ブリッジレポート
(8275) 株式会社フォーバル

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ブリッジレポート:(8275)フォーバル vol.32

(8275:JASDAQ) フォーバル 企業HP
大久保 秀夫 会長
大久保 秀夫 会長
中島 將典 社長
中島 將典 社長
【ブリッジレポート vol.32】今後のビジネス展開について
取材概要「フォーバルは大久保会長の類いまれなるアイデアと事業遂行力によって、ベンチャー企業として発展してきたが、局面によって事業の転換を迫られ・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年10月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フォーバル
会長
大久保 秀夫
社長
中島 將典
所在地
東京都渋谷区神宮前 5-52-2 青山オーバルビル
決算期
3月
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 32,206 520 477 470
2009年3月 34,358 112 17 -1,879
2008年3月 34,323 -933 -1,264 -532
2007年3月 26,216 -1,878 -2,012 -1,390
2006年3月 27,500 3 14 1,063
2005年3月 40,089 1,962 1,962 1,174
2004年3月 32,981 1,446 1,360 660
2003年3月 37,402 1,522 1,334 443
2002年3月 44,411 -860 -1,027 -4,756
2001年3月 52,045 1,026 699 86
2000年3月 54,668 1,278 1,281 1,122
株式情報(10/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
260円 13,563,915株 3,527百万円 10.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.50円 4.8% 22.12円 11.8倍 327.93円 0.8倍
※株価は10/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フォーバルの今後の事業展開について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
今後のビジネス展開 … 経営コンサルで攻める
 
(1)5段階で顧客開拓を実行
当社は30年前の創業の時から業界を一歩リードする創意工夫を持ち込む形で、情報通信機器のリース販売を全国の中小企業に展開してきた。だが、機器というハードウェアの優位性が相対的に薄れていく中で、情報通信機器を使ってもらうコンサルティングにビジネスモデルの変革を推進してきた。ハードの販売から経営課題を解決するITコンサルティングサービス(当社では「アイコン」という)へ大きくシフトしてきた。しかも、この情報通信コンサルタント企業としてのフォーバルを日本だけでなく、アジアにも展開しようとしている。09年にコンサルティングディビジョン(コンサル事業部)を設置し、本格的に取り組んでいる。

ハード機器販売からコンサルへの社員の意識改革に積極的に取り組んでいる。資格制度を取り入れて、NTTコミュニケーションズが主催するドットコムマスターの資格と個人情報保護士の資格を全社員が取得するよう義務付け、すでに400人以上がとっている。若手にとっては、取得しなければ昇進できないようにしている。

中小企業に対して、当社は5つのレベルでサービスを提供し、シナジー(相乗効果)を追求している。①回線契約、②ハードウェアの販売、③保守サポート、④ウェブ構築、⑤経営コンサルティング、の5段階である。中小企業の現場で使われている情報通信の回線を効率よく安く済む方策(①)から入ってもよいし、上位のマネジメントに対して経営コンサルから入り、経営改革を実行する中で、そのサービスの一環として、④~①におりてもよいのである。
 
(2)アイコン契約の客にフォーカス
今、主力としている経営コンサルについては、大久保会長自らセミナーの講師を務め、集客した企業経営者の四分の一は何らかの形でフォーバルの経営コンサルに関心を持っている。大久保会長の話には説得力がある。中小企業の経営者に参考になることがいろいろ含まれ、抽象論でなく、具体的に何をすべきかがはっきり示される。そうすると具体的に相談したくなるのである。

しかも、集客する人々は、すでにフォーバルの顧客である場合が多い。そういうユーザーに声をかけている。会社の営業担当に対しては、1社でも多くの顧客が当社と良好な関係が築けるように、強力な推進を行っている。顧客を5つの層に分けており、通信サービスやハードだけを利用している顧客に対して、いかにアイコン契約を獲得するかに全力投入をしているのである。

現在、当社と継続的に取引のある顧客が5万社ほどあるが、そのうち、アイコン契約の顧客は1万事業所ほどある。これを3年後に2万事業所に拡大するのが重要な経営目標である。経営コンサルはこの既存客に声をかけており、コンサルの顧客になる可能性はかなり高いのである。

当社の営業においては、KPI(重要経営指標)として、このアイコン契約の顧客を何件作るかというミッション1本においており、マネジメントはこの件数をみている。よって、フォーバルの経営コンサル戦略は会長をヘッドに、コンサルティングディビジョンを軸に、会社が一丸となって動いているのである。その効果は着実に出ている。
 
 
(3)ビジネスの構図
フォーバルのアクティブの顧客は5万社ほどあるが、その中で、①ビリングシステムを通して継続的に取引のある客を現在の3.8万社から3年以内に5万社に増やす、②アイコン(ITコンサル)の対象となっている顧客を現在の1.06万事業所から同じく3年以内に2万事業所にもっていく(ここの顧客の平均月額利用料ARPUが2.1万円/月)、③今、最も力をいれている経営コンサルの顧客を3年以内で350社に増やす、という目標のもとで活動している。

