ブリッジレポート
(3822) 株式会社Minoriソリューションズ

プライム

ブリッジレポート:(3822)Minoriソリューションズ vol.5

(3822:東証1部) Minoriソリューションズ 企業HP
森下 祐治 社長
森下 祐治 社長

【ブリッジレポート vol.5】2018年3月期業績レポート
取材概要「19/3期の業績予想は保守的だが、SCSKとの連携によるCAEソリューション、導入のしやすさ・使いやすさで高い評価を受けている「RPA『MinoRobo』」・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年8月22日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社Minoriソリューションズ
社長
森下 祐治
所在地
東京都新宿区西新宿2-4-1 新宿NSビル
決算期
3月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 16,428 1,515 1,526 1,044
2017年3月 15,541 1,338 1,356 963
2016年3月 14,768 1,057 1,078 702
2015年3月 13,922 1,065 1,089 692
2014年3月 13,323 824 836 506
株式情報(7/10現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,504円 8,789,208株 13,219百万円 15.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
36.00円 2.4% 119.46円 12.6倍 839.05円 1.8倍
※株価は7/10終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
Minori ソリューションズの2018年3月期決算の概要と2019年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ソフトウェア開発とシステム運用管理を二本柱に、ソフトウェア開発に付随するハードウェアや汎用パッケージソフト等の販売を手掛けている。銀行・クレジット等金融機関向けを中心に常駐型のシステム開発及び運用を強みとした(株)JSCと、製造・運輸・流通等の幅広い分野で一括請負型のシステム開発を手掛けていた(株)イーウェーヴが、2010年4月に合併して(株)Minoriソリューションズとして新たなスタートを切った。商号にある「Minori」とは、粒が集まって集団を形成する稲穂をイメージしたもので、実を結ぶ、果実が実る事を意味しており、合併後の新体制において、全社員が集結し、一体となって企業価値の更なる向上を目指し、顧客・ステークホルダー・社員の「実り」として成果を上げていくという思いが込められている。
 
【企業理念・行動指針】
企業理念
私たちは常に高い志をもち、成長・挑戦し続けることにより、情報技術を通じ豊かな実りある社会創りに貢献します。
 
行動指針
1.信頼の確保:私たちは、守るべき法令に加え、公正な取引の確保、お客さまにかかわる情報の守秘義務、 個人情報の適正な管理等の基本的なルールを遵守し、誠実で公正な企業活動を遂行いたします。
2.お客さまとの共生:私たちは、常にお客さまとの信頼関係の維持・向上に努め、お客さまの繁栄と共に自社の発展を目指します。
3.自己改革の継続:私たちは、常に高い志をもち、自己改革を図り挑戦し、成長していきます。
 
 
【事業内容】
事業は、ITコンサルを含めた、システムやソフトウェアの開発、更改等のソフトウェア開発事業、開発したシステムの運用や保守・管理、或いはヘルプデスク等を手掛けるシステム運用管理事業、及びシステム開発に付随する機器販売を行うシステム機器販売事業の3事業に分かれ、それぞれ76.2%、21.5%、2.3%(18/3期実績。以下同じ)。

ソフトウェア開発事業は、システム全体の開発を一括して請け負う業務と顧客の社内に常駐してシステムの一部の開発を請け負う業務(顧客によっては100人規模で常駐する)に分かれ、銀行向けはセキュリティの面から大半が常駐型で、その他の業種向けは一括請負型が多い。同社がストックビジネスと位置付けている常駐型は安定しているが(短期的な案件の波はある)、人月単価での受け取りとなり人材派遣に近い収益モデルであり、一括請負型は高い収益性を追求できるが、受注に波があり、開発リスクを伴う。

システム運用管理事業では、システムの運用管理(顧客のデータセンターに常駐してのエンドユーザーのシステムの運用管理、エンドユーザーの施設に常駐しての運用管理、ネットワークを介しての運用管理)、コールセンター(ヘルプデスク)の運用等を手掛ける。
システム機器販売事業は、開発に付随して機器を納入するケースが減っている事に加え、クラウドへの移行もあり、減収傾向が続いているが、元来、単純な機器販売の利益貢献は少なく、利益面での影響は軽微である。
 
