ブリッジレポート
(6094) 株式会社フリークアウト・ホールディングス

グロース

ブリッジレポート:(6094)フリークアウト・ホールディングス vol.6

(6094:東証マザーズ) フリークアウト・ホールディングス 企業HP
本田 謙 社長 Global CEO
本田 謙 社長 Global CEO

【ブリッジレポート vol.6】2019年9月期第1四半期業績レポート
取材概要「1Qは利益面では伸び悩んだものの、引き続き高い売上成長を実現している。海外中心に様々な施策、投資を行っており今後の具現化に期待したい・・・」続きは本文をご覧ください。
2019年3月27日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フリークアウト・ホールディングス
代表取締役社長
Global CEO
本田 謙
所在地
東京都港区六本木6-3-1
決算期
9月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年9月 14,745 -532 307 25
2017年9月 12,019 601 1,208 842
2016年9月 5,792 358 561 394
2015年9月 4,217 96 95 65
2014年9月 3,224 191 172 49
株式情報(2/8現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,528円 13,176,590株 20,133百万円 0.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 - 40.17円 38.0倍 319.12円 4.7倍
※株価は2/8終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
 
株式会社フリークアウト・ホールディングスの2019年9月期第1四半期決算概要などを報告します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
最適な消費者に最適なタイミングで最適なメッセージを伝えたいという広告主の課題を、AI(人工知能)を用いた先端テクノロジーで解決するマーケティング・テクノロジー・カンパニー。 広告主や広告代理店が、広告主の利益を最大化するために効率的にインターネット広告を買い付け、配信するプラットフォーム「DSP(デマンドサイド・プラットフォーム)」の運営やOEM提供を行う「DSP事業」が事業の中心。 「最大級のデータ保有量」、「良質な広告掲載面の確保」、「優れたアルゴリズム構築のための積極的な投資」などが大きな強み・特長。 広告に留まらず様々な分野でテクノロジーによって「人に人らしい仕事を」提供し、創造的な社会づくりに貢献する事を経営理念としている。 【1-1 沿革】 日本よりも1年ほど先行して米国でRTB(Real-Time Bidding)という、インターネット広告の表示回数ごとに入札形式で広告枠を自動的に売買する配信手法が一般化していたころ、日本でもこの手法を導入して広告分野におけるGame Changeを起こすことを目指してエンジニアでありヤフー株式会社で広告ビジネスに携わった経歴を持つ代表取締役Global CEO本田兼氏が2010年10月、同社を設立。グーグル株式会社で同じくエンジニアとして広告製品を担当していた代表取締役社長 佐藤 裕介氏も創業に参画し、2011年1月、日本国内で初めてRTB技術の商用化を実現した。 新しいプロダクトに対する感度が高いという広告業界の特性もあり、リリース直後から利用する企業は多数に上ると同時に顧客の満足度も高く、売上、利益は順調に拡大。2014年6月、設立から4年弱で東証マザーズに上場した。 2017年1月には意思決定のスピードアップやよりダイナミックな事業展開を目指し持株会社体制に移行した。 【1-2 経営理念など】 『Give People Work That Requires A Person.』、『人に人らしい仕事を』を経営理念として掲げている。 沿革にあるように、インターネット広告のリアルタイム取引を日本で初めて事業化し、広告取引を人間の手作業からコンピュータ間の取引に変えていくことを目指したのが創業の経緯。 