ブリッジレポート

(6890)フェローテック/山村 章社長
2005年6月1日(水)

フェローテックの決算説明会に出席しました。
福井取締役、山崎執行役員、藤井VF事業部長、山村石英事業部長、小松電子デバイス事業部長が、決算概要と業績予想、及び各セグメントの概要と見通しについて説明されました。


山村 章社長

 

2005年3月期決算概要

(単位:100万円)
 
実績
前期比
売上高
21,105
+40.7%
営業利益
1,762
+186.5%
経常利益
1,456
黒字転換
当期純利益
633
黒字転換

当社グループの業績は、年央にかけてのエレクトロニクス産業の設備投資拡大を追い風に順調に回復しました。
当決算の注目点は、会社設立以来、同社の収益源であったコンピュータシールが製品ライフサイクルの終末期を迎えて減少する中で、営業利益が前期比2.9倍弱に拡大したことです。活発な半導体・FPD(液晶・プラズマテレビ等に使われる薄型パネル)関連投資が追い風となったことも一因ですが、限界利益率が高いCMS事業の売上高が損益分岐点を超えてきたためです。


<セグメント別動向>
(単位:100万円)
   
実績
前期比
  真空シール・部品
4,214
+35.7%
  石英製品
4,300
+61.8%
  シリコン製品
1,100
+34.0
  EB-ガン・その他
1,589
+18.8
装置関連
11,203
+41.4
  コンピュータシール
1,012
-25.8%
  サーモモジュール
2,054
+30.2%
  磁性流体・その他
512
-24.7%
電子デバイス
3,577
-1.2%
受託生産
6,325
+82.9%
売上高合計
21,105
+40.7%
   
装置関連
1374
+267.4
電子デバイス
245
-48.9
受託生産
181
黒字転換
消去
-37
-
営業利益合計
1,762
+185.0

装置関連事業
主な製品は、真空シール、石英製品、シリコン製品等です。
半導体投資の回復や活発な薄型テレビ(液晶・プラズマディスプレイ)向け設備投資を受けて、これらの製造装置関連品である真空シールの売上が回復しました。
また、中国子会社への生産移管を進めてきた石英製品も、市場の活性化に加え、価格優位性のある中国製品を求める海外及び国内企業からの製品認定取得も進み販売が拡大、前年同期に比べて大幅な増収となりました。

電子デバイス事業
主な製品は、HDD(ハードディスクドライブ)の軸受け部に使われるコンピュータシール、各種温度調節等に使われるサーモモジュール等です。
サーモモジュールは自動車温調シート向けに加え、半導体やバイオ関連向けも伸びましたが、コンピュータシールの減少が響き、セグメント売上高はわずかに減少しました。コンピュータシールの減少は、FDB(流体同圧軸受け)モーターの採用が進んだことによるもので、当初から予想されており、ほぼ計画に沿ったものでした。

CMS事業
受託した他社製品の製造及びサービスの提供を行う事業です。主なものは、シリコンウエハー加工、工作機械製造、装置部品洗浄等です。
本格稼動したシリコンウエハー加工をけん引役に大幅な増収となりました。また、販路拡大により中国市場向けの工作機械製造が伸びたほか、中国へ進出したIC(集積回路)メーカー等へ営業を強化した装置部品洗浄も、認定取得が進み受注に至りました。


2006年3月期業績予想
(単位:100万円)
 
予想
前期比
売上高
22,400
+6.1%
営業利益
1,800
+2.2%
経常利益
1,500
+3.0%
当期純利益
700
+10.6%

業績予想は、「電子部品が依然として在庫調整の過程にあり、半導体及びFPD関連の設備投資も、当面、踊り場が続く見通し」との想定の下に策定されました。このため、増収・増益ながら、売上高・利益の伸びが急減速します。
尚、想定為替レートは105 円です。

一時期連日のように中国での反日デモが報道されましたが、同社の上海工場及び杭州工場周辺はデモはもちろん、特段のトラブルもなく、通常通り操業を続けることができたそうです。また、特に休日に外出を控える必要もなかったようです。一方、5月には中国事業の更なる拡大のけん引役として期待される杭州新工場が竣工しました。今期以降の業績への寄与が期待されます。