エンドユーザー業種別売上高
エンドユーザー業種別では、常駐型が多い金融が35.3%を占め、次いで幅広いカテゴリーの企業と取引がある製造が19.4%、公共・エネルギー10.0%、この他、情報、運輸、通信、流通・サービス他がそれぞれ7~10%。金融の比率が高いものの、これを除くと、エンドユーザーの業種は分散されている。また、顧客は、振れはあっても一定の継続的投資が期待できる優良企業が名を連ねており、上記の通り業種が分散されているため、受注・売上は安定している。

尚、製造の売上には、SIerとしては珍しいCAE(Computer Aided Engineering)ソリューションの売上が含まれている。CAEソリューションとは、例えば、新車開発の場合、開発車のデータ(デザインデータや材料データ)を基にコンピュータ内に3Dで新車を再現し(外観だけでなく、内部構造も含めて再現)、強度・耐久・振動・衝突・流体・空力性能など、開発に必要な試験をコンピュータ内で試験同様にシミュレーションし、結果から設計条件を満たしているか判定し、要求があれば対策案も含めてレポートにまとめ自動車メーカーに提出する。メーカーはこのレポートを活用し、試作車台数や実証実験の回数を減らす事で、開発期間が短縮され、結果として開発コストを低減できる。販売先は国内自動車メーカーが主。国内マーケットは未だメーカー内製が中心で競合プレーヤーは少ない。航空機、発電設備、人工衛星、スマホ等へユーザが広がりつつある。
 
 
【強み・特徴  -安定した収益基盤、優れた財務体質、希少性高いCAEソリューションの実績-】
エンドユーザーは、金融を中心に、製造、情報、流通・サービス、運輸、公共・エネルギー、通信、とバランス良く分散されており、かつ、開発から運用管理までのサービスを一貫して提供しているケースが多いため収益基盤が安定している。また、エンドユーザーは、いずれも業界トップまたは、トップクラスの優良企業であり、付き合いの長い企業が多い。

この結果として、自己資本比率67.4%(18/3期実績、以下同じ)、流動比率338.5%、投下資本利益率14.2%、と財務内容も優れる。

この他、構造解析や流体解析等のCAEソリューションでの実績や、本社や大阪支社の他に、仙台、松本、名古屋、福岡の各事業拠点が地域経済に貢献しながら収益を上げる等、他社にない特徴を有する。
 
 
2018年3月期決算
 
 
前期比5.7%の増収、同13.2%の営業増益
売上高は前期比5.7%増の164億28百万円。利益重視で選別受注を進めたシステム運用管理事業の売上が前期と同水準の35億33百万円にとどまったものの、電力向けを中心にした公共・エネルギー分野や大手キャリア向け開発案件が拡大した通信分野をけん引役にソフトウェア開発の売上が同6.4%増加。金融分野・情報分野のサーバリプレイスでシステム機器販売も増加した。クラウドアプリケーション導入支援を本格化した他、自社製品RPA(Robotic Process Automation)「RPA『MinoRobo』」の販売を開始した。

利益面では、プロジェクト管理の強化でソフトウェア開発の各案件が順調に進捗した事に加え、より収益の高い案件へのシフト(SIer案件からエンドユーザー案件へシフト)等でシステム運用管理の収益性改善(利益率:9.7%→10.9%)が進んだ事で、売上総利益率が16.4%と0.5ポイント改善。一方、販管費は人件費を中心に小幅な増加にとどまり、営業利益は15億15百万円と同13.2%増加し、2期連続で過去最高を更新した。当期純利益が同8.3%の増加にとどまったのは、特別利益の計上がなかった事等による(前期は投資有価証券売却益52百万円を計上)。

尚、4月17日に業績予想を上方修正しており、ほぼ修正値に沿った着地。上方修正要因は、売上面では、公共・エネルギー分野及び通信分野の受注好調による同分野の上振れ。利益面では、プロジェクト管理による生産性向上及び収益の高い案件へのシフト等。

期末配当は1株当たり1円増配の20円(上期末配当と合わせて3円増配の年36円。配当性向30.3%)。同社は安定的・持続的な利益配当の実施、かつ配当性向30%以上の確保を利益還元の方針とし、上期末及び期末の年2回の配当を実施している。
 
 
 
