ブリッジレポート
(7776) 株式会社セルシード

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ブリッジレポート:(7776)セルシード vol.32

(7776:JASDAQ) セルシード 企業HP
橋本 せつ子 社長
橋本 せつ子 社長

【ブリッジレポート vol.32】2018年12月期上期業績レポート
取材概要「国内では、2016年8月から進めてきた食道再生上皮シートの治験において症例登録が完了し、海外ではMetaTech社へのデータの提供が進んだ。MetaTech・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年9月5日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社セルシード
社長
橋本 せつ子
所在地
東京都江東区青海二丁目5番10号 テレコムセンタービル
決算期
12月末日
業種
精密機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年12月 85 -1,024 -964 -966
2016年12月 100 -1,413 -1,415 -1,414
2015年12月 193 -568 -531 -535
2014年12月 86 -601 -577 -582
2013年12月 105 -534 -581 -584
2012年12月 75 -846 -842 -913
2011年12月 86 -1,418 -1,358 -1,442
2010年12月 66 -1,204 -1,002 -1,009
2009年12月 87 -785 -788 -790
2008年12月 61 -778 -644 -650
2007年12月 40 -809 -614 -616
2006年12月 23 -672 -464 -470
2005年12月 34 -412 -336 -343
2004年12月 53 -257 -214 -215
株式情報(8/24現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
911円 11,429,292株 10,412百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 3.50円 260.3倍 104.60円 8.7倍
※株価は8/24終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
セルシードの2018年12月期上期決算の概要と今後の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
東京女子医科大学の岡野光夫教授が開発した日本発・世界初の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製した「細胞シート(シート状の培養細胞)」を用いた再生医療等製品の開発を行う細胞シート再生医療事業と細胞シートの基盤ツール(培養器材)である温度応答性細胞培養器材等の開発・製造・販売及び再生医療の研究開発・事業化を支援する再生医療受託サービスを提供する「再生医療支援事業」を二本柱とする。 細胞シート再生医療事業 大学との共同研究(臨床研究)によりシーズを発掘し事業化する。現在のパイプラインは、「細胞シート工学」を基盤技術とする「食道再生上皮シート」と膝軟骨の「軟骨再生シート」の2本。「食道再生上皮シート」は国内の治験で症例登録が完了し、19/12期中の販売承認申請と承認取得を目指しており、台湾でも提携先が治験届の提出準備を進めている。「軟骨再生シート」も国内で治験開始に向けた準備が進んでいる。ただ、「細胞シート工学」を用いた再生医療製品は、食道や膝軟骨にとどまらない。角膜、歯、耳、肺、心臓、肝臓、及びすい臓の治療でも臨床研究が進められており、既に臨床データも有する。欧州での「歯周組織再生シート」や「食道再生上皮シート」等が次期パイプラインとして検討されている。開発品目や地域についての研究実施機関との契約等、準備が整い次第開発に着手する。 再生医療支援事業 温度応答性細胞培養器材等の開発・製造・販売、及び再生医療に関わる総合的なサポートサービスを提供する再生医療受託サービスを手掛けている。再生医療受託サービスで提供する主なサービスは、細胞シート製品の製法開発・受託製造、運営・申請支援、細胞培養技術者教育等である。 細胞培養センター 延床面積約763 ㎡で、自動モニタリングシステムによって、清浄度、室圧、温湿度、機器(培養器や保冷庫等)が自動管理され、監視カメラシステムも完備。また、羽田空港まで車で約20分と至近で空輸にも対応しやすい。2017年3月には「再生医療等の安全性の確保等に関する法律第35 条第1項の規定に基づく「特定細胞加工物製造許可」(許認可権者:厚生労働省)を取得しており、特定細胞加工物の受託製造も可能。
 
 
2018年12月期上期決算及び通期予想
売上高3億47百万円(前年同期26百万円)、営業損失40百万円(同営業損失3億85百万円) 再生医療支援事業の売上が前年同期(22百万円)とほぼ同水準にとどまったものの、台湾事業の提携先であるMetaTech社への一部開発データの提供により細胞シート再生医療事業で3億25百万円の売上を計上した(予定していたデータの提供が前倒しで完了したため売上が期初予想を上回った)。 売上の増加で売上総利益が増加する中、細胞培養施設維持費(定期メンテナンス)や研究開発費(前年同期比11.6%減の1億58百万円)の一部が下期にずれ込んだ事で販管費が減少。前年同期は3億85百万円だった営業損失が40百万円に減少した。2016年8月から進めてきた食道再生上皮シートの治験の症例登録が4月に完了した。
 
