ブリッジレポート
(4955) アグロ カネショウ株式会社

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ブリッジレポート:(4955)アグロ カネショウ vol.4

(4955)アグロ カネショウ/櫛引 博敬社長
3月13日(水)

東証6階の日本証券アナリスト協会会議室で行われた、アグロ カネショウの2001年12月期決算説明会に出席しました。
櫛引社長、古内常務が説明されました。

2001年12月期実績

(単位 100万円、カッコ内は前年比)
売上高
7,733
(-6.8%)
売上総利益
3,227
(-10.8%)
営業利益
242
(-63.4%)
経常利益
279
(-60.6%)
当期純利益
63
(-85.1%)



櫛引博敬社長


品目別売上では、主力のダニ剤「カネマイトフロアブル」が前年 15.3億円に対し、13.2億円と減少しました。西日本での高温、少雨のため柑橘のダニの発生が少なかったことと前年の繰り越し在庫ガあったことが主な要因でした。
また、病害防除剤「バスアミド」も競争激化、輸入農産物の増加による作付け面積減少などで売上が前年18億円から16.8億円へと減少しました。
販売管理費を見ると、人件費、その他はコスト削減から1.7億円減少したものの、委託試験費は2億円増加し合計では3000万円の増加となりました。

 

2002年12月期予想

(単位 100万円、カッコ内は前年比)
売上高
8,000
(+3.5%)
売上総利益
3,264
(+1.1%)
営業利益
58
(-76.0%)
経常利益
83
(-70.3%)
当期純利益
10
(-84.1%)

農薬市場の動向を見てみると、出荷額は2000年は3626億円と6年ぶりに増加したものの、2001年は3565億円と再び減少し、輸入農産物の増大などから今後もマーケットの減少傾向は続くと予想せざるを得ない状況です。
その中で、同社が扱う果樹野菜向け農薬市場動向においては以下の点が指摘されています。

  • 中国からの農産物輸出増大による国内農家への影響。2001年度は286万トンの野菜が輸入され、その約半分が中国から輸入されています。
  • 春先からの高温、少雨が続いており、病害虫の発生が少ない。
  • 同業他社の統合、海外農薬メーカーの直販体制の強化など競争の激化。

こうした環境下、同社では以下の2品目を新製品として上市する予定です。

  1. 水稲用除草剤「アークエース」
    自社除草剤「モゲトン」に米社剤を混合。二つの有効成分の相乗効果で初期除草剤として安定した効果。 今期7800万円、来期1億円を想定。
  2. 新害虫防除剤「アルバリン」
    果樹、野菜など幅広い適用範囲の害虫防除剤。今年4月登録の予定で今期6000万円、来期2.3億円。ピーク年商10億円を見こむ。

カネマイトフロアブル、バスアミドの販売強化と新製品の寄与で売上高は増加するものの、販売管理費において委託試験費が約2億円増加する見こみから、利益面では連続減益を予想しています。

 

将来展望

このように経営環境は厳しいものがありますが、今後の将来展望について以下のポイントをあげています。

1、トライアングル作戦
これは農家、JA、販売店、会員店(卸)との密な連携、情報交換を行っていき、パーソナルコミュニケーションによる信頼関係を強化していく作戦です。
農家にとっては「良い作物がより高く売れるように」なることが最も望むことであり、その点での顧客満足度を向上させるために営業技術普及活動に力を入れていきます。
この先頭に立つのが本社、9支店、6営業所の76名のTCA(テクニカル&コマーシャル アドバイザー)です。
「農薬を正しく理解させる」、「自然環境との調和」、「地域農業振興実践のための支援」を目的に、農家勉強会の開催、商品学習会の実施、などでコミュニケーションを図り、実際の商品に対する興味、購買意欲を起こさせる活動を続けています。

