ブリッジレポート
(1433) ベステラ株式会社

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ブリッジレポート:(1433)ベステラ vol.1

(1433:東証マザーズ) ベステラ 企業HP
吉野 佳秀 社長
吉野 佳秀 社長

【ブリッジレポート vol.1】2016年1月期業績レポート
取材概要「膨大な需要が見込まれるプラント解体工事は直線的な大きな伸びが期待できる事業であり、様々な可能性と事業間シナジーを有する3D計測 BIM・CIMは・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年4月12日掲載
企業基本情報
企業名
ベステラ株式会社
社長
吉野 佳秀
所在地
東京都墨田区江東橋4-24-3
決算期
1月末日
業種
建設業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年1月 3,060 384 388 219
2014年1月 2,056 176 178 110
株式情報(3/31現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
3,180円 2,729,600株 8,680百万円 18.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
40.00円 1.3% 114.67円 27.7倍 751.40円 4.2倍
※株価は3/31終値。
 
2015年9月2日に東証マザーズに株式を上場したべステラについて、2016年1月期決算の概要と共にご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
プラント解体のスペシャリストとして、製鉄、電力、ガス、石油等、プラント(金属構造物)の解体工事をマネジメントしている。“プラント解体の工法・技術”をコア・コンピタンスとし、国際特許も含めた14件の特許工法を有する(申請中5件)。エンジニアリング(提案・設計・施工計画)とマネジメント(監督・施工管理)に経営資源を集中しており、実際の解体工事は協力会社に外注するため、工事用重機や工事部隊を保有せず(資産保有リスクを回避)、材料等の仕入・生産取引も発生しない(在庫リスクを回避)。
社名の「べステラ(BESTERRA)」は英語の「Best(goodの最上級)」とラテン語の「Terra(地球)」を合わせたもので「素晴らしい地球を造っていこう」と言う思いが込められている。

16/1期はプラント解体事業が売上高全体の98.3%を占め、人材サービスが残る1.7%。2015年1月に事業を開始した3D計測は先行投資段階にあり、売上の計上はなかった。
 
【企業理念・行動規範】
「柔軟な発想と創造性、それを活かした技術力により地球環境に貢献します」と言う企業理念の下、下記の行動規範を掲げている。
 
行動規範
プロとしての責任を果たします。
我々は常に新しい技術を生み出し、「安全を何よりも優先」し、「より早く、より安く、より安全に」を合言葉に
さらに安心を加えて、お客様に提供します。
 
【沿革】
1947年3月、愛知県名古屋市において、現代表取締役社長 吉野佳秀氏の実父 春吉氏が吉野商店を創業。1964年9月に吉野佳秀氏が事業を引き継ぎ、1974年2月に株式会社に改組すると共に商号をベステラ(株)に変更した。その後、東京に拠点を移し、建設工事(解体工事は建設工事と同様の規制下に置かれている)の元請けとなるために必要な「一般建設業」や「特定建設業」の許可を取得。「安全」、「早い」、「低コスト」を念頭に工法の開発にも取り組み、「大型球形貯槽の切断解体方法(リンゴ皮むき工法)」(20004年7月)や「ボイラの解体方法」(2007年9月)等の特許も取得した。2013年1月に人材サービスを、2015年1月に3D計測サービスを、それぞれ開始。2015年9月に東京証券取引所マザーズ市場に上場した。

尚、建設工事の完成を請け負う事を営業するためには、建設業法第3条に基づき建設業の許可を受ける必要がある(「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合には必ずしも必要ない)。建設業の許可は、下請契約の規模等により「一般建設業」と「特定建設業」に分かれ、下請け企業への発注金額の合計が30百万円未満であれば「一般建設業」の許可で対応できるが、下請け企業への発注の合計金額が30百万円以上になると「特定建設業」の許可が必要となる(同社は、とび・土工工事業、塗装工事業、管工事業で「特定建設業」の許可を取得している)。
 
【事業の特徴】
プラントの解体工事は、製鉄・電力・ガス・石油等のプラントを有する大手企業が施主であり、多くの場合、施主系列の設備工事会社あるいは大手ゼネコンが工事を元請けし、同社が一次下請け、二次下請けとなっている。16/1期は、JFEグループのJFEメカニカル(株)、新日鉄住金グループの日鉄住金テックスエンジ(株)、戸田建設(株)、東京電力グループの(株)東京エネシスの上位4社向けの売上が全体の55.9%を占めた。
 