テクノロジーによって、広告主は消費者一人ひとりとコミュニケーションを取ることが可能になり、従来のマス広告では不可能だった真の 1to1 マーケティングに近づく。 また同時に、広告業に従事する「人」たちは、取引に関する雑務から解放され、より人間らしいコミュニケーションのプランニングや、共感を起こすメッセージの作成など、クリエイティブな仕事に集中できるようになる。 同社は、「コンピュータにできることはコンピュータに任せることで、余剰労働力(人が創造的な仕事と向き合う時間)をつくること。」が使命であると考えている。 広告分野に留まらずあらゆる分野において、自社の高度なテクノロジーによって、人に人らしい仕事を提供し、より創造的な社会作りに貢献する事が同社の目指す姿である。 【1-3 インターネット広告市場概要】 同社の事業内容を理解するためには、広告主やメディアのニーズと広告市場の変化、テクノロジー、メインプレーヤーといった「インターネット広告」運営を取り巻く環境、構成要素等について一定の知識を有していることが欠かせない。以下、主要ポイントについて概要を説明する。 ≪広告市場の変化≫ 従来の広告市場、特にテレビや新聞といったマスメディアを利用した広告ビジネスにおいては、サプライサイドであるメディアや広告代理店にとっては在庫の独占性や排他性が事業展開するうえで最も重要な要素であった。 大手広告代理店は限りのあるTVのスポット枠をほぼ完全に押さえることで広告主に対する価格リーダーシップを握り、メディアとともに大きな利益を生み出してきた。 ところがTVや新聞によるマス広告は、右肩上がりの経済成長の終焉と、従来のメディアと比較した際のコストの安さや双方向性を大きな特徴とするインターネット広告の登場によりその需要は縮小する傾向にある。 下のグラフが示す通り、日本の総広告費用が過去10年間でほぼ横ばいの中、2005年には3,777億円であったインターネット広告費は地上波テレビの2割弱、新聞の4割弱であったが年平均成長率12.2%で拡大を続け、2017年には1兆5,094億円となり、地上波テレビの8割、新聞の約3倍の規模となっている。(「電通 日本の広告市場 2017」より) 一方で、より効果的な広告を求める広告主のニーズはますます増大しており、いかにして「最適な消費者に」、「最適なタイミングで」、「最適なメッセージ」を届けるかが大きな課題となっている。 こうした中、「アドエクスチェンジ」と呼ばれる、広告枠のオープンなマーケットプレイスが登場してきた。 これは、広告主、メディア、広告代理店などが広告枠を自由に売買することができるまさに「市場」であり、広告主にとっては、より高い広告パフォーマンスを求めて最適な広告枠を買うことが極めて重要になってくるわけだが、それを実現するためのカギとなるテクノロジーの一つが、同社が日本国内で初めて商用化を実現した「RTB」である。 ≪RTBによる広告枠のリアルタイム取引≫ RTB(Real-Time Bidding:リアルタイムビッディング)とは、インプレッション(広告の表示回数)ごとに入札形式で広告枠を自動的に売買する配信手法。 RTBが登場するまで一般的であった「純広告取引」は、ディスプレイ広告(ウェブサイトに表示される画像やFlash、動画などを用いた広告)の枠を、メディアや広告代理店がインプレッション保証や期間保証を付けてパッケージ販売するいわばコースメニュー。 これに対してRTBは、ディスプレイ広告を1インプレッションごとにアクセスしてきたユーザーの属性を解析し、「特定の属性を持ったユーザーへの広告」として1インプレッションごとに入札方式で売買を行なうシステムである。 RTB技術の活用により、広告主は従来の特定サイトの広告枠を予め決定された価格で購入する純広告や、検索キーワードに関連した検索連動型広告では難しかった潜在的な消費者層の開拓や、興味・関心をもってもらうための効果的な広告配信による認知施策が可能となる。 「RTB」には広告枠の需要サイドのシステムである「DSP」と、供給サイドのシステムである「SSP」が主要プレーヤーとして登場する。 (DSP「Demand Side Platform:デマンドサイド・プラットフォーム」とは?) 