ビリングサービスとは、情報通信サービスにおいて、中小企業が大手並みの割引サービスを受けられるように、当社が間に立ってサービスの取り次ぎをすると同時に、さまざまなサービスの請求書の支払処理を一括で請け負って、伝票を1枚にまとめて、顧客の手間を省くというサービスである。

アイコンサービスとは、ITコンサルティングに関わる継続的なサービスを受ける顧客で、コピー機のメンテナンスなど保守サポートサービスや、経営相談などを月間料金でうけている。この平均月額利用料(ARPU)が10年は2.1万円であり、そのサービスをうける事業所数が、1.06万事業所であった。この数を1万事業所増やすということは、1万×2.1万円×12ヵ月で年商が25億円ほど増えることになり、利益貢献もかなり見込める。

経営コンサルは月30万円のコンサル料をベースに展開していく。一人10社の顧客をもって、コンサルタントが10人とすれば、年商3.6億円となる。この金額は大きくないが、コンサルをベースに当社が得意とするアイコンに結びついていけば、着実なビジネス拡大に繋がるとみられる。

これらの事業をグループで展開している。フォーバル(8275 JQ上場)を軸に、フォーバルテレコム(9445 マザーズ上場)、フォーバル・リアルストレート(9423 JQ上場、オフィスソリューション関連)、リンクアップ(移動体通信関連)など、グループ企業が連携して活動している。
 
 
新たなイノベーション … フォーバルテレコムのFMC
 
(1)ツーウェイスマートを本格投入
固定電話と携帯電話を融合したFMC(固定モバイル変換型)をフォーバルテレコムが開発した。これを使うと、中小企業にとって会社の固定電話と自ら持って歩く携帯電話を一体化して、どこでも自由に社内と同じように使える。社員同志なら社外で通話しても社内同様の費用になる。ソフトバンクと共同で開発し、ホワイトビジネスフォンパックとして1機種でトライしてきたが、今秋から全機種に広げる。従来のビジネスフォンメーカーの電話をこちらに切り替えることにより、当社のビジネスチャンスは大幅に増える。このホワイトビジネスフォンパック(WBP)を「ツーウェイスマート」と名付けている。欧州ではすでに主流となっているものであるが、これを当社が独自開発し、先行する。契約はフォーバルテルコムが顧客の中小企業と結び、その通話料をソフトバンクモバイルに支払う。大手企業なら自前でできるが、中小企業のためにサービスを提供しようという当社の考え方の実践である。
 
(2)光通信とJV(合弁の企画販社)を設立
一部ハード機器(グループのリンクアップ社が製造)は必要なので、これを売って営業コストをカバーし、その後は利用料でランニングコストをまかない、ここから稼ぐという仕組みである。この企画販売にあたっては、光通信と合併でホワイトビジネスイニシアティブ(WBI)を50:50の出資で作った。ここを通してフォーバルも売るし、光通信も売る。どちらが売っても、フォーバルテレコムは儲かるようになるわけである。

今回このアイデアは現場から出てきた。新商品に関して従来は30年前から大久保会長がアイデアマンとして発想し、実現してきたのが当社の特色であるが、今回のツーウェイスマートは会長のアイデアに依存しているわけではない。現場でイノベーションを起こす力を培い、それが花開いたと言える。これは、かなり市場に受け入れられると考えられるので、今後の業績に相当貢献してこよう。

フォーバルのコンペティター(競合企業)としては、大塚商会(4768 東証1部)、光通信(9435 東証1部)、エフティコミュニケーションズ(2763 JQ)、レカムホールディングス(3323 HCS)などが挙げられるが、その中で今回、光通信とは連携を取っている。また、顧客開拓においては、既存顧客の深掘りを主眼に置いているので、勝算は十分あろう。
 
 
アジア展開 … カンボジアで先行
 
(1)プノンペン経済特区で「ITサポート窓口」を展開
日本企業の海外展開は、中国はもちろんタイやベトナムも盛んであるが、今やカンボジアもターゲットになってきた。当社は次に発展しそうな国で先行メリットを活かそうとしている。カンボジアはベトナム、タイに接し、人口が1430万人、国土の面積は日本の半分である。カンボジアは年9~10%の経済成長を遂げており、一人当たりの所得も月額で、タイ241ドル、ベトナム96ドルに対して、カンボジアは50ドルである。

カンボジアでは8つの経済特区が稼働中であるが、その中のひとつであるプノンペン経済特区に「ITサポート窓口」を開設し、現地スタッフを常駐させている。経済特区では、輸入関税の免除や法人税が最長9年間免税となる等、様々な優遇制度が用意されている。その中でもプノンペン経済特区は、インフラ環境やサポート体制が一番しっかりしているため、日系企業の進出が最も多い。フォーバルは大久保会長の強いネットワーク力で、カンボジアにいち早く入り込み、日系企業の誘致を積極的に行っているが、昨今のチャイナリスクにより東南アジアに目を向ける日系企業が急増する中で、カンボジアへの進出を表明する大手企業が増えており、IT環境サポートニーズはますます増えてくるでであろう。ITサポートはもちろん、セキュリティのビジネスにも広がりそうである。
 
