客様目線を大切にし、おしゃれを楽しみたい女性のニーズに応えるため、欲しいものが手頃な価格でいつでも手に入る、ファッションを「オンタイム」で楽しめる「現在(いま)」を提案します。
(同社HPより)
 
【市場環境】
同社の主要顧客層は、以前は10代~20代の女性であったが、最近はエイジレスの女性となっている。同社の調べによれば、アパレル業界においては市場全体の約6割強を占める婦人服市場に属している。
また、婦人服の販売チャネルでは、百貨店が下降傾向にあるのに対し、専門店、ネット販売等が上昇傾向にあり、今後もインターネットを通じた販売の比率(EC化率)も上昇が予想されている。
こうしたことから、同社では後述するように、インターネット販売の売上構成比の拡大を目指して様々な取り組みを進めている。
 
【事業内容】
メインブランド「ANAP」を中心に、リーズナブルにおしゃれを楽しみたいという、多様なニーズをとらえるため、幅広い年齢層から支持されている全国ブランド、定番もの、流行もの、個性的アイテムまでコンセプトの異なるサブブランドを数多く展開している。豊富なアイテム数とリーズナブルな価格設定が特長となっている。
近年は新しい年齢層のKIDSやGIRLに注力しながら、アクセサリーやバック、小物類についてもブランドとして扱っている。2017年8月末現在、ANAPを始めとした16の主要ブランドを展開。これを店舗、インターネット、卸の3形態で販売している。
 
 
(1)インターネット販売事業
「2017年8月期 売上高 3,970百万円(売上構成比 58.0%)、セグメント利益 534百万円」
業界に先駆けて2002年1月より「ANAPオンラインショップ」としてANAPブランドのショッピングサイトの運営を開始した。2018年2月末の会員数は94万人。
常時1万アイテム以上の自社商品を品揃えしながら、ANAPカラーを全面に押し出したPOPなデザインのサイトで、ターゲットとする年代層が興味を持つ音楽や映画等の海外エンターテイメント情報を提供している。
ファッション雑誌を見ているかのような感覚や、ウィンドウショッピングを楽しんでいるかのような感覚になれることを意識して、掲載商品をコーディネートし、顧客が自ら着用した姿をイメージしやすくするといったサイト作りに力を入れている。
 
 
同サイトはいわゆるセレクト型のインターネットショッピングサイトとは異なり、システムに詳しい家・卍梗・蕕・爾・悗錣蠎・匈・・靴織轡好謄爐砲茲辰胴獣曚気譴織汽ぅ箸任△訶世・腓④米団Г箸覆辰討い襦まBR> 受注管理、売上管理、在庫管理、購入分析などを自社で一元的に管理している他、自社開発であるため、新たな機能の追加や従来機能の改善が容易であるというメリットがある。例えば、オンラインショップ担当スタッフが発案した顧客に楽しんでもらうためのアイディアや、顧客からのリクエスト等を即座にサイト上に反映して表現することができる。同社の商品戦略を機動的に実現する重要な仕組みとなっている。

同サイトにアクセスしてみると、例えば、「期間限定の均一セール」、「会員限定の送料無料キャンペーン」といったイベントが行われていることが分かるが、その内容は随時、極論すればアクセスの度に異なっており、その動的コンテンツのためにユーザーにとって魅力的なWebsiteとなっている。
こうした仕組みも自社開発したシステムによる自動プログラミングで実行されているため、極めて効率的にキャンペーンを展開することが出来るようになっている。

また、消費者のユーザビリティーを常に考慮し、使用デバイスとしてもPC、携帯を経ていち早くスマートフォン、タブレットへの対応も進めてきた。スマートフォンではデータ量の大きい画像への対応が必須だが、クラウドの利用などでこの課題をクリア。この結果、スマホ・タブレット受注割合は2017年8月期で88%と極めて高い。

