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ブリッジレポート:(4634)東洋インキSCホールディングス 2020年12月期第2四半期決算

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髙島 悟 社長

東洋インキSCホールディングス株式会社(4634)

 

 

企業情報

市場

東証1部

業種

化学(製造業)

代表取締役社長

髙島 悟

所在地

東京都中央区京橋2-2-1

決算月

12月末日

HP

https://schd.toyoinkgroup.com/ja/index.html

 

株式情報

株価

発行済株式数

時価総額

ROE(実)

売買単位

1,858円

60,621,744株

112,635百万円

3.9%

100株

DPS(予)

配当利回り(予)

EPS(予)

PER(予)

BPS(実)

PBR(倍)

90.00円

4.8%

102.72円

18.1倍

3,757.35円

0.5倍

*株価は8/31終値。発行済株式数、DPS、EPSは20年12月期第2四半期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。

 

業績推移

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期利益

EPS

DPS

2017年3月(実)

268,484

19,231

19,262

12,702

43.00

16.00

2017年12月(実)

240,344

16,774

17,473

10,376

35.55

16.00

2018年12月(実)

290,208

15,276

15,429

11,847

202.93

85.00

2019年12月(実)

279,892

13,174

13,847

8,509

145.72

90.00

2020年12月(予)

260,000

12,000

11,500

6,000

102.72

90.00

*単位:百万円、円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。以下同様。2017年12月期は9カ月決算。
2018年7月1日付で株式併合(5株を1株)を実施。遡及修正はしていない。

 

 

東洋インキSCホールディングス株式会社の2020年12月期第2四半期決算概要などをご紹介致します。

 

目次

今回のポイント
1.会社概要
2.2020年12月期第2四半期決算概要
3.2020年12月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度-2020年度)>
<参考2:コーポレートガバナンスについて>

 

今回のポイント

  • 2020年12月期第2四半期の売上高は前年同期比11.5%減の1,232億円。新型コロナウイルスの影響で世界的に消費活動が停滞。オフセットインキやプラスチック用着色剤需要が大きく減少した。全セグメントで減収。営業利益は同9.2%減の55億円。販売数量減少による経費の減少および構造改革によるコスト削減など固定費削減(+24億円)や、原材料価格低下(+10億円)、環境調和型製品やセンサー用材料および機能性フイルムなど高付加価値製品の拡販(+5億円)のプラス要因はあったが、新型コロナウイルスの影響による販売数量減少(‐42億円)、メディア材料の販売価格下落(‐4億円)などが影響した。

     

  • 新型コロナウイルスの影響を受け20年12月期業績予想を下方修正した。売上高は前期比7.1%減の2,600億円、営業利益は同8.9%減の120億円の予想。コロナ禍の影響は長期に渡り、販売数量の減少や販売単価の下落、人の移動制限に伴うサプライチェーンの変化などを予想している。営業利益に関しては、需要減少による影響は上半期22億円、通期では40億円と予想しており、一方で新たな需要の取り込みや構造改革で10億円を捻出する。加えて、円高・途上国通貨安に伴う為替差損の増加、利益伸び悩みに伴う法人税等調整額の増加、事業の再構築に伴う損失等の発生可能性なども考慮している。配当は前期と同じく90.00円/株を予定。予想配当性向は87.6%。

     

  • 残念ながら、新型コロナウィルスの影響により通期予想を下方修正し、中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度‐2020年度)の数値目標達成は、未達が確実となってしまった。ただ、アナログ印刷は今後も更に厳しい事業環境が想定される反面、同社にとっての需要家となる自動車メーカーや電機メーカーの投資動向がどうかという不透明要因はあるものの、エレクトロニクス、自動車、ヘルスケアはAfter コロナでも不変な若しくは更なる需要拡大も期待できる分野である。来年2月に予定されている次期中期経営計画での方針、具体的な施策を注目したい。

     

1.会社概要

国内印刷インキ首位。インキ製造の原材料である顔料や樹脂加工技術を活かし、液晶用カラーフィルター材料、電磁波シールドフィルムなど多角的に製品を展開。国内外62社の連結子会社、7社の持分法適用関連会社でグループを構成。世界23か国の拠点を基盤に様々な国や地域で事業を展開(2019年12月末)。
社員一人一人が革新的に発想し、科学的に実行、加えてそれぞれの活動を連鎖させることで生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していくことをコンセプトとした長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、2027年に向け持続的成長を可能にする企業体質への変革を目指している。

 

【1-1 沿革】

1896年(明治29年)、創業者 小林鎌太郎が東京日本橋で個人経営の「小林インキ店」を開業したのが始まり。1907年(明治40年)に東洋インキ製造株式会社に改組。明治期に入り、読売新聞(1874年創刊)、朝日新聞(1879年創刊)を始めとした多数の新聞や雑誌が創刊されたほか、富国強兵の下、教育水準向上のための教科書の制作を始めとした政府関係の印刷物も増加し印刷用インキの需要は急拡大していった。

 

当初は輸入品が中心であったが、良質な国産インキへの転換が国策として推し進められる中、高い技術力を持った同社は、民間印刷会社に加え、大蔵省印刷局を始めとした政府機関への納入も拡大し、輸出も増加した。また、原材料の顔料・樹脂から印刷用インキまでの一貫製造にもいち早く取り組んだこと、創業時から、印刷会社最大手の1社となった凸版印刷株式会社との関係が深かったことなども成長の背景として挙げられる。関東大震災、太平洋戦争といった困難な時期を切り抜け、戦後高度経済成長期に再び急成長を遂げ、1961年(昭和36年)東証2部上場を経て、1967年(昭和42年)、東証1部に上場した。

 