2、海外展開
カネマイトフロアブルの登録認可を海外各国で取得していきます。
前回のレポートでも報告したとおり、昨年10月、アメリカのEPA(環境庁)は、カネマイトフロアブルを「危被害軽減農薬」として認定しました。
この「危被害軽減農薬」の認定制度というのは、安全性が高いもの、緊急性が高いものと、EPAが認めた農薬は、他の登録申請中の農薬よりも優先的に登録作業を進めるというものです。
カネマイトフロアブルはダニ剤ですが、人畜、環境および有益な昆虫に悪い影響を与えない特性があり、その点が評価されて認定を受けました。
アメリカでは環境問題に対し、「現在使われているものに比べて環境に優しい製品・商品を代替物として使用していく」という認識、考え方が近年進んでいるそうです。
そうした中、同商品が「危被害軽減農薬」に認定されたということはいくつかの点で、非常に大きな意味があります。
まず第一に、優先的な登録によって、通常では4―5年かかる登録までの時間が1―1.5年に短縮されるという点で、順調に行けば2003年春までには登録が認可されると予想されます。
第二に環境問題に対する意識の強いアメリカで評価されたということで、他の国における申請にも好影響をもたらすことが予想されます。
アメリカでは今回は「花卉」を適用対象として申請していますが、本年には「食用」に適用を拡大して申請する方針です。
米国市場および平成16-17年認可予定のヨーロッパでは、それぞれ年商5~11億円を目標としています。

3、適用拡大
農薬は適用作物ごとに登録認可を得なければなりません。逆に一つの農薬の適用作物が増えればそれだけその農薬の使用量、ニーズが増えるわけです。
カネマイトフロアブルは現在の「りんご、もも、なし、なす、きゅうり、メロン、きく、カーネーション」などに加え、平成15年には「ぶどう、すもも、やまのいも」、平成16年には「あずき」を予定しています。
またバスアミドも今期は、ちんげん菜、ぶどうへと適用作物を拡大させていきます。

4、有力製品の上市見通し

  • 新規大型線虫剤「AKD-3088粒剤」
    防除が難しいといわれている、土壌内の線虫を防除するもので、カネマイトフロアブルに次ぐ自社開発による大型剤です。平成10年から登録のための試験を開始しており、平成16年に申請、平成18年末登録取得を予定しています。開発費10億円をかけるこの製品の年商は20億円に上る見通しです。
  • 新タイプダニ剤「AKD-1102」
    果樹、園芸用の新ダニ剤で、ダニに抵抗性がつきにくく商品寿命が長いのが特徴です。 平成19年ごろの登録取得を見込んでおり、これも年商20億円を見込んでいます。

 

配当政策について

同社では前期、今期と連続減益となる見込ですが、これは構造的なものではなく自社開発を進めていくための将来の投資によるものと考えています。
そのため、足元の利益動向にかかわらず安定配当を継続することが望ましいと考えており、今期も前期と同じく20円配当を継続する予定です。
ただ、それで満足することなく、開発を継続し利益成長を続けていきたいと考えています。

 

取材を終えて

足元の環境、状況は厳しい同社ですが、櫛引社長は以下の2点を強調されていました。

  1. マクロ的な環境から農薬市場の大きな拡大は期待しにくく、その中で「いかに利益をあげていくか?」が課題となりますが、そのためには利益率向上を目指し、自社開発製品の比率を引き上げていくことが最も重要です。
    そのためには、十分な研究開発の資金と時間が必要であり、投資家から見た投資効率という観点からの意見はあるものの、財務戦略としては無借金、高キャッシュポジションを継続していく考えです。
  2. 輸入野菜が急増しています。特にコストの安い中国の野菜が目立っていますが、たとえば昨年で7.5万トン輸入された枝豆などは、農薬が最も残留しやすい作物であり、実際に中国で使われている農薬は日本では認可されているものは少ないのが実状です。
    ただ単に安い作物を求めるのではなく、安全性を農家、消費者共に認識できるシステム作りを進めていくべきであり、農薬に対する「必要性」、「安全性」といった知識を消費者一人一人が身に付けていって欲しいと考えています。

櫛引社長は業界紙「農薬時報」の中でも、世界的な食料不足が深刻化する中で、飽食の日本では「無農薬=絶対善」という短絡的な思考がマスコミによって広げられていることに危惧を感じており、「必要性」、「安全性」を業界のみでなく生産者自身が消費者へ訴えることが必要であり、同社も生産者との対話、コミュニケーションの中でそうした点を生産者にお願いしていきたいとおっしゃっています。