広告主や広告代理店が、広告主の利益を最大化するために効率的にインターネット広告を買い付け、配信するプラットフォーム。 具体的には、広告主や広告代理店が、RTB技術を活用し独自のアルゴリズムにより、アドエクスチェンジやSSP、あるいはアドネットワークなどに対して、ユーザーの広告1インプレッションごとに最適な自動入札取引・広告配信を行うプラットフォームである。 広告主はあらかじめDSPを通じて広告を見て欲しい対象者の属性、入札の上限額を決めておき、広告主の要望に マッチするユーザーが見つかった場合は瞬時(およそ0.05秒程度)に入札が行われ、最も高い価格を提示した広告が媒体に配信される。 RTBが登場するまでは、広告主は、ターゲットであるユーザーが閲覧すると思われるサイトを想定して、特定の広告枠を予め決められた価格で買い付けていたが、DSPを用いることにより、広告主は広告を配信したいユーザーをリアルタイムで判断し、入札による適切な価格で広告を配信することができるため、広告主は広告の費用対効果を高めることが可能である。 同社は自社開発のDSPである「Red」や「FreakOut」の販売やOEM供給を行う「DSP事業」をメインビジネスとしている。 常に最適なユーザーに広告を配信し、最適な価格で入札を行うには、極めて高度なアルゴリズムを構築し、大量のデータを元に機械学習を繰り返すことで「より賢いAI(人工知能)」に磨き上げていく必要があるが、同社はその点で強力な競争優位性を有している。(詳細は【1-6 特徴・強み】を参照) (SSP「Supply Side Platform:サプライサイド・プラットフォーム」とは?) メディア側から見た広告効果の最大化を支援するシステム。メディアが広告枠を管理及び販売する際に使用するプラットフォームであり、DSPのリアルタイムな入札に対応する技術を有している。 このように、RTB技術をベースにして従来の純広告では困難であった最適化を自動かつ瞬時に行う費用対効果に優れた広告は「運用型広告」と呼ばれ、インターネット広告全体を上回るスピードで成長を続けている。 2017年には日本のインターネット広告の6割強が運用型広告となっている。 (※)運用型広告:膨大なデータを処理するプラットフォームにより広告の最適化を自動的もしくは即時的に支援する広告手法の事。検索連動型広告や一部のアドネットワークが含まれるほか、新しく登場してきたDSP、アドエクスチェンジ、SSPなどが典型例。枠売り広告、タイアップ広告、アフィリエイト広告などは運用型広告に含まれない。 また、同社が日本国内で商用化したRTBは、市場規模は米国の10分の1以下であるが、急成長を遂げている。 このように、他の媒体と比べて高い伸びを見せるインターネット広告の中でも特に伸長著しいRTB技術をベースとした「運用型広告」が同社のフィールドであり、旺盛な需要を確実に取り込んで業容を拡大させている。 加えて、後述するように同社では東南アジアを中心とした海外事業の拡大にも積極的に取り組んでいるが、東南アジアにおいても台湾を筆頭に各国において広告市場におけるデジタル広告費の割合は上昇傾向にあり、マーケットは継続的に拡大している。 【1-4 事業内容】 1.事業セグメント 事業セグメントは、「DSP事業」、「DMP事業」、「その他事業」の3つ。 ① DSP事業 ◎ビジネスモデル SSP・アドエクスチェンジおよびメディアを通じて広告枠を仕入れ、広告主・広告代理店に対してインターネット広告枠を提供。一部広告代理店に対してはDSPプラットフォームのOEM提供を行っている。 ◎主要プロダクト、サービス 広告主の自社サイトのアクセスデータ、広告配信データ、会員データ、購買データなどのビッグデータを同社が開発した解析ソフトウェアにより分析するプライベートDMP「MOTHER」を用いて、DSP「Red」、「FreakOut」による広告配信効果の最大化を追求している。 「Red」、「FreakOut」は広告主にとって有望な見込顧客にターゲティングするために、多様な配信手法を備えている。 