ブリッジレポート
(4955) アグロ カネショウ株式会社

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ブリッジレポート:(4955)アグロ カネショウ vol.15

(4955)アグロ カネショウ/櫛引 博敬社長
2006年3月14日(火)

 



櫛引 博敬社長

 

主に果樹や野菜向けの農薬の製造・販売をおこなっている農薬専業メーカーです。特徴としましては、農家とのダイレクトチャネルを武器とした営業体制と、売上高の約10%を毎年投じておこなう高い研究開発技術にあります。

アグロカネショウ 基本データ 基本データ

- 株式情報(2/22現在データ)-

株価

時価総額

発行済株式数

単元株数

決算年月

1株配当

950円

6,367
百万円

6,702,431株

1,000株

12月

20.00円

配当利回り

PER(連)

1株利益(連)

PBR(連)

1株株主資本(連)

ROE(連)

2.11%

55.59倍

17.09円

0.61倍

1,577.91円

1.09%

 

- 連結財務データ推移 -               (単位:百万円)

決算期

売上高

営業利益

経常利益

当期利益

2001年12月

7,733

242

279

63

2002年12月

7,792

113

150

41

2003年12月

7,322

-220

-208

-278

2004年12月

10,742

536

366

186

2005年12月

12,154

442

385

114

 

アグロカネショウの平成17年12月期決算説明会に参加しましたので、その内容をブリッジレポートにてご報告いたします。

 

― 目次 ―

     アグロカネショウの特徴について

     外部環境について

     平成17年12月期連結決算概況について

     今期(平成18年12月期)の業績予想(連結)について

     今後の期待材料について

 

○ アグロカネショウの特徴について

農作物が長年にわたって品種改良され、虫や病気に対する抵抗力が失われてきたことにより、より安全で、かつ効果のある農薬を提供する同社の使命はますます高まっております。そのため、同社では毎年売上高の約10%もの研究開発費を投入しておりますが、その費用の大半は、安全性の確認検査に当てられております。

また、「殺虫剤」との呼称を用いず、あえて害虫防除剤、病害防除剤と呼んでいることや、農家の方々とともによりおいしくより安全な農作物づくりを推進するために、従来の農家密着型営業をさらに推進する施策「トライアングル作戦」を展開していることなどを見ることで、同社の農業に対する考え方の一端が伺えると思います。

 

※「トライアングル作戦」

農家、販売店・JA、アグロカネショウの3者の相互コミュニケーションを緊密におこなうことによって、農薬を正しく理解のうえ使用してもらい、自然環境の調和を図りつつ食糧生産をおこなうことを目的とした営業技術普及活動です。

 

※農薬の開発について

農薬の開発は、農林水産省、厚生労働省、環境省などさまざまな機関がかかわり、最新の科学的審査がおこなわれます。この審査をパスするには最低2年かかります。また、そこにたどり着くにはかなりの年月と費用がかかり、農薬の開発から登録まで1剤あたり、約10年の年月と15億円の費用がかかると言われております。最終登録まで進む事ができるものはごく僅かとのことです。

農薬は、このようにさまざまな過程を経た後、初めて使用されるものであり、そのほとんどが安全性の確認に費やされます。

 

○ 外部環境について

わが国の農薬の市場は出荷ベースでは約3300億円の規模です。内訳は果樹が566億円、野菜が1105億円、水稲が1190億円となっております。規模がわかりやすいように例えて言いますと、カップラーメンの国内消費が年間33億食であり、1食あたりの平均単価を100円で計算すると、ほぼ同程度であります。

国内における農薬市場は長期に渡り減少傾向であり、平成8年度と比較しますと、金額ベースは13.9%の減少となっております。これは特に水稲の分野で大きく、反対に野菜の分野では増減はありません。従いまして、同社としましては、この野菜や果樹の分野に特化した事業展開を行なうとのことです。

 

○ 平成17年12月期 連結決算概況について

 

実績(百万円)

前年同期比(%)

売上高

12,154

13.1

営業利益

442

△17.4

経常利益

385

5.0

当期純利益

114

△38.7

 

