ブリッジレポート
(9997) 株式会社ベルーナ

プライム

ブリッジレポート:(9997)ベルーナ vol.5

(9997:東証1部) ベルーナ 企業HP
安野 清 社長
安野 清 社長

【ブリッジレポート vol.5】2019年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「物流費増加に伴う配送料値上げの影響から稼働顧客数が伸び悩んでいることもあり、これまで順調な成長を続けてきた主力事業の総合通販事業が・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年9月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ベルーナ
社長
安野 清
所在地
埼玉県上尾市宮本町4-2
決算期
3月末日
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 161,673 13,008 13,248 9,665
2017年3月 146,083 10,882 12,188 5,802
2016年3月 131,742 8,366 7,105 3,544
2015年3月 120,689 6,376 10,052 6,394
株式情報(9/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,149円 97,236,456株 111,724百万円 10.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 1.3% 107.99円 10.6倍 949.70円 1.2倍
※株価は9/5終値。発行済株式数は第1四半期末。ROE、BPSは前期実績。
 
ベルーナの会社概要、2019年3月期第1四半期決算概要等について、ご紹介します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
総合通信販売大手。取扱商品を特定ジャンルに絞った専門通信販売も手掛けるほか、店舗販売事業、通販事業で培ったノウハウやインフラを法人に提供するソリューション事業なども展開。ミセス層を中心とした顧客データベース、ポートフォリオ経営による安定的な収益性と成長性などが強み・特長。M&Aも積極的に展開。 【1-1 沿革】 1968年に現・代表取締役社長である安野清氏が、印鑑の訪問販売「友華堂(ゆうかどう)」として創業。その後、衣料品の通信販売を皮切りに、食品、化粧品など取り扱いジャンルを拡大し、専門通販事業も展開するのに並行し、通販顧客を対象としたファイナンス事業、プロパティ事業、店舗販売事業、ソリューション事業など事業ポートフォリオの拡充も進めてきた。 2000年3月、東証1部に指定替え。M&Aも積極的に展開し、事業基盤のさらなる強化を進めている。 【1-2 経営理念】 また、同社ではベルーナ社員としての心の在り方を示す「Basic Mind」、行動規範である「Basic Action」を定めている。「当事者意識」、「利益意識」、「ゲーム感覚」、「ポジティブ思考」、「成長意欲」からなるBasic Mind、「他者活用」などからなるBasic Actionは、ベルーナ社員が課題に向き合った際に常に立ち戻るべき原点となっている。 【1-3 市場環境】 経済産業省が発表した「平成26年商業統計表 業態別統計編(小売業)」(2016年3月9日公表)によれば、通信・カタログ販売およびインターネット販売の年間商品販売額は3.9兆円。 詳細な統計は未確認であるものの、ネット通販が急成長を続ける一方、総合通販の同業他社が大きく売上を減少させるなど、カタログ通販市場は足元で1~2%縮小したとみられる。 こうした中、ネットに注力中とはいえ、カタログ通販が8割を占めるベルーナの総合通販事業セグメントは2018年3月期4.5%の増収、過去3年間でも年率4.3%の増収と着実にシェアを拡大している。 総合通販の同業他社であるスクロール、千趣会との比較では、売上及び時価総額規模はトップで、利益率、資本効率も高い。 