ブリッジレポート
(1909) 日本ドライケミカル株式会社

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ブリッジレポート:(1909)日本ドライケミカル vol.13

(1909:東証1部) 日本ドライケミカル 企業HP
遠山 榮一 社長
遠山 榮一 社長

【ブリッジレポート vol.13】2018年3月期業績レポート
取材概要「減収となった防災設備事業、車輌事業だが、受注残高は前期を上回っており、足元の状況は決して悪くないようだ。ただ、今期は3期連続の営業減益・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年7月11日掲載
企業基本情報
企業名
日本ドライケミカル株式会社
社長
遠山 榮一
所在地
東京都港区台場2-3-1 トレードピアお台場
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 32,622 1,109 1,160 1,104
2017年3月 30,919 1,268 1,287 867
2016年3月 33,797 1,865 1,874 1,136
2015年3月 30,418 1,568 1,566 1,050
2014年3月 31,316 1,688 1,667 835
2013年3月 28,931 1,612 1,576 809
2012年3月 23,765 1,041 994 404
2011年3月 21,248 738 729 343
2010年3月 21,409 618 580 1,403
2009年3月 23,624 991 1,000 687
2008年3月 10,232 159 165 445
2007年9月 19,756 -38 4 -69
2006年9月 17,024 -222 -204 -229
2005年9月 17,927 48 66 18
株式情報(7/3現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,291円 3,540,594株 8,111百万円 10.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
60.00円 2.6% 203.36円 11.3倍 3,278.95円 0.7倍
※株価は7/3終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
日本ドライケミカル(株)の2018年3月期決算概要などについてご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「防災のプロフェッショナル」として高い評価を受けている国内最大級の総合防災企業であり防災エンジニアリング企業。同社グループは、各種防災設備の設計・施工・保守点検、消火器及び消火設備、消防自動車、自動火災報知設備の製造・販売、防災関連用品の仕入・販売等、幅広く防災にかかわる事業を行なっている。
長年にわたって培われた経験と実績、高いエンジニアリング能力、独自の製品開発力などが強み。
2000年12月上場廃止となったが、2011年6月に再度東京証券取引所市場第2部へ上場。2013年12月には市場第1部に銘柄指定された。積極的なアライアンス戦略で顧客に新たな付加価値を提供する。
 
 
【社長プロフィール】
遠山 榮一社長は、1950年生まれの68歳。
1972年に三菱商事に入社後、経理・財務部門、海外子会社などを歴任後、2004年1月同社入社。2005年8月に代表取締役就任。
認知度・信用力の拡大を通じた企業価値の向上と企業体質の強化を図るとともに、従来の発想にとらわれない「防災市場」の創造・開拓を目指す。
 
【社是】
一、もの作り
われわれは、社会のニーズを先取りした高品質な防災機器を製造、販売し、より安心・安全な社会インフラの構築に貢献する。
一、顧客満足
われわれは、社員一人ひとりの質的向上を目指し、火災の報知から消火までをカバーする最強の防災プロ集団であり続ける。
一、コンプライアンス
われわれは、コンプライアンス精神を尊び、自己規律を育む職場環境を醸成する。
 
【市場環境】
同社のメイン事業である防災設備事業の対象は主にオフィスビル、高層マンション、大型ショッピングセンターなど。
建設経済研究所の調査によれば、民間非住宅分野の建築着工床面積は企業に設備投資が増加基調の中、今後も底堅く推移すると見込まれるということだ。
 
 
一方で、「リニューアル需要」も同社にとって重要なターゲットとなる。
国土交通省の調べによると、非住宅を対象としたリニューアル市場の市場規模は、2015年度が約7.8兆円、2016年度が約10.1兆円と大きく増加している。建設バブル期に設置された機器のリニューアル需要顕在化は大きな事業機会となろう。
 
 
◎上場の同業他社としては以下の3社を挙げることができる。
 
 
従来の防災業界には例のない積極的な活動で、新市場の創造・開拓にチャレンジしているものの、PER、PBRは低水準にとどまっている。企業規模の拡大、収益性の向上とともに、更なる認知度の向上が必要だろう。
 