 
工事の進行に伴って発生するスクラップ等の有価物は、同社が引き取ってスクラップ業者に売却する。このため、同社は受注に際して有価物の価値を、材質、量、価格(鉄、ステンレス、銅等の材質毎の相場)等から総合的に見積り、それを反映した金額で交渉し、請負金額を決めている。会計上、有価物の売却額は解体工事に伴う収益の一部と位置付けられており、完成工事高に含めて計上している(16/1期は5億70百万円、売上高の15.1%)。尚、発注者(施主)が独自でスクラップ等の処分(売却)を行う事もある。
 
※ 完成工事高実績(季節的変動について)
同社の売上高(完成工事高)は顧客(施主)の設備投資計画に応じた季節性があり、第1四半期(2月~4月)及び第4四半期(11月~1月)に計上される割合が高くなる傾向がある(工事進行基準の採用は、請負金額30百万円超、工事期間3ヶ月超、かつスクラップ等売却予想金額1百万円以下の工事)。
 
【強み -優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的解体マネジメント、特許工法等の知的財産-】
強みは、優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的解体マネジメント、及び特許工法等の知的財産。

製鉄、電力、ガス、石油等の大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤は与信の不安がない一方で、中長期にわたり継続して受注が見込める豊富な案件を有する。また、約40年間の実績に裏打ちされたプラント解体のトータルマネジメントは、これら優良企業から高く評価されており、参入障壁となっている。更に、環境対策工事等で蓄積してきた様々な技術やノウハウも強みであり、発生材の再資源化に関する豊富な知識と共に、顕在的・潜在的な知的財産となっている(特許取得済14件、同申請中5件)。
 
【業績推移】
 
【特許工法と特殊工事】
「リンゴ皮むき工法」(特許名:大型貯槽の切断解体方法)
特にガスタンクや石油タンク等の球形貯槽の解体において、あたかもリンゴの皮をむいていくように、外郭天井部の中心から渦巻状に切断する工法。切断した部分が自重により下方へ垂れ下がって行くため、更なる切断作業は地上で可能。このため、従来の工法に比べて高所作業者の人員・作業時間を減らす事ができる(工期短縮やコスト削減に直結)事に加え、切断片の落下方向をコントロールできるため、より高い安全性も確保できる。
 
「ボイラの解体方法」
支持構造物に吊下げられている大型ボイラを解体する工法。ボイラの下方向から上下動可能なジャッキを設置し、ボイラに接触する部分までジャッキを上昇させ、ボイラの一部切離しを行い、切離された部分と共にジャッキを降下させ、切離した部分を除去する(この工程を順次繰り返す事で解体する)。従来の一般的な工法では、切断した部分を直接地上に落としていたため危険で落下時に有害材料(アスベスト等)が飛散する恐れもあった。
 
「アスベスト除去工事」
アスベストとは天然鉱物繊維で、屋耐火吹き付け材等に広く使用されてきたが、現在は有害物質として全廃されている(「石綿粉塵」が肺がん等を発症させる恐れが指摘されている)。同社は石綿障害予防規則(厚生労働省)等の関係法令に基づき、事前調査、計画書の作成、準備作業、除去作業、処理清掃、記録、届け出までの全ての工程を管理・監督し、除去工事を施工している。
 
「ダイオキシン対策工事」
ダイオキシンは、廃棄物を焼却する過程で発生し、焼却炉、集塵機、それに附帯する煙突・ダクト等に存在する有害物質。呼吸や飲食物とともに口から入った場合の、発がん性、肝毒性、免疫毒性、生殖毒性等の危険が指摘されている。同社ではダイオキシン類対策特別措置法(環境省)等の関係法令に基づき、事前の濃度測定、周辺調査、暴露防止対策、汚染物の除去及び解体、廃棄物処理、解体後の濃度測定、記録届け出までの全ての工程を管理・監督し、除去工事を施工している。
 
「汚染土壌改良工事」
土壌汚染とは、土壌が有害物質(重金属、揮発性有機化合物、薬品及び油等)に汚染される事で、地下水の飲用または農作物への散水等により、人体への影響が指摘されている。使用を廃止した有害物質使用特定施設に係る工場等の土地所有者は指定機関による調査や土壌汚染の無害化が義務付けられている。同社では、土壌汚染対策法(環境省等)の関係法令に基づき、汚染土壌の事前測定から除去、処理、事後の濃度測定、記録、届け出までの全ての工程を管理・監督し、無害化工事を施工している。
 
