ブリッジレポート
(6914) オプテックスグループ株式会社

プライム

ブリッジレポート:(6914)オプテックス vol.1

(6914)オプテックス  小林 徹社長
5月1日(火)晴れ

 滋賀県大津にあるオプテックスを訪問しました。
 JR琵琶湖線膳所駅から徒歩15分。琵琶湖のほとりに本社があります。琵琶湖の素晴らしい風景が一望できる8階の社長室で、小林社長にお話を伺いました。



小林 徹社長

 

 オプテックスは1979年、小林社長が31歳のときに、3人で設立されました。大手電機メーカーで技術者として多くの製品開発に携わり、それなりの成功、実績を積み上げてきたのですが、学生時代から常に「心踊るチャレンジ」を求めていた小林社長は、現状に満足することができず、独立し同社を設立しました。

 同社の主力製品は、遠赤外線を用いた「自動ドアセンサー」や「防犯用センサー」などですが、まず遠赤外線について説明します。

 物体は内部分子の動きが活発になるにつれ、エネルギーの一部を放射。これが赤外線です。このうち、可視光から遠く波長が長いものを遠赤外線と呼びます。この遠赤外線は人体はもちろん、氷や机など温度の低いものからも放射されています。この遠赤外線を感知するのが「遠赤外線センサー」です。
 同社はまずこれを利用して、1980年に世界初の「遠赤外線利用自動ドアセンサー」を開発しました。


センサカメラ DC300
 それまでの自動ドアは、人の重さを感知するものや、電波を発してその反射で物を感知する仕組みでした。ただ、電波式の場合、設置は容易なものの、「金属には良く反応するが、人の衣服などは吸収されてしまう。」とか「床に反射してしまう。」といった誤動作が多いという欠点がありました。同社はこうした中、遠赤外線センサーの方がメリットが大きいと考えて製品化したのです。
 
 この遠赤外線利用自動ドアセンサーは、社長の予想を上回るペースで売れ、国内外でヒット。これにより、会社設立2年目にはすでに通期黒字となり1年目の赤字を埋めてしまうという順調な船出となったのです。

 

主な事業分野

防犯用製品 不審者の侵入を感知するシステムで、店舗用、家庭用など幅広く利用されています。
今後の注力分野と考えています。(詳細は後述)
売上の50%。室内用防犯センサー、世界シェア 10%でトップ
自動ドア用製品 感知式、接触式など赤外線を用いたもので、ビル、店舗をはじめ最近では工場用自動ドアセンサーも開発されています。
売上の23%。国内シェア50%、世界シェア30%でトップ。
この他にも、センサー技術を利用したものとして、非接触温度計(物体の遠赤外線により温度を計測。触らずにすむので、安全性に優れる。)や環境関連製品として透視度センサーなども手がけています。
産業機器用製品 売上構成比27%、環境関連製品 売上構成比 1%

 

抜群の信頼性をベースにした専業メーカーとしての競争力

 センサー事業は大変専門性を要求される分野です。現場により近く、つまり実際に使用する顧客の環境、状況を理解していることが不可欠です。

 例えば、雷による電磁ノイズが起きた場合、普通のテレビであれば画面がチラついたとしても特に不良品とはなりません。しかし、センサー、特にセキュリティの場合は、このノイズを「異常自体発生」と感知し誤報を流してしまうことは許されません。また、虫や動物の侵入に対し、警報を流してしまっては「信頼性」が著しく劣ることになってしまいます。
 原理的に同じモノを作ることができても、実際に使えるかどうかは別なのです。たとえ製品自体が安くても、一回誤報があり、警備員が駆けつければランニングコストが跳ね上がってしまいます。また、産業用においては、工場のラインが誤報によって止まってしまえば大きな損失が発生します。
 このようにセンサーは、その「信頼性」が大きなブランド力となる世界であり、顧客満足度を高める上で最大のポイントです。
  同社の「信頼性」がいかに高く、強い競争力を持っているかは、世界シェアトップという実績がそれを示しているといっていいでしょう。
 現在50カ国、50社以上の販売代理店によるネットワークを構築しています。

家庭用センサライト

 
セキュリティを最重点分野に

 同社は今年(2001年)から中期5ヵ年計画を進めており、2005年までに企業価値を倍にするという目標を掲げています。そして、その中で「セキュリティ」を最重点分野ととらえています。従来のセンサーにとどまらず、「安心を提供する」ソリューション型のビジネス展開を目指しています。つまり、センサーによって侵入を感知することから一歩踏み出し、侵入させない仕組みを提供しようという考えです。


防犯用セキュリティシステム
新しい取組みの一つが「画像監視システム」。デジタル技術を利用して、「待機状態から作動状態」へのタイムラグを無くして、侵入の瞬間を撮り逃すことをなくすとともに、繰り返し録画しても高画質を維持し、テープやヘッドの交換も不要として、ランニングコストを大幅に削減しています。
 また、この他にも「安心感を提供する」という視点から、様々な企業との事業構築を目指して活動しています。
 
 まずは国内市場が対象ですが、今まで積み上げた信頼性をベースに圧倒的に大きい海外マーケットでの拡大を目指します。(機械警備件数 日本100万件、米国 2400万件、英国 500万件)海外では、最近ではロシア、東ヨーロッパ、ブラジルなどが伸びており、中国も有望視されています。
 目標としては、5年間でセキュリティ分野50%の伸び、その他で30%の伸びを設定しています。

 

訪問を終えて

 「御社が現在まで成長してきたベースはなんですか?」との質問に、小林社長は、「信頼を得るために、顧客からの高度な要求に真摯に、まじめに取り組んできたこと」とお答えでした。社長を始めとした創業者の、技術者ならではの追及の姿勢が、同社を世界シェアトップの企業へと導いたのでしょう。
 しかし、中期5ヵ年計画策定にあたり、小林社長はオプテックスの現状に強い不満をもっています。ここ数年の業績がいま一つの原因として「適度な危機意識が欠如している。」との認識です。このためこの5年を「第二の創業期」と捉え、もう一度旺盛なチャレンジ精神を各自が自覚するために、組織の再編、社長自らのメッセージ伝達、など様々な行動を起しています。
 事業内容では前述のように、「安心を提供するセキュリティ」分野において、センサーという範囲にとらわれず、様々なビジネスを具体化させようと挑戦を行っています。
 確かにまだ、緒についたばかりであり、社長自信も不確定部分があることは認めています。 しかし、ここ昨今のニュースを見聞きするにつれ、「水と安全はタダ」と思ってきた日本人も「安心、安全」にお金を払う時代になっていることは確かであり、今後も益々その傾向は強まっていくと思われます。
  この高成長分野においてビジネスを具現化し、新たな成長軌道に乗るかどうかは、小林社長のベンチャー精神を全社で共有することができるかにかかっているでしょう。