<セグメント別の予想>

(単位:100万円)
   
予想
前期比
  真空シール・部品
4,200
-0.3%
  石英製品
3,972
-7.6%
  シリコン製品
1,271
+15.5%
  EB-ガン・その他
1,807
+13.7%
装置関連
11,250
+0.4%
  コンピュータシール
158
-84.4%
  サーモモジュール
2,222
+8.2%
  磁性流体・その他
522
+2.0%
電子デバイス
2,903
-18.8%
受託生産
8,247
+30.3%
売上高合計
22,400
+6.1%
営業利益合計
1,800
+2.2%

装置関連事業
真空シール、石英製品共に事業環境は悪化しますが、真空シールは前期に実施した英国及びドイツでのM&A(合併・買収)効果に加え、相互に販売代理店契約を締結した韓国企業との提携効果(注.1)が期待できるため、ほぼ前期並みの売上高を維持できる見込みです。石英製品は、従来の火加工製品に加え、機械加工(研削)製品(注.2)の寄与が始まるため、落ち込みは比較的小幅にとどまりそうです。
また、シリコン製品はエコエネルギーとして今後の市場拡大が期待できる太陽電池向けが拡大する見込みです。

電子デバイス事業
サーモモジュールは、温調シートを採用する車種が増えていますが、いち早く採用したゼネラルモータースやフォードの高級車の販売不振が響き伸び悩み気味です。ただ、低価格車で採用する動きがある上、日本車での採用も広がっていることから、中期的な見通しは明るいと言えます。自動車の場合、本格的な採用に至るまでに時間がかかります。
ただ、今期からシートへの組付け事業もスタートします。これまでは、販売先のアメリゴン社がサーモモジュールをシートに組付けていました。このため、サーモモジュールの売上は拡大しますが、組付け事業の立ち上げで費用が先行します。
また、前期開発に成功した高性能モジュールによる、新規市場の開拓も見込まれます。例えば、超高出力レーザーやCPU・MPU(いずれもコンピュータの演算素子)等のピンポイント高効率冷却等の用途です。
コンピュータシールは製品ライフサイクルが終末期を迎えつつあり、大幅な減少が見込まれますが、磁性流体を使った動圧軸受けFFB(注.3)の供給が目前に迫っています。現在、モーターメーカーとタイアップして量産技術の開発に取り組んでいます。

CCS採用モデル(2005年4月、アメリゴン社HPから抜粋)
モデル名 メーカー
1 Linco ln Navigator SUV フォード
2 Ford Expedition SUV フォード
3 Lincoln Aviator SUV フォード
4 Lincoln LS luxury sedan フォード
5 Mercury Monterey minivan フォード
6 2006 Linco ln Zephyr luxury sedan フォード
7 Cadillac XLR roadster GM
8 Cadillac Escalade ESV SUV GM
9 Cadillac DTS GM
10 2006 Buick Lucerne entry kuxury sedan GM
11 Hyndai Equus luxury sedan 現代
12 Inf inity M45 luxury sports sedan 日産
13 Inf inity Q45 luxury sedan 日産
14 Nissan Cima lxury sedan 日産
15 Nissan Fuga mid-sized sedan 日産
16 Lexus LS 430 luxury sedan トヨタ
17 Toyota Celsior luxury sedan トヨタ

CMS事業
シリコンウエハー加工を中心に大幅な増収が見込まれます。加えて、個々の受託事業の操業度と歩留の向上により利益貢献が拡大します。
また、6月には、太陽電池用のシリコンインゴッド引き上げ装置の出荷が始まります。CMS事業ですから見込み生産ではなく、既に受注済みの製品です。売上は今期の業績に織り込まれていますが、業績予想には顧客からのオーダー全てを織り込んでいるわけではないようです。
このほか、装置部品洗浄で、SMIC、GSMC、上海NEC、上海松下など半導体メーカーからの受注が増えているほか、工作機械製造では、台湾の工作機械メーカーに対するNC旋盤のOME供給が始まります。