【事業内容】
総合防災企業として「防災設備事業」、「メンテナンス事業」、「商品事業」、「車輌事業」の4事業部門から構成されている。各事業において「防災」というニーズ全てに対応し、顧客満足度の最大化を図っている。また、新たな顧客ニーズを開拓し、新しいビジネスの開発に結び付けていくという方針を掲げている。
 
<防災設備事業>
売上高の約半分を占める同社の主力事業。建築防災設備、プラント防災設備、特殊防災設備の3分野がある。
どの分野においても顧客の防災ニーズは多様化、大型化、高度化、複雑化している。同社は、長年培ってきた豊富な実績・ノウハウと高い技術力によって、顧客に対し最適な防災システムを提供している。
 
「建築防災設備」
60年以上の歴史を持つ同社において最も実績のある分野。
対象建築物は、オフィスビル、高層マンション、大型ショッピングセンター、駐車場、トンネルなど。
 
 
最近でも都内の大型再開発において数多くの施工実績をあげている。

同社はこれら建築物の建築主もしくは建築に携わる大手建設会社や設備工事会社から各種防災設備の設置を受注している。

一般建築物の防災設備は、消防法によってその設置が義務付けられており、設置基準も詳細に定められている。また、設置後の点検に関しても厳格な基準が設けられている。
消防法の歴史は常に強化の歴史であるが、同社はその強化に迅速且つ適切に対応し、大切な人命と貴重な財産を守るという社会的使命を担い、責任を持って遂行。顧客からの高い信頼を獲得してきた。
 
「プラント防災設備」
原子力、火力、ガス、石油、石炭などさまざまなエネルギープラントから、石油化学、医薬、鉄鋼など広範な産業分野の製造工場および倉庫などが対象。
 
 
顧客は電力会社や重電メーカーなど。

エネルギープラントでは、火災が発生し初期消火に失敗すると油流出を伴う大規模火災に発展する恐れがある。
そこで、このような火災には大量の消火薬剤を散布できる泡やガスといった消火設備が最適である。
同社は、このように、対象物の危険性、特殊性、形状に最も適した防災設備をデザインし、構築している。
 
「特殊防災設備」
50年の歴史と実績を持つ。
船舶用の防災設備は船舶安全法、海上人命安全条約、船級協会などの規定により設置・点検が義務付けられている。
 
 
自船消火設備として機関室や貨物艙には二酸化炭素消火設備、ガス運搬船甲板部には粉末消火設備、他船消火設備としてタグボートや消防艇には泡水消火設備や粉末消火設備などがある。
対象船舶は大型タンカー、旅客船・フェリー、消防艇など多岐にわたる。
 
<メンテナンス事業>
設置した防災設備もいざというとき確実に作動しなくては何の意味もない。
防災設備の点検は消防関係法令に規定され、一般的に年間2回の点検が義務付けられている。
同社は消防設備士の資格を持つスタッフによる各種防災設備の保守点検業務およびそこから派生する修繕及び改修工事を行っている。
主要顧客は施主及びビル管理会社など。
同事業については、社会的な要請やコンプライアンス意識の高まりを背景に成長が見込まれること、また収益性の観点から今後も収益の柱として強化していきたいと考えている。そのためには、幅広く防災の知識を有し、顧客に信頼される人財の育成・強化が必要と認識している。
 
<商品事業>
同社は日本初の粉末消火器を開発したパイオニアであり、以来、研究・開発を重ね、独自の技術で幅広いニーズに応えるさまざまな消火器や防災関連商品を企画・開発している。
 
 
オフィス・工場などに設置される一般的なタイプの消火器のほかに、発電所や石油関連施設などの危険物施設向けの大型消火器、自動車に搭載する消火器、家庭用消火器などさまざまなタイプの消火器の製造・販売を行っている。

1999年には日本で初めてアルミニウム製容器を市場で最も流通しているABC粉末消火器10型に採用して販売を開始し、その後もアルミニウム製容器を用いた多くの製品を展開してきている。