 
金融分野及び情報分野の売上が減少したものの、公共・エネルギー分野が前期比59.0%増と伸びる等、その他の全ての分野で売上が増加した。
金融分野は、各種国際化対応案件等が増加したものの、メガバンクの大型案件終息の影響をカバーできず同2.4%の減収。情報分野は、選別受注の一環で人事関連システムの保守支援業務等が減少し同0.9%の減収。一方、公共・エネルギー分野は、業種全体が堅調に推移する中、発送電分離(法的分離)関係で電力向けが大幅に増加し同59.0%の増収。通信分野は、情報通信ユーザ企業の社内システム開発や大手キャリア向けインフラ開発をけん引役に同12.4%の増収。流通・サービス他は、EC関連企業の基幹系開発を中心に同10.3%の増収。この他、関西の顧客でソフトウェア開発やシステム運用関連の受注が増加した製造分野が同4.0%の増収。基幹システムの更新案件の寄与で物流向けや鉄道向けの増加で運輸が同1.6%の増収。
 
 
期末総資産は前期末と比べて16億25百万円増の109億44百万円。現預金や純資産が増加した他、業容の拡大に加え、期末が金融機関の休日だった事もあり、売上債権・仕入債務が増加した。自己資本比率67.4%(前期末70.5%)、流動比率338.5%(同393.7%)、投下資本利益率14.2%(同14.2%)。
 
 
 
 
中期経営計画(18/3期~21/3期)の進捗状況
 
顧客、株主、社員の3つのステークホルダーの「実り」を徹底追及していく事を経営目標としており、この経営目標の達成に向けた基本戦略として、「高付加価値経営」、「Minoriブランドの向上」、「働きやすい魅力ある会社(健康経営、働き方改革)」、及び「シンプル&スピーディー(意思決定の迅速な経営)」を掲げている。
 
経営目標
・お客様の成長に貢献する会社
・持続的な成長で株主様の期待に応える会社
・自社に誇りを持ち、自らの未来を創造できる会社
 
基本戦略
・高付加価値経営
・Minoriブランドの向上
・働きやすい魅力ある会社(健康経営、働き方改革)
・シンプル&スピーディー(意思決定の迅速な経営)
 
基本戦略と重点施策
高付加価値経営では、強みを活かした新分野への進出と既存ビジネスのマーケットバリューの向上を推進する事で労働集約型から高付加価値型への転換を図る。21/3期の目標として、売上高200億円、営業利益20億円を掲げており、現在8%程度の営業利益率を10%に引き上げる。重点施策として、「クラウド」、「IoT」、「ビッグデータ解析」、「AI」、「フィンテック」と言った新技術を活用した高付加価値ビジネスの創出、BPO(Business Process Outsourcing)・AMO(Application Management Outsourcing)によるトータルソリューションサービスの展開、既存及び新ビジネスの両面でエンドユーザーとの取引拡大、及び社内ベンチャー推進による新規事業化、の4項目を挙げている。

Minoriブランドの向上では、顧客事業の成長と社会の発展に貢献するICTパートナーとして、業界内でのプレゼンスと企業ブランドの向上に取り組んでいく。重点施策として、「お客様と共に歩むMinori」の実現に向けた、技術力、品質、組織力、徹底したリスク管理の強化(コンプライアンス意識の高い企業)、社会の中のMinoriとしての公共性の高い分野や地域貢献につながる事業の推進(福祉事業にも積極姿勢)、及びMinori独自のサ一ビス・ツール・パッケージの製品化推進(「+0NE」の企業イメ一ジを推し進める)、の3項目を挙げている。

働きやすい、魅力ある会社(健康経営、働き方改革)では、社員一人一人が自身の将来を展望でき、健康に、安心して働ける会社づくりと、多様な人材・多様な働き方により、一人一人の成長が会社の成長につながる組織づくりに取り組む。重点施策として、健康経営、ダイバーシテイ経営(女性管理職の増加、グローバル化推進)、及び多様な働き方で社員が成長する会社(働き方改革)、の3項目を挙げている。

シンプル&スピーディー(意思決定の迅速な経営)では、あらゆる事業・業務のシンプル化が時間短縮につながるとの考えの下、一人一人の行動を会社の発展につなげるべく社員と経営者の距離間を縮める。重点施策として、迅速(スピーディー)な意思決定(組織の自立・強化)、社員一人一人の自立した行動(ワーキング・グループ発足)、及び社員と経営者のシンプルなリレーション(「アワード制度」促進)、の3項目を挙げている。
 