(注.1)真空シール製品の共同開発及び販売・修理等のサービスで5月に韓国KSM社と提携しました。

(注.2)火加工製品と機械加工(研削)製品
石英は透明度が高く、1,000℃以上の高温になっても変質したり、他のガスと反応したりしないため、半導体製造装置等に使われています。石英を必要な形状に加工して装置の一部に使うわけですが、人手によって火力で加工する方法と、機械で研削して加工する方法の二通りがあります。当初、同社はM&Aにより火加工からスタートしましたが、前期、機械加工の大手企業をスピンアウトした技術者が中心となり設立した会社を傘下に納めました。既に、米国の大手半導体メーカー2社からの認定取得に成功しています。

(注.3)FFB:フルイド・フィルム・ベアリング
同社独自の流体同圧軸受けです。現在、HDDに使われている流体同圧軸受けは、オイルを使ったものでFDBと呼ばれています。単価的にはFDBのほうが安いのですが、性能面ではFFBに軍配が上がります。例えば、ダンピング特性が優れているため(流体の持つ粘度が低いため、抵抗が少ない)、消費電力が少なくて済みます。また、流体として使っている磁性流体は、モーター磁石の磁力に引き付けられるので液漏れや飛散することがありません(オイルの場合、液漏れ・飛散のリスクが常にあります)。

また、HDDには、ディスクの回転軸を片方だけで保持する「片持ちタイプ」と軸の両端を保持する「両持ちタイプ」があります。もちろん、両持ちタイプの方が、安定性に優れ、ディスクの回転速度を上げることもできるのですが、構造が複雑になり筐体の小型化も難しくなります。また、流体同圧軸受けを考えた場合、現在の技術では、FDBは、構造上の問題から、両持ちにするとオイルが漏れてしまうため使えません。このため、HDDの流体軸受け化は、回転速度が遅くディスクの径が小さい、つまり片持ちでも問題のないノートパソコン向けから始まりました。片持ちタイプのFDBは、現在、より回転数が速く径の大きいデスクトップ向けでも採用が広がっていますが、理論上「片持ちタイプ」でも液漏れ・飛散の可能性があるため、高い信頼性が要求され、回転速度も速いサーバーやストレージシステムなどに使われるハイエンドHDDでは、現在でもボールベアリングが主流です。

同社がFFBの供給を考えているのは、このハイエンド分野です。このほか、今後期待できる分野としては、携帯電話があります。機能の高度化・多様化に伴い、フラッシュメモリーに代わって容量単価の安い小型HDDが採用される可能性が高いからです。ただ、ノートパソコンよりも遥かにハードな使用環境を考えると、両持ち構造が不可欠ですからFFB拡販のチャンスです。これまで携帯電話の分野は、市場の拡大とは裏腹に、同社にとって縁のなかった分野だけにインパクトも大きいと思われます。


取材を終えて
半導体投資などに一巡感があるだけに、これまでの同社であれば、今期はその反動で大幅な減益であったはずです。実際、今期の減益を予想するアナリストは多かったわけですから、増収・増益予想はポジティブサプライズでした。要因は、CMS事業です。CMS事業は次から次へと新規事業が立ち上がったため、先行投資が連続的に発生し、売上高が急拡大しても利益が出ませんでした。このため、アナリストの間でも、CMS事業に失望し、過小評価している方が多いようです。確かに、CMS事業は、製造業と言うよりは、サービス業に近いため、粗利率はそれほど高くないと思われます。しかし、経費の大半は固定費であり、限界利益率はかなり高いものと推測されます。表面的にはわかりにくかったものの、いつの間にか半導体投資が落ち込み、かつ、ドル箱のコンピュータシールの売上がほとんどなくなっても、18億円の営業利益を確保できる収益力が付いていたわけです。
キャッシュフローも劇的に変わります。今期のキャッシュフロー(減価償却費+当期純利益)は19.5億円が見込まれます。最近のエクイティファイナンス(株式発行を伴う資金調達)では、その都度20億円程度(2003年10月CB発行16.7億円、2005年2月公募増資20.4億円)を調達してきたわけですが、装置関連事業及び電子デバイス事業がボトムの今期でさえ、この金額をキャッシュフローで賄えるわけです。ちなみに、1株あたりの広義現金収入(EBITDA)は188円。今後の同社の活躍に期待したいと思います。

http://www.ferrotec.co.jp/

 
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