ブリッジレポート
(7191) 株式会社イントラスト

スタンダード

ブリッジレポート:(7191)イントラスト vol.5

(7191:東証1部) イントラスト 企業HP
桑原 豊 社長
桑原 豊 社長

【ブリッジレポート vol.5】2018年3月期業績レポート
取材概要「家賃債務保証サービスを提供する中で様々な顧客ニーズをくみ上げて事業化したのがソリューションサービスであり、家賃債務保証と補完しながら・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年7月11日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社イントラスト
社長
桑原 豊
所在地
東京都千代田区麹町1-4
決算期
3月末日
業種
その他金融業(金融・保険業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 2,951 772 752 508
2017年3月 2,713 608 598 409
2016年3月 2,650 541 541 524
2015年3月 2,845 18 13 -171
株式情報(6/26現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
761円 22,145,522株 16,853百万円 22.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
7.00円 0.9% 28.43円 26.8倍 110.27円 6.9倍
※株価は6/26終値。
 
イントラストの2018年3月期決算の概要と2019年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
総合保証サービス会社として、賃貸住宅における家賃債務保証を中心に、病院における医療費用保証、介護施設における介護費用保証等、連帯保証人の代替商品として各種保証商品を幅広く展開。保証から派生したサービス商品の提供(ソリューション事業)にも力を入れており、保証を通じた社会への貢献を目指している。本社を東京に置き、秋田市、富山市、名古屋市、大阪市、岡山市、福岡市および横浜市に拠点を有する。社名のイントラストは、「責任・任務を信頼して任せる、金銭を預ける、仕事等を人に委ねる」という意味を持つ英語の“Entrust”に基づくもの。「総合保証サービス会社として、あらゆる分野においてお客様から全面的な信頼を得て業務をお預かりすることで、ご満足いただけるサービスを提供できる企業を目指す」と言う思いが込められている。 尚、2018年3月末現在、東証1部に上場する(株)プレステージ・インターナショナル(4290)のグループ会社であるPrestige International(S) Pte Ltd.(シンガポール)が発行済株式数の57.38%を保有している。 【経営理念】 クライアント企業に三つの価値(喜び、安心、信頼)を提供する事を経営姿勢として掲げ、五原則(感動、挑戦、自覚、品格、活躍)に従って会社運営を行っている。また、会社の成長と社員の幸せがリンクしている会社を目指しており、「社員全員がそれを実感できるのであれば、会社は必ず成長する」との考えの下、日々の仕事において、三つのモットー(明るく、楽しく、真剣に)を尊重している。 【沿革】 2006年3月、賃貸不動産の連帯保証人代行システムの構築を目的に(株)イントラストとして事業をスタート。2007年10月には、大和ハウスグループの賃貸住宅管理会社である大和リビング(株)と業務提携し、同社専用の連帯保証人代行システム「D-Support」の販売を開始した。 2010年2月にプレステージ・インターショナルグループ入りし、同年10月に大手信販会社との業務提携の下、連帯保証人代行システムに家賃決済クレジットサービスを組み込んだ保証商品「Ce-Trust」の販売を開始(2012年3月に後継商品「Ce-TrustⅡ」を投入)。同年12月には(株)三菱総合研究所の協力を得て審査システムを開発し内製化。