ブリッジレポート
(3822) 株式会社Minoriソリューションズ

プライム

ブリッジレポート:(3822)Minoriソリューションズ vol.1

(3822:東証1部) Minoriソリューションズ 企業HP
北村 正人 社長
北村 正人 社長

【ブリッジレポート vol.1】2016年3月期業績レポート
取材概要「大手の優良顧客と顧客グリップの強さが同社の特徴の一つであり、流動性と安定性を兼ね備えた財務体質や合併以来の継続的な営業利益率の改善・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年7月12日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社Minoriソリューションズ
社長
北村 正人
所在地
東京都新宿区西新宿2-4-1 新宿NSビル
決算期
3月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年3月 14,768 1,057 1,078 702
2015年3月 13,922 1,065 1,089 692
2014年3月 13,323 824 836 506
株式情報(6/22現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
840円 8,789,244株 7,383百万円 12.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
26.00円 3.1% 84.19円 10.0倍 668.59円 1.3倍
※株価は6/22終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
Minoriソリューションズの会社概要及び成長戦略について、2016年3月期決算の概要と共に、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ソフトウェア開発とシステム運用管理を二本柱に、ソフトウェア開発に付随するハードウェアや汎用パッケージソフト等の販売を手掛けている。銀行・クレジット等金融機関向けを中心に常駐型のシステム開発及び運用を強みとした(株)JSCと、製造・運輸・流通等の幅広い分野で一括請負型のシステム開発を手掛けていた(株)イーウェーヴが、2010年4月に合併して(株)Minoriソリューションズとして新たなスタートを切った。商号にある「Minori」とは、粒が集まって集団を形成する稲穂をイメージしたもので、実を結ぶ、果実が実る事を意味しており、合併後の新体制において、全社員が集結し、一体となって企業価値の更なる向上を目指し、顧客・ステークホルダー・社員の「実り」として成果を上げていくという思いが込められている。
 
【企業理念・行動指針】
企業理念
私たちは常に高い志をもち、成長・挑戦し続けることにより、情報技術を通じ豊かな実りある社会創りに貢献します。
 
行動指針
1.信頼の確保:私たちは、守るべき法令に加え、公正な取引の確保、お客さまにかかわる情報の守秘義務、 個人情報の適正な管理等の基本的なルールを遵守し、誠実で公正な企業活動を遂行いたします。
2.お客さまとの共生:私たちは、常にお客さまとの信頼関係の維持・向上に努め、お客さまの繁栄と共に自社の発展を目指します。
3.自己改革の継続:私たちは、常に高い志をもち、自己改革を図り挑戦し、成長していきます。
 
 
【事業内容】
事業は、ITコンサルを含めた、システムやソフトウェアの開発、更改等のソフトウェア開発事業、開発したシステムの運用や保守・管理、或いはヘルプデスク等を手掛けるシステム運用管理事業、及びシステム開発に付随する機器販売を行うシステム機器販売事業の3事業に分かれ、売上構成比は、それぞれ73.1%、23.4%。3.6%。

ソフトウェア開発事業では、金融機関向けサービスの大半がセキュリティの面から常駐型で提供されており、その他の業種向けは一括請負型が多い。システム運用管理事業では、顧客のデータセンターに常駐してのエンドユーザーのシステムの運用管理、エンドユーザーの施設内での運用管理、及びネットワークを介しての運用管理がある。また、システム機器販売事業は、開発に付随して機器を納入するケースが減っている事に加え、クラウドへの移行もあり、減収傾向が続いているが、元来、単純な機器販売の利益貢献は少なく、利益面での影響は軽微である。
 
 
エンドユーザー業種別では、常駐型が多い金融が37.0%を占め、次いで幅広いカテゴリーのメーカーと取引がある製造が19.9%。この他、情報、流通・サービス他、運輸、公共・エネルギー、通信、がそれぞれ7~10%、と常駐型が中心の金融の比率が高いものの、これを除くと、エンドユーザーの業種は分散されている。また、上位10社が売上高の50%を占め、上位30社では75%、と上位企業への依存度が高いが、上位企業は、振れはあっても一定の継続的投資が期待できる優良企業が名を連ねており、上記の通り業種が分散されているため、受注・売上は安定している。
尚、製造の売上には、SIerとしては珍しいCAE(computer aided engineering)ソリューションの売上も含まれている。CAEソリューションとは、例えば、新車開発の場合、開発中の新車のデータ(デザインデータや材料データ)を基に3Dで新車を再現し(外観だけでなく、内部構造も含めて再現)、衝突・空力試験等の設計に関わるあらゆるシミュレーションを行う。このシミュレーションのデータを同社の構造および流体解析技術者が解析し、解析結果をレポートにまとめ自動車メーカーに提出する。自動車メーカーはこのレポートを活用する事で、実証実験の回数を減らす事ができる。取引先は自動車メーカーが中心だが、航空機、発電設備、人工衛星、スマホ等へユーザーが広がりつつある。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
 
