ブリッジレポート
(4955) アグロ カネショウ株式会社

東証1部

ブリッジレポート:(4955)アグロ カネショウ vol.1

(4955)アグロ カネショウ/櫛引社長
2001年3月21日(水) 晴れ

櫛引博敬社長

「農薬メーカー」と聞くと、正直言って地味なイメージがかなり強く、バブルがはじけたとはいえ、昨今はやりのIT関連などに比べると積極的に投資対象としようとする人は少ないかもしれません。正直言って私も取材する前は「大型商品があるとはいっても、それ以外はどうなのかな?」といった印象でした。 そんなことを思いながらアグロ カネショウを訪問しました。赤坂見附から歩いて約5分。以前のTBSの2本手前を右に入り、少ししたところに同社の入っているビルがありました。その7階の明るいオフィスで、櫛引社長、古内常務にお話を伺いました。

結論から言うと、約1時間取材をして、当初抱いていたイメージを大きく修正することとなり、一般的な情報誌を読んだだけではわからない同社の姿を知ることができました。 「自社開発の大型商品カネマイトフロアブル(年商30億円予想)とそれに次ぐ新製品の2006年上市見通し(年商20億円予想)」という大きな材料はありますが、それ以上に印象的だったのは、「顧客ニーズ最重視の姿勢」です。多くの企業も標榜していますが、同社の場合は、他社が真似することのできない独自の方法です。 同社にとっての顧客は農家であり、創業以来「常に農家のために、農家とともに」を経営理念に営業展開してきました。 1960年には、地域別の販売会社の展開に注力し、農家を担当するTCA(テクニカル・コマーシャル・アドバイザー)を全国に配置。このTCAは単なる営業マンではありません。櫛引社長によれば「アグロ カネショウは物を売るのではなく、農薬の使い方など技術を売る。」ということです。言われてみればその通りなのですが、農家は農薬(特に新製品など)をただ見せられてもわかりません。使い方、効果を理解しなければ買いません。そこでTCAは、農家を訪ね、説明会や講習会を開き、また農家の現場で展示圃を設置し、実際の効果を見せるなど、農家の立場に立って情報を提供し、農家とのより深いコミュニケーションを取るのです。TCAの大きな評価基準に「どれだけ農家に通ったか?」という項目があるのも象徴的です。 今後は各都道府県に平均2名のTCA(技術1、営業1)を配置する方針だそうです。 また、TCAには原則人事異動がありません。すべて現地採用です。これは、農薬の散布は年1回という中で3‐5年で異動していては、その地で一生を終えるのが当たり前の農家とうまくコミュニケーションがとれないからという理由ですが、これは簡単に競合他社が真似のできることではないでしょう。 1996年には業界初のAKTIS(アグロ カネショウ・トータル・インフォメーション・システム)を導入。社内間の情報共有化と、農家へのより幅広くわかりやすい情報提供を進めています。 このような顧客である農家との緊密なコミュニケーションの中から、情報を出すだけでなく、ニーズを吸い上げ、新製品を開発するケースも見られます。これも、外資を始めとした他社には、なかなか対応できない部分であり、同社の大きな強みです。

取材の中で櫛引社長が何度も強調されていたことが「農薬の必要性を一般の方々に考えてもらいたい。」とうことでした。たしかに「農薬」というと危険とか汚染とかいうイメージが先行してしまいます。社長が例に挙げたあるゴルフ場のケースも、詳細を調べることもなく「農薬が悪い。」という先入観で記事が書かれてしまっていました。(農薬散布後大雨が降り、下流の池で魚が大量に死んだが、実際は土砂の流入による酸欠で、農薬は無関係だったが、新聞には農薬が原因と伝えられた。後に訂正。) ただ、日本においては食料自給率の問題があり、また、世界的に見てもこれからアジア諸国が高所得化する過程で、「食料問題」は大きな課題となっています。こうした状況において「農薬の必要性をより多くの人に認識してもらいたい。」という想いから、昨年9月東証2部に上場しました。実は農薬メーカーの上場は40年ぶりということだそうです。40年前といえば高度成長期のさなか。当時とは環境問題に対する意識のまったく違う現在の上場には、櫛引社長の強い思いが込められていると感じました。