2011年6月から2014年5月にかけて、秋田、名古屋、大阪、福岡、富山、岡山へと拠点展開を進め、2017年11月に横浜ソリューションセンターを開設した。 2014年6月には新たな保証商品の開発を目的に三井住友海上火災保険(株)と業務提携。同年8月に介護費用保証商品「太陽」の販売を、2015年5月に医療費用保証商品「虹」の販売を、それぞれ開始。この間の2014年10月には、ソリューション事業において、SMS(ショートメッセージサービス)を活用したDoc-onサービスを開始した。2016年8月に保険デスクサービスを開始した。2016年12月に東証マザーズに株式を上場し、2017年12月に東京証券取引所市場第一部に市場変更した。 【事業概要】 総合保証サービスの単一セグメントの下、保証事業とソリューション事業を手掛けている。保証事業は、同社が連帯保証人(保証委託契約)として契約に係る各種費用の滞納リスクをカバーすると共に、不動産管理会社等に対して、申込審査、督促回収、法対応ネットワークの整備、債権管理等、関連するサービスを提供する。一方、ソリューション事業は、連帯保証はせず、関連サービスのみを提供する。このため、保証事業は賃借人からの保証料と不動産管理会社等からの手数料が主な収入となり、ソリューション事業は手数料が主な収入となる。 18/3期の売上構成比は、保証事業49.6%、ソリューション事業50.4%。 保証事業 保証事業は、主力の家賃債務保証と、育成中の医療費用保証及び介護費用保証に分かれる。賃貸住宅の家賃債務保証の付帯率は未だ60%程度に過ぎず、大きな市場が残っている。家賃債務保証では、賃貸不動産の賃貸借契約において、同社が賃借人の連帯保証人となり、賃料等の滞納リスクを引き受ける。一方、医療費用保証では、医療費用保証商品「虹」を提供しており、医療機関の入院手続きにおいて、同社が連帯保証人となり、入院費用自己負担分等の支払いに係る滞納リスクを引き受ける。また、介護費用保証では介護費用保証商品「太陽」を提供しており、介護施設の入居契約において同社が連帯保証人となり、介護施設の利用料等の滞納リスクを引き受ける。 家賃債務保証及び介護費用保証では保証委託契約時及び保証委託契約更新時に対価を受け取り、対価は保証期間内の月数に応じて按分され売上計上される。医療費用保証では保証委託契約時に対価を受け取り一括して売上計上される。また、家賃債務保証では、引き受け前の審査と滞納発生時の回収(コンプライアンス重視)によりリスクを最小限に抑え、収益の安定化を実現している。一方、介護費用保証及び医療費用保証においては、損害保険会社と保険契約を締結し、滞納リスクをヘッジしている。 イントラストの強み 同社の事業の特徴は、カスタマイズ、新商品開発、コンプライアンスの徹底、の3点。家賃債務保証では、審査業務、滞納管理、未入金案内等のサービスをワンパッケージ化して提供しているが、画一的な商品パッケージは存在せず、クライアント(通常は不動産管理会社)毎に保証商品をカスタマイズして提供している(業務負担の軽減を念頭に、業務フローについてもカスタマイズされている)。新商品開発では、「家賃決済クレジットサービス付商品」、医療費用保証商品「虹」、介護費用保証商品「太陽」、或いはDoc-onサービス(後述)等、家賃債務保証で培ったノウハウを他の保証分野やソリューション事業に活かし、継続的に新商品を投入している。一方、督促・回収においては、弁護士の指導のもと不動産管理会社と業務フローを共有し、コールセンターによる督促から現地対応に至るまでコンプライアンスを徹底している。長期滞納では、パートナーシップを提携した専門の弁護士が全国をカバーし、適法な手続きに則り対応している。 ソリューション事業 ソリューション事業は、C&O(コンサル&オペレーション)サービスとDoc-onサービスと保険デスクサービスに分かれる。C&Oサービスは、家賃債務保証で培ったノウハウを受託サービスとして提供するもので、審査業務、滞納管理、未入金案内など賃貸不動産の入居者等を対象としたサービスをフルラインもしくは個別に不動産管理会社等に提供。