 
中期経営計画(18/12期~20/12期)
【ポイント】 ・ 食道再生上皮シートの承認取得、販売開始 ・軟骨再生シートの開発加速 ・次期品目の開発着手 ・サプライチェーン体制の構築 ・再生医療支援製品の新製品開発及び収益機会獲得 ・世界展開に向けた事業提携推進 食道再生上皮シートの承認取得・販売開始、サプライチェーン体制を構築 日本人の食道がん 同社の説明によると、日本では、年間約22,000人が食道がんと診断され(日本では食道がんの90%が扁平上皮がん)、年間約11,500人が食道がんで死亡している。また、男性の発症率・死亡率は女性の5倍で、5年後の生存率は男性36%、女性44%、と男女共に低い。治療法として、2008年に保険収載された内視鏡切除手術(ESD)が増加しているが(食道がんと診断された患者の約20%が毎年手術を受けている)、ESDは手術後の食道狭窄の副作用が問題になっている。 食道再生上皮シートの承認取得、販売開始、及びサプライチェーン体制の構築 この問題を解決するために東京女子医大先端研が開発した治療法が、食道再生上皮シートを用いた食道がん再生治療法(食道創傷治癒・狭窄予防)である。患者の口腔粘膜から採取した細胞を温度応答性細胞培養器材で約2週間かけて培養し、細胞シートを作成する。内視鏡手術で食道がんを切除した後に細胞シートを食道潰瘍面に移植する事で食道狭窄を予防できる。 2008年から2014年にかけて大学で臨床研究が行われ、東京女子医科大学10症例、東京女子医科大学・長崎大10症例(長距離輸送検証:長崎大で採取した細胞を東京女子医大で培養し、長崎大で移植手術)、カロリンスカ大学病院(スウェーデン)10症例、の計30症例が既にあり、同社は、東京女子医科大学と開発基本合意契約を締結して同大学の研究成果を引き継いだ。 18/12期第2四半期(2018年4月)に治験の症例登録が完了し、19/12期上期に販売承認申請を行う予定。2017年2月に先駆け審査指定を受けているため販売承認申請から6カ月程度で承認が下りる見込み。このため、19/12期中の販売承認取得と販売開始を予定しており(販売は薬価収載後になる)、20/12期には販売を本格化させたい考え。足元、病院(口腔粘膜採取)→培養施設(細胞をシート状に培養)→病院(細胞シート移植)というサプライチェーンの構築も並行して進めている。 欧州では、スウェーデンでの企業治験を検討しており、その推進役となる子会社CellSeed Sweden AB(スウェーデン)を2015年5月に設立し、2016年には、欧州全体での承認を目指して、欧州医薬品庁(EMA)との相談を開始した。ただ、国内での細胞シート再生医療の事業化を最優先課題とし、欧州での食道再生上皮シート開発については「次期開発品目」の候補品目の一つとして開発優先順位を検討していく方針。 台湾事業では、既に説明した通り、2017年4月に提携したMetaTech社への開発データの提供が順調に進んでおり、MetaTech社は2018年中の治験届の提出を目指している。 軟骨再生シートの開発加速 「軟骨再生シート」は、東海大学整形外科佐藤正人教授との共同研究であり、スポーツによる損傷や加齢を原因とする軟骨欠損や変形性関節症を適応症とする。現状では根治する方法がないが、佐藤教授との共同研究は軟骨表面の根本的な再生を目的としている。膝の軟骨は、硝子(しょうし)軟骨と言い、耳や鼻等の軟骨とは異なり、クッション性と対摩耗性に優れた硬い軟骨で再生が難しい。しかし、共同研究を進めている「軟骨再生シート」は、硝子軟骨として膝の軟骨を再生できる事が臨床研究で確認されている。 東海大学との開発基本合意書に基づき、同社が事業化に向けた取り組みを進めており、PDMA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構。承認審査を行う)との戦略相談の下、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構。再生医療等の研究開発を行う)事業を活用した開発を進めている。また、台湾ではMetaTech社が製品化に取り組んでおり、18/12期に一部開発データが提供される。 尚、同社の説明によると、変形性膝関節症とは、緩徐に進行する難治性の関節軟骨変性。国内における患者数(40歳以上)は2,530万人、そのうち有症病者は800万人と推定されている(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター調査)。また、高齢化により患者数の増加が予測され、国民健康寿命・介護費・医療費の観点から喫緊に対処すべき疾患であると言う。 自己細胞(本人の細胞)と同種細胞(他人の細胞)で研究開発を進めており、自己細胞による軟骨再生シートについては、東海大学で8症例の臨床研究の実績があり、同大学が先進医療を申請する予定。厚生労働省医政局専門官との話し合いの下で申請準備が進められており、申請後に厚生労働省先進医療会議での審査を受ける事になる。先進医療申請の結果を踏まえて企業治験が実施される。先進医療として承認されると、公的医療保険の対象外ではあるが、保険診療との併用が認められる。先進医療で使用される細胞シートの受託加工は同社が有償で実施する事が決まっている。 同種細胞による軟骨再生シートについては、2017年2月に東海大学で1症例目の移植手術が実施され、経過は良好。臨床研究として3年間で10名の患者への移植を予定しており、19/12期にかけて続く見込み(2018年上期までに3症例の実績)。この間に、同社は20/12期中の企業治験開始に向け、レギュラトリーサイエンス戦略相談・レギュラトリーサイエンス総合相談及び治験準備を進める。 台湾MetaTech社との事業提携の進捗状況 2017年4月に提携契約を締結し、MetaTech社に細胞シート再生医療事業(食道再生上皮シート、軟骨再生シート)の台湾での独占的な開発・製造・販売権を付与した。MetaTech社は(株)セルシードの支援下で台湾での事業化を進め、(株)セルシードは開発の進捗に応じて、マイルストーン収入、開発・製造関連データ料、開発サポート料として、最大12億50百万円程度の対価を得る予定。更に上市後は、売上に応じたロイヤリティ収入を受け取る。 既に説明した通り、18/12期上期は一部開発データの提供が当初想定を上回るペースで進み、前倒しで完了した(売上高3億25百万円を計上)。MetaTech社は18/12期中の食道再生上皮シートの治験届提出に向け準備を進めている。台湾では、台湾版先進医療とも言える細胞治療関連の法改正が進められており(2018年9月施行予定)、対象に同社の軟骨再生シートが含まれる可能性がある。 世界展開に向けた事業提携推進 既契約先であるMetaTech社への支援を推進しつつ、アジア諸国・欧米をターゲットに海外の事業提携先を探索していく。この一環として、上期は6件のイベントに参加し、この8月も2件のイベントへの参加が予定されている。
 