進捗状況
高付加価値経営の実現に向け、次世代ビジネス研究を目的にR&D専門チームの新設した他、エンジニアリング分野の強化(CAEソリューションの新展開)に取り組んだ。SAP社のクラウドサービス「SAPP® Cloud Platform」や「SAPP® Business ByDesign」の活用開発案件が好調に推移した他、「RPA『MinoRobo』」、AIヘルプデスク支援サービスといった自社製品の販売もスタートした。この他、「働きやすい職場環境づくり」の取り組みが評価され、日本経済新聞社「スマートワーク経営」調査で三つ星評価を獲得した。
新設したR&D専門チームの取り組みテーマは、「スマートデバイスを活用したインターフェイス」と「特徴語抽出、機械学習を活用したコンテンツマッチング」。この成果を基に、ソーシャルビジネスによる地域貢献(災害情報関連)や業務効率化ソリューションを展開していく。CAEソリューションの新展開では、従来からのサービスの中心である構造解析や流体解析に加え、CAEソフトベンダーとの協業において、生産系技術系CAE、次世代最適化、電磁場解析等の分野で双方の強みを活かしたコンサルティングサービスを展開していく。クラウドサービスの展開では、トーエイ工業に「SAPP® Business ByDesign」を納入した。これにより、トーエイ工業では、クラウドを前提とした基盤であらゆる経営情報の可視化が可能になり、しかも、基幹システムを自社内で持つ事なく、運用もアウトソーシングできる。早期の導入の希望にも応える事ができた。
「RPA『MinoRobo』」は、普段使いの「RPA」をコンセプトにしたソリューションとして、ユーザーフレンドリーなUIを備え、専門家でなくても簡単にすぐシナリオが作成できる事が強み。作業担当者のPC 操作を“シナリオ” として設定するだけで、大量な定型作業の自動処理を短時間で行う事ができる。時間がかかっていた大量の手入力作業等で人手を介す事がなくなるため大幅な作業効率改善が実現できる。シナリオはプログラミングの知識がなくとも作成ができるため、作業担当者が作業内容に合わせ自由に設定できる。
 
18/3期 下期以降のトピックス
2017年10月 AI、RPAを活用した新サ一ビスを発表
11月 JapanITWeek2017秋 幕張メッセ「AI・業務自動化展」出展
12月 日経「スマ一卜ワーク経営」調査2017「★★★(三つ星)」評価
 
2018年 1月 トーエイ工業へクラウド(SAP BusinessByDesign)活用システム導入を実施
「RPA『MinoRobo』」ハンズオンセミナ一(東京・大阪)スター卜
2月 JapanITWeek2018 関西「AI・業務自動化展」出展
3月 SAP AWARD OF EXCELLENCE2018 受賞 (2年連続)
健康保険組合健康会「健康優良企業」 「銀」認定
4月 「RPA『MinoRobo』」新Ver.をリリース(Google Chrome制御に対応)
5月 JapanITWeek2018春 東京ビッグサイ卜「AI・業務自動化展」出展
 
 
2019年3月期業績予想
 
 
前期比2.3%の増収、同2.0%の営業増益
売上高は前期比2.3%増の168億円。発送電分離案件の寄与で電力向けが拡大する公共・エネルギー分野や主要ユーザの基幹業務関連システムの更新が寄与する運輸分野、更にはユーザの基幹システム再構築等が拡大する流通・サービス分野を中心に売上が増加する。

営業利益は同2.0%増の15億45百万円。クラウドアプリケーション導入支援や自社製品「RPA『MinoRobo』」の販売拡大に向けたマーケティング費用等の増加に加え、新卒(56名が4月に入社)を中心にした人員増による販管費の増加等を織り込んだ。

配当は、1株当たり上期末18円、期末18円の年36円を予定(予想配当性向30.1%)。
 
(2)セグメント別取り組み
ソフトウェア開発
「受注力の強化」、「品質強化」、及び「一括請負の拡大による収益性強化」に取り組む。「受注力の強化」では各事業本部が個々に行っていた営業活動を各事業本部から分離して新設した営業本部に集約した。営業情報を一元化して、事業本部間のシナジーを追求する事で提案力と案件対応力を強化する。また、AIやRPA関連の自社ブランド製品を活用して、幅広く顧客開拓を進めていく。「品質強化」では、PMO(Project Management Office)体制の強化により、よりタイムリーなチェック体制と品質管理を目指す。「一括請負の拡大による収益性強化」では、プロジェクトの一括受注比率を高めると共に、プロジェクト管理を強化して収益性の改善を進める。
 