スコアリングモデルに基づく独自の審査システムや自社コールセンター等、各種関連業務を柔軟に提供できる体制が整備されている。また、問題が発生した際の迅速な解決に必要な弁護士法対応ネットワークも確立している。 一方、Doc-onサービスは、SMS(ショートメッセージサービス)、クレジットカード決済サービス、コールセンターサービス(SMSリスト管理、メッセージ作成、配信量管理、受電対応、入金確認、レポート管理等のコールセンターサポートといった各種のサービスをトータルで提供)をパッケージにしたサービス。 強みとして、①国内大手SMS通信事業者の通信網を利用した「高い安全性」、②紙媒体の郵送案内と比較した場合のコンタクトに要するコスト削減、及び③葉書及びインターネットメールのコンタクト手法と比較した場合の高い開封率、の3点を挙げる事ができる。 保険デスクサービスは、賃貸住宅の入居者向けに火災保険の募集、付保管理に係る業務を総合的に支援するサービス。火災保険の案内、コールセンターによる問合せ対応、火災保険の締結、契約後の異動等に係る事務、不動産管理会社への報告までトータルで提供する。専門的な知識・ノウハウに、専用システム、オペレーション体制も万全に整備されている。 18/3期末の保有契約件数は、保証事業102,429件(17/3期末117,759件)、ソリューション事業195,683件(同148,374件)、計298,112件(同266,133件)。前期末との比較で12.0%増、14/3期末から18/3期末にかけての4年間で20.2%増と順調に伸びている。契約の大半は売上が契約期間に応じて按分計上されるため、契約の都度、将来に計上される売上が積み上がっていく(売上がストックされていく)。18/3期は売上高の56%がストックからの売上だった。
 
 
2018年3月期決算
前期比8.8%の増収、同27.0%の営業増益 売上高は前期比8.8%増の29億51百万円。既存のC&O(コンサル&オペレーション)の好調に加え、新規の入居申込審査業務や不動産管理会社の保険募集業務の負担を解消する保険デスクサービスの寄与もあり(共に2017年12月に本格稼働した横浜ソリューションセンターで提供している)、ソリューション事業の売上が同27.6%増加した。一方、保証事業の売上は同5.4%減少した。主要クライアントである大和リビング(株)が連帯保証人不要制度を導入した事に伴い、提供するサービスが保証からソリューションへ移行している事が要因だが、この影響を除くと増収。 営業利益は同27.0%増の7億72百万円。業容拡大で人件費が増加したものの、増収効果とその他経費の抑制により原価率が1.9ポイント改善し、売上総利益が同13.3%増加。一方、安定的な回収活動の成果で貸倒引当金繰入額及び保証履行引当金繰入額や債権回収に係る人件費等の負担が相対的に軽減され販管費はわずかな増加にとどまった。 期末の保有契約件数(保証事業+ソリューション事業)は298,112件と前期末の266,133件と比べて12.0%増加した。 医療費用保証及び介護費用保証の提携戦略も進展 2年前から取り組んでいる医療費用保証及び介護費用保証も事業拡大のための基盤となる業務提携が順調に進んだ。医療費用保証では、提携医療機関が94(上期末80)医療機関と前期末比62%、病床数が20,557(同18,150)病床と同48%、それぞれ増加。介護費用保証では、提携介護事業者が142(同128)事業者と同21%増加した。 医療費用保証では、(株)エラン(証券コード:6099)と業務提携して、(株)エランが提供する「CSセット(ケアサポートセット)」と(株)イントラストが提供する医療費用保証を組み合わせた新商品「CSセットR」を共同開発し、2018年2月に販売を開始した。「CSセット」は、入院患者が入院時に必要となる衣類やタオル類、日用品等を日額定額の支払いでレンタルできるサービス。このサービスと患者が入院時に求められる入院費用の連帯保証人代行サービスをセットにした。現状、病院では入院時に概ね連帯保証人の用意が必要とされている。一方、(株)エランが提携している病院では、入院患者の80~90%が「CSセット」を利用しており、提携効果は大きい。 (2)総合保証会社としての新たな成長ドライバーの育成 新たな成長ドライバーの育成にも取り組み、2017年5月に事業用家賃債務保証商品の既存取引先への導入を、2017年8月に高齢者向け家賃債務保証商品の入居希望者への案内を、2018年2月に養育費保証商品の試行的な販売を、それぞれ開始した。 事業用家賃債務保証商品 事業用賃貸物件は住居用賃貸物件に比べ賃料が高額であり、また、契約先が法人である事が多く、物件オーナーや不動産管理会社が抱えるリスクは大きい。その一方で事業用の機関保証商品は充分に普及していなかったため、同社は取引先から商品開発の要望を受けていた。事業用家賃債務保証商品を導入する事で、物件オーナーや不動産管理会社は督促・回収業務及び法的対応業務等の負担軽減を図る事ができ、このメリットを活かして賃貸時のサービスメニューを増やす等、契約率向上策を打つ事も可能になる。また、新設、設立年数が浅い等で信用力が劣る企業にとっては、同社が連帯保証人となるため入居時の信用力が増し入居の後押しとなる。 高齢者向け家賃債務保証商品 「高齢者向け賃貸の推進」という社会の要請に保証スキームで応えるべく開発した家賃債務保証商品であり、見守りサービスを付帯した。家賃債務保証で高齢者の入居を支援し、入居後は定期的に入居者の安否や健康状態の確認をする事で家賃滞納や孤独死による賃貸住宅オーナーの不安を軽減する。保証範囲は、賃貸借契約における賃料等 (賃料・共益費・月額固定費用・変動費等)、原状回復費用、訴訟その他法的手続き費用。入居者の負担は、初回保証料(月額賃料等×100%)と初回契約から1年毎の更新保証料20,000円(1年毎に自動更新)。2017年8月に大和リビング(株)で、2018年1月にパナソニック ホームズ不動産株)で、それぞれ導入された。 養育費保証商品 「我が国の人口動態」(厚生労働省)によると、2015年の離婚件数は年間で約22万組、うち未成年の子がいる離婚は約13万組。しかし、全体の約70%の母子家庭が養育費を受けていないと言う。母子家庭の経済的困難、女性の自立、少子化問題、青少年の健全な育成、一定水準以上の教育の付与等の課題解決の一助となるべく、ESGも念頭に商品化した。この商品は、養育費の未払いが発生した際、「養育費を受け取るべき親」へ最大12カ月まで立替え、「養育費を支払うべき親」へ請求する。養育費に関する法的手続きのサポートも付帯している。 尚、同社はESP(イントラスト・スタートアップ・プログラム)という社内起業家支援制度を2017年4月に立ち上げ、そこで商品開発ワーキングを実施し、新しいアイデアの実用化に取り組んでいる。養育費保証は、このESPに応募されたアイデアから生まれた新規事業の一つである。 期末総資産は前期末と比べて3億38百万円増の35億06百万円。現預金と純資産を中心に増加し、自己資本比率69.6%(前期末64.9%)、現預金が総資産の74.5%(同71.3%)を占めている。 好業績を反映して税金費用が増加(△40百万円→△2億80百万円)したものの、利益の増加に加え、安定的な回収活動の成果による立替金の減少(△1億99百万円→△10百万円)で営業CFが前期比55.1%増加した。財務CFが出超となったのは配当金の支払いによる。
 
 
2019年3月期業績予想
前期比16.5%の増収、同19.7%の営業増益予想 売上高は前期比16.5%増の34億40百万円。引き続き既存のC&O(コンサル&オペレーション)、入居申込審査業務、及び保険デスクサービスの増加が見込める中、保証新分野の医療費用保証や介護費用保証が寄与する。また、家賃債務保証も、大和リビング(株)向けサービスの保証からソリューションへの移行の影響が一巡してくる。 営業利益は同19.7%増の9億25百万円。保証事業の下げとまりや、新規事業の育成等を踏まえて販管費を保守的に織り込んだものの、増収効果で吸収して営業利益率の改善が進む。上場関連費用が無くなる等で経常利益は同23.0%の増加が見込まれる。 配当は、1株当たり上期末3.5円、期末3.5円の年7円を予定(予想配当性向24.6%)。株式分割後で、前期の年間配当金5円から今期7円となり、40%の増配予想。
 
 