 
今後の注目点
国内では、2016年8月から進めてきた食道再生上皮シートの治験において症例登録が完了し、海外ではMetaTech社へのデータの提供が進んだ。MetaTech社へは引き続きデータの提供が行われる。提供されるデータには軟骨再生シートに係るデータも含まれており、下期は第4四半期にまとまった売上が計上される予定。国内では来年の今頃は販売承認申請の提出が終わり、20/12期に食道再生上皮シートの販売が本格化する計画。台湾では、18/12期中に食道再生上皮シートの治験届の提出が計画されている事に加え、現在進められている細胞治療関連の法改正が軟骨再生シートの追い風になる、との見方がある。今しばらく我慢が必要だが、当面は資金的な不安も少ない。国内外での食道再生上皮シートと軟骨再生シートの寄与で2025年頃には業容が一変しているのではないだろうか。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書更新日:2017年04月05日 基本的な考え方 当社は、技術革新と創造性を発揮し、質の高い優れた製品とサービスの提供を通じ人々の健康と福祉に貢献していくことを使命とし、全ての企業活動において品質を高めるべく企業統治の整備を進めています。 今後につきましては、ディスクロージャーの透明性を高めるため一層説明責任を充実するとともに、さらなる経営のチェック機能強化を図ってまいります。 【コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由】 当社は、JASDAQ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。