印刷インキにとどまらず、顔料、樹脂など原材料の生産・加工で培った多様な技術を活かし、液晶用カラーフィルタなど他分野に事業領域を拡大している。グループ力の拡大とさらなる成長のため2011年(平成23年)持株会社制度に移行し、社名を東洋インキSCホールディングス株式会社とした。

 

【1-2 経営理念など】

企業グループとしてのブランドの原点を示すとともに、グループの社員各人が常に心に留め、企業人として相応しく行動するための規範として、経営哲学・経営理念・行動指針の三部からなる「東洋インキグループ経営理念体系」を、1993年4月に制定した。2014年4月には、行動指針に新たに「株主の満足度向上」を追加。すべてのステークホルダーの満足度向上を目指してゆく。

 

<東洋インキ経営理念>

経営哲学

人間尊重の経営

 

 

経営理念

私たち東洋インキグループは、世界に広がる生活文化創造企業を目指します。

◇ 世界の人びとの豊かさと文化に貢献します。

◇ 新しい時代の生活の価値を創造します。

◇ 先端の技術と品質を提供します。

 

 

行動指針

◇ 顧客の信頼と満足を高める知恵を提供しよう。

◇ 多様な個の夢の実現を尊重しよう。

◇ 地球や社会と共生し、よき市民として活動しよう。

◇ 株主権を尊重し、株主価値の向上に努め市場の評価を高めよう。

 

この理念体系は理念カード(クレド)として全社員が常に携帯し、毎週部単位で行われる5分間ミーティングで読み合わせ、ディスカッションを行うなどして繰り返し確認し、より深い理解、実践を図っている。
また、海外も含めたグループ企業一体化のためにグローバル社内報を発行しているが、そのトップページには必ず「東洋インキグループ経営理念」を掲載。上記クレドも、「日・英」版に加え、「中・英」版もあり、経営理念の全世界的な共有・浸透に注力している。

 

【1-3 市場環境】

◎概要
(市場動向)
日本の印刷産業の生産金額はデジタル化の進展、活字離れ等の要因を背景に、新聞、雑誌など出版印刷を中心に減少傾向にある。
一方で、ポスター、カタログ、チラシ、POPなど商業印刷は底堅く、食品・医薬品などの包装紙、プラスチック容器に使われる包装印刷は2004年から2019年までの15年間のCAGR(年平均成長率)は+2.6%と堅調に拡大している。

 

 

一方、海外、特に新興国では、紙を対象物とした印刷(オフセット印刷)、食品パッケージなど主にフィルムを対象物とした印刷(グラビア印刷・フレキソ印刷)、共に今後の成長が予想されており、同社もその需要取り込みに注力している。
印刷機のイノベーションが進む中、クオリティーの向上に伴いローカルインキでは対応しきれない部分も多く、優れた日本製インキ需要は今後も高まることが予想されるという事だ。

 

また世界的な環境意識の高まりの中、バイオマスインキなど、環境調和型製品に対するニーズも拡大しており、インキ各社は独自技術を活かした新製品開発に取り組んでいる。

 

◎同業他社
インキ事業を展開する主な上場企業は同社を含め6社。
(4631)DICは世界規模でトップ企業であるのに対し、同社は国内インキ首位で、各品目別でもほとんどが1位か2位となっている。グローバルベースでは3位にランキングされている(2位は欧州企業)。(4633)サカタインクスは同社の第2位株主で、主に物流面での相互補完を図り2000年に資本業務提携契約を締結している。
新型コロナウイルスの影響で前回レポート時から全社業績予想を下方修正している。

 

 

 

売上高

増収率

営業利益

増益率

営業利益率

時価総額

PER

PBR

ROE

4116

大日精化工業

126,000

-18.8%

500

-89.7%

0.4%

40,129

22.2

0.4

4.1

4631

DIC

700,000

-8.9%

35,000

-15.3%

5.0%

240,080

15.9

0.8

7.7

4633

サカタインクス

161,800

-3.3%

7,000

+12.4%

4.3%

61,161

13.6

0.8

5.5

4634

東洋インキSCHLD

260,000

-7.1%

12,000

-8.9%

4.6%

112,635

18.1

0.5

3.9

4635

東京インキ

40,000

-6.0%

340

-42.6%

0.9%

5,527

-

0.2

5.1

4636

T&K TOKA

41,030

-14.9%

0

-100.0%

0.0%

19,242

88.4

0.4

1.4

*売上高、営業利益は各社の今期予想。ROE、PBRは前期実績。単位:百万円、倍。時価総額は2020年8月31日終値ベース。

 

【1-4 事業内容】

◎「印刷インキ」について
同社の主要製品のひとつである印刷インキについて、「原材料」、「種類と用途」などを以下にまとめてみた。

 

<印刷インキの構成要素>

顔料(有機顔料、無機顔料など)

水、油に不溶の着色に用いる粉末。

ワニス(合成樹脂、油脂類、溶剤など)

油脂類、天然樹脂、合成樹脂等を溶剤に溶かしたもので、顔料を分散し、印刷素材に転移、固着させる。

添加剤(滑剤、硬化剤など)

乾燥性や流動性等いわゆる印刷適性や印刷効果を調整する。

 

この3つの原材料を混ぜ合わせて各種インキを製造する際に高度な分散技術が必要となる。
また、同社は創業以来これら原材料の製造を手掛ける過程で、様々な用途開発を進めて事業領域を拡大してきた。

 

<主な印刷インキの種類と用途>

種類

特徴・用途

平版インキ

対象物を紙とする代表的な印刷インキ。雑誌、ポスター、チラシなど。

グラビアインキ

微細な濃淡が表現できるので、写真画像の印刷等に適している。現在では主に食品包装材などフィルムへの印刷に使用される。

スクリーンインキ

他の印刷方式では印刷が困難な被印刷物を中心に、自動車の計器類、基板回路形成、CD・DVDといった工業製品などで使用される。

フレキソインキ

ダンボールやフィルム、布などの表面印刷に利用される。

UV硬化型インキ

乾燥工程で、熱風ドライヤーを使用せずに瞬間乾燥することから、CO2を直接発生させないUV硬化印刷に用いられる。VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を発生しない環境調和型インキである。