中期経営計画「Zero to One」(19/3期~21/3期)
【Zero to One -常に「ゼロからイチ」を実現します-】 ミッションイントラストは保証スキームで社会インフラを提供し、
サービスと流通の活性化を実現します
「保証」は、連帯保証人など長い歴史に根付いた商慣習だが、約束の不履行には、経済的リスクがあり、その解消には大きな負担を伴い、経済損失リスク、作業負荷は、商取引拡大の制約となっている。 同社は保証スキームにおいて、リスクの見極めと引受、対応コストの低減等を実現し、契約者の保証の実現と、クライアント企業の取引の活性化・拡大に貢献していく。このため、家賃債務保証以外にも様々な保証提供の機会を開拓し、保証スキームを社会インフラとして普及させていく考えだ。 【外部環境と保証ビジネスの展望】 都市部への人口集中により、地縁のない核家族が増加し、連帯保証人の確保が難しくなっている。加えて、個人保証という連帯保証人制度自体、制度疲労を起こしつつある。また、現金決済の減少と取引の多様化が進むと共に、滞納金額も増加傾向にある。このため、企業による個人への保証が拡大し、保証サービスも多様化している。少子高齢化の進展で、人口減少に続き、今後、世帯数の減少も避けらないが、民法の改正は保証事業にとって追い風であり、東京五輪後は厳しい経済環境が予想され、この面からも保証に対するニーズの高まりが予想される。また、Fintechや不動産テック等、IoT・AI技術の活用により多様な保証ニーズへの対応が可能になるため、保証ビジネスの市場は一段の市場拡大が期待できる。 【中期経営計画】 基本方針 総合保証サービス会社として、保証商品及びソリューションサービスを、創造、展開、拡大、進化させ、事業ステージ毎の課題を解決し、付加価値の創出と生産性の向上、そして差別化を図っていく。 家賃債務保証については、主力成長事業として、強みである大手管理会社とのパイプの太さを活かして更に拡大・進化させる。そして、これをベースに、家賃債務保証と補完関係にあるソリューションサービスを売上拡大ドライバーとしていく。また、将来的な家賃債務保証マーケットの飽和をにらみ、これに続く事業として、医療費用保証や介護費用保証を育成し、新たな市場を開拓していく(現在、医療・介護保証の扱いは同社のみとみられている)。更に、保証ビジネスの他業種展開として、新規事業の源泉を社内外に求め、新たな保証・ソリューションサービスを開発し、次世代事業を創出していく。この一環として、一人親家族の自立インフラ確立のためのパイロットプロジェクトである養育費保証商品の提供を開始した。 人材や新商品開発等の事業投資については、事業機会が持つ成長チャンスと損失リスクの二面性を見極めて、ステップ・バイ・ステップで実施していく。 経営目標 最終の21/3期に、売上高50億円(18/3期29億51百万円)、営業利益12億50百万円(同7億72百万円)、営業利益率25%(同26.2%)の達成を目指している。売上高については、10%程度のM&Aによる成長も織り込んだ。 重点戦略 (1)家賃債務保証 主力成長事業として更なる拡大・進化を目指す。今後、世帯数がピークを迎え、賃貸住宅の着工件数も減少が見込まれるが、その一方で、メーカー系の大手管理会社は管理戸数を増加させており、徐々に大手への集中が進んでいる。加えて、家賃債務保証会社の利用率も上昇しており(賃貸契約時の家賃債務保証付帯率の上昇)、「家賃債務保証の現状」(国土交通省 2016年10月)によると、2010年には43%だった付帯率が2014年には56%に上昇し過半を超えた。2020年4月施行の民法改正の施行により、連帯保証人に対して極度限度額の明示が義務付けられるため、リスクが意識されやすくなり連帯保証人の確保が増々難しくなるとみられている。 こうした中、同社は、大手管理会社(管理会社グループ内の自社保証会社が競合)や中堅管理会社(保証事業会社が競合)を顧客ターゲットとし、既に大手管理会社を中心に一定規模の顧客基盤を有している。