2016年3月期決算
 
 
前期比6.1%の増収、同0.8%の営業減益
売上高は前期比6.1%増の147億68百万円。一部案件の終了(エンドユーザーがデータセンターを変更したため)等でシステム運用管理の売上が同6.6%減少したものの、製造向けのCAEソリューションを含めて、金融、製造、運輸を中心にソフトウェア開発の売上が同12.4%増と伸びた。
一方、営業利益は同0.8%減の10億57百万円。単価の高騰による外注費の増加(16.1%増)等で売上総利益率が0.4ポイント低下する中、人材の採用・育成費用、市場変更費用、及び株主優待費用や税制改正に伴う事業税の増加等で販管費が同7.1%増加し利益を圧迫した。

期末配当金は1株当たり東証1部指定記念配3円を含む15円。東証2部市場変更記念配3円を含む14円を実施した上期末配当14円と合わせて年29円となった(2015年8月に1株を2株に分割しているため実質的には58円。15/3期は38円)
 
 
ソフトウェア開発は、金融、製造、運輸、電力等での開発が順調に進み、売上が107億92百万円と同12.4%増加し、営業利益は14億28百万円と同15.4%増加した(営業利益率:12.9%→13.2%)。

一方、システム運用管理は、エンドユーザーのセンター変更に伴う一部案件の終了で売上が34億48百万円と同6.6%減少し、営業利益も3億31百万円と同16.2%減少した(営業利益率:10.7%→9.6%)。もっとも、売上の減少は営業利益率の高いソフトウェア開発に人員をシフトさせた影響もある。JAVAプログラミングへのスキル転換講習等を受けた48名をローテーションでソフトウェア開発へシフトさせた。

システム機器販売は売上高5億27百万円(同15.7%減)、営業利益10百万円(同75.2%減)。契約期間が7年に及ぶ地銀のインフラ構築案件を手掛けており、この案件に係るシステム機器の販売が売上の大半を占めている。近年、開発に付随して機器を納入するケースが減っている事に加え、クラウドへの移行もあり、当セグメントの売上は減少傾向が続いている。しかし、もともと機器販売の利益貢献は少なく、利益面での影響は軽微である。
 
 
金融では、銀行、保険、クレジットカード、信販等のシステム統合案件、業務システム更改案件等が増加。3メガバンクでは、統合案件が寄与した1グループ向けが伸びた他、他の2グループ向けも複数案件を手掛け売上が増加した。

製造では、生産管理システム・基幹システムの開発やCAEソリューション等、メーカー各社の競争力強化に向けた案件の取り込みが進んだ。CAEソリューションは、主要顧客の自動車メーカーに加え、航空機、発電設備、人工衛星、スマホ等への営業領域拡大策が奏功し、繁忙を極めた。

この他、運輸では、システム開発と運用で20年来の取り引きがある大手物流会社を中心に、サービスの高付加価値化に向けたシステム投資や各種業務システムの更改案件が堅調に推移した。公共・エネルギーでは、電力自由化に伴う料金システム開発や各種業務システムの更改案件で電力向けが増加した。
一方、システム運用管理を中心に通信の売上が減少した他、前期の大型案件の反動で流通・サービスも減少(Web系システム開発で安定した需要があったが)。大手キャリア各社の設備投資が端境期にある通信も減少した。
 
 
期末総資産は前期末とほぼ同水準の83億75百万円。同社は、流動性に富み、かつ、長期安定性にも優れた財務体質を有する。現預金が総資産の60.5%を占め、実質無借金経営で自己資本比率は70.2%。投下資本利益率は10.6%。
 