 

◎事業セグメント
「色材・機能材関連事業」、「ポリマー・塗加工関連事業」、「印刷・情報関連事業」、「パッケージ関連事業」の4セグメントで構成されている。
このうち、「印刷・情報関連事業」は主に紙への印刷に使用する平版用インキ(オフセットインキ等)、「パッケージ関連事業」は食品包装などフィルムへの印刷に使用するグラビアインキやフレキソインキなど、「色材・機能材関連事業」は印刷インキの原料でもある顔料をコア素材とし展開した製品、「ポリマー・塗加工関連事業」はこれもインキの主原料である樹脂とその設計技術から展開した事業である。

 

 

☆色材・機能材関連事業

 

19/12期

売上高

67,400

営業利益

3,386

利益率

5.0%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

汎用化成品

顔料、顔料分散体

高機能化成品

高機能顔料、CF(カラーフィルター)ペースト

表示材料

液晶カラーフィルター用レジストインキ

着色剤

着色剤、機能性着色剤

その他色材・機能材

記録材塗料、機能性分散体、開発品

 

 

 

 

印刷インキの主たる原材料である有機顔料を母体として、色材技術、有機化学合成技術、高度な分散技術との融合によって様々な分野で使用される材料を提供している。中でもインキや塗料の製造で蓄積された技術の結集によるナノレベルの分散加工技術から、さらに機能を高めた液晶カラーフィルター材料を生み出した。
さらに分散加工技術は、有機顔料だけではなくCNT(カーボンナノチューブ)などの無機素材にも展開され、二次電池材料など新たなエネルギー分野への事業拡大にも繋がっている。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業

 

19/12期

売上高

65,887

営業利益

6,013

利益率

9.1%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

塗工材料

粘着テープ、接着テープ、マーキングフィルム、電磁波シールドフィルム

接着剤

粘着剤、接着剤、ラミネート接着剤、ホットメルト

塗料樹脂

製缶塗料、樹脂、機能性ハードコート

その他ポリマー・塗加工

メディカル製品、天然材料、開発品

 

 

 

 

中核素材の機能性樹脂にさまざまな機能を付与した製品を開発している。長年にわたって培われた独自技術を用いて新たな機能を創造し、エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケア関連などの分野において、新たな需要の開拓、市場の創造を目指している。

 

☆パッケージ関連事業

 

19/12期

売上高

68,071

営業利益

3,058

利益率

4.5%

*単位:百万円

 

 

サブセグメント

主な製品

リキッドインキ

グラビアインキ、フレキソインキ、グラビア溶剤

グラビア機器・製版

グラビア機器、グラビア・フレキソ製版

 

 

 

 

グラビア印刷、フレキソ印刷などの、パッケージ向け印刷用インキおよび機器・製版を取り扱っている。
食品包装などの分野では消費者の安心・安全のためにインキの水性化など環境に配慮した製品開発にも注力している。

 

☆印刷・情報関連事業

 

19/12期

売上高

76,680

営業利益

314

利益率

0.4%

*単位:百万円

 

サブセグメント

主な製品

オフセットインキ

オフセットインキ、新聞インキ、UV(紫外線硬化型)インキ、金属インキ

印刷材料機器

印刷機器、印刷材料

インクジェット・その他

インクジェットインキ、スクリーンインキ、その他開発品など

 

 

 

 

創業以来の中心セグメント。紙への印刷に使用する印刷インキが中心製品。

 

印刷インキの提供だけに留まらず、機械・機器の販売、印刷工程の効率化サポート、カラーマネジメントやカラーユニバーサルデザインに関する支援やツールの提供なども行っている。

 

◎海外展開
大きな成長を期待し難い国内市場では高付加価値製品による収益性向上を進める一方、今後成長が期待できる海外市場の開拓に製造、販売両面で積極的に取組んでいる。
海外生産体制は前中期経営計画中にほぼ完成し、原料調達、生産共に現地で行っている。
2019年12月末現在、約44の海外連結対象子会社を有し、幅広い国や地域で事業を展開している。

 

 

 

売上高

前期比

営業利益

前期比

日本

1,755

-3.4%

78

-19.0%

アジア・オセアニア

1,012

-5.0%

57

+4.1%

ヨーロッパ

198

-1.8%

-2

-

北米・中南米

140

-1.9%

-2

-

調整

-306

-

1

-

連結計

2,798

-3.6%

131

-13.8%

*単位:億円

 

<地域別セグメント動向:2019年12月期>

 

【1-5 ROE分析】

 

13/3期

14/3期

15/3期

16/3期

17/3期

17/12期

18/12期

19/12期

ROE (%)

5.8

7.3

6.9

5.8

6.1

4.8

5.4

3.9

 売上高当期純利益率(%)

3.50

4.39

4.64

4.17

4.73

4.32

4.08

3.04

 総資産回転率(回)

0.85

0.88

0.82

0.78

0.74

0.65

0.77

0.75

 レバレッジ(倍)

1.94

1.88

1.81

1.75

1.74

1.72

1.72

1.72

*17年12月期は12カ月換算値では6.8%。

 

一般的に日本企業が目標とすべきと言われている8%へ達するためには引き続き一段の収益性および効率性の改善が望まれる。

 

【1-6 特徴と強み】

①高い技術力
前述の様に、同社は印刷インキの原材料である顔料や樹脂も自社で生産を続けてきた。こうした技術力が高品質な印刷インキ生産のベースとなっているのはもちろんのこと、液晶用カラーフィルター材料や接着剤・粘着剤など、事業領域や製品の拡大に繋がっている。