具体的には、「知らない人(潜在層)」には知ってもらうための「オーディエンス拡張」等の配信手法を用いた潜在層ターゲティング、「既に知っている人(興味層)」には欲しいと思ってもらうための「キーワードマッチ」等の配信手法を用いた興味関心層ターゲティング、「欲しいと思った人(顕在層)」にはコンバージョン(購入、資料請求、会員登録など実際の行動)してもらうための「リターゲティング」等の配信手法を用いた顕在層ターゲティングを行い、消費者の行動プロセスに応じてターゲティングした広告配信を実施している。 ② DMP事業 DMPとは「Data Management Platform(データ・マネジメント・プラットフォーム)」の略で、広告主がもつ自社サイトへのアクセスデータ、広告配信データ、会員データなどのデータを管理及び解析し、メール配信や分析調査などの様々なデータ活用チャネルと連携して利用可能にする、データ統合管理ツールのこと。 クライント企業や広告代理店のデータマーケティングの最適化を実現するため、メディア企業や調査会社などデータプロバイダーから多様かつ膨大なデータを集め、DMPで蓄積・解析を行い、独自性の高い膨大なパブリックデータDMPの提供、大規模ポータルサイトのDMP構築支援、最適なマーケティングチャネルでの自社データの活用のコンサルティングサービス等を提供している。 ③ その他の事業 持株会社体制への移行に伴い17年9月期より新設されたセグメント。国内外のグループにおける新規事業、及び経営管理が含まれる。 【1-5 グループ企業】 持株会社である株式会社フリークアウト・ホールディングスの下、グループを形成している。 海外事業においてはFreakOut Pte.Ltd. (本社:シンガポール)をヘッドクォーターとして、ネイティブ広告プラットフォーム事業を中軸とするグローバル展開を推進してきた。 2015年に、東南アジア初のネイティブ広告プラットフォームをリリース以降、各国上位のメディアを中心に提携先を拡大し、現在では海外で700社を超える広告主に利用されている。 2017年7月には香港市場に参入したほか、シンガポール、タイ、インドネシアに続く東南アジアの新拠点として、ベトナム、マレーシア、フィリピン、インド、イランに現地法人を設立したほか、M&Aも積極的に推進し、各国のプレミアムメディアと提携。ネイティブ広告プラットフォームをアジア、中東で提供している。18/9期にはロシア、アラブ首長国連邦、オーストラリアでも事業を開始した。アジア中心にグローバル16カ国にてサービスを提供する。また19/9にも数拠点の展開を計画している。 【1-6 特長と強み】 前述のように、常に最適なユーザーに広告を配信し、最適な価格で入札を行うには、極めて高度なアルゴリズムを構築し、大量のデータを元に機械学習を繰り返すことでより「賢いAI(人工知能)」に磨き上げていく必要があるが、同社はその点で強力な競争優位性を有している。加えて、良質な広告掲載面を有している点も大きな強みとなっている。 ① 最大級のデータ保有量 RTB技術を日本国内で初めて商用化したこともあり、データ保有量は国内最大規模となっている。 どんなに優れたAIを開発したとしても、大量のデータを使って機械学習を繰り返し行わないと実用的で効果の高いAIには成長しない。 「日本で一番スマートフォン所有者のことを知っている」同社は、全国6,000万人のモバイルユーザーのうち、5%、300万人の正確なデータがあれば、残り5,700万人の年齢や性別による思考、行動はほぼ正確に類推することが可能ということで、広告主に対し高い顧客満足度を提供している。 ② 良質な広告掲載面を確保 一方、RTBの登場によってオープンな環境でのプラットフォームの「賢さ」が優位性である時期がある程度続くと、技術の格差・優劣が相対的に縮小し、特にモバイルの世界でどれだけ良質な掲載面を確保しているかという「掲載面の品質とその独占性」が再び有力な競争条件となってきた。 そうした中、同社の関連会社 M.T.Burn株式会社はLINE株式会社が50.4%、同社が49.5%を保有する合弁会社であることから、同社はLINEアプリの広告枠を独占的に確保することができており、広告主に高いパフォーマンスを提供している。 ③ 優れたアルゴリズム構築に向けた積極的な投資 ターゲティング広告においては入札金額が高ければ落札はできる。売上規模拡大を目指す同社としては、できるだけ多くの広告枠を買いたいが、パフォーマンスが悪ければ広告主から評価されず、継続的な取引も難しくなってしまう。 