オーダーメイド型商品の提供で大手管理会社の個別のニーズに柔軟に対応すると共に、居住者(一般/法人)用・事業用、代位弁済型・カード提携型、高齢者向け・生活保護者向け等、フルラインでの商品・サービスの提供により、保証と保証周辺のニーズを掘り起こしていく考え。新商品開発、営業力強化、運営効率向上に向けたインフラ投資を随時実施していく。 (2)ソリューションサービス 保証サービスと補完関係にあり、売上拡大のためのドライバーでもある。ソリューションサービスのターゲットは、家賃債務保証と同様に、管理戸数1,000戸以上の大手管理会社や中堅管理会社。一方、競合は管理会社グループ内の保証会社。全国賃貸住宅新聞及び同社独自調査によると、管理会社トップ50社のうち50%は傘下に保証会社を持つと言う。 顧客側が求めるものは、内製化を凌ぐ専門性と高いコストパフォーマンスのサービス。同社は、審査支援、契約管理、集金代行等のC&O(コンサル&オペレーション)、コールセンター機能や督促通知機能等を有するDoc-on/楽クレサービス、更には保険デスク等、フルラインで展開し幅広くニーズを取り込むと共に、固有ニーズの解決にもきめ細かく対応する事で信頼構築を図り、顧客満足度の向上と売上の増加につなげていく。また、IoTを活用し専門性を高めるための投資やボリュームアップに対応したインフラ強化投資等を順次実施していく。 (3)介護費用保証/医療費用保証 家賃債務保証に続く事業として、医療費用保証や介護費用保証を育成し、新たな市場を開拓していく。改正民法の施行に加え、医療機関が抱える医療費未収金問題を踏まえた医療機関に対する会計監査の義務化(2017年4月2日以降事業年度よりスタート)、国土交通省が進めるサービス付高齢者向け住宅の整備(2020年迄に60万戸を目標)等、事業環境は良好だ。 医療機関の利用に際しては、人による連帯保証が一般的だが、医療機関の医療費未収金は増加の一途をたどっており、介護施設やサービス付高齢者向け住宅等の利用には保証準備金の前払いが一般的だが、入居者家族の事前負担が大きい。こうした中、医療費用保証は保証人の確保と医療機関の未収金問題を解決する役割を担い、介護費用保証は事前の資金負荷を軽減し、取引拡大を円滑する役割を担う。同社は、損害保険会社、医療関連事業者、大手介護事業者、介護団体等、様々な団体や事業会社とのアライアンスにより、マーケットを育成していく考え。このため、プロトタイプシステムの構築やマーケティング強化等、マーケットの確立を見据えた投資を実施していく。 (4)保証ビジネスの他業種展開 新事業の源泉を社内外に求め、新たな保証・ソリューションサービスを開発し、次世代事業を創出・育成していく。新規事業を創出するのは、「社内のイノベーション(新規スキーム、商品開発)」、「社外とのイノベーション(業務提携による新スキームの構築)」、及び「社外からのイノベーション(資本提携、M&A)」。これまでに、「社内のイノベーション」からは、家賃債務保証、連帯保証人不要スキーム、保険デスクが生まれ、「社外とのイノベーション」からは、クレジットカード提携保証商品、Doc-on、楽クレ、介護費用保証、医療費用保証が生まれた。今後、「社内のイノベーション」では、養育費保証(B2Cのトライアル)やESP(社内起業制度)等に挑戦していく。また、「社外とのイノベーション」では、インバウンド旅行者向け医療費用保証の実験等に挑戦し、「社外からのイノベーション」では、既存事業を強化する製品・サービスやIoT・AI等の新技術に挑戦していく。養育費保証、インバウンド実験プロジェクト、その他市場調査等の投資を行っていく。 (5)財務戦略 成長投資、株主還元、経営効率性、財務健全性の4つを重視し、投資と財務のバランスの取れた戦略を推進していく。成長投資については、6億50百万円~10億円を想定しており、挑戦投資、準備投資、実現投資とステップ・バイ・ステップで、事業成長を段階的に見極めつつ実行していく。株主還元については、21/3期までに配当性向を30%超に引き上げる。経営効率については、経営効率を重視してROE20%以上を維持し、財務健全については、自己資本比率60%を目処に財務健全性を確保する。 *ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「財務レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ *上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記の財務レバレッジは必ずしも一致しない)。
 
 