 

②優れた課題解決能力
同社が印刷インキ国内首位の地位を築いている大きな背景の一つが印刷会社に対する高い課題解決能力だ。
印刷インキの製造・供給のみでなく、版作り、画像など「印刷」に関連する要素全般に関して古くから研究を続けており、これが顧客に対する技術提案力やサービス力、ひいては顧客満足度の向上に繋がっている。

 

③環境に対する取り組み
同社では、CO2の削減とともに、Non-VOCインキや水性インキ、UVインキなどの環境調和型インキにもいち早く取り組んできた。新興国においても環境規制は一段と強化されており、ニーズは拡大している。また化学物質管理への取り組みや他社に先駆けたスイス条例対応製品のラインナップ化など安全・安心への取り組みも進んでいる。

 

④経営戦略の独自性
M&Aについては、同社がもつ技術力を新しい市場に展開するうえで、シナジー効果が期待できる場合には選択肢のひとつとして考えている。ただ、単にボリュームアップを目的としたM&Aは志向していない。また、輸送マイレージの削減、現地品の利用など、効率性向上と社会的貢献の両面から海外市場における「地産地消」のポリシーを印刷インキ業界ではいち早く打ちたてて実践してきた。

 

2.2020年12月期第2四半期決算概要

(1)業績概要

 

19/12期2Q

構成比

20/12期2Q

構成比

前年同期比

売上高

139,376

100.0%

123,290

100.0%

-11.5%

売上総利益

30,313

21.7%

27,388

22.2%

-9.6%

販管費

24,202

17.4%

21,838

17.7%

-9.8%

営業利益

6,111

4.4%

5,549

4.5%

-9.2%

経常利益

6,347

4.6%

4,933

4.0%

-22.3%

四半期純利益

2,770

2.0%

2,646

2.1%

-4.5%

単位: 百万円。

 

減収減益
売上高は前年同期比11.5%減の1,232億円。新型コロナウイルスの影響で世界的に消費活動が停滞。オフセットインキやプラスチック用着色剤需要が大きく減少した。全セグメントで減収。
営業利益は同9.2%減の55億円。販売数量減少による経費の減少および構造改革によるコスト削減など固定費削減(+24億円)や、原材料価格低下(+10億円)、環境調和型製品やセンサー用材料および機能性フィルムなど高付加価値製品の拡販(+5億円)のプラス要因はあったが、新型コロナウイルスの影響による販売数量減少(‐42億円)、メディア材料の販売価格下落(‐4億円)などが影響した。

 

(2)セグメント別動向

売上高

19/12期2Q

構成比

20/12期2Q

構成比

前年同期比

色材・機能材

34,620

24.8%

28,757

23.3%

-16.9%

ポリマー・塗加工

32,701

23.5%

29,931

24.3%

-8.5%

パッケージ

33,434

24.0%

32,910

26.7%

-1.6%

印刷・情報

37,633

27.0%

30,813

25.0%

-18.1%

その他

3,652

2.6%

3,319

2.7%

-9.1%

調整

-2,667

-

-2,442

-

-

合計

139,376

100.0%

123,290

100.0%

-11.5%

営業利益

 

 

 

 

 

色材・機能材

1,949

5.6%

1,291

4.5%

-33.8%

ポリマー・塗加工

2,789

8.5%

2,449

8.2%

-12.2%

パッケージ

1,148

3.4%

1,916

5.8%

+66.9%

印刷・情報

37

0.1%

-246

-

-

その他

193

5.3%

143

4.3%

-25.9%

調整

-8

-

-4

-

-

合計

6,111

4.4%

5,549

4.5%

-9.2%

単位:百万円。利益の構成比は売上高利益率。

 

 

☆色材・機能材関連事業
減収減益。
重点製品のメディア材料は11%の減収。

 

(顔料)
国内外で拡販は進んだが、印刷市場の縮小、コロナ禍による需要減少の影響を受けた。インクジェットインキ市場で新規案件が実績化した。

 

(メディア材料)
国内は、コロナ禍により車載用、産業機械用の需要が減少、TV向けも稼働調整により伸び悩んだ。
海外は、中国市場で単価下落が続いたが高稼働を維持し堅調だった。

 

(着色剤)
インバウンド需要、外出・行楽需要が激減した。自動車・建材関連はユーザーの稼働が停滞した。
一方で、除菌・抗菌の容器関連、食品包装関連は好調だった。

 

(機能性分散体)
車載用リチウムイオン電池材料は海外拠点での生産計画が進展した。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業
減収減益。
重点製品であるエレ・オプト用製品、メディカル・ヘルスケア関連製品は、それぞれ9.5%、10.3%の減収。

 

(塗工材料)
5G用高周波シールドは伸長したが、全般的にはスマートフォン市場の落ち込みの影響を受けた。リモート需要でタブレット向けは伸長したが、TVディスプレイ用は低調であった。

 

(接着剤)
国内では、包装用・ラベル用は堅調だったが、偏光板用やリチウムイオン電池用が低調に推移した。
海外では、コロナ禍によるグループ生産拠点や取引先の稼働停止の影響を大きく受けた。

 

(塗料樹脂)
塗料は、アルコール缶向けが増加したが、外出・行楽需要減を受け、全体としては前年を下回った。
樹脂は、建築・土木向けがコロナ禍によるゼネコンの工事中断を受け減少した。

 

☆パッケージ関連事業
減収増益。
重点製品の海外リキッドインキは前年並み。

 

(軟包装材)
国内は、「巣ごもり需要」から食品軟包装材用は堅調だったが、一方で外出制限から飲料ラベル等は不調だった。
海外は、必要不可欠(エッセンシャル)な事業のため早期に稼働制限が解除され、食品軟包装材用インキの需要は堅調だった。