(2)シーセフの社会貢献活動
シーセフ(CIESF、Cambodia International Education Support Foundation)とは、カンボジア国際教育支援基金のことで、大久保会長の社会貢献活動の一環として設立し、理事長は大久保氏が務めている。歴史的な経緯もあり、カンボジアには十分な教育の機会がないことを憂い、その人材教育から教育のインフラまでを作っていこうという活動に取り組んできた。この活動を商売抜きに本気で実行したことによりカンボジアに貢献、ひいては高く評価された。その評価が間接的に、今日のビジネスにつながってきたわけである。大久保会長もシーセフと自社の事業をきっちりと分け、両立を図っていく方針である。
 
 
内部統制の再構築 … 厳しさを追求
 
(1)2つの不祥事を教訓とする
09年5月に営業担当者の不正行為(着服など)が発覚し、10年7月には総務部長の不正行為(不正経費使用など)が明らかとなった。いずれも調査委員会を設置し、きちんと解明し、しかるべき対策も打たれた。有価証券報告書の訂正もなされた。金額から見て投資家の判断に影響を及ぼすほどのものではないが、不正確であったという点では課題を残した。内部統制上も重大な欠陥に相当した。

大久保会長は家族主義的な社内風土の悪い部分は廃すべく、ダブルチェック、適切な人事異動、仮払いなど現金は扱わない、検査機能を強化するといった手を打っている。この2つの事案を教訓に、今後は内部統制を厳格に推進していく方針であり、そのための体制も強化した。
 
(2)監査法人の変更に大意なし
この間、監査法人の変更が2回あったが、不祥事とは直接関係ない。従来監査法人トーマツであったものが、09年度はKDA監査法人に変更され、10年度に関しては優成監査法人に変更された。KDAへの変更はコスト的な問題であり、優成への変更は海外展開に伴う海外監査リソースの問題である。監査内容に何ら問題があったわけではないが、監査法人が頻繁に変わるということは好ましくないので、一定の継続性が望まれる。
 
 
業績を着実に伸ばす … 累損一掃を急ぐ
 
(1)マネジメントアプローチで分かり易くなる
2011年3月期の業績は、売上高340億円(前年度比+5.6%)、経常利益6億円(同+25.4%)、当期純利益3億円(同-33.2%)を目指している。純利益は前年度に株式売却の特別利益があったため減少する。この第1四半期の業績は順調であった。純利益は資産除去債務や事務所の移転費用などで,多少のマイナスとなったが、当初から予定していたものである。本業は着実に伸びている。

売上内訳は従来と変わった。セグメントの分類は、従来の機器関連事業とネットワーク関連事業から、フォーバルビジネスグループ、フォーバルテレコムビジネスグループ、モバイルショップビジネスグループへ変更された。経営者が意思決定をするにあたって、経営管理上社内で用いている分類に基づくというマネジメントアプローチに従ったことによる。各々の事業部別に売上、営業利益をみるので、分かりやすくなったといえよう。
 
 
(2)連結上の累損は本業の利益で早期解消を目指す
連結バランスシート上の2011年度第1四半期(1Q)末の利益余剰金は△30億円である。さまざまな事業の整理に伴う過去の負担が残っていることによる。30億円の累損が残っている要因は2つある。1つは、2002年3月期にフォーバルテレコムで49億円の欠損が発生したことである。ブラジル人向け携帯電話サービスなど、事業の撤退や整理を行った。この分は38億円の増資や、資本金、資本準備金の取り崩し(欠損填補)で埋め合わせたが、フォーバルからの出資分については簿価のまま残っていたことによる。もう1つは、09年3月期にフォーバル本体で人材関連などグループ会社の整理を行ったことに伴う赤字が加わったことによる。

この△30億円は期間利益で消していくので、もうしばらく時間を要する。会社側では、この3年間で一掃することを目指している。税法上、欠損については7年間の猶予期間があるが、これが子会社のフォーバルテレコムにおいては、今期より切れてくるので一部税金がかかってくる可能性がある。よって、累積一掃には税引き利益でカバーしていくことになる。本業が着実に展開でき、業績の向上が見込める局面にあるので、いい方向に向かっているといえよう。
 
 
取材を終えて
フォーバルは大久保会長の類いまれなるアイデアと事業遂行力によって、ベンチャー企業として発展してきたが、局面によって事業の転換を迫られ負担が発生した。しかし、そのマイナスの負担をかなり整理し、苦しい局面を脱した。次の3カ年計画の中で、事業の安定化と拡大を目指している。経営コンサルを軸とした情報通信でのビジネス展開は、有力商品の開発と相まって、十分伸びていくことができよう。この着実な収益力の回復に注目したい。