【1-4 事業内容】 (1)セグメント 中核事業である総合通販事業を始め、専門通販事業、店舗販売事業、ソリューション事業、ファイナンス事業、プロパティ事業、その他の事業の7セグメントで構成されている。 総合通販事業と専門通販事業が全売上の約8割を占める。 ①総合通販事業 ◎概要 衣料品、ファッション雑貨、インテリアなど多彩な商品を、カタログ・チラシ、インターネットを通じて受注・販売している。 ◎会員属性 2018年3月末現在の登録会員数は約1,850万人で、そのうち40代以上のミセス層が約8割を占める。 ミセス層の中心年代である65歳~69歳の女性会員数を日本の人口と比較すると、およそ3人に1人(31.4%)がベルーナの登録会員であり、圧倒的なシェアを有している。 登録会員のうち2年以内に商品を購入した会員である「稼働会員数」は2018年3月期で508万人。 上下はありながらも着実に会員数は増加している。 同社は社内に約70名の専任デザイナーを擁しており、大手スーパーマーケットや女性向けファッション衣料販売店に比べてファッション性の高い商品を提供している。また50代から70代を対象とした他社にはない豊富なカタログをラインアップしている。こうした点が、ミセス層からの圧倒的に高い支持獲得につながっている。 ◎顧客セグメント 女性顧客層を年齢別に、50代以上の「ミセス」、40代向けの「ラナン」、30代向けの「リュリュ」の3つにセグメント化。 各年代の嗜好、ニーズにきめ細かく対応した商品を提供している。 ◎EC化への取り組み カタログが中心的な販売チャネルであるが、近年はネット通販への取り組みも強化している。 30代向けの「リュリュ」におけるEC化率は6割を超え、ミセスおよび全体のEC化率も着実に上昇している。 ②専門通販事業 特定ジャンルを専門的に扱うことで商品展開や価格、サービスに特徴を持たせているため顧客の囲い込みが容易で、リピートオーダーを獲得している。 ③店舗販売事業 通販・インターネット・店舗の各チャネルの相乗効果を狙い、通信販売ではアプローチできない顧客をターゲットとしている。着物や和装関連商品を販売する「BANKAN」および「わものや」、40代~50代女性を主なターゲットとしたカジュアル衣料品を低価格で提供する「BELLUNA」の3形態を、ショッピングセンターやショッピングモールに出店している。店舗面積は和装店舗が約30坪、アパレル店舗が80~100坪。客単価の高い和装店舗の収益性の高さが特徴である。2018年3月末現在の店舗数は和装店舗79店舗、アパレル店舗59店舗の合計138店舗。 ④ソリューション事業 長年の通販事業で培ったノウハウやインフラを活用して、「封入同送サービス」、「通販代行サービス」を法人向けに提供している。 封入同送サービスでは、ベルーナが保有する膨大な顧客データベースを活用して、クライアント企業のチラシやサンプルなどの販促物を商品やカタログに同梱して配送する。クライアント企業のニーズに合わせて対象をセグメントし、ターゲットを絞り込むことも可能であり、クライアント企業にとっては効果的なプロモーションが期待できる。 通信販売を行う企業に対して、ベルーナのインフラとノウハウを含む一連の機能を受託するのが「通販代行サービス」。物流倉庫でのストックやコールセンターでの対応、顧客への発送までトータルに受託している。 通販事業に新規参入する企業でも、自前のインフラを備える必要がなく、スピーディかつ安価に商品やサービスを提供することが可能となる。 ⑤ファイナンス事業 通販で培ったデータベースを活用した消費者金融事業。 主として通販利用者に対し、チラシを同封するなど融資の案内を行っている。過去の購買行動及び支払い状況をデータとして把握しているため与信力は高く、融資残高が順調に拡大する一方、貸倒率は他社よりも低い。 通販利用者を対象としているため集客コストが低い点も高い収益性につながっている。 ⑥プロパティ事業 オフィスビルなどの不動産賃貸やホテル事業などを展開している。 ⑦その他の事業 百貨店や生協に向けた卸売事業を行っている。また、保険事業も展開している。 【1-5 特長と強み】 ①約40年の通販事業で培ったミセス層を中心とした顧客データベースやノウハウ 事業内容の項で触れたように、同社の1,800万人を超す登録会員のうち、約8割が40代以上の女性、ミセス層。 