 

(建材)
コロナ禍による建築、リフォーム市場の停滞、遅延により需要が減少し低迷した。

 

(段ボール)
百貨店や専門店の休業、インバウンド減で紙袋分野(クラフト)の需要が消失した。段ボールも通販向け需要はあるが、限定的であった。価格改定は一部で進んだ。

 

☆印刷・情報関連事業
減収減益。
重点製品の機能性インキは14.6%の減収。

 

(オフセットインキ)
国内は、外出制限の影響により、チラシ等の商業印刷、新聞インキも低調だった。
海外は、商業印刷市場が第2四半期に入り欧米市場を中心にコロナ禍の影響を受け低迷した。

 

(機能性インキ)
インクジェットは、軟包装用途の水性インキ開発が進んだ。
UVインキは、コストダウンを実施したが、商業印刷市場の低迷を補うには至らなかった。
金属インキは、タイ、韓国において生産がスタートした。

 

(3)財務状態とキャッシュ・フロー

◎主要BS

 

19年12月末

20年6月末

 

19年12月末

20年6月末

流動資産

199,969

202,550

流動負債

106,747

100,383

 現預金

56,691

67,305

 仕入債務

59,543

47,997

 売上債権

90,173

80,766

 短期借入金

30,315

33,671

 たな卸資産

48,508

50,706

固定負債

42,490

50,938

固定資産

176,161

165,091

 長期借入金

27,460

39,612

 有形固定資産

99,577

99,604

負債合計

149,237

151,322

 無形固定資産

4,202

3,629

純資産

226,892

216,318

 投資その他の資産

72,381

61,857

 株主資本

205,891

205,935

資産合計

376,130

367,641

負債純資産合計

376,130

367,641

 

 

 

自己資本比率

58.3%

56.8%

*単位:百万円

 

現預金の増加などで流動資産は前期末に比べ25億円増加したが、投資その他の資産の減少などで資産合計は同84億円減少の3,676億円となった。
長期借入金の増加等で負債合計は同20億円増加の1,513億円。その他有価証券評価差額金の減少などで純資産は105億円減少の2,163億円となった。
この結果、自己資本比率は前期末の58.3%から1.5ポイント低下し、56.8%となった。

 

◎キャッシュ・フロー

 

19/12期2Q

20/12期2Q

増減

営業CF

10,094

4,612

-5,482

投資CF

-4,848

-5,567

-719

フリーCF

5,246

-955

-6,201

財務CF

-4,585

12,829

+17,414

現金同等物残高

51,149

65,023

+13,874

*単位:百万円

 

仕入債務の減少等でフリーCFはマイナスに転じ、長短借入金の増加で財務CFはプラスに転じた。
キャッシュポジションは上昇した。

 

3.2020年12月期業績予想

(1)業績見通し

 

19/12月期

対売上比

20/12月期(予)

対売上比

前期比

修正率

売上高

279,892

100.0%

260,000

100.0%

-7.1%

-10.3%

営業利益

13,174

4.7%

12,000

4.6%

-8.9%

-20.0%

経常利益

13,847

4.9%

11,500

4.4%

-17.0%

-25.8%

当期純利益

8,509

3.0%

6,000

2.3%

-29.5%

-40.0%

*単位: 百万円。予想は会社側発表。

 

新型コロナウイルスの影響を受け下方修正、減収減益。
新型コロナウイルスの影響を受け業績予想を下方修正した。
売上高は前期比7.1%減の2,600億円、営業利益は同8.9%減の120億円の予想。
コロナ禍の影響は長期に渡り、販売数量の減少や販売単価の下落、人の移動制限に伴うサプライチェーンの変化などを予想している。
営業利益に関しては、需要減少による影響は上半期22億円、通期では40億円と予想しており、一方で新たな需要の取り込みや構造改革で10億円を捻出する。
加えて、円高・途上国通貨安に伴う為替差損の増加、利益伸び悩みに伴う法人税等調整額の増加、事業の再構築に伴う損失等の発生可能性なども考慮している。
配当は前期と同じく90.00円/株を予定。予想配当性向は87.6%。

 

(2)セグメント別動向

売上高

19/12月期

20/12月期(予)

前期比

修正率

色材・機能材

674

610

-9.5%

-15.9%

ポリマー・塗加工

659

645

-2.1%

-8.5%

パッケージ

681

685

+0.6%

-2.1%

印刷・情報

767

640

-16.6%

-15.8%

その他・調整

19

20

+5.3%

+100.0%

合計

2,798

2,600

-7.1%

-10.3%

営業利益

 

 

 

 

色材・機能材

34

26

-23.5%

-31.6%

ポリマー・塗加工

60

57

-5.0%

-12.3%

パッケージ

31

40

+29.0%

+14.3%

印刷・情報

3

0

-100.0%

-100.0%

その他・調整

4

-3

-175.0%

0.0%

合計

131

120

-8.9%

-20.0%

*単位:億円。

 

(下半期の主要施策)
☆色材・機能材関連事業
(顔料)
既存品拡販と新規開発品の実績化およびコストダウン
デジタル印刷材料の開発とグローバル拡販

 

(メディア材料)
中国市場におけるプレゼンスの一段の向上
次世代事業としてのセンサー材料の開発推進

 

 

(着色剤)
除菌・抗菌関連、食品パッケージ関連需要への供給強化
環境対応製品の開発、機能性マスターバッチの実績化

 

(機能性分散体)
車載用リチウムイオン電池材料の欧米EV市場への拡販
エレ・モビリティー・医薬品関連の機能性分散体の開発

 

