ブリッジレポート
(8275) 株式会社フォーバル

スタンダード

ブリッジレポート:(8275)フォーバル vol.8

(8275) フォーバル/大久保 秀夫社長
2004年5月31日(月)

2004年3月期決算概要
<連結> 

(単位:100万円)
 
実績
前期比
売上高
32,981
-11.8%
営業利益
1,446
-5.0%
経常利益
1,360
+1.9%
当期純利益
660
+48.9%

値下げの続く通信業界は、既存の商品・サービスでは売上が増えにくい環境となっています。同社ではIP電話など新たなサービスによる成長を目指しています。
セグメント別の売上では、「FTフォン」に経営資源を集中させているため、電話機の販売が大幅に増加したことで、機器関連事業は増収でしたが、ネットワーク関連事業は既存の音声系サービス(非IP系)の効率化を進めたこと等による影響で減収になっています。

営業利益は減益でしたが、2003年3月期には子会社売却に伴う一時的な連結調整利益2.2億円が含まれていたので、実質営業利益は13億円であり、実質的には増益でした。
営業員を大幅に増強しており、その人件費増を吸収しての増益です。
フォーバル本体における機器関連事業の売上増が主たる要因となっていますが、子会社フォーバルテレコムの収益改善も貢献しています。


2005年3月期決算概要

<連結>
(単位:100万円)
 
予想
前期比
売上高
33,300
+1.0%
営業利益
2,050
+41.8%
経常利益
2,000
+47.1%
当期純利益
1,000
+51.5%

前期に引き続き、「FTフォン」に注力します。
前述の理由で売上は微増ですが、付加価値の高い電話機の販売を中心に、IP電話サービスの拡大などで大幅な増益を見込んでいます。
また子会社フォーバルクリエーティブの黒字転換も寄与します。


IP電話事業の概況
FTフォンの具体的な施策は以下の通りです。

外部環境
IP電話、光ファイバーの認知度は高まりつつあります。
競合となるような法人向けサービスはまだ見当たりません。(電話番号050の問題、導入コストの問題、従来機能の継承の問題)

販売数量の増加施策
営業人員を増加し、2年後には現在の500人を1000人へ倍増させる計画です。
代理店、OEMを積極的に展開します。(大塚商会、サクサ、NECフロンティアなど)

工事完了の早期化施策
現在、受注から納品までの期間は一時期約3ヶ月かかっていましたが、期間短縮に取り組んでおり、成果が出始めています。


同社を取り巻く環境・業界の状況
業界の現状
従来のビジネスホンが縮小しているのに対し、VoIP対応機器は急拡大しており、2007-8年には逆転が予想されています。
こうした中、ブロードバンドなどIT商材販売の必要性が高まっており、ITビジネスに強い企業とのアライアンスなどで商品・サービスを提供していくことにより、大きなビジネスチャンスを獲得することができると考えています。

市場予測
ブロードバンドはADSLがリードしてきましたが、ここにきて光ファイバーが立ち上がってきました。「上り・下り」ともに安定してハイスピードな光ファイバーは、特に法人市場では中心になると考えられています。
2003年末の加入者数はADSL 1104万回線、光ファイバー 140万回線ですが、 2008年にADSL 1450万回線、光ファイバー 1300万回線とほぼ肩を並べるまでに増加する予想です。(情報通信ネットワーク産業協会調査より)

VoIP関連機器マーケットは2008年には現在の約5倍の549億円へ急成長すると予想されています。(情報通信ネットワーク産業協会調査より)

ブロードバンドの加入者のうち約90%はIP電話に加入すると見られます。(IPテレフォニー利用実態調査より)

VoIPサービスの利用者は、現在のところ個人が法人を上回っていますが、2005年には逆転し、2007年には個人・法人を合わせた国内VoIPサービス市場は、7200億円に達すると見られています。(IDC Japan調査より)

ユーザーの動向
法人ユーザーがIP電話に期待するものは機能・利点よりも、第一に「通信コストの削減」となっています。
また前回のレポートでも紹介したように、現在の電話番号から「050」で始まるIP電話用の番号への変更が必要であり、これが導入の阻害要因となっています。逆に言えば「番号変更をせずに通信コストを削減できるなら、導入に踏み切りたい」と考えているということです。

FTフォンの優位性
これも前回のレポートで触れましたが、総務省は5つの条件をクリアし、NTT固定電話と同等のサービスレベル(クラスAの取得)が提供できるのであれば番号変更をしなくて済む「番号ポータビリティ」を認めています。
「FTフォン」は業界でいち早くこの基準をクリアしました。
競合他社においても、NTT東西、FUSION、KDDIなどが番号ポータビリティ可能なIP電話サービスを開始しましたが、大手法人向けや個人向けであり、同社とは対象とするマーケットが異なっています。また、他の通信キャリアはクラスAの取得に難航しているようです。

FTフォン事業のコンセプト
最大のターゲット層である中小・小規模事業者は「IT」に対する理解度が低い傾向にあるため、「IT商材」からのアプローチよりも「ボタン電話・ブロードバンド回線」によるアプローチの方が効果的と考えています。
FTフォンは050を利用しない「IP電話」、「ビジネスホン」、「光ファイバー」のオール・イン・ワンパッケージであり、これを導入することにより無自覚・痛みを伴わずにブロードバンド環境への移行が可能となります。
Step1としてFTフォンによってブロードバンド環境に企業を導いた後、Step2としてASP、グループウェア、ホスティングなどの「IT商材」を販売していく戦略です。


FTフォン サービス内容

FTフォンサービスは、光ファイバー網を用いたIP電話とデータ通信に加え、専用のIP電話端末をオール・イン・ワンで提供するブロードバンド通信サービスです。

<企業側の主要メリット>
1. 導入に関し、初期投資がほとんど不要
2. 従来と同じ電話番号の使用が可能
3. 複数通話可能なIP電話と最大100メガの高速データ通信を提供
4. 高品質の光ファイバーを業界最低価格で利用可能
5. NTT基本料金が不要。IP電話で全国一律3分7.5円、ユーザー同士は無料

同社では、現状の通信コストを削減する「導入シュミレーション」を企業に提案しています。中には年間1億円近くも削減できるケースもあるということです。
FTフォンの導入のみでなく、新型の電話機への切り替えなどトータルでの提案により、企業側にはコスト削減メリットを提供しつつ、同社も収益を獲得していきます。

2003年7月から東京・神奈川の一部地域で先行販売を実施し、2004年3月期末では、4,586回線の申込実績、2,543回線の利用実績となっています。
中小法人を中心に、同社による直接販売と、販売実績と安定した通話品質・ネットワーク運用実績に基づいた代理店による販売を並行し、名古屋、大阪、京都、神戸、福岡、札幌、仙台など主要都市部に拡大して行きます。


取材を終えて
通信価格の低下で減収とはなりましたが、期初の計画通りに電話機販売に注力して、実質増益となりました。
大久保社長は現在の環境を同社飛躍の千載一遇のチャンスと捉えており、「営業人員の確保」、「代理店網・OEMの強化」に集中して大きく成長したいと考えています。
FTフォン拡大の進捗状況などを引き続きレポートしていきたいと思います。

http://www.forval.co.jp/