「PCB関連工事」
PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは、熱に対して安定的、電気絶縁性が高い等、化学的にも安定的な性質を有するため(対熱安定性、電気絶縁性等)、トランス(変圧器)、コンデンサ(蓄電器)に広く使用されてきたが、現在は有害物質として全廃されている。脂肪に溶けやすいという性質から、慢性的な摂取により体内に徐々に蓄積し、様々な中毒症状を引き起こす恐れが指摘されている。同社は、PCB含有の機器をポリ塩化ビフェニル廃棄物に関する法令(環境省等)の関係法令に基づき、機器の事前調査から除去、処理、事後の濃度測定、記録、届け出までの全ての工程を管理・監督し、PCB関連工事を施工している。
 
「溶断ロボット工事」
ガスタンクや石油タンク等の球形貯槽の解体において使用する溶断ロボット(りんご☆スター)を使用した工事。車輪に1車輪当たり200kgf(重量キログラム)以上の強力磁石を装備し、遠隔操作によるガス溶断ができるロボットを主に同社の特許工法である「リンゴ皮むき工法」時に使用している。このロボットの開発で(高所での職人による溶断作業が無くなる)、特許「リンゴ皮むき工法」の人的安全性が飛躍的に高まった。「リンゴ皮むき工法」以外でも、人的作業が困難な場所を施工する際に活用している。
 
 
 
事業環境
 
 
国土交通省では、2013年を「社会資本メンテナンス元年」と位置づけ、社会資本の老朽化に総合的、横断的な取り組みを推進している。今後、高度成長期以降に積み上がった膨大な資本ストック(約230兆円と言われている)が解体・更新期を迎える事に加え、政府の産業政策や解体工事の質的向上を目指した政策も追い風になる。
 
 
追い風となる各種政策
・産業競争力強化法及びエネルギー供給構造高度化法の施行
産業競争力強化法及びエネルギー供給構造高度化法は、高効率化を目的にプラントの再編や再構築を促すもの。両法の施行で老朽化設備や余剰設備の廃棄等の増加が期待できる。
 
・エネルギー使用合理化等事業者支援補助金の増額
エネルギー使用合理化等事業者支援補助金は発電設備の更新等に際して補助金を支給する制度。2016年度の補助金は、2015年度の410億円から515億円に増額されるため、更新案件の増加が予想され、廃棄等の需要増も見込まれる。
 
・建設業の許可業種区分に「解体工事」新設
建設業法の改正に伴い、43年ぶりに建設業許可業種区分に「解体工事業」が新設された(これまで「とび・土工工事業」の業種区分の中に含まれていた)。「解体工事業」の新設は解体工事における施工管理体制の強化(安全品質向上)を目的としており、解体工事のトレンドは安全品質重視。同社にとって追い風である。

尚、これまでは「とび・土工工事業」の許可を得ていれば解体工事を行う事ができたが、上記の改正に伴い、1件500万円以上の解体工事を実施する場合は、「解体工事業」の許可が必要となる(2016年6月の施行日から3年間は経過措置として、既存の「とび・土工工事業」の技術者を配置しても解体工事の施工が可能)。
 
 
2016年1月期決算及び2017年1月期業績予想
 
 
3期連続の増収・増益
受注工事高が前期比82.3%増の55億円と過去最高を更新する中、受注残の消化が進み売上高が38億46百万円と同25.7%増加した。利益面では、前期に利益率の高い案件があった反動で売上総利益率が22.5%と0.9ポイント低下した他、3D計測関連等での先行投資や上場関連費用の増加等で、販管費も、同26.9%増の4億19百万円と伸びが大きくなったが、売上の増加で吸収して営業利益が4億47百万円と同16.2%増加。補助金収入(20百万円)の計上や税負担の減少(前期は過年度法人税等90百万円を計上)で最終利益は2億92百万円と同33.0%増加した。受注残高は33億62百万円と前期末比ほぼ倍増。受注工事高、売上高、利益と同様に過去最高を更新した。
当期より配当を開始する考えで、1株当たり東証マザーズ上場記念配20円を含めた90円の期末配当を予定している。
 
 
 