アルミニウム製消火器は、
・鉄製に比べ約20%軽いため、操作性が格段に向上する。
・錆びにくい性質から腐食による破裂を起こしにくい。
・リサイクル性が高く環境にやさしいため、ISO14000Sやごみゼロ工場などに適している。
といった特徴がある。

同社はアルミニウム製消火器の先駆的メーカーであり、今後は殆どが鉄製である海外市場へ進出していく考えだ。
消火器以外には、火災報知器、避難器具、防災キットなど各種防災用品の仕入・販売を行っている。
 
 
同社は全国14ブロック、計265社(2018年3月末現在)の販売代理店で構成されている「エクスチン会」により、全国をカバーする強力な販売体制を構築している。
(「エクスチン」は、消火器の英語「a fire extinguisher」から引用している。)
 
<車輌事業>
消防自動車には、消火栓や河川から水を汲み上げ放水する消防ポンプ自動車、水源のない場所で放水可能な水槽付消防ポンプ自動車、油火災等の消火を行う化学消防ポンプ自動車などさまざまな種類があるが、同社は、消火・防災技術の最先端を結集することで、こうした専門性の高い消防自動車のニーズに対応している。
 
 
同社は、消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、化学消防ポンプ自動車の他、支援車、指揮車、小型動力消防ポンプ付水槽車など、各種消防自動車を製造・販売している。
主要装置の機能の高度化のみならず、自動揚水モニター装置、泡自動混合装置などの電子化、自動制御化も進めることで、操作性・安全性の向上および省力化に貢献している。
車両メーカーよりトラックシャーシを購入した後、顧客ごとの仕様に合わせた艤装(*室内外の各種装備などを車体に取り付ける工程のこと)を施し消防自動車として納入する。顧客のほとんどは地方自治体で、交換需要が中心となっている。競争は厳しいが長年携わってきた中で同社独自のアイデアや技術も具現化してきており、今後も注力していく考えだ。
 
 
2018年3月期のROEは売上高当期純利益率の上昇により10%へ回復した。ただ、特別利益に国庫補助金5億79百万円を計上したためでもあり、本質的・継続的な収益性の向上が期待される。
 
【特徴と強み】
同社の事業ドメインである防災業界は、消防法をはじめとする様々な法律があり、工事・保守点検では消防設備士の資格が必要である。また特定の製品においても日本消防検定協会などによる検査の合格が必須であることなどから、参入障壁が高いことが特徴である。これに加えて同社独自の特徴としては以下の4点があげられる。
 
① 長年にわたって培われた経験と実績
同社の創業は1955年4月。60年以上の歴史を有しており、長年にわたり培ってきた経験と実績に基づく信用力は、大きな財産である。
 
② 高度なエンジニアリング能力
一般建築物、プラント、船舶など幅広い分野における多数の、そして多様な防災設備の施工実績は、同社の高度なエンジニアリング能力に裏付けられている。
 
③ 独自の製品開発力
非磁性体二酸化炭素消火器、地図式受信機、差動式分布型感知器(熱電対式)、NEOスプリンクラーシリーズなど同社オンリーの製品が多数。今後も研究開発に注力し、独自製品の開発を進めていく。
 
④ 積極的なアライアンス戦略
防災業界は、専門領域が分化され、また他社と共同で事業を展開するといったことは極めて例がない業界。
そうした中で、同社はアウトサイダーであった遠山社長のリーダーシップの下、従来の発想に囚われることなく新たな防災マーケットを創造しようという経営戦略により、積極的なアライアンスを展開している。
 
 
2018年3月期決算概要
 
 
増収・減益
売上高は前期比5.5%増加の326億22百万円。メンテナンス事業、商品事業が好調だった。
将来に向けた研究開発費など販管費の増加を吸収できず、営業利益は同12.6%減の11億9百万円。
特別利益に国庫補助金5億79百万円を計上したため当期純利益は同27.3%増の11億4百万円となった。
 
 
◎防災設備事業
減収減益。
都市再開発等の大型案件、リニューアル案件にかかる受注は引続き好調で受注残高は前年同期を上回っているものの、工事期間の長い大型工事案件の進捗が進まなかった。

