ブリッジレポート
(6890) 株式会社フェローテックホールディングス

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ブリッジレポート:(6890)フェローテック vol.20

(6890:JASDAQ) フェローテック 企業HP
山村 章 社長
山村 章 社長

【ブリッジレポート vol.20】2009年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「世界的な金余りを受けて、株や債券にとどまらず、鉱物資源や農作物など様々な商品の市場をファンドの資金が席巻した。そして、その資金の一部が・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年12月9日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フェローテック
社長
山村 章
所在地
東京都中央区京橋 1-4-14
決算期
3月
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 36,625 3,057 2,414 1,903
2007年3月 32,517 2,288 2,081 1,703
2006年3月 23,946 1,210 1,040 708
2005年3月 21,105 1,762 1,456 633
2004年3月 15,000 615 -177 -645
2003年3月 12,845 111 -626 -899
2002年3月 14,775 916 984 -357
2001年3月 16,435 2,665 2,561 1,644
2000年3月 7,988 892 629 288
株式情報(12/1現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
924円 21,678,078株 20,031百万円 9.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.0円 1.3% 74.66円 12.4倍 984.43円 0.9倍
※株価は12/1終値。発行済株式数は直近第2四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フェローテックの2009年3月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
シリコン単結晶引上装置等の太陽電池関連製品、半導体製造装置やフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)製造装置の部品、半導体材料、各種温度調節に使われるサーモモジュール等の製造・販売を行っている。目に触れる機会はないものの、パソコンや携帯電話、液晶やプラズマ等、身近な分野で同社の技術が活かされている。
もともとは磁力を持つ液体である磁性流体応用製品のメーカー。その代表例が、真空シールであり、ハードディスクドライブ等で使われていたコンピュータシールである。また、サーモモジュールは磁性流体応用製品に次ぐ収益の柱として育成していたもの。いずれもOnly Oneの製品である事はもちろん、超精密部品であるため、金属加工や表面処理等で高い技術が要求される。この技術を中国に持ち込み、現地の安価な労働力と融合させたのが、事業セグメントの一つである受託生産(CMS)事業。また、今後の市場拡大が期待できる太陽電池関連の事業にも取り組んでいる。太陽電池の材料となるシリコン単結晶の引上装置には、同社の製品である真空シールや石英製品等が主要部材として使われており、これまで蓄積してきた技術やノウハウが活かされている。
 
事業は4セグメントに分かれ、主な製品及びサービスは次の通り。

装置関連事業 (40.3%) 真空シール・部品、石英製品、半導体用シリコン製品、セラミックス、EB-ガン等
太陽電池関連事業 (21.8%) シリコン結晶製造装置、太陽電池用シリコン、石英坩堝等
電子デバイス事業 (14.7%) 磁性流体動圧軸受、サーモモジュール、磁性流体等
CMS事業 (23.3%) シリコンウェーハ加工、装置部品洗浄、工作機械製造等
 
()内は、09/3期上期売上構成比。
 
2009年3月期第2四半期決算
 
 
前年同期比9.2%の増収、同28.0%の経常増益。
半導体関連の苦戦で装置関連事業の売上が落ち込んだものの、太陽電池関連事業の売上が倍増、電子デバイス事業、CMS事業も堅調に推移した。収益性の高い太陽電池関連事業の売上構成比の上昇で売上総利益率が32.4%と2.9ポイント改善、売上増加に伴う販売費の増加やJ-SOX法対応等に伴う管理費用の増加を吸収して営業利益は同31.2%増加した。為替差損益の悪化や製品補償引当金繰入額(290百万円)など特別損失498百万円の計上、更には税負担の増加もあり、四半期純利益は同3.9%減少した。
 
セグメント別動向
装置関連事業(売上構成比40.3%)
売上高は前年同期比10.7%減の7,873百万円、営業利益は同19.6%減の844百万円(配賦不可費用控除前)。
真空シールの売上が太陽電池用各種製造装置向けに伸びたものの、半導体製造装置向けが中心の石英、シリコン、セラミックス等の売上が減少した。(石英坩堝、シリコン製品の一部は太陽電池関連事業に異動)
 
太陽電池関連事業( 同 21.8%)
売上高は前年同期比117.4%増の4,265百万円、営業利益は同216.8%増の792百万円(同)。
中国の太陽電池セルメーカからの引合いが強く、シリコン製造装置の出荷が順調に推移した他、太陽電池用シリコン製品の売上も増加。単結晶製造装置に使用される石英坩堝の販売も増加傾向にある。
 
電子デバイス事業( 同 14.7%)
売上高は前年同期比3.4%増の2,865百万円、営業利益は同115.2%増の213百万円(同)。
主力のサーモモジュールは、自動車温調シート向けが減少したものの、バイオ・医療機器向けや民生機器向けの営業強化が奏功、売上高・利益共に前年同期の実績を上回った。
 
CMS事業( 同 23.3%)
売上高は前年同期比4.3%増の4,547百万円、営業利益は同27.5%増の246百万円(同)。
シリコンウェーハ加工が若干減少したものの、装置部品洗浄及び工作機械製造等が概ね計画通り。収益性の高いシリコン結晶製造装置が太陽電池関連事業へ異動した事もあり営業利益は減少。
 