そこで、高く買ったとしても結果としてはリーズナブルであったと判断してもらえるような結果を生むことが極めて重要である。 この課題に対し同社では「クリック率予測モデル」、「コンバージョン率予測モデル」を開発し、広告主に対する提案力を高めており、加えてこれらモデルの正確性を一段と向上させるために常に投資を行っている。 同社のデータ・サイエンスチームは日本の、特に中堅企業クラスではトップレベルの能力を有しているとのことで、積極的な投資の蓄積が継続的かつ高いパフォーマンスの提供に結び付いている。 ④ 優秀な人材の獲得 ある雑誌の調査における『「東大・京大生」人気企業ランキング』において、同社は名だたる大手IT企業、外資系金融機関、世界的メーカーに伍して前年の107位から79ランク上がって28位にランキングされた。 インターン制度を積極的に活用し学生との接点を増やしているのに加え、広告がメイン事業ではあるが、今後は新規分野としてHR tech、Fintechといった幅広いフィールドで活躍できる可能性がある事、エンジニアとして業界でも著名な優秀なエンジニアと一緒に働くことが出来る事を魅力と感じているということだ。 また、チャレンジを最大に評価するインセンティブ制度も学生からの人気が高い要因の一つであると会社側は考えている。 【1-7 伊藤忠商事との資本業務提携】 昨年12月に伊藤忠商事との資本業務提携を発表した。以下、内容を要約。 資本業務提携の目的及び理由について 伊藤忠商事は「豊かさを担う責任」を企業理念とし、『ひとりの商人、無数の使命』をコーポレートメッセージとして、様々な産業領域において日本のトップ商社としてグローバルで事業を展開している。 同社と伊藤忠商事は、2018年10月上旬より、主にデジタルマーケティングの領域を中心として、同社が保有する技術基盤と、伊藤忠商事が保有する膨大なオンライン/オフラインの有形・無形のアセットを相互に有効活用することによる、成長可能性について業務提携を中心とした検討を行ってきた。また、業務提携に関する協議の中で、伊藤忠商事が当社の株主となることで両社のシナジーがよりよく発現されていくのではないかとの考えのもと、当該協議を開始して間もない頃から資本提携の可能性についても協議を続けてきた。 その結果、このたび、当社と伊藤忠商事は、相互の理念・ビジネスへの理解と尊重をベースとして、広くテクノロジー領域においてグローバルにシナジーを発現し、もって企業価値を向上させることを目的として、業務提携を行うこととなった。また、業務提携の実効性をより高めること、及び当社成長に向けての資金調達と自己資本の増強を目的として、同時に本第三者割当増資による資本提携を実施することとなった。 本資本業務提携の内容 ・業務提携について 伊藤忠商事が保有する膨大な有形・無形のアセットと、同社のテクノロジー基盤をかけあわせることで、デジタルマーケティング領域における新規サービスの共同開発やアジアを中心とした海外事業の拡大など、広範囲にわたる提携を行う。 ・資本提携について 同社は、業務提携の実効性をより高めること、及び同社成長に向けての資金調達と自己資本の増強を目的として、本第三者割当増資により、伊藤忠商事に対して同社の普通株式 2,577,400株を割り当てる。また、同時に本田社長は、保有する同社株式の一部(258,300株)を市場外の相対取引により伊藤忠商事に対して譲渡する旨を伊藤忠商事と合意している。なお、譲渡価格は、当資本業務提携に係る取締役会決議の直前営業日(18年12月14日)までの直前1ヶ月間の当社普通株式の普通取引の終値単純平均値である1,550円(小数点以下を四捨五入)となっている。譲渡は2019年1月9日付で実行される。伊藤忠商事は、第三者割当増資及び譲渡の実施により、同社の普通株式2,835,700株を取得し、同社の総議決権数に対する所有議決権数の割合は18.00%となる。 第三者割当増資後の大株主及び持株比率(%)
募集前(2018年9月30日現在) 募集後
本田謙 39.58% 本田謙 31.46%
ドイツ証券株式会社 5.10% 伊藤忠商事株式会社 18.00%
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口) 4.39% ドイツ証券株式会社 4.27%