重要施策
光学制御技術による新材料開発を進める。
メディカル分野においては、紫外線制御を用いた医薬品包装素材を開発し、医薬品の保証期間延長や医療従事者の負担軽減に貢献する。
モビリティにおいては、近赤外線制御技術を用いたセンサーを開発し、衝突回避などセキュリティー機能を提供する。

 

☆ポリマー・塗加工関連事業
(パッケージ・工業材料)
ブランドオーナーへのアプローチを中心とした環境調和型製品群のグローバル展開
リチウムイオン電池セパレーター用樹脂などの高付加価値製品の拡大

 

(エレクトロニクス)
5G・IoT市場(高速通信端末・基地局)への展開
リモート用機器(タブレットなど)向けの需要取り込み

 

(メディカル・ヘルスケア)
貼付薬の新パイプラインの拡充
米国・中国ヘルスケア市場への粘着剤の拡大
抗菌・抗ウイルス製品の拡大

 

重点施策
粘着剤において、溶剤排出削減、カーボンニュートラル、自然界分離、安心・安全を実現する環境調和型製品群(水性・無溶剤、ハイソリッド、バイオマスなど)の拡充を進める。

 

コロナ禍による在宅勤務・リモート学習・遠隔医療の急速な普及により、超高速・超低遅延・多数同時接続ニーズが拡大している。
そうした流れを受け、リモート用機器向け製品群の拡販、高速端末用シールド材や低誘電部材の展開、基地局用基板や半導体関連部材の開発に注力する。

 

☆パッケージ関連事業
(軟包装材・建材)
国内:環境調和型製品の開発・拡販、生産の効率化、建装材分野の開発推進、新製品展開によるフレキソインキのシェア拡大海外:早期に回復したエリアでの需要の取り込みを強化
新興エリアでの生産設備の増強
グローバル拠点の収益改善

 

(段ボール)
価格改定の浸透
クラフト分野の拡販推進
各種コストダウン施策による収益性向上

 

 

重点施策
国内では、バイオマスインキ、軟包装用フレキソインキなど環境調和型製品の新製品開発に取り組む。
また、品種統合やコストダウンによる効率化を推進し事業体質の強化を図る。

 

海外では、ノントルエンインキにおいて新興国市場向け開発を加速するほか、VOC削減ニーズに対応し、中国・東アジアをターゲットとして水性インキの開発に取り組む。

 

☆印刷・情報関連事業
(オフセットインキ)
国内外ともに構造改革を推進
原材料の見直しなどコストダウンを進め、収益を向上
グローバルSCM再構築を加速

 

(機能性インキ)
UVインキ:紙器、パッケージ市場へ環境調和型製品を拡大
インクジェット:中国向け製品ならびに軟包装用製品群の開発加速
金属インキ:アジア市場へUV硬化型を拡大

 

重点施策
期初時点では、DXにより国内市場は年率5-7%で縮小すると見ていたが、コロナ禍も加わり年率20-30%減に加速すると見通しを修正した。こうした厳しい事業環境下、事業構造改革を推進する。
組織ダウンサイジングを図るため、第一次人員配置転換(71名)が完了した。2019年比で8.9%の減となる。
また生産アライアンスによる生産最適化も進める。

 

一方、機能性製品群での他用途市場展開を図る。
小ロット軟包装市場向けにEBオフセットインキ製品群を展開するほか、軟包装用インクジェット製品群の強化を図る。

 

(3)新型コロナウイルスの影響と今後の方針

①新型コロナウイルスの影響
同社が対象とする多くの業界(ディスプレイ、エレクトロニクス、自動車、包装・食品など)においては、当面(With コロナ)は消費低迷、需要減少の影響を受けるものの、ある程度落ち着いた後(After コロナ)は、晴れ間が見え始めると予想している。
ヘルスケア業界では、高齢化や健康意識の高まりを背景に、With コロナでも需要は高まっている。
一方、アナログ印刷市場はAfter コロナに入っても印刷市場の縮小に拍車がかかると見ており、色材・機能材および印刷・情報セグメントは大きな影響を受けるものと考えている。

 

②With/Afterコロナにおける方針
◎With コロナ
新たな社会ニーズに向けた新製品開発を推進する。
具体的には、抗菌・抗ウイルス性製品のニーズ拡大を取り込むべく、色材・機能材においては食品包装用のマスターバッチ、ポリマー・塗加工ではフェイスシールド向けハードコートを、パッケージおよび印刷・情報ではUV硬化型ニスなどを挙げている。

 

◎After コロナ
「生活文化創造企業」として、ニューノーマルに向けた製品・サービスを提供していく。
具体的な注力領域や事業方針は次期中計で発表する。

 

③投資方針
今期の投資計画は185億円としていたが、新型コロナウイルスの影響を受けた需要変動予測に合わせ、フレキシブルに一部計画は見直し・延期し、177億円に修正した。
ただ、Afterコロナを見据えた重点領域や新事業への投資は引き続き推進する。

 

今期の主要計画の進捗は以下の通り。

パッケージ

トルコ

新工場着工、グラビアインキ・ラミネート接着剤の生産設備増強

ポリマー・塗加工

米国・中国

溶剤系・水系粘着剤の生産設備増強・新設

色材・機能材

米国・中国

車載用リチウムイオン電池用材料の生産設備新設

印刷・情報

フランス

インクジェットインキの生産設備増強

 

4.今後の注目点

残念ながら、新型コロナウィルスの影響により通期予想を下方修正し、中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度‐2020年度)の数値目標達成は、未達が確実となってしまった。
ただ、アナログ印刷は今後も更に厳しい事業環境が想定される反面、同社にとっての需要家となる自動車メーカーや電機メーカーの投資動向がどうかという不透明要因はあるものの、エレクトロニクス、自動車、ヘルスケアはAfter コロナでも不変な若しくは更なる需要拡大も期待できる分野である。
来年2月に予定されている次期中期経営計画での方針、具体的な施策を注目したい。