今後の注目点
家賃債務保証サービスを提供する中で様々な顧客ニーズをくみ上げて事業化したのがソリューションサービスであり、家賃債務保証と補完しながら売上高全体の50%を占めるまでに成長した。また、介護・医療分野での新サービスも基盤整備が順調だ。中期経営計画の21/3期目標である売上高50億円、営業利益12.5億円は、現在の事業ステージと戦略テーマが持つ成長チャンスと損失リスクを踏まえた目論見と可能性の下で設定した。目標達成に向け、既存事業の更なるシェアアップと共に、総合保証サービス会社として、保証及びその周辺領域で様々なマーケットを創造し事業を育成していく考え。また、マーケット創造のための先行投資を吸収して、利益率の維持・向上も図る。総合保証サービス会社として自らマーケットを創造する事で成長を目指す同社の取り組みに注目していきたい。
 
 
 
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書更新日:2018年6月26日 基本的な考え方 当社は、「お客様にどれだけ喜んでいただけるか。」「お客様にどれだけ安心していただけるか。」「お客様にどれだけ信頼していただけるか。」を経営姿勢とし、事業拡大を図っていく中で、「コンプライアンスの維持と株主の利益を最大化すること」を重視し、コーポレート・ガバナンスの強化に努めてまいります。 <開示している主な原則> 【原則1-7.関連当事者間の取引】 当社は、関連当事者間の取引について、その取引が当社の経営の健全性を損なっていないか、合理的判断に照らし合わせて有効であるか、及び取引条件が他の外部取引と比較して著しく相違していないこと等を充分に確認のうえ実行することとしております。また、関連当事者間取引は、法令及び取締役会規程等の社内規程に則り、必要に応じて取締役会の承認を経るものとしております。取締役会での承認にあたっては、社外取締役が当該審議に加わるとともに、監査役が必要に応じて意見を述べることで、より客観的な立場から、取引内容の公正性、妥当性を検討することにより、当社及び株主共同の利益が損なわれないよう十分な審議を行っております。併せて、定期的に役員及び執行役員に対して、「関連当事者取引調査票」の提出を求めており、関連当事者との取引の有無を把握しております。 【原則3-1.情報開示の充実】 (1)経営理念について、コーポレート・ガバナンス報告書、有価証券報告書のほか、当社ホームページにおいて開示しております。 (2)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方については、コードの各原則を踏まえ、コーポレート・ガバナンス報告書、有価証券報告書のほか、当社ホームページにおいて開示しております。 (3)取締役の報酬は、株主総会において承認された範囲内において、代表取締役に一任されております。 (4)取締役・監査役の候補者の指名にあたっては、候補者の経験、知見、能力、人格を総合的に検討した上で、取締役については取締役会において検討を行い、監査役については、監査役会の協議及び同意を得た上で、取締役会の承認を受けて決定しております。 (5)各候補者の経歴等及び社外取締役候補者及び社外監査役候補者の選任理由につきましては、株主総会招集通知に記載しております。 【原則5-1.株主との建設的な対話に関する方針】 IR活動については、代表取締役及び取締役財務経理部長の指示のもと、株主との対話の補助を社長室のIR担当が行っております。 株主との対話については、その重要性に鑑み、代表取締役が臨むことを基本方針としております。 また、決算説明会を原則として年2回、個人投資家向け説明会を随時開催する方針であります。