YJ1号投資事業組合 4.33% 日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口) 3.67%
BBH(LUX) FOR FIDELITY FUNDS PACIFIC FUND 4.28% YJ1号投資事業組合 3.62%
 
 
2019年9月期第1四半期決算概要
前年同期比30.2%の増収、EBITDAは68.6%減 売上高は前年同期比30.2%増の43億70百万円。過去最高の四半期売上を引き続き更新した。関連取扱額TOPメディアの売上が減少する一方で、海外広告を中心に順調に伸びている。 営業損失は1億70百万円(前年同期は1百万円の利益)。売上総利益率が前年同期比2.5p縮小し25.7%となった一方、販管費率は同1.6p増加し29.7%となった。人員は前期末624名から657名に増加、販管費は人件費を中心に増加している。 営業外では持分法による投資利益が前期6億14百万円から8億91百万円に増加した。IRIS社については下期より持分法の適用を開始している。為替差損はあったものの、経常利益は前期比74.6%減の3億7百万円となった。 EBITDAは同40.9%減の8億43百万円。新規事業への投資に伴い減少、一過性のコストも発生した。四半期毎の推移は以下の通り。 税負担は減少し、親会社株主に帰属する四半期当期純損失は1億51百万円(前年同期は1億円の利益)となった。 国内外の定性的状況 ≪国内広告事業≫ トップメディアの売上減はあったが国内広告DSPは若干前四半期から成長している。また、DMP事業のインティメート・マージャーは一時的に成長の踊り場になっており組織体制の整備など再成長に向けてじっくりと取り込んでいたが、再び収益性高い事業として利益貢献を開始している。コストもしっかりと削減できるところするという方針のもと、国内サテライトオフィスを一つ閉鎖した。 ≪海外広告事業≫ 自社先行拠点及びM&A先については、順調に売上・EBITDA共に成長を継続している。シンガポール、及び、2017年以降進出の各拠点では投資を継続した。赤字が継続する拠点、とくにコントロール不能な政治的なリスクがあるトルコについてはかなり縮小させようという方針。この3年で一気にグローバル化を進めてきたが、勝てる拠点はM&A含めてさらに拡充を図りつつ、縮小すべき拠点はしっかりと縮小ないし撤退することを、同社では今年度の重要なテーマと捉えている。自社先行拠点であるタイ、インドネシア、台湾は順調に売上・利益共に成長を継続しており、1Qも60百万円の利益が出ている。一方で、シンガポールでマイナス80百万円、後発の拠点でマイナス60百万円となっている。但し、今年度にある程度選別を進める予定、収益化する拠点は継続しつつ収益化が困難と判断した拠点は縮小ないし撤退する方針。現時点での海外事業に対するスタンスは、「いつでも海外事業として収益化できるが、それだけではなく真のグローバル企業となるために必要な拠点への投資を継続しつつ、選別している」というフェイズ。来期に向けての布石を着々と打っている段階である。 1Q末の総資産は172億37百万円となり、前期末比16億1百万円増加した。投資その他の資産が18億25百万円増加した。 負債は123億40百万円となり、前期末比11億98百万円増加した。有利子負債が9億75百万円増加した。 純資産は48億96百万円となり、前期末比4億1百万円増加した。 自己資本比率は、26.1%(前期末26.9%)となった。
 
 
2019年9月期業績見通し
前期比28.9%の増収、同192.6%の経常増益予想 通期予想に修正はなく、19/9期は売上高が前期比28.9%増の190億円、経常利益は同192.6%増の9億円、EBITDAは同65.9%増の14億円を計画する。 (2)中期計画 2020年9月期「売上高330億円、EBITDA30億円」を目指している。今後2年で2017年9月期実績に対して、売上高で2.8倍、EBITDAで2.1倍という成長を追求する。 国内広告が着実に伸びるのと同時に、海外広告がその成長ドライバーになると考えている。
 
 
各事業の進捗