 

 

 

<参考1:中期経営計画「SIC-Ⅰ」(2018年度‐2020年度)>

持続的な成長を実現する2027年に向けた10年の長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」の下、3年ごと3段階の中期経営計画に落とし込み、課題と役割を明確にし、目指す未来に向けて着実に行動していこうと考えている同社は、第1段階である「中期経営計画SIC-Ⅰ(2018-2020年度)」を2018年1月にスタートさせた。

 

<基本方針>

テーマは「挑戦を繰り返す。」
更なる100年レンジでの持続的成長の礎を創り上げる期間と位置付け、変革のための施策を立て続けに打つ。
①成長に向けた既存事業の変革と新事業への挑戦
②持続可能性向上に向けたモノづくり革新の推進
③経営基盤の刷新

 

<セグメント別主要課題>

色材・機能材

◆独自顔料とナノ分散技術を活かした製品群の開発・拡販

*LiB関連材料:EV化の加速を追い風に、カーボン分散体をはじめとしたLiB関連材料の拡大をはかる。

*高機能製品:独自素材とナノ分散技術を活かし、これまでにない光学・絶縁機能を有する製品の開発を進める。

 

◆カラーフィルター材料・センサー材料のさらなる拡大

*拡大する中国市場の需要を確実に取り込み、パネル向けカラーフィルター材料の拡販を進める。

*トリリオン・センサー時代の到来に向けた開発強化

ポリマー・塗加工

◆モノづくりを基点としたソリューション提案型マーケティングによる新規市場の創出

*エレクトロニクス:オープンイノベーションを活用し、熱や電磁波の制御を核とした新素材の開発を加速する。

*包装・工業材:環境・省力化に寄与する安心安全な材料の提案。

 

◆メディカルサイエンス事業を次の成長の柱に育てる

*貼付型医薬品の開発強化。

*細胞培養コーティング剤や医療用テープに使用する粘着剤など、ヘルスケア関連製品の拡販を進める。

パッケージ

◆市場の変化に応じた製品開発の加速

*顧客視点での評価技術環境整備を進め、待ち受け型新製品開発を推進

*インクジェットインキ:市場の裾野拡大に対応した製品開発加速

*金属インキ:海外市場展開加速

 

◆環境に配慮した製品群の強化

*バイオマス:バイオマス製品群ラインナップの拡充

*水性:パッケージ製品群高機能化によるグローバル展開加速

*UV:パッケージ分野へのグローバル展開推進

 

◆地域ごとのニーズに応じた生産体制の構築

*グローバル生産体制再構築による供給基盤強化、及びCS向上

*海外技術センター、技術サービス強化によるCS向上

*国内成熟事業における抜本的構造改革の推進による事業基盤強化

印刷・情報

*2018年度よりコーティング材料の一部は印刷・情報関連事業からポリマー・塗加工関連事業にセグメントを変更した。

 

<主要施策>

①成長に向けた既存事業の変革と新事業への挑戦
【1-1既存事業の変革】
■グローバル展開
海外市場での成長力を高めるため、これまでに進出した拠点の複合化・製品の拡充を進め、多彩なビジネスを展開していく。
インクジェットインキ・インキ用顔料分散体では、環境対応製品の生産を中国(珠海)で着手するほか、日米仏で品目を拡充する。
ラミネート接着剤では、食品パッケージ市場に対して、リキッドインキビジネスを展開するグローバル拠点と連携して拡販を図る。
2017年度比で530億円の増収を目指す。

 

■新製品の拡大
顔料・樹脂を核に新規素材の開発を進め、コア技術である合成・分散・成膜技術と組み合わせることで新しい価値を創造し、新市場・新規エリアでの拡大をはかる。
中でも、ポリマー・塗加工関連事業においてエレクトロニクス関連材料やメディカル・ヘルスケアに注力する。
2017年度比で160億円の増収を目指す。

 

【1-2新事業への挑戦】
SIC-Iで注力する6つの重点ドメインを設定した。持続的成長に向け、単なる製品の提供にとどまらないソリューション提案を中心とした新しいビジネスモデルの開発に挑戦し、「SIC-Ⅱ」、「SIC-Ⅲ」に繋げていく。

 

フィールド

ドメイン

Life

*パッケージ

*モビリティ

*メディカル・ヘルスケア

Communication

*IoT

Sustainability

*天然材料

*エネルギー

 

以下、4つのビジネスに注力する。

 

[センサー関連ビジネス]
ドメインは、モビリティ、メディカル・ヘルスケア、IoT。
成長著しいIoT市場において、急速に増加する「センサー」に着目。ケミカルを軸とした「モノづくり」に加え、新しいテクノロジーを取り入れて「情報・システム」までを提供するセンサー関連ビジネスの開発に挑戦する。
(主要製品・サービス)
イメージセンサー材料、センサーデバイスなど。「SIC-Ⅱ」、「SIC-Ⅲ」ではセンシングデータに基づくデータビジネスの展開も視野に入れている。

 

[生活余熱関連ビジネス]
ドメインは、モビリティ、IoT、エネルギー。
生活周辺で未利用となっている「生活余熱」に着目し、これを高効率で無駄なく再生・利用する技術開発を進め、エネルギーの循環利用ソリューションを提供するビジネスに取り組む。
(主要製品・サービス)
耐熱接着シート、超耐熱絶縁・熱伝導シート、高耐熱マネジメント部材群など。

 

[ヘルスケア関連ビジネス]
ドメインは、メディカル・ヘルスケア。
貼付型医薬品事業プラットフォームをベースに、医薬事業基盤を着実に拡大し、周辺のヘルスケア関連材料の開発・拡販も強化していく。
(主要製品・サービス)
血糖値検査チップ用テープ、医療用粘着剤、生体適合ポリマー、次世貼付型医薬品など。