システム運用管理
開発した案件の保守・運用業務の取り込み等、トータルアウトソーシングの提案を推進する。また、ヘルプデスク等でAIを活用した業務運用サポートの提案営業を強化する。
 
システム機器販売
自社製品「RPA『MinoRobo』」のプロモーションを展開中である。引き続き、顧客の要望に応じて、システム開発やインフラ基盤構築に付随した各種機器販売を行っていく。
 
 
社長インタビュー   -森下社長に聞く-
 
東京都新宿の本社にお邪魔して、森下社長に18/3期の総括と19/3期の展望について、お話を伺った。
 
【18/3期総括】
18/3期は売上高・利益共に期初予想を上回り、過去最高を更新しました。
 
森下社長: スタート時が厳しい状況だった事に加え、上期に不採算案件の発生もありましたが、下期以降、電力系を中心に地方拠点の受注が好調でした。福岡や仙台の拠点です。福岡は事業所を拡張する予定です。仙台ではキャリア系の保守案件も寄与しました。地方の案件は、期ずれや予算の前倒し等で読み難い面がありますが、電力系は継続案件ですから19/3期以降も期待できます。関西も堅調でした。大手や地場のメーカー等、製造業に強みを持っており、19/3期も大きな不安はありません。名古屋は事業規模が小さいものの、利益率が改善しています。苦戦しているのが、首都圏です。
 
首都圏はメガバンク等の影響を受けているのですか?
 
森下社長: 当社は、銀行・クレジット等金融機関向けを中心に常駐型のシステム開発及び運用を強みとしたJSC(株式会社JSC)と、製造・運輸・流通等の幅広い分野で一括請負型のシステム開発を手掛けていたイーウェーヴ(株式会社イーウェーヴ)が、2010年4月に合併して生まれました。関西においては、もともと様々な業種のクライアントを偏りなく抱えていたので、合併後は、顧客とリソースの相互補完がスムーズに進みましたが、首都圏ではボリュームで圧倒する金融分野と、それ以外の業種での融合に時間がかかり、シナジーを出しにくい状況でした。
 
それで2018年4月に組織変更を行った訳ですね。
 
森下社長: 各事業部門を統括していた各ソリューション本部を、新たに設置する東日本事業部及び西日本事業部の傘下に置きました。東日本事業部の傘下には、金融イノベーション部、ビジネスソリューション部、Webソリューション部、仙台開発部、松本開発部、の5つの事業を統括するソリューション第一本部と、ITサービス部、基盤ソリューション部、金融ソリューション第一部、金融ソリューション第二部、の4つの事業部を統括するソリューション第二本部、そして、これと並列的に営業を横断的に行う営業本部を設置しました。従来は、それぞれの部門が個々に提案を行っていた訳ですが、営業本部の下に集約しました。今後は、2本部・9事業部の経営リソースをフルに活用してシナジーを発揮する事で受注拡大につなげていきたいと考えています。
 
 
組織の融合は以前から議論されてきた事ですが、考え方や得意分野が異なる2社が合併した訳ですから難しい問題です。今回組織変更と共に、新たな人材も招聘しました。受注・売上の拡大につなげていきたいと考えています。
 
【19/3期の見通し】
19/3期の業績予想は保守的なように感じますが、特に不安材料はあるのでしょうか。
 
森下社長: 期初の受注残等も18/3期より多いのですが、最大の問題は、パートナーも含めた人材不足です。19/3期は、人材の確保と共に、引き続きビジネスのサービス化、人工(にんく)ビジネスからの脱却に取り組んでいきます。成果が出始めている「SAPP® ByDesign」の案件が流通向け等で増加する見込みですし、ビジネスフックとしてRPAにも期待しています。一方、銀行は厳しい状況が続く見込みです。生損保等への営業を強化してカバーしたいと考えていますが、金融は19/3期のリスク要因です。
RPA等もあるため、受注残だけなく、引合も前期より多いのですが、リソースが不足していますから、業績の上振れよりも、サービス化に向けた先行投資や仕込みに力を入れていきます。エンドユーザーの獲得、エンドユーザーをどこまで増やせるか、ですね。
 