財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第2四半期末の資産合計は前期末比9,906百万円増の50,879百万円。増加要因は、中国子会社での為替ヘッジ取引に関わる両建預金(同2,676百万円増)、売上債権(同1,895百万円増)、棚卸資産(同2,017百万円増)、有形固定資産(同2,125百万円増)、無形固定資産(同706百万円増)等。これらの必要資金を、有利子負債(同6,744百万円増)、仕入債務(同1,970百万円)、及び純資産(同428百万円増)の増加で賄った。
フリーCFは、4,539百万円の赤字。営業CFが2,607百万円の黒字となったものの、中国での設備投資、M&A、定期預金の預入(2,676百万円)等で投資CFが7,146百万円の赤字となった。
 
 
 
 
2009年3月期業績予想
 
 
前期比17.4%の増収、同28.4%の経常増益予想。上期の好調を受けて、通期の業績予想を上方修正した。
太陽電池関連事業の売上が大きく伸びる他、(株)フェローテックセラミックスの連結効果(M&A効果)もあり、売上高が400億円を超える見込み。増収効果と太陽電池関連の売上構成比上昇により売上総利益率も改善、増収に伴う販売費増、J-SOX対応等管理費の計上、更には子会社の増加等による販管費の増加を吸収して、営業利益は同21.0%増加する見込み。ただ、営業外で為替差損290百万円(08/3期は237百万円)を、特別損失(800百万円)として上期計上分に加え投資有価証券評価損等を、それぞれ見込んでおり、当期純利益は同15.9%減少する見込み。
 
 
下期は、前年同期比25.2%の増収、同11.6%の経常減益予想。太陽電池関連事業をけん引役に売上が増加、売上総利益率も改善するものの、子会社の増加やJ-SOX法対応等に伴う管理費用の増加を吸収できず同3.2%の営業減益が見込まれる。セグメント別では、上期の受注好調を受けて太陽電池関連事業が前年同期比3.2倍に拡大する他、液晶関連の好調やM&A効果で装置関連事業が前年同期並の売上を維持する。一方、自動車販売の不振による自動車温調シート向けサーモモジュールの減少が見込まれる電子デバイス事業、及びウエーハ加工の苦戦や不採算受託品からの撤退を進めるCMS事業、それぞれの売上が減少する見込み。
 
(株)フェローテックセラミックス(旧 住金セラミックス・アンド・クオーツ株式会社)について
下期から(株)フェローテックセラミックスの連結業績への寄与が始まる。同社は、半導体・液晶表示装置の製造装置や一般産業機械で使われるセラミックス部品の開発・製造・販売を行なっており、高純度ファインセラミックス等の材料開発技術に強みを持つ。主要製品の一つであるマシンナブルセラミックス「ホトペール」は、熱膨張率がシリコンウェーハに近いため半導体検査冶具として市場が拡大中である。これまでは国内販売が中心だったが、今後は、フェローテックの販売チャネルを活かし、米国を中心に海外販売を拡大させていく考え。また、フェローテックの石英製品事業とのシナジーも期待できる。
尚、09/3期下期のセラミックス製品の売上高は17.9億円を予想している。夏以降の急速な半導体メーカーの投資抑制を受けて前年同期の実績(22.3億円)を下回る見込みだが、上記予想は下振れの可能性を排除した保守的なもの。実際には、19~20億円で着地できそうだ。
 
 
太陽電池関連事業の今後の展開
 
同社のシリコン製造装置の販売先は中国メーカーが大半を占めている。同社の説明によると、中国には13の単結晶シリコンメーカーがあるが、このうち本当に実力のあるメーカーはせいぜい1~2社。このため、世界的な信用の収縮による資金難から設備投資の先送りや中止を決めるメーカーが増えているが、同社はこれまでも取引先を選別して受注活動を進めてきたため、その影響は軽微であるとの事。今後は、これまで手が回らず取引が少なかった日本や欧州メーカーとの取引を拡大させていく考えだ。
また、今後、消耗品の販売や単結晶製造サポート事業の拡大も見込まれる。例えば、順調に認定の取得が進み日本、中国、韓国メーカーからの受注が増加している坩堝は、単結晶引上装置1回の稼動に付き1個を消費すると言う。つまり、年間稼動回数が200回であれば、200個が必要となる。今期末には同社の引上装置出荷累計が400台を超えるため、年間8万個(200回×400台)の需要が見込める計算だ。
単結晶製造サポート事業では、顧客オペレーターの教育支援、単結晶製造プロセス指導業務、アフターサービス契約(有償)の導入等のサービスに加え、上記の坩堝や装置用カーボン部品の製造・販売等に取り組んでいく。
 
 
取材を終えて
世界的な金余りを受けて、株や債券にとどまらず、鉱物資源や農作物など様々な商品の市場をファンドの資金が席巻した。そして、その資金の一部が最後に向かったのが、中国の太陽電池市場だった。しかし、世界的な金融不安と信用収縮の中で、米国経済の象徴であった投資銀行がほぼ全滅、質への逃避が鮮明となり、株、鉱物資源、農作物などは大幅な価格調整を強いられた。中国の太陽電池市場についても、同じような状況のようだ。
半導体投資に回復の兆しが見えない中、液晶関連の先行き不透明感が強まってきた。足下、キャンセルなどは無く出荷も順調な太陽電池関連事業も、ここ1、2年の事業の拡大ペースがあまりに急だっただけに、今後、その反動が懸念される。
もっとも、再生エネルギーの市場は更なる拡大が予想され、同社の太陽電池関連事業も単年での振れがあったとしても、中期的な成長は疑うべくも無い。また、世界的な株価下落もあり、同社の株価は既にPBR1倍割れの水準。悪材料はあらかた織り込まれたものと考える。