◎メンテナンス事業
増収増益。
改修・補修工事案件についての引き合いのその掘り起こしを積極的に進めた。また、ガス系消火設備等にかかる容器弁の点検作業が増加した。

◎商品事業
増収増益。
消火器類の販売が好調で、小工事の引き合いが堅調だった。

◎車輌事業
減収減益。
前年度にあった大型車輌の納入がなかった。売上高の減少により製造コストをカバーできなかった。
 
 
現預金、売上債権が増加し流動資産は前期末比27億23百万円増加。固定資産は有形固定資産増等により同5億82百万円増加し、資産合計は同33億5百万円増加の276億26百万円となった。
仕入債務の増加などで、負債合計は同22億8百万円増加の160億16百万円となった。
利益剰余金の増加などで純資産合計は同10億97百万円増加の116億9百万円。
この結果、自己資本比率は42.0%と前期末に比べ1.2ポイント低下した。
 
 
前期減少した売上債権が増加したことなどから、営業CFのプラス幅は縮小した。
投資CFのマイナス幅はほぼ変わらず。この結果フリーCFのプラス幅も縮小した。
前期にあった自己株式の取得による支出が無くなったことなどから財務CFのマイナス幅は縮小した。
 
 
2019年3月期業績見通し
 
 
増収減益予想
売上高は前期比2.7%増加の335億円を予想。
営業利益は同9.9%減少の10億円の予想。配当は前期と同じく60.00円/株を予定。予想配当性向は29.5%。
 
 
成長戦略
 
(1)経営課題と経営施策
経営課題である「収益基盤の強化」のために、①アライアンスの強化、②研究開発体制の強化の2つを主要な経営施策としている。
裾野の広い自火報市場を対象に、2つの施策により同社にしかない独自の防災製品や防災システムを開発して、製品およびサービスの差別化を進めるとともに、狙うべき市場や顧客を定めて提案型営業を展開し、市場シェアの拡大を図っていく。
 
(2)アライアンスの強化
顧客満足度向上を最優先課題と認識し、下記のように様々なアライアンスを結んでいるが、その深掘り・強化を進めつつ、新たな提携先についても前向きに検討していく。
 
 
(3)新製品・戦略製品
①NDCプレミア90
安心のグレードを高めるプレミアムな消火器。ハイグレードな消火薬剤であるリン酸アンモニウムを通常タイプよりも多量に含有しており、再燃防止作用と負触媒作用による高い消火能力を発揮する。
 
②住宅用フードファン付レンジ用自動消火装置「キッチンファイター」
キッチンのガスコンロ前部壁面に設置。てんぷら油への着火などで、温度が60℃に達するとプレアラームが鳴り、さらに95℃に上昇すると消火薬剤を放出する。
住宅用及び飲食店への販売を進める。
 
 
③DRFFE 密集住宅用高所消火装置
FireDos社製の放水装置をポールに搭載した消火装置。ポール先端に設置したカメラで火点を特定するとともに、地上8メートルから放水することで、上下左右、広範囲に放水が可能で最小スペースでの消火活動が可能。
密集市街地など狭い路地での消火活動に威力を発揮する。
 
 
④VESDA超高感度煙検知システム
文化財・美術館、データセンターやサーバールーム、電力施設などを設置対象とするXtralis社製の同製品は、火災が発生する前の微量な煙を早期に検知し、熱源の供給を遮断するなどの初期対応により、被害を最小限に抑えることができる「予防防災」機能に優れるとともに、データセンターにおいて異常が発生したサーバーをピンポイントで特定する「VESDAアドレッサブル」機能も大きな特長である。
 
 
今後の注目点
減収となった防災設備事業、車輌事業だが、受注残高は前期を上回っており、足元の状況は決して悪くないようだ。
ただ、今期は3期連続の営業減益で、増収ではあるものの売上高水準は3期前、16年3月期に及ばない点は株価動向にも表れているように、同社をウォッチしている投資家にとっては物足りない状況であろう。
投資家としてはアライアンスのシナジー効果発現のためのより具体的な取り組み内容について知りたいところである。引き続き同社独自の差別化製品の拡販がいつごろ果実として実を結ぶのかをウォッチしたい。
 
 
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年6月28日