マザーズ上場に伴う資金調達と業容の拡大で期末総資産は32億23百万円と前期末に比べて7億47百万円増加した。借方では、現預金と売上債権が増加した他、3D計測機器等の先行投資で工具・器具・備品も増加(17百万円→34百万円)。一方、大型工事の完了で、たな卸資産が減少した。貸方では、仕入債務や純資産が増加する一方、大型工事の完了で未成工事受入金が減少した。
同社は、流動性と長期安定性を兼ね備えた優れた財務体質を有し、流動比率(171.6%→271.8%)、固定比率(34.4%→20.4%)、自己資本比率(45.3%→63.6%)の、いずれもが改善。一方、自己資本の充実で投下資本利益率は16.3%と前期の19.6%を下回った。
 
 
業容拡大に伴う運転資金の増加で営業CFがマイナスとなる中、3D計測機器等の投資で投資CFもマイナスとなった。前期は黒字だった営業CFがマイナスになったのは、大型案件の受注に伴い発生した未成工事受入金が減少したため。財務CFの黒字はマザーズ上場に伴う株式の発行による収入(6億31百万円)による。
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
「プラント解体の工法・技術」をコア・コンピタンスとする同社の利益率は高い。事業規模の拡大はこれからだが、持たざる経営のため資産効率にも優れ、高いROEを実現している。ここ数年は自己資本の充実でレバレッジが低下傾向にあるが(16/1期は未成工事受入金の減少もその一因)、業容拡大によるスケールメリットの顕在化で売上高当期純利益率と総資産回転率の改善が続いている。
 
 
前期比22.2%の増収、同5.1%の経常増益予想。過去最高の売上利益が続く見込み
過去最高の受注残高の消化で引き続き高い売上の伸びが見込まれる。人員の増強や3D計測サービスに係る研究開発に伴う販管費の増加を吸収して営業利益が4億85百万円と同8.4%増加する見込み。補助金収入を見込んでいないため経常利益が同5.1%の増加にとどまるものの、当期純利益は3億13百万円と同7.0%増加する。

配当は1株当たり上期末10円、期末30円の年40円を予定している(2016年2月1日付けで1株を2株に分割しているため、実質的には記念配10円を落として5円の増配)。
 
 
中期経営計画(17/1期~19/1期)と長期ビジョン
 
今期スタートした中期経営計画は、「成長戦略の推進」、「制度・仕組みの革新」、及び「新しい社会価値の創出」を基本戦略とし、最終の19/1期に、売上高70億円、営業利益6億50百万円、ROE17%以上の達成を目指している。また、「成長投資」の継続的な実施と共に、「事業基盤強化のための内部留保」にも努めつつ、最終利益の40%を株主へ利益還元(配当)していく考え。
成長投資については、設備投資(ロボット、3D計測機器)、技術開発投資(工法開発、ロボット開発)、システム投資(3Dシステム、BIM・CIM)、及び戦略的事業投資(M&A等)を合理的な資金配分の下で実施していくとしている。
 
 
数値目標の達成に向けた施策
基本戦略として、成長戦略を推進、制度・仕組みの革新、及び新しい社会価値の創造を挙げている。
 
 
成長戦略の推進
(1)工法の充実では、特許工法の実用化に向け提案営業を強化する。同社は、14件の特許工法を有するが(この他、申請中5件)、「リンゴ皮むき工法」(特許名:大型貯槽の切断解体方法)以外の工法の実用化はこれから。先ず認知度を高める必要がある。
 
 
また、ロボット工法による安全性、効率性の向上にも取り組んでいく。順調に工事実績を積み上げている溶断ロボット「りんご☆スター」については、新アタッチメント開発で用途拡大に取り組んでおり、この他、自動認識ロボットの開発は、ロボットの脚(キャタピラ)、目を大学との共同研究で進めていく。
 
 
環境関連工法では、屋外屋内を問わず対応が可能な、無火気工法・準無火気工法をアピールしていく。PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、現在、有害物質として全廃されているが、優れた熱安定性や化学的安定性(電気絶縁特性)から、長年、トランス(変圧器)やコンデンサ(蓄電器)に使われてきた。プラントの解体工事に伴いトランスやコンデンサを処理するケースが多いが、PCBを高温で処理するとガス化するため吸引する恐れがあり、解体・撤去に際して火器(ガス溶断等)が使えない。同社はセーバーソー(往復運動する鋸刃により切断する)等による無火気工法・準無火気工法を得意としており、モーター焼きつき対策や刃を再生利用する等の工夫で業界常識を超える厚みを切る事が可能だ。