 
営業CFは安定しており、16/3期は8億39百万円の黒字。投資有価証券の償還で投資CFも黒字となり、10億89百万円のフリーCFを確保した。財務CFのマイナスは短期借入金の返済と配当の支払いによる。
 
 
2017年3月期業績予想
 
 
前期比2.9%の増収、同8.7%の営業増益予想
売上高は前期比2.9%増の152億円。運輸の好調が続く他、公共・エネルギー等も堅調な推移が見込まれるが、設備投資の端境期が続く通信や、マイナス金利の影響が懸念される金融及び新興国景気の影響が懸念される製造の先行き不透明感等で慎重な見通しとなった。

営業利益は同8.7%増の11億50百万円。外注単価の高止まりを前提としているが、市場変更費用や事業税増税の影響が一巡し営業利益率の改善が見込まれる。

配当は1株当たり記念配当6円を落とし、普通配を3円増配の年26円を予定している(上期末3円、期末3円)。
 
(2)エンドユーザー業種別見通し
金融
銀行は、統合案件、海外案件等で足元の需要は堅調だが、マイナス金利の影響による収益の悪化で下期以降の投資が抑制される懸念がある。一方、銀行系と消費者金融の合従連衡に伴うシステム統合・更改が遅れており、新興カード会社との競争激化にも対応するためシステム投資を強化しているクレジットカード会社の案件取り込みに力を入れていく考え。
製造
生産管理システムや基幹系システムの開発需要が堅調な事に加え、自動車向けCAEソリューション業務が拡大している。ただ、中国をはじめとする新興国景気いかんでは、メーカー各社の設備投資にブレーキがかかる恐れがある。
運輸
懸念材料がなく、最も見通しの明るい業種である。良好な受注環境が続く見込み。アジアの物流展開やロジスティック改革に伴うシステム開発・更改需要は旺盛で、専用端末のスマホ化等、新サービス展開を目的としたシステム開発需要等も見込まれる。
流通
パッケージベンダーとの連携によるERPソリューション受注が進捗しているものの、業界各社の投資動向には差があり全体としては横ばいの状態が続く見通し。
公共・エネルギー
電力は自由化関連の需要が一段落しており、原発再稼働問題で総じて新規投資には慎重。ただ、2020年の発送電分離に向けた案件が、下期以降、徐々に立ち上がってくる見込み。一方、公共はIT活用支援やシステム基盤構築案件で堅調な推移が見込まれる。
通信
大手キャリア各社の設備投資の端境期が続く見込みで、最も見通しの厳しい業種である。
サービス
ネットを活用したサービス展開のためのWebシステム開発の需要が旺盛だが、受注競争が激化している。このため、無理な受注は避け、既存顧客の保守・更改サポートに注力していく考え。
 
 
北村社長に聞く
 
CAEソリューションや地方拠点を活かした地方創生事業等、合併によって引き継いできた他のSIerに見られない技術や経営資源を有する。そして、この技術や経営資源に、経験や知見をインテグレイトする事で他のSIerと異なるビジネスモデルを確立したいと言う。東京・新宿の本社に北村正人社長をお訪ねして、成長戦略等について伺った。
 
【強み・特徴】
当社はソフトウェア開発とシステム運用管理を二本柱としており、開発から稼働後の運用管理までを一貫して手掛けているケースが多い。エンドユーザーは、金融の比率が高いものの、製造、情報、流通・サービス、運輸、公共・エネルギー、通信、とバランス良く分散している。

また、売上高の50%を取引先上位10社が占め、75%を上位30社が占めている。上位取引先への依存度が高いが、業種が分散されている事に加え、開発から運用管理までのサービスを一貫して提供しているケースが多いため、安定した収益基盤となっている。いずれも、業界トップまたは、トップクラスの優良企業であり、付き合いの長い企業が多い。

この結果として、財務内容も胸を張れるものになっている。例えば、100%を超えていれば短期的な支払い能力が安全とされる「流動比率」が377%、100%未満であれば長期的に安全と言われている「固定比率」は14.4%にとどまる。前年、株式市場で話題になったROEは12.5%で14/3期以降、10%を超えて推移している。調達した資金の効率性を示す投下資本利益率も10%を超えている。