「RPA『MinoRobo』」の評価もよさそうですね。
 
森下社長: 先日テレビ放送された、働き方改革をテーマとする民放ニュース番組でも取り上げて頂きました。“普段使いの「RPA」”をコンセプトとしているように、ユーザーフレンドリーなUIや専門家でなくても簡単にすぐシナリオが作成できる使いやすさが評価されています。導入しやすさも特長で、ご評価を頂いています。導入費用等は頂かず、保守料を含めたライセンス料のみです。PC1台から導入できる“デスクトップ型”であることも、導入の敷居が低いポイントです。お客様に提案しやすい商品ですから、同業者の方でも、関心を示される方が少なくありません。
 
「SAP® ByDesign」も成果が出始めているとの事ですが
 
森下社長: 「SAPP® ByDesign」はSAP SEのHANAクラウドプラットフォーム上で提供される中堅・中小企業向けのSaaS型クラウドサービスで、当社はSAPジャパン株式会社のビジネスパートナーです。SAPジャパンさんには数多くのクラウド導入の相談が寄せられます。ビジネスパートナーである当社等がSAPジャパンさんからのご紹介を受けて、クラウドサービスの導入コンサルティングやシステム構築を行います。当社を含めた5社で対応しています。「SAPP® ByDesign」の導入をフックに、新たなシステム需要を取り込んでいく考えです。
 
 
今後の注目点
19/3期の業績予想は保守的だが、SCSKとの連携によるCAEソリューション、導入のしやすさ・使いやすさで高い評価を受けている「RPA『MinoRobo』」、同社の他には4社のみが手掛ける「SAP® ByDesign」の導入支援、と材料は豊富だ。いずれも目先の収益貢献は大きくないと思われるが、顧客資産の積み上げにつながるもので、中長期的な成長の基盤となる。また、会社設立時の合併効果を十分に享受できていなかった首都圏での事業も伸びしろが大きそうだ。性急な結果を求めるべきではないが、組織変更等、課題解決に向けた取り組みの成果に期待したい。上記の3事業と共に、11月の上期決算説明会で進捗状況が、どのように語られるか注目したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書        更新日:2018年06月26日
基本的な考え方
当社では、企業価値を増加させ、その最大化を図るために、経営と業務執行の透明性、迅速性、公平性の確保および責任を明確化するとともに、さらに規模を高め法令遵守を徹底させることを、コーポレートガバナンス(企業統治)の基本と考えております。
 
<実施しない主な原則とその理由>
【原則1-4 いわゆる政策保有株式】
当社は、円滑な事業運営、取引関係の維持・強化などを目的として、中長期的な経済合理性や将来見通しを総合的に勘案した上で、必要と判断される場合に限り、株式を政策的に保有します。保有する株式については、経済合理性や事業環境の変化などを踏まえ、取締役会にて適宜見直しを行ってまいります。政策保有の株式の議決権行使については、議案の内容を精査し、必要に応じて企業との対話を行い、当社の株主価値向上に資するものか否かを判断した上で、適切に行使いたします。
 
<開示している主な原則>
【原則3-1 情報開示の充実】
(1)企業理念や行動指針、中期経営計画を当社ホームページにて開示しております。
(2)コーポレート・ガバナンスの基本方針を当社ホームページ、コーポレート・ガバナンス報告書等にて開示しております。
(3)上記【コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由】に記載のとおりです。
(4)監査等委員でない取締役候補者については、当社の持続可能な成長と企業価値向上に資する候補者であるかを基準に選定し、候補者との 対話の機会を持った上で、社内規定に基づき取締役会にて決定しております。また、監査等委員である取締役候補については、当社の健全な 経営と社会的信用の維持向上に資する人物で、中立的・客観的に監査を行うことのできる候補者であるかを基準に選定し、検討した上で、最 終的に取締役会にて決定しております。なお、社外取締役の独立性判断基準を、株主総会招集通知にて開示しております。
(5)社外取締役候補者及びその他の取締役候補者の選任理由を株主総会招集通知にて開示しております。また候補者全員の経歴を株主総会招集通知の参考資料として付しております。

【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
ディスクロージャー・ポリシーを当社ホームページに開示しております。当社では、IR担当取締役を選任するとともに、経営企画室をIR担当部署としております。株主や投資家に対しては、決算説明会を半期に1回開催するとともに、逐次、スモールミーティングを実施しております。