(2)事業領域3本柱の確立では、人材サービス、3D計測 BIM、CIMといったプラント解体周辺分野のサービスを拡大する事でプラント解体トータルマネジメント(戦略的アセットマネジメント)を強化する。

(3)パーフェクト3D、3D解体(注)では、プラント設備の効率的な管理に3Dデータによるクラウドシステムが必要となると推測される事から、紙面データの最新3Dデータ化、3Dデータ化による可視化・共有化し、自社開発のクラウドシステムを利用したIoT×解体による新しい価値の創造に取り組んでいく。
 
 
【長期ビジョン -「日本のプラント解体リーダー」と「世界へのプラント解体技術提案者」を目指して-】
「日本のプラント解体リーダー」と「世界へのプラント解体技術提案者」を長期で目指す姿としており、数値目標として、早期に売上高1,000億円、営業利益100億円達成を掲げている。プラント解体、3D計測、ロボット、人材ビジネス、及び海外、の5分野で下記の主要施策を進めていく考え。利益還元としては、配当性向40%を目安に継続的に増配を実施していく。
 
 
 
STEP1:3D計測、モデリング(3DCADデータ化)
3Dスキャナで計測し、モデリングを行い、点群データや3DCADデータとして納品する(建設時の紙データを最新鋭の3Dデータに変換)。施設情報の把握はもちろん、解体・補修にも活かす事ができる。電力会社、機械・プラント会社、メンテ会社、測量会社、遺跡・文化財等、土木関係、地形調査、ゼネコン・サブコンを顧客として想定している。

既に設計分野では、3D CADによる3Dの図面作製が行われているが、同社が行っているのは、測量によって得られた点群データを基にした3D図面の作製。言い換えると、これから建てる建築物の図面を作製するのではなく(完工後の建築物と完全に一致するとは限らない)、既に建っている建物の図面(完全一致である必要がある)の作製であり、どちらの難易度が高いかは、説明するまでもないだろう。また、3D計測は測量会社の業務であり、3D CADによる3D図面の作製(3Dモデリング)は設計会社の業務であり、3D計測と3Dモデリングを1社で手掛ける同社の希少性は高い。また、点群データから3D CADデータを作成する場合、単に点群データを 3D CADに入力すれば済む問題ではなく、点群データをみて、それが柱であるか、配管であるか等を識別する属人的な作業が必要となるため、3D CADがあればできると言うものでもない。
 
STEP2:パーフェクト3D  航空・MMS・地上・海上から完全3D化
航空レーザー、MMS(Mobile Mapping System:車載・走行型レーザー計測)、地上型レーザー、更には港湾部ソナー(海上)を使って異なる3D情報を一括計測する。長期間にわたる改修や経年劣化等で複雑化したプラント全体の設備情報を3D化して提供する。
 
ただ、製鉄所全体や発電所全体の3D図面を作成する場合、機材の面から同社だけでは対応が難しい。このためトヨタグループで航空事業及び測量事業を手掛ける朝日航洋(株)と提携した。同社が受注し、朝日航洋(株)に発注する形をとる。配管等は改修や経年劣化等で変更が生じるため、定期的に計測して変更を修正する必要がある。このため、製鉄所や発電所等は、それぞれの企業が地図を定期的に更新しているが、3D計測を使う事で早く正確に地図を作製できる。同社においては、現在、図面作製で大手プラント企業との商談が進んでいる他、行政からの依頼で観光名所のオフィシャルデータ(3D図面の作成)の作製作業が進行中である。
 
STEP3:3D解体  工程が「視える化」された解体工事
3D計測データを解体工事に活用する事で工程が「視える化」できるため、重機等の干渉部分や環境対策箇所の可視化、解体シミュレーションの実施・共有化、解体手順の体系化・マニュアル化等が可能になる。特に、今後の増加が予想される原発の解体は高い精度が要求されるため3D解体が不可欠とみられており、同社への依頼が増えているようだ。
 
STEP4:プラント3Dマスター(3D情報のデータベース)  プラント個別設備データのクラウド化による一括管理
クラウドでプラント設備データを一括管理する事で、プラントの各現場と本社でのデータの共有管理や地図による直感的なデータ管理が可能になる。現在、同社は地図用3Dソフトの有力企業との提携の下、自社開発のクラウドシステムの構築を進めている。
 