他社にない特徴としてアピールしたいのは、構造解析や流体解析等のCAEソリューションで実績を有する事や、本社や大阪支社の他に、仙台、松本、名古屋、福岡の各事業拠点が地域経済に貢献しながら収益をあげている事だ。また、他社にない特徴という訳ではないが、ERP等のプロダクトソリューションが新たな分野として育ってきている。
 
 
【CAEソリューション、地方拠点を活用したビジネス展開】
合併によって設立された当社は、被合併会社の優れた技術や経営資源を引き継いできた。その一つがCAEソリューションであり、地方拠点を活用したビジネス展開である。
 
CAEソリューション
CAEとは、コンピュータを活用して設計や製造等の事前検証を行う事で開発期間の短縮や開発コストの低減を図るエンジニアリング手法だ。当社はそのアウトソーサーとして、CAEビジネスを展開している。新車開発の際の構造解析であれば、開発中の新車のデザインデータや材料データを自動車メーカーから受け取り、これを基に外観だけでなく内部構造も含めて3Dで新車を再現し、衝突や空力試験等の設計に関わるあらゆるシミュレーションを行う。このデータを当社の構造解析技術者が解析し、解析結果をレポートにまとめ自動車メーカーに提出する。自動車メーカーはこのレポートを活用する事で各種実証実験の回数を減らす事ができるため、開発期間の短縮や開発コストの低減につながる。

専門知識を有する解析技術者が必要なため、他に手掛けているSIerはなく、新規参入にはハードルが高い。当社は構造解析や流体解析で自動車メーカーと取引があるが、現状、一般的には自動車メーカーの社内対応がほとんどで、アウトソーシング化は少ない。加えて、CAE と「IoT(Internet of Things)」を連動させれば、エンジンや各種部品の老朽化や交換時期の情報を管理する事もできる。「IoT」システムを構築する上で必要となる基盤構築も当社の得意とするところだ。いずれにしても、自動車業界の今後の情報通信化の進展を考えると、CAEソリューションを通して自動車メーカーの開発・設計部門との関係を構築している事の意義は大きい。歪みや部品の老朽化の把握等、材料工学も取り入れてCAEの応用を追求していきたい。

事業拡大にはCAEの解析技術者の増員が不可欠な事に加え、成長市場とは言え、自動車分野以外の業種にも取引を広げる事でリスク分散を図っていく必要もある。SEの場合、不況期には、システム運用管理にシフトさせる事ができるが、CAEの専門技術者は他の業務へシフトさせる事ができないからだ。リーマン・ショックのような不況の再来がないとは言いきれない。このため、現在、航空機(ヘリコプター)、発電設備、人工衛星、スマホ等へ営業領域を広げており、徐々に成果も出始めている。
 
地方拠点を活用したビジネス展開
地方拠点を活用したビジネス展開としては、仙台、松本、名古屋、福岡の各拠点で電力等のエネルギー関連やERP等のプロダクトソリューションを強化する他、仙台で試験的に始めたニアショア事業を育成・拡大させていく。地方は大手との競合が少ない一方で、当社は地場の開発会社に対して上場企業としての比較優位を有するため収益は安定している。しかし、現状に甘んじる事なく成長ドライバーの一つとして強化していきたい。

当社のプロダクトソリューションは、(株)NTTデータビズインテグラルのERPパッケージ「Biz∫(ビズインテグラル)」、SCSK(株)のERPパッケージ「ProActiveE2(プロアクティブ)」に加え、(株)NTTデータイントラマートの統合型フレームワーク「intra-mart(イントラマート)」等で実績を積み上げており、現在、10億円規模だ。プロダクトベンダーとのアライアンスで事業展開していくが、長期的には自社ブランドを育成していきたい。

一方、ニアショア事業は当社がリーダーとなって地元のソフトウェア会社を束ねて、東京本社や大阪支社等で受注した案件の開発を行うもの。地方に拠点を有する当社ならではの事業でもあり、地元経済の活性化にもつながる事業である。
 
【成長戦略 -中期経営計画-】
成長戦略は中期経営計画に示した通りだ。中期経営計画では、経営目標として、「高収益体質の実現」、「Minoriブランドの確立」、及び「信頼度の向上」を掲げている。
 