ミセス層の中心年代である65歳~69歳の女性会員数を日本の人口と比較すると、およそ3人に1人、31.4%がベルーナの登録会員である。 約40年にわたる通販事業で培った強力な顧客データベースやノウハウは、同社企業価値創造の源泉であり、大きな特徴である。 中核事業の通信販売事業においては、販売実績、購買行動、アンケートを通じた顧客の要望などをベースに、ニーズに合致した商品を提案することでミセス層の顧客から強い支持を得ている。 また、ファイナンス事業ではまさにデータベースを活用して安定的に売上、利益を生み出しており、ソリューション事業においては、顧客データベースやノウハウ、インフラを外部に提供することで新たな事業機会を創出している。 ②ポートフォリオ経営による安定的な収益性と成長性 同社を特徴づけるもう一つの側面が、通信販売で培った経営資源を有効活用し多角的に事業を展開することで、安定的な成長性、収益性を実現する「ポートフォリオ経営」というビジネスモデル。 これによって、社会情勢や経済動向といった環境変化のリスクを分散しつつ、それぞれの事業が一つ一つの柱としてその強みを発揮するとともに、事業間の相乗効果を生み出して安定した収益性、成長性を実現している。 【1-6 株主還元】 業績の状況および中期的な成長のための戦略的な投資を勘案した上で、配当を決定している。今期の配当予定額は1株当たり15円。前年より2.5円増配した。 また、以前より株主優待制度を実施し、毎年3月末・9月末の100株以上保有株主に対して、年2回贈呈しているが、株主に対する感謝の意を表するとともにより多くの株主に理解を深めてもらうことを目的とし、2017年11月、株主優待制度の拡充を発表、選択内容に、ベルーナネットで使用できる優待クーポンを追加した。 優待対象基準や発行時期、有効期限には変更は無い。 【1-7 ROE分析】 売上高当期純利益率の上昇で18年3月期のROEは10%を超えた。今期の予想マージンも5.8%であり、第三次経営計画の目標である「ROE8%以上」達成の確度は高い。その後の更なる上昇に向けた取り組みを期待したい。
 
 
2019年3月期第1四半期決算概要
増収・営業減益 売上高は前年同期比2.0%増の419億円。専門通販が牽引した。総合通販は微増収。 営業利益は同13.7%減の24億円。専門通販が増益で寄与した一方、物流費増、M&A関連費用など販管費増により減益となった。経常利益は同27.4%増の45億円。デリバティブ評価益が同11億円増加した。 四半期純利益は同7.7%の減益。前年同期は特別利益10億円が計上されていた。 ◎総合通販事業 増収減益。 原価率が改善した一方、物流費の高騰などで減益。 ◎専門通販事業 増収増益。 売上では化粧品事業(オージオ)、グルメ、ワインが好調。利益面では、看護師向け通販事業及び健康食品事業(リフレ)の収益性が改善した。化粧品、グルメ、ワインは投資を先行させている。 ◎店舗販売事業 減収減益。 アパレル店舗事業は前年の店舗閉鎖の影響もあり減収。和装店舗事業は減収減益となった。 ◎ソリューション事業 減収減益。 通販代行サービス事業は堅調だったが、大口クライアントの取引が縮小し、封入・同梱サービスが苦戦した。 ◎ファイナンス事業 増収増益。 国内消費者金融事業の貸付金残高が増加した。 ◎プロパティ事業 増収減益。 昨年7月にオープンした京都のホテルの売上が貢献したが、新規ホテルの開業に向けた費用が増加した。 ◎その他の事業 増収損失拡大。 卸売事業などで売上高が伸長した。 さが美グループホールディングス(株)のM&A等により売上債権、たな卸資産が増加し流動資産は前期末比31億円増加。同じくさが美グループホールディングス(株)の店舗など有形固定資産の増加で固定資産は同82億円増加し、資産合計は同114億円増加の2,074億円となった。 仕入債務、短期借入金の増加などで負債合計は同84億円増加の1,112億円。 利益剰余金の増加などで純資産は同30億円増加の961億円。 この結果、自己資本比率は前期末から1.4ポイント低下し45.7%となった。
 
 
2019年3月期業績見通し