同社では中期的な経営目標として「インターネット販売事業の売上構成比60%超」を掲げてきたが、17年8月期58.0%とほぼ達成。中長期的に「80%」を目標としている。

そのためには自社サイトのみでなく様々なサイトに多くのアイテムを出品する必要があるとの考えから、(株)スタートトゥデイが運営するアパレル専門ネット通販「ZOZOTOWN」、ネット通販大手「Amazon」、クルーズ株式会社が運営するファストファッションサイト「SHOPLIST.com by CROOZ」など他社サイトでの商品販売にも力を入れている。
また15年にわたり蓄積してきた豊富なデータを活かし、AI(人工知能)を利用した革新的なウェブサイトの開発・運営による更なる事業成長を目指している。
 
(2)店舗販売事業
「2017年8月期 売上高 2,572百万円(売上構成比 37.6%)、セグメント損失 80百万円」
「ANAP」とそのサブブランド等からなるANAPブランドの主要な販売チャネルとして原宿等に位置する路面の旗艦店舗、各地のファッションビルおよび郊外に位置する大型ショッピングモールへの出店など、全国に37店舗を展開している。(2018年2月末現在)

「顧客にANAPブランドの魅力を実感してもらうためのチャネル」として重視すると同時に、「市場動向、流行、顧客ニーズを掴むためのアンテナ」、「インターネット販売への導線」として位置づけている。
 
 
(3)卸売販売事業
「2017年8月期 売上高 259百万円(売上構成比 3.8%)、セグメント損失 0.8百万円」
全国のセレクトショップ向けに卸売販売を行っている。「ANAP」の各ブランドは他社バイヤーに対しセレクト商品を納品し、「Factor =」、「AULI」のブランドについては展示会受注によって商品を納品している。
 
 
2018年8月期第2四半期決算概要
 
 
減収も利益確保を優先し黒字転換
売上高は前年同期比3.5%減の31億16百万円。店舗販売事業では前期以前の退店による減少以上に既存店舗が好調に推移したが、インターネット販売事業は、自社ブランドイメージの毀損を回避するため他社アパレルのEC強化の値引き合戦に積極的に参入しない方針の下、粗利益確保を優先したため全社でも減収となった。
ただ、再生プロジェクト効果で粗利率が6.1ポイントと大きく改善したことから営業利益以下、損失から利益に転換した。
 
 
 
◎インターネット販売事業
自社ブランドイメージの毀損を回避するため、他社アパレルのEC強化の値引き合戦に積極的に参入しない方針の下、粗利益確保を優先したことで減収となった。売上高構成比は低下したが同業他社と比較して引き続き高いEC比率を実現している。
また、自社サイトのユーザーインターフェースの改善等を実施中の影響により減益となった。
 
 
◎店舗販売事業
前期末より5店舗退店した結果、店舗数は37店舗となった。前期以前の退店による減収以上に既存店舗が好調だったため増収となり、増収効果及び退店店舗の経費圧縮効果により利益も大きく改善した。
 
◎卸売販売事業
カジュアルファッション市場の低迷による既存取引先への販売が減少し減収・減益となった。
 
 
たな卸資産および投資その他の資産の増加などで資産合計は前期末比45百万円増加し26億54百万円となった。
長短借入金の減少で、負債合計は同79百万円減少し、10億59百万円となった。
利益剰余金の増加、新株予約権の行使による株式の発行などで純資産は同1億25百万円増加の15億94百万円。
この結果、自己資本比率は前期末より3.8P上昇し60.1%となった。
 
 
営業CFのプラス幅はほぼ変わらず。定期預金の担保解除による収入により投資CFはプラスに転じ、フリーCFのプラス幅は拡大した。
前年同期間にあった短期借入金の減少が無かったことなどから財務CFのマイナス幅は縮小。
キャッシュポジションは上昇した。
 