 
「高収益体質の実現」に向けては、単価の引上げとサービスの高付加価値化が必須であり、この一環として、現在、40%程度のエンドユーザーとの直接取引比率を引き上げていく。主要顧客である銀行との取引は、通常、情報子会社経由での取引となるが、一部の銀行とは利用者向けシステムの開発で直接取引が始まっている。また、現在は、業界トップまたは、トップクラスの企業との取引が多いが、システム関係の人材が手薄な中堅・中小企業との取引にも力を入れ、情報システム部門の業務を当社が一括して請け負う事業を育成していく。特にITを活用したビジネスを展開するベンチャー企業等については、業務システムだけでなく、ビジネスに活用するシステムについても、ニーズに応じた独自システムの開発から運用管理までを一貫して支援していく。ユーザーとより緊密な関係を構築する事で上流工程からかかわる事ができれば、付加価値も高まり労働集約型ビジネスからの脱却につながる。

電力・公共分野の事業拡大では、2020年にスタートする発送電分離に関連した開発需要を取り込んでいく。今下期以降、徐々に案件が立ち上がってくる見込みだ。

この他、ERP等のプロダクト、CAE、ビッグデータ等でソリューションビジネスを拡大させたい。このうちERP等のプロダクトや CAEについては、既に説明した通りだ。ビッグデータについては、当社がビッグデータ解析を行うのではなく、大量のデータを効率よくハンドリングする仕掛けづくりにフォーカスしていきたい。
 
新たな分野へのビジネス展開
既に説明した事と重なる部分があるが、「IoT」、「エネルギー」、「データ解析」、「地方創生」、「グローバル対応」をキーワードに新たな分野にも展開していきたい。
「IoT」とCAEを連動させる事でエンジニアリングサービスを強化し、自動車分野等で開発・設計段階からの関与につなげていく。「エネルギー」では、電力自由化のノウハウを活用して、ガスの自由化へ対応していく。「データ解析」では、既にビッグデータ解析の支援を始めており、この1月に提携した日本コンピュータ・ダイナミクス(株)の高速ツールを活用したソリューション等も展開していく。日本コンピュータ・ダイナミクス(株)は、当社と得意分野が異なり、顧客の重複も少ないため様々な分野で相互補完が期待できる。「地方創生」は既に説明した通りだ。「グローバル対応」は、ユーザーの製品開発がグルーバル化していく事に対応するもので人材の育成が課題だ。CAEソリューションでは、一部の構造解析案件でインド企業を活用している。
 
【投資家へのメッセージ】
2010年4月の合併によって設立された当社は、様々な技術の集合体でもあり、被合併会社の優れた技術や経営資源を引き継いでいますが、いずれも現在は「点」に過ぎません。しかし、ユーザーの視点で考え、引き継いできた技術や経営資源に経験や知見をインテグレイトし、「面」とする事ができれば、従来とは異なる新たなビジネスモデルの創造と労働集約型からの脱却につながっていくと考えています。
合併から6年が経過し、財務基盤と事業基盤の整備が進み、東証1部市場への指定も受ける事ができました。今後は、既存事業の収益力強化と新たな分野への展開により、独自の事業領域を持った情報サービス企業として存在感を高め行きたいと考えています。より一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
 
 
今後の注目点
大手の優良顧客と顧客グリップの強さが同社の特徴の一つであり、流動性と安定性を兼ね備えた財務体質や合併以来の継続的な営業利益率の改善に裏打ちされた管理能力の高さも併せ持つ。加えて、地方での安定した収益基盤や今後の成長が期待できるCAEソリューション等、他社にない強みも有している。
また、「高収益体質の実現」に向けた取り組みとして示された、中堅・中小企業の情報システム業務の一括請負やベンチャー企業のIT支援は実現に向けたハードルは高いのだろうが興味深い取り組みであり、CAEソリューションをきっかけにメーカーの開発・設計部門との直接取引を拡大させる事ができれば、ポテンシャルを大きく高める事ができるだろう。
株式を上場する同業者が多く、特徴をアピールする事が難しい業界に属するものの、安定した収益基盤を背景に他社にない強みを活かした事業展開で成果をあげる事ができれば、独自の事業領域を持った情報サービス企業として存在感を高める事ができるのではないだろうか。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
※ 2015年6月28日開催の第36回定時株主総会で承認され監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行した。
 
◎コーポレートガバナンス報告書
同社はコーポレートガバナンス・コード適用以降のコーポレートガバナンス報告書を2016年2月28日に提出している。