業績予想に変更無し。増収増益を予想 業績予想に変更は無い。売上高は前期比11.3%増の1,800億円の予想。営業利益は同15.3%増の150億円の予想。配当は前期から2.5円増配の15.00円/株の予定。予想配当性向は13.9%。 計画に対して売上高はやや下回っているものの、営業利益は超過して推移しているということだ。 売上高は主力4事業を中心に全セグメントで増収。プロパティ事業は海外での不動産売却を見込んでいる。 利益に関しては前期減益で予算も未達だったが、新規顧客の獲得や不採算媒体の整理を積極的に進めた専門通販事業が牽引する。店舗販売は出店投資を行う。
 
 
和装事業とさが美グループホールディングス株式取得について
和装事業を一段スケールアップさせるべく、きもの、宝石などの販売を手掛ける「さが美グループホールディングス株式会社」(東証1部、コード番号:8201)に対するTOBを実施し、2018年6月、連結子会社とした。 ベルーナグループは、和装分野における更なる拡大のために、一定の事業規模があり本格的な和装関連の顧客層を得意とし、和装関連事業と相互補完関係が期待できる和装関連事業者買収の可能性を探っていた。一方、「さが美グループホールディングス」は、ベルーナグループの完全子会社となることがさらなる企業価値向上のためには最善の選択と判断した。 18年8月6日に開催されたベルーナグループ19年3月期第1四半期決算説明会において、同社グループの和装事業を担う株式会社BANKANわものやの形部社長が、会社概要、市場環境、BANKANわものやの強み、今後のビジョンなどを説明した。 店舗は「BANKAN」と「わものや」の2種類を運営している。 2018年3月期の売上高は86.4億円、営業利益は9.0億円。 2011年から2018年までのCAGR(年平均成長率)は売上高で14.3%、営業利益で21.5%と急成長を遂げている。 (市場環境) 1980年代をピークに着物市場は縮小を続けており、同社が設立された2006年の約5,000億円から2017年は2,710億円へ。下げ止まりとも言われているがまだ縮小する可能性がある。 そうした市場縮小に伴い、同社ではこれまでの延長線上ではない新たな視点・切り口による「きものを楽しむ市場」の創造に取り組み、上記のような急成長を遂げている。 (BANKANわものやの強み) 新市場創造により急成長を遂げている同社は、「今きものを着ていない人たちに、きものを着る機会とメンテナンスを提供すること」をテーマに掲げ、きものを楽しんでもらうための様々な取り組みを進めており、これが同業他社に対する競争優位性に繋がっている。 ◎ポジショニング 同社はまず、今まできものを着たことの無い初心者を対象に、ゆかたや洗えるきものなどの低価格でハードルの低い商品を提供するとともに、入りやすい店舗づくりを進め、きものを着ることの楽しさを知ってもらい、潜在顧客を「開拓」する。 次いで、毎月開催するイベントなどを通じて、きものに対する関心を高めるとともに単価の高い商品を購入する顧客へと「育成」する。 ◎差別化戦略 商品については、気軽にきものを着る機会を提供するため、ゆかた、無地小紋、洗えるきものなどカジュアルなPB商品を取りそろえている。洗えるきものの2017年の販売実績は32,426着で日本ナンバーワン。2位(26,000着)を大きく引き離している。 店舗については、首都圏および中京地区へ集中出店している。また、入りやすい店舗づくりという点からも、繁華街の路面店ではなく、ショッピングセンター内への出店が中心で、催事も行わないため賃料も安く、ローコスト経営が可能である。 また、顧客を開発・育成するためには優秀なスタッフの育成が極めて重要な課題だが、ここ数年は新卒を含めて十分な人財を採用・教育・育成できるようになっている。 (さが美グループホールディングスについて) さが美グループホールディングスは、「さが美」と「東京ますいわ屋」の2ブランドで店舗を運営しており、きものの文化や取り扱いに関する知識やノウハウが豊富で、着付けのスキルも高い。また、経験豊富で安心感のあるベテラン社員が多数在籍しているほか、集中仕入れによるコストダウンも可能である点などが同社の強みである。 きもの市場縮小の中、直近期18年2月期の売上高は160億円、0.7億円の営業損失となっている。 (今後の和装事業の中長期ビジョン) ベルーナの和装関連事業は、着物レンタルを手掛ける株式会社マイムも合わせて18年3月期の売上実績は270億円であったが、さが美グループホールディングスをグループ会社化した5年後には売上高500億円、営業利益率10%を目標としている。
 
 
