ブリッジレポート
(9616) 株式会社共立メンテナンス

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ブリッジレポート:(9616)共立メンテナンス vol.3

(9616)共立メンテナンス 石塚晴久社長
5月24日(金)

共立メンテナンスの2002年3月期決算説明会に出席しました。

2002年3月期決算について

まず広報室長の榑松さんが決算概要について説明されました。

連結(カッコ内は前年比)
売上高
50,065百万円
(+32.2%)
営業利益
3,908百万円
(+38.2%)
経常利益
3,580百万円
(+35.4%)
当期純利益
1,822百万円
(+58.8%)


石塚 晴久社長

 

これで23期連続増収・増益(経常利益ベース)となりました。
主な要因は以下のとおりです。

  • 売上のほぼ半分を占める主力の寮事業の期初稼働率が97.79%と極めて高いものでした。これは前年比+3.5Ptとなります。
  • 前々期に日産自動車からM&Aをしたビルネット社の貢献
  • 共立エステートなど子会社の健闘。


株主還元に積極的な同社は、平成14年3月末の株主に対して1:1.3の株式分割を実施。また、1株30円の普通配当に加え東証1部指定替え記念として5円の記念配当を実施しました。
これで5期連続の増配となりました。

前期の開発実績

寮は、設備投資額44億円で、学生寮8棟(455室)、社員寮7棟(430室)、ワンルームタイプのドミール6棟(251室)など、合計1,088室増加し定員数は21,538名となりました。(前年20,537名) 長期滞在・宿泊特化のビジネスホテルは、設備投資額6.5億円で、2棟、323室を建設。全国大都市圏を中心として合計11ヶ所となりました。

部門別動向

好調な寮事業のほかには、建設事業において分譲マンション建築が寄与し増収・増益に。また、ビルメンテナンス、ビル賃貸なども売上、利益ともに前年を上回りました。
一方、リゾートホテルを手掛けるヴィラ事業は昨年9月の同時多発テロの影響を受け売上横這い、1億円の営業赤字となりました。これをきっかけに一部事業の効率化を進めました。
売上構成比で15%、74億円を占めるその他部門ですが、そのうちの外食事業は狂牛病の影響を受け苦戦しました。メニュー変更などで対応したものの5000万円程度の損失となりました。またシニア事業は現在のところ投資段階ですが、稼働率は上がってきているということで、将来の柱との位置づけは変わっていません。

 

2003年見通しと今後の事業展開
続いて石塚社長が今期見通しと今後の事業展開についてお話されました。

<連結> カッコ内は前期比売上高   
売上高
51,000百万円
(+ 1.8%)
営業利益
4,300百万円
(+10.0%)
経常利益
4,000百万円
(+11.7%)
売上高経常利益率
7.8%
(7.2%)
当期純利益
2,200百万円
(+20.7%)

<単独> カッコ内は前期比売上高   
売上高
35,900百万円
(+ 2.9%)
営業利益
3,550百万円
(+ 9.5%)
経常利益
3,300百万円
(+11.6%)
売上高経常利益率
9.2%
(8.5%)
当期純利益
1,700百万円
(+18.9%)

今期のポイント

  • 今期も期初稼働率は前年を上回る97.97%と非常に高い水準でスタートしました。同社の場合、この稼働率の水準によってその期の売上、利益が極めて高い確率で予想することができ、24期連続の増収・増益が見込まれます。
  • 売上は微増ですが、「企業の評価は売上規模でなく利益であり、それこそが社会に対する貢献である」と石塚社長は考えており、微増収の中でもしっかりと2ケタの利益成長を達成できる仕組みを作り上げているわけです。
  • その他事業に分類されていた本社外食部門を子会社・共立フーズサービスへ移行します。これは、独立した事業体として収益を上げることができる基盤ができたと判断したためです。寮における日常の食事以外(ホテル、レストラン、運営受託した食堂など)の食事業は全てこの子会社で運営することとしました。
  • 役員退職慰労引当金を廃止します。取締役に株価に対する意識を持たせ、株主に対する経営責任を明確にするとともに、業績向上意欲を高めるのが狙いです。(6月末の株主総会で承認後実施)
  • 企業ブランディングの取り組みも始めます。以前から社名と事業内容が一致しないという声もあり、社名変更を検討しましたがいまひとつこれというものがなかったそうです。そこで、ただ単に社名を変えるのではなく、同社の社会的な存在意義、ミッションなどを再度明確にした上で、ブランディングを進めていき、その中で社名変更も検討する考えです。
  • セグメント別では、全ての事業分野で赤字がなくなるのがポイントです。前述したように、ヴィラ事業は一部効率化を進め身軽にしたこと、その他事業もトータルでは黒字化すると見込んでいます。


今後の事業展開

様々な分野での「物件開発強化」に注力していく方針です。
全国を、札幌、仙台、首都圏、名古屋、大阪、福岡の各エリアに分け、駅から徒歩10分以内の好立地に遊休資産を持つオーナーに寮、ワンルームマンション、ホテルの建設を提案していきます。
現在遊休地活用は、同社のみならずマンション、ビル、駐車場など多くの企業が参入しているわけですが、同社の寮事業ビジネスには「信用の蓄積」という大きな優位性があります。
同社は現在「1,300の法人、1,400の学校」と契約、提携しておりこの顧客基盤は一朝一夕でできるものではない、最大の財産です。この既存ネットワークを利用すれば広告宣伝費をかけずに集客が可能であり、結果として高稼働率と土地オーナーに安定して高い利回りを提供することができるわけです。

同社ではワンルームタイプのドミール事業に大きな可能性を見出しています。
食事付きの寮利用者とワンルーム利用者の割合は2:8と同社は経験則上推測しており、現在の同社寮利用者数は約2万人なので、ドミールの潜在需要は約8万人と推測できます。
食事がない分付加価値は寮より低いものの、長期間の利用をオーナーに保証することで付加価値を提供することができると考えています。
現在年間2000室開発できる基盤を持っていますが、これを3000室ベースにする必要があるということです。

 

寮事業の新展開

従来は専門学校、大学が中心だった寮事業に新たな展開が始まっています。
文部科学省は「中高一貫教育」の提唱を行っています。これは受験競争が激しくなる中、中学校が高校受験の場になってしまっていることへの反省で、中高6年間一貫教育することで高校受験の弊害をなくすというものです。
これを受け、九州のある県立中学が県立高校との中高一貫教育の実施をめざして全寮制の学校運営を始めることになり、同社のその案件が持ち込まれたのです。
この学校は学力増強だけでなく、「心のエリート」を育てたいという理念を持っており、同社としてもその理念に賛同すると同時に、学生寮マーケット全体に厚みが出ること、高校段階からの認知度向上によって現在比率が高まってきている4年制大学寮の一段の拡大が期待できることなどから、このテストケースを大いに注目しているということです。

 

取材を終えて

今期も含めれば24期連続増収・増益という抜群の安定感と株主還元に積極的な姿勢は大いに注目されます。
石塚社長は今年3月のブリッジサロンで自らを「下宿屋の親父」と自己紹介し、参加した個人投資家の皆さんもその暖かいキャラクターに大いに引き付けられたようです。
今回の説明会では参加者の質問に対して全てを自分で回答するのではなく、それぞれ担当者、専門家に解説させるなど、投資家、アナリストとの対応を通じてより多くの社員に会社の運営、経営に参加させ、それによって社員、会社を成長させようという意図が見て取れました。
同社のフレーズ「ひとを包むエネルギー」そのままに、「共立メンテナンスの親父」として社員と一緒に第二創業期の同社を成長させていく姿勢が強く感じられました。