◎海外事業 2017年にホールディングス体制に移行した際に、広告事業としては、収益基幹で安定成長を続ける国内広告事業と、先行投資が必要な急成長事業である海外広告事業と、異なるフェーズの事業体を分け、個別戦略のもと事業を推進してきた。一方、昨期は、グループ全体に対して海外広告事業の売上比率が30%、従業員比率も60%程度の規模になり、また、2020年9月期の中期計画達成に向けて、海外広告事業が先行投資期から収益化フェーズへと移行してきた。その中で、エンジニアリソースを中心とする経営資源を、国内・海外と個別に配置するのではなく、Global Committeeというものを国内・海外という区分のない上位概念に設置して、全体最適の観点から配分することで、日本国内も含めたグローバル市場で競争力を高め、収益を最大化させるための経営体制へと移行した。 ◎米国Playwireの買収、子会社化 Playwireはオンラインメディアの収益化に関するあらゆるソリューションをワンプラットフォームで提供し、かつ機械学習を活用することで、複雑化するメディアの収益化をよりシンプルに効果的に実現するソリューションを展開している。同社としては特に動画広告に関するソリューションに着目しており、彼らの動画広告に関するソリューションをこれからアジア全域に拡大させていく予定。既にアジアにて連携テストが開始した。 ◎子会社adGeekによるThe Studio by CtrlShiftの買収と東南アジア全域でのトレーディングデスク事業強化・拡充 The Studio by CtrlShiftは、東南アジア全域でデジタルマーケティングサービスを展開するCtrlShiftの代理店事業領域をスピンオフさせた会社。adGeekを通じて子会社化した理由としては、The Studioが東南アジア全域で非常にプレゼンスの高い優秀なチーム、代理店事業経験の少ないフリークアウトが事業マネジメントするよりも代理店事業の経験豊富なボードメンバーがいるadGeekチームに入ってもらった方が良いだろう、という判断が背景にある。またフリークアウト単体としては、これまでまずはローカル市場をとる、というところを戦略の中心に置いており、日系企業向けには積極的に営業活動をしてこなかった。しかし、ローカル市場である程度基盤が整ってきた事と東南アジア全域にソリューションも増えたところで、フリークアウトとして日系広告主、総合代理店向けにJapan Deskを設置し、グループ会社のソリューションを統合的に提供する体制を整えた。 ◎グローバル市場におけるアプリマーケティング事業の立ち上げ 1月に「本田商事」という会社を設立した。日本のアプリゲームの市場は1兆円を超える非常に大きな市場規模となっている。スマホ普及がひと段落してきた事、海外勢の相次ぐ日本市場参入により、非常に競争環境が激しく、また開発費用の高騰からハイリスクな市場となってきている。現在一部のアプリ企業は既に日本市場だけでなく中国や台湾、英語圏でのグローバル展開を開始しているが、今後こういったトレンドは一層加速し、東アジアや英語圏のみならずアジア全域への展開が加速していくものと想定している。その際に、同社のアジア全域における事業アセットを活かして、まだアプリ会社からすると市場観のない東南アジアや中東、ロシアなどへの展開する際のビジネスパートナーとして、現地でのオンラインマーケティングだけでなく、オフラインコミュニケーションや現地IPとのタイアップ企画など、海外展開のビジネスパートナーとしてのポジションをとりにいこうと考えている。こうしたことを背景に、アプリビジネスにおけるグローバル展開のビジネスパートナー・パイオニアになる、といった意味で「商事」という名前を付した。 ◎MobileActionと資本提携 MobileActionはサンフランシスコ拠点のアプリストアの分析や検索最適化ツールを提供する企業。アプリストア上から各キーワード単位でランキングをトラッキングし、各キーワード単位での競合との流入比較、上位表示されるためのキーワード提案など、アプリストア上でオーガニック流入を増やすための施策に強みを持っている。全世界のアプリストアからランキングやキーワードなど膨大なデータを収集する企業となり、本田商事の事業展開とは非常に親和性が高く、例えば中東や東南アジアなどアプリ会社からすると全く相場観がない市場に対しても、現地でのランキング推移をみてトレンドを理解する。