 

[天然素材関連ビジネス]
ドメインは、天然素材。
可食色素や笹関連製品の事業プラットフォームを活かした新たな機能性天然素材のビジネス化や、バイオマス製品の拡充を進め、低炭素社会への一層の貢献を目指す。
(主要製品・サービス)
可食色素製品、クマザサ関連製品、バイオマスインキ、機能性食品素材など。

 

②持続可能性向上に向けたモノづくり革新の推進
同社ではこれまで、積極的な海外拠点拡大によるモノづくりネットワーク構築、環境に配慮した安心・安全なモノづくりの構築、グローバルでの化学物質管理・貿易管理体制の整備に取り組んできた。
SIC-Iでは、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献するため、自らの持続的成長も見据えたモノづくり革新に取り組み、持続可能性への貢献と収益確保の両立を目指す。

 

(取り組み例)
*パートナーとの共存共栄によるグローバル・サプライチェーンの構築
*デジタル技術融合による生産プロセス革新
*地球環境と共生するモノづくり(省エネ、CO2排出量削減等)の推進

 

③経営基盤の刷新
既存事業の変革、新規事業の創出、モノづくりの変革に向け、業務システムのグローバル統合推進や、変革に向けた人材採用、制度改革(確定拠出年金制度への完全移行、65歳定年制開始)などの経営基盤強化を進めるとともに、経営と一体となったCSR活動を推進し、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献していく。
イノベーションを立て続けに創出するための基盤を強化する。

 

(取組み例)
*グローバルでのERP統合推進、AI活用による業務効率化推進
*変革に必要な人材の積極採用、イノベーションを促す人事制度への刷新
*東洋インキグループの重要課題(マテリアリティ)の達成に向けた積極的なCSR活動の推進

 

 

<参考2:コーポレートガバナンスについて>

◎組織形態、取締役、監査役の構成

組織形態

監査役設置会社

取締役

11名、うち社外4名

監査役

5名、うち社外3名

 

◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2020年4月3日

 

<基本的な考え方>
当社グループは、2011年4月1日をもって持株会社体制へ移行いたしました。持株会社体制のもと、グループ戦略機能を強化し、スピード経営を推進し、グループ全体最適と各事業最適をバランスさせることを通じてグループ全体としての価値向上を目指しております。

 

当社グループにおける経営の枠組みは、グループ企業経営における基本的な考え方を体系化した経営哲学及び経営理念ならびに行動指針からなる「東洋インキグループ理念体系」と、社会的責任への取組み姿勢を明確にしたCSR憲章及びCSR行動指針からなる「CSR価値体系」で構成されております。
当社グループは、「東洋インキグループ理念体系」と「CSR価値体系」を実践することにより、サイエンスに基づくモノづくりを通して、生活者・生命・地球環境の持続可能性向上に貢献し、経営理念に掲げる「世界にひろがる生活文化創造企業」を目指してまいります。
そのためにはステークホルダーと同じ視点で自身の企業活動を評価し、経済、社会、人、環境においてバランスの取れた経営を遂行することこそが、企業としての有形、無形の価値を形成し、社会的責任を果たすための最重要課題として位置付けております。

 

この実現のために、

事業執行機能を各事業会社に委譲するとともに、コーポレート・ガバナンスを強化するため、グループ各社に適用される稟議規程及び関係会社管理規程の適切な運用

内部統制システムの整備

株主総会、取締役会、監査役会、会計監査人など法律上の機能制度の強化による指導・モニタリング機能の向上

迅速かつ正確、広範な情報開示による経営の透明性の向上

コンプライアンス体制の強化・充実

地球規模の環境保全の推進

などを進め、株主や取引先、地域社会、社員などの各ステークホルダーと良好な関係を構築し、コーポレート・ガバナンスを充実させております。

 

<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております。

 

<各原則に基づく主な開示>

原則

開示内容

原則1-4.

当社は、政策保有上場株式について、毎年、取締役会において、経済合理性を検証しております。資本コストと比較した保有に伴う便益や取引状況などを個別銘柄毎に検証し、保有が適切ではないと判断した銘柄は、当該企業の状況や市場動向を勘案した上で縮減を進めてまいります。なお、前期は4銘柄の全量売却と2銘柄の一部売却を実施いたしました。

政策保有上場株式の議決権行使については、各議案が発行会社の中長期的な企業価値の向上に資するものであるか否か、当社を含む株主共同の利益に資するものであるか否か、また当社グループの経営や事業に与える影響等を定性的かつ総合的に勘案したうえで、議案毎に適切に行使いたします。なお、発行会社において企業価値の著しい毀損、重大なコンプライアンス違反の発生等、特別な事情がある場合や、株主としての当社の企業価値を損なうことが懸念される場合は、発行会社との対話等により十分に情報収集したうえで、慎重に賛否を判断いたします。

原則5-1.

当社では株主・投資家を重要なステークホルダーと考えており、行動指針の一つとして「株主様満足度の向上」(SHS:ShareHolder Satisfaction)を掲げ、株主権の尊重と株主価値の向上に取り組んでおります。その中でも株主や投資家との建設的な対話は重要なファクターと位置付けております。財務・総務・IR担当の取締役を指定し、関係各部門の有機的連携により情報共有を確実に行い、株主にはグループ総務部、投資家にはグループ広報室が窓口となって対話の促進を図っており、対話を通じて把握した意見のうち重要性が高いと判断したものについては担当取締役に適宜報告しております。

インサイダー情報の管理については、インサイダー取引防止管理規程、情報保護管理規程などを定めているほか、ビジネス行動基準に具体的な行動指針として定め、ガイドブックを全グループ社員に配布するとともに、定期的な教育を行うことで周知徹底を図っております。

 

 

 

 

 

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