経営方針と取り組み
同社では現在の事業環境を踏まえたうえで、各事業について以下のような取り組みを進めて行く考えだ。 (1)経営方針 (外部環境) 消費マインド、ネットの伸長、物流環境といった外部環境の変化に、「ナースや化粧品などが順調に伸びている専門通販を中心としたポートフォリオ経営の成熟」、「組織体制の成熟」、「事業の若返り」などの内部環境により柔軟に対応する経営計画を策定している。 (前期の総括と今期の位置づけ) 前期は過去最高の売上高、営業利益を達成し、売上は第3次経営計画を前倒しで達成した。 外部環境が大きく変化する中、その変化を折込み成長につなげることができたと自己評価している。 今期は第三次経営計画の最終年度であり、今期目標の達成とあわせ、第四次経営計画へ向けた土壌づくりを進める1年であると位置付けている。 (2)各事業における取組 「総合通販事業の安定的な成長」、「専門通販事業の拡大」、「店舗販売事業の拡大と収益改善」、「ポートフォリオの成熟に向けたプロパティ事業の強化」という、主力4事業の拡大・強化を推進する。 また新規事業の展開にも注力する。 ①総合通販事業の安定的な成長 18年3期は宅配便値上げの影響により減益となった。 今期は、商品力強化を軸としてカタログ販売の拡大とネットの強化による土壌作りに取り組む。 具体的には、「1. 商品力強化」、「2. ネットの強化」、「3. リュリュ(若年層)の強化」、「4. カタログ、ネット、店舗のシナジー効果」の4つを挙げている。 【カタログ販売の拡大】 定番商品の拡充、20代・30代向けリュリュの拡充、40代ラナンの強化、ショッピングモールも含めたネットの充実に取り組む。 【ネットの強化】 同社では、CVR(受注転換率、※)の改善と集客強化によるネットの強化を進めている。 CVR改善に関しては、UI(ユーザーインターフェース)の改善や集客の効率改善に加え、「ネット専用商品の投入」がカギと考えている。 集客強化に関しては、具体的な施策としてはネットセールの開催、CM連動、クーポンの配布などに取り組んでいる。 (※)CVR:Webサイトへの訪問数やページビューに対して購入や会員登録などの成果(コンバージョン)が達成された件数の割合を示す指標。 こうした取り組みの結果、前期においてCVRは1.1%の改善、サイト流入数は11.5%増加と効果が表れ、ネット売上(ネット完結受注)は夏、秋冬、春とシーズンを通して前期を上回った。 ◎ネット専用商品の投入 カタログ販売の場合、商品企画はカタログ発刊のタイミングに合わせる必要があるため、少なくとも6か月程度前から準備を始めなければならず、足元の潮流にあったものをタイムリーに商品化することは難しい。 これに対しネット販売の場合は、開発期間は短期間で済むため、顧客のニーズに合った商品を企画・開発・販売することが可能である。18年3月期のネット専用商品の受注構成比は14%と、目標の12%を上回った。 今期も定番商品の拡充などを中心に拡大を図る。 ◎カタログ・ネット・店舗のシナジー効果 ユーザーリストの収集・活用による相乗効果で、通販はレスポンスの向上、ネットはCVR向上、店舗は増収が期待できる。また売上が拡大することにより、効果の高いTVCMの出稿費用負担を分散することができる点もメリットである。 店舗については前期の59店舗から、今期は90店舗まで拡大させる予定である。 ②専門通販事業の拡大 前期は新商品開発やネットでの新規獲得施策が奏功し、大幅増収となった。特に、ナースリー、グルメ、ワインなどが新商品の投入やネットの活用で大きく成長した。 今期は、引き続き新規顧客獲得を積極的に行いながら、顧客LTV(※)の最大化に取り組み収益性を高める。 また、卵殻膜系化粧品が成長を牽引しており、台湾での越境ECも単月黒字を達成した。今後の大幅な成長を目指している。 ※LTV Life Time Value。顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益のこと。一般的には顧客の商品やサービスに対する愛着(顧客ロイヤリティ)が高い企業ほどLTVは高まりやすくなる。 ③店舗販売事業の拡大と収益改善 *和装店舗 前期は売上、利益共に計画を上回って着地した。 今期は13店舗純増の目標で、売上高100億円を目指している。 ゆかたなど買いやすい価格帯の商品を投入し、新規顧客を開拓する。 また、一段のスケールアップを目指し、きもの、宝石などの販売を手掛ける「さが美グループホールディングス株式会社」(東証1部、コード番号:8201)に対するTOBを実施し、2018年6月、連結子会社とした。 ベルーナグループは、店舗販売事業の和装分野における更なる拡大のために、一定の事業規模があり本格的な和装関連の顧客層を得意とし、和装関連事業と相互補完関係が期待できる和装関連事業者買収の可能性を探っていた。「さが美グループホールディングス」は、ベルーナグループの完全子会社となることがさらなる企業価値向上のためには最善の選択と判断した。 買い付け代金は約53億円。 *アパレル店舗 前期は既存店売上高が31.8%増と大きく伸張したとともに、コスト構造の見直しなどを計り売上・利益共に予算を上回って着地した。 今期は出店数を増やし、増収基調を継続させる。 ④プロパティ事業 ポートフォリオ経営の成熟に向けて、「住」「遊」分野の強化を進める。 前期は2017年6月に京都グランベルホテルが開業し、3ホテル体制となった。 今期も2018年7月のルグラン軽井沢ホテル&リゾートに加え、スリランカ、モルディブでもホテルがオープンする予定。既存ホテルが軌道に乗ったことで売上・利益共に成長が続く見込みだ。 ⑤新規事業 「ネットショッピングモール」、「ナース事業」、「ミニベルーナ」の展開を進めている。 新たにスタートしたネットショッピングモールに関しては、まだ改善の余地は大きいが、まずは安定した稼働のために商品力、システム力、マーケティング力を整備しながら足元を固めている。 ナース事業に関しては、好調な看護士向け通販「ナースリー」、「アンファミエ」で蓄積したデータベースを活用したナース向け人材紹介や人材派遣の展開準備を進めているが、感触は良いという事だ。 ミニベルーナの海外展開においては化粧品、健康食品、ナース事業、プロパティ事業を中心とし、まず台湾を念頭に、現地の状況にフィットしたベルーナモデルの構築を進めていく。
 
 
今後の注目点
物流費増加に伴う配送料値上げの影響から稼働顧客数が伸び悩んでいることもあり、これまで順調な成長を続けてきた主力事業の総合通販事業がややスローな動きとなっている。 ただこれは期初から想定していたことであり、第1四半期営業利益実績は計画を上回っている。また、一方で同社では新たな顧客の開拓や既存顧客の一層の活性化を目指し、ネット通販におけるロングセラーの定番商品とネット専用商品の適切な品揃えの追求など、多くのトライを続けている。 総合通販事業の更なる拡大を目指してこうした最適解の導出に意欲的に取り組むことができるのも、安定した経営基盤とこれまでに培った豊富なノウハウを有する同社の強みといえるだろう。 短期的には第2四半期以降の業績動向を、中長期的には和装事業も含めた次の第四次中計における目指す姿を注目しつつ、6月以降軟調な展開が続いている株価動向にも目を配っていきたい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書 最終更新日:2018年6月28日 <基本的な考え方> 当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方は、取締役会が決定した方針のもと、執行役員が担当業務を執行する権限と責任を持つことで迅速化を図るとともに、経営の公正性及び透明性を高めることによりコンプライアンス体制、効率的な経営体制の確立を実現することにあります。また、社外の有識者も参加するコンプライアンス委員会を設置し、権限を付与することによって第三者の視座が経営判断に反映される体制を構築しております。