また現地の言語を完全に理解せずとも、アプリストア上でより発見されやすいキーワードを彼らのツールを通じて自動で拾ってくる。このため、それらのキーワードを活用することでより発見されやすくする、など、アプリ企業のグローバル展開には非常に有用なプロダクトとなる。 今回の資本提携を通じて、この検索最適化ツールをアジア全域でフリークアウトが独占して提供していくことになった。MobileActionもPlaywireとの協業と同様に、英語圏ではある程度プレゼンスがある会社だが、非英語圏においては自社でローカライズ、マーケティング活動を実施するほど余力がないといったステージの企業、そこに同社が資本を入れてフリークアウトの事業にも活きる形でアジア展開をサポートする、といった座組み。 PlaywireやMobileActionのような英語圏で既に実績を出して収益化しているような会社や、CtrlShiftのようにリージョン単位で既にプレゼンスのある会社のM&A、アライアンスといったものが増えている。これは改めて同社がアジア全域で存在感のある会社として認知され始めることにより、M&A・協業先のレベルも上がってきている、というように非常にポジティブに同社では捉えている。 ◎Silver pushに対して追加投資を行い関連会社化 インドのデリーにあるSilver pushには 2017年夏ごろに最初に投資をし、このタイミングで関連会社化した。Silver pushはAdTech分野において技術的に高いプロダクトを高頻度で出している企業。動画広告の分野で高い技術を持っている。YouTubeのようにすでにレコードしたものだけでなく、ライブキャスティングというリアルタイムの動画に対応しており、動画の内容を理解して、内容にマッチした広告を出すという他社がマネできない技術を持つ。 ◎伊藤忠商事との資本業務提携について 現時点で具体的に伊藤忠商事グループのどの会社のどのアセットを使用すると報告することはできない中、フリークアウトに期待されていることとしては、いままでやってきた、ビックデータの解析や店舗の中のオフラインデータをどのようにマーケティング分野で活用するかといったこと。 フリークアウトの持っているアセットとして、伊藤忠商事のデータを使うというだけでもFintech・AdTech・Retail Techが関係して入り組んでおり、具体的に何がどうなって数字がどうなるというのが説明できる段階ではないという。ただ、Global展開という点で伊藤忠商事の持っているネットワークを生かして、顧客を紹介してもらえるなどの所は、早めに成果が上がるとフリークアウトでは期待している。
 
 
今後の注目点
1Qは利益面では伸び悩んだものの、引き続き高い売上成長を実現している。海外中心に様々な施策、投資を行っており今後の具現化に期待したい。また、やみくもに投資を行うだけではなく、撤退も早期に進めており経営の監視が行き届いている。こうした中、1Qの最も大きな話題は伊藤忠商事との資本業務提携だろう。資本業務提携を発表し、増資を行ったばかりであり、具体的な提携内容は発表されていないが、逆に今後の楽しみとしてとっておきたい。中期計画達成に向けた積極的攻勢に今後も注目。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書 最終更新日:2018年12月26日 <基本的な考え方> 当社は、経営の効率化を図ると同時に、経営の健全性、透明性及びコンプライアンスを高めていくことが長期的に企業価値を向上させていくと考えており、それによって、株主をはじめとした多くのステークホルダーへの利益還元ができると考えております。経営の健全性、透明性及びコンプライアンスを高めるために、コーポレート・ガバナンスの充実を図りながら、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できる組織体制を構築することが重要な課題であると位置付け、会社の所有者たる株主の視点を踏まえた効率的な経営を行っております。 <実施しない主な原則とその理由> 「当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。」と記述している。