(4)トピックス
◎ファッションEC販売向けのタグ付け業務効率化システムのサービス提供を開始
前回のレポートで紹介したように、ANAPの子会社である株式会社ATLABと株式会社GAUSSは、画像および自然言語を人工知能(AI)活用して解析し、類似の商品画像から自動的に最適なタグを抽出および付与するシステムである「ATS(Auto Tagging System)」を開発し、2017年10月末より「ANAPオンラインショップ」で試験運用を進めていたが、2018年4月より販売を開始することとなった。

(共同開発した技術の特徴)
ファッション領域に特化して両社が共同開発したAIは3つの特徴がある。
① 画像特徴量を解析して類似ファッションアイテムを検索(深層学習)
② 流行のファッション用語を解析して画像に最適なタグを提案(強化学習)
③ ファッションアイテムの商品説明文とタグを自動生成(自然言語処理)
この特徴を活かしてアパレルにおける業務効率を飛躍的に改善させるのが「ATS」であり、アルゴリズムについては特許出願を準備中である。
 
 
(導入効果)
通常オンラインストア運営では、新商品をモデルやマネキンに着せて写真を撮影したのち、商品ごとに検索ワード付きの説明文を人間が作成する。
これに対してATSでは、商品を撮影すればその画像特徴量で類似の画像から最適な説明文とタグを自動生成する。
タグ付にかかる時間を1型当たり作業時間10分とすると、同社における2016年度の取り扱い型数は15,500型であったので、年間作業時間は2,583時間であり、大幅な作業時間短縮を見込むことができると同社では考えている。
また、AIですでに販売されている類似製品の説明文やオンラインサービスで実際に検索されたワードからタグを自動抽出して最適なタグを提案することも可能で、検索エンジンからの消費者の流入数や検索ワードのヒット率の向上を通じた、EC売上増加を見込みことができる。
 
◎ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」との在庫連携を開始
2018年4月から、株式会社アイル (3854、JASDAQ)が提供する複数ECサイト一元管理ASPサービス「CROSS MALL(クロスモール)」を利用し、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」の取り寄せ商品の在庫連携を開始した。

「CROSS MALL(クロスモール)」は、複数ECサイトの商品・在庫・受注・発注・仕入の一元管理が可能な、月額制のASPサービス。
同サービスの利用により、ANAPは購入者から注文が入った商品のみを指定の倉庫に納品すればよく、他の商流での販売機会ロス防止等への対応が可能となり、よりオペレーションの一層の効率化が可能となる。
 
 
2018年8月期業績予想
 
 
再生プロジェクト効果で粗利率改善し利益を上方修正。
再生プロジェクト効果で粗利率が当初予想を上回って改善しているため、各利益を上方修正した。
売上高については、インターネット販売事業において前述の理由で粗利益確保を優先したため上期減収となり、楽観視はしていないが、店舗販売事業において既存店舗が好調なことに加え、同社が得意とする春夏シーズンが控えているため据え置いている。
配当は前期と同じく5円/株を予定。予想配当性向は7.1%。
 
 
今後の注目点
同社は今後の取り組みとして「①再生プロジェクトの推進」、「②自社サイトの再強化」、「③AIを最大限に利用」の3つを掲げている。
このうち、「①再生プロジェクトの推進」は粗利率の大幅な改善につながっている。また、構成比の更なる拡大に注力しているインターネット販売事業が前年同期比減収となったのは「②自社サイトの再強化」のためにアプリのUI(ユーザーインターフェース)改善に取り組んでいるためであり、懸念には及ばないであろう。
そして「③AIを最大限に利用」については、自社の業務効率性を大きく改善させるとともに、いよいよ4月からはファッションEC販売向けのタグ付け業務効率化システムのサービス提供を開始することとなり、各施策は着実に前進している。
今後は「SS(春夏)ブランドからの脱却」、「フルシーズン型ブランドへの脱却」を掲げる同社において、施策②および③がどのように結果として現れるかを注目したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最新更新日:2017年12月7日
JASDAQ上場企業として、「当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則に則り、実施しております。」と記している。