STEP5:3D点群MAPロボット(自律行動ロボット)  自動プラント監視、情報化施工の実現
プラント3Dマスター(3D点群MAP)の利用とIoTによるロボットの自動運転で自動プラント監視や情報化施工を実現する。自動プラント監視は、3D点群MAPとSLAM技術(自己位置認識機能:ロボットが自己と周囲の位置情報を認識し自己の置かれた環境の地図を作成しながら自律的に走行する技術)を組み合わせる事で可能になる。そして、3D点群MAPに解体シミュレーションデータをプログラミングすると共にロボットに解体用のアタッチメントを装着する事でロボットによる自律的な解体施工(情報化施工)が可能になる。
 
 
吉野社長に聞く
 
プラント解体事業者にあって、ただのプラント解体事業者に非ず。吉野社長が生涯をかけて取り組んできたプラント解体ビジネスへの思いと成長戦略について、お話を伺った。
 
「つくった人には壊せない」
地球の力に逆らって堅固な構造物をつくるのが建設工事だが、解体工事は地球の力を利用する事で、安全に、早く、低コストでできる。「つくった人には壊せない」とは、つくった人には「地球の力を利用する、と言う発想がない」と言う事。言い換えると、建てるための技術に様々な工夫はしても、壊すために様々な工夫はしない。工夫とは、解体のための柔軟な発想と創造性、それを活かした技術力であり、「柔軟な発想と創造性、それを活かした技術力により地球環境に貢献します」と言う経営理念につながる。

もっとも、「つくった人には壊せない」と言うビジネスコンセプトが徐々に理解されてきたように思われる。建設会社にあるのは、ものづくりの発想であり、本当に解体の事を考えて技術を磨いていこうという発想が生まれない。このため、当社主導の解体工事は、工期、安全性において建設会社にはないものがある。
 
先ずはプラント解体事業で着実に業績拡大
3D計測 BIM・CIM、人材サービスといったプラント解体周辺分野の新規事業を育成していく考えだが、新規事業を育成するために、現場(プラント解体工事)をしっかり伸ばしていく必要がある。20%の増収・10%の増益を念頭に経営を進めているが、20%の増収としているのは、現場は工事をきちんと終わらせて、お客様にお渡しする必要があるからだ。安全性確保のため、キャパシティ以上の工事は断りながら受注を増やし(選別受注の推進)、現場を管理する人材を育てながら事業を拡大させていく。粗雑な工事をして、お客様に迷惑をかけるような事があってはならない。利益面では、現場の人材育成もそうだが、3Dの人材育成や機材整備に加え、人材サービス事業育成のための先行投資もあるため、利益の伸びが売上の伸びを下回る。16/1期(前期比25.7%の増収、同19.4%の経常増益)は過去最高の利益をあげたが、上場費用や3D関連の先行投資を吸収してのものだ。この1年間、3D機器への投資に加え、建築やプラント等の3D設計経験者を積極的に採用した。この結果、我々の3D計測 BIM・CIM 事業は既に外部から一定の評価を得られる水準にある。

経済産業省の「長期エネルギー需給見通し」(エネルギーミックス)によると、CO2の排出量が多く、コストも高い石油火力発電への依存度は2014年の10.6%から2030年の3%に低下する見込み。これに伴い、石油火力発電所の膨大な解体需要が見込まれる。当社の特許工法は大半がボイラや煙突など火力発電所の解体に関するもので、最近では、スーパーゼネコンも興味を示している。また、少し先の話になるが、ロボットを含めた3D計測 BIM・CIMとのシナジーで原発の解体にも貢献していきたい(現在、国内には48基の原発があるが、既に5基の廃炉が決まっている。運転中の原発は2基にとどまり、停止中の41基の原発も、遠からず廃炉になる原発が少なくないと見られている)。
 
注.BIM・CIM
BIM(Building Information Modeling)の略称で、コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルだが、意匠上の表現のためのモデルではなく、構造設計や設備設計情報の他、コストや仕上げ等の維持管理に必要な情報が含まれているため、あらゆる工程で情報を活用できる。CIMとは建設分野で広がっているBIMを土木分野にも広げたもの。
 
社内の勉強会から生まれた3D計測 BIM・CIM事業
3Dデータを活用する事で、プラント解体工事の効率化や安全性を向上させる事ができる。現在、当社が解体工事を手掛けているプラントは、築後50年程度経過したものが中心だが、いずれも長期間にわたる改修や経年劣化等で、現況が必ずしも当初の設計図面通りではない。このため、工事は現場責任者個々の経験に頼らざるを得ないが、3D図面を作成・活用すると、施工工程を「視える化」できるため、重機等の干渉部分や環境対策箇所の事前確認や解体シミュレーションが可能であり、関係者がこれらの情報を共有する事もできる。

3D計測 BIM・CIM事業は社内の勉強会である「卵の会」(毎週火曜日開催)での発案がきっかけだ。「現状に満足せず、明日は違った景色を見たい」と言う常に変化を求める企業風土が、この発案を生んだと考えている。長期ビジョン(売上1,000億円)では高い目標を掲げているが、3D計測 BIM・CIM事業はプラント解体工事とのシナジーが大きい事に加え、3D計測で取得する点群データは写真と異なり、点群一つ一つがデータを持っているため様々な活用が可能で、大きな可能性を秘めている。
また、数値目標の達成には3D関連のM&Aも想定している。当社においては、3Dの引き合いが増えているが、現状の3D市場は大きくない。このため、優れた技術力を持ちながら、収益的には厳しい3Dベンチャーが少なくないのではないだろうか。当社と連携すれば、技術力を活かす事ができる。3D関連のノウハウを持っている会社、何らかの仕組みを持っている会社等も連携できれば、グループ力の強化につながるだろう。

3D計測 BIM・CIM については、中期経営計画と長期ビジョンに示した計画を前倒しで進めていきたい。そして、徐々に計測から画像処理(モデリング)やソフト開発、或いはソフトを売る仕組みづくりに経営資源を集中させていく。将来、誰でも3D計測ができるようになるのであれば、その時は計測を外部に任せてもいい。また、現場については、次期中計(20/1期~22/1期)が終わる頃には、「そう言えば、昔は現場をやっていたね」と言うようになっているかも知れず、その時は違った景色が見えているかもしれない。
あまり大ぼらを吹いてもいけないが、3D計測 BIM・CIM事業は各方面からの反応が予想以上で、興味を示す企業が多い。例えば、スカイツリー(東京都墨田区)の3D図面作製(パーフェクト3D)では、高度があり難易度も高かったため、当社(本社が墨田区)に話が来た。作製した画像は自由に使う事ができるため、完成したら実績としてアピールしていきたい。
 
投資家へのメッセージ
成長力に注目してもらいたい。我々は、これからも新しい仕組みを考えていく。進歩していく事が投資家の期待に応える唯一の方法であると考えている。プラント解体工事は火力発電所の解体だけでも膨大な需要が見込まれ、当社が保有するボイラや煙突など火力発電所関連の特許工法はスーパーゼネコンも興味を示している。また、計測とモデリングをワンストップで提供できる希少性を武器に、既に国内でトップグループにある3D計測 BIM・CIMは、製鉄や電力等から具体的な案件が持ち込まれている。案件の精査が大前提だが、M&Aにも積極的に対応して事業拡大につなげていきたい。長期的には、3D点群MAPロボットで原発の解体にも貢献していきたい。
中期経営計画、長期ビジョン、共に達成には自信を持っている。趣味の写真で不評を買った一部の投資家からも、褒めてもらえるように努力していきたい。
 
 
今後の注目点
膨大な需要が見込まれるプラント解体工事は直線的な大きな伸びが期待できる事業であり、様々な可能性と事業間シナジーを有する3D計測 BIM・CIMは、非直線的な伸びが期待できる事業である。言い換えると、同社はプラント解体に特化したオンリーワン企業として高い潜在成長力を有するが、大きな可能性を秘めた3D計測 BIM・CIMのオンリーワン企業でもあり、そのリーディング企業でもある。中期経営計画と長期ビジョンにおいて高い目標を掲げているが、その達成確度を考える場合、上記の二つの顔と事業間シナジーを理解する必要がある。

尚、吉野社長の写真の腕前はプロ並みだ。2016年2月27日から3月1日にかけて東海東京フィナンシャルギャラリー・日本橋で個展が開かれたが、(株)インベストメントブリッジ代表取締役社長の廣島 武は、作品の出来栄えに感動していた。同社は「全ての終わりは美しくなければならない」と言う解体哲学の下、事業に取り組んでいるが、個展においては、オープニングセレモニーの演出も素晴らしかったと言う。社長ご自身は、ネット上での一部の投資家の指摘を気にされていたが、アンコールをリクエストしたい。