(要 約)


売上高は、前年同期比で13.1%増の12,154百万円と、好調に推移しております。これは、土壌処理剤を中心に農薬事業が好調に推移したためです。しかしながら、連結対象子会社である三和化学工業において廃液処理費用が嵩んだ事等が起因して、前年同期比17.4%減の442百万円となっております。経常利益におきましては、為替差益がプラス要因となりましたが、特別損失として退職給付繰り入れ額を計上した結果、当期純利益におきましては、前年同期比38.7%減の114百万円となりました。

 

(ポイントの説明)

- 売上の増加要因 -

土壌処理剤「バスアビド微粒剤」、「D-D92」の販売が好調でした。

売上高の内訳について

農業事業(連結)の内訳

① 害虫防除剤 2,723百万円(2.7%増)

主力ダニ剤「カネマイトフロアブル」は前期並み。

害虫防除剤「アルバリン剤」は引き続き伸長。

脱皮阻害剤「デミリン水和剤」、生物農薬剤「チューンアップ顆粒水和剤」は需要増加

新商品「バイスロイドEW」の発売

 

② 病害防除剤 5,279百万円(9.2%増)

有機銅剤は伸び悩む。

臭化メチル代替剤として期待されている土壌処理剤「バスアミド微粒剤」、「D-D92」は、販売推進等により順調に伸長。

 

③ 除草剤 1,326百万円(△1.8%)

水田分野での全国的な高温による藻類の発生により「モゲトン粒剤」、「アークエース粒剤」は伸長。

非農耕分野での「カソロン6.7粒剤」は伸び悩む。

 

④ その他 2,167百万円(28.4%増)

海外向け「カネマイトフロアブル」「バスアミド微粒剤」「モゲトン」は輸出増。

原体バルク販売および液肥関連剤は売上増加。

その他事業(連結)の内訳

機能性化学品等の売上高は、656百万円

 

 

- 営業利益の減益要因 -

子会社である三和化学工業の廃液処理費用が嵩んだとのことです。また、おなじく子会社のKSTからの仕入れ増に伴う未実現利益が予想以上に増加したこともあげられます。

 

※三和化学工業の業績について説明します。       

(単位:百万円)

 

平成17年12月期

平成18年12月期(予)

売上高

1,138

1,285

営業利益

△71

経常利益

△65

当期純利益

△90

△9

前期17年12月期では赤字でしたが、今期予想では最終利益では△9百万円であるものの、営業利益、経常利益とも黒字転換の予想となっております。

 

また、KSTからの仕入れ増加は、土壌処理剤への旺盛な国内需要に応えるもので、前向きな在庫増であります。

 

- 経常利益の増益要因 -

営業外収益において49百万円の為替差益が発生したことがプラス要因となりました。

 

- 当期純利益の減益要因 -

退職給付繰入額66百万円を計上したためです。なお、退職給付の繰入れは前期で処理を完了したとのことです。

(参考:平成17年12月期 単体の数字)

 

実績  (百万円)

前年同期比(%)

売上高

9,702

7.7

営業利益

404

64.7

経常利益

483

84.1

当期純利益

227

46.2

 

(単体説明の要約)


土壌処理剤や原体バルクの販売増加等により、売上高は前年同期比で7.7%増となっております。また、大型新剤のネマキックの研究開発費がピークを越えたことや三和化学工業の買収費用がなくなったこと等による販売管理費の減少も貢献した結果、営業利益は64.7%増という結果になりました。

 

 

 

○ 今期(平成18年12月期)の業績予想(連結)について 

(参考:平成17年12月期 単体の数字)

 

平成18年12月期(予)

前年同期比(%)

前期実績

売上高

12,500

2.8

12,154

売上総利益

4,966

5.6

4,701

販管費

4,440

4.3

4,258

営業利益

526

18.8

442

経常利益

417

8.2

385

当期純利益

240

109.6

114

 

設備投資額

57

△77.4

252

研究開発費

1,040

4.3

997

 

(要 約)


土壌処理剤の販売および輸出の好調を予想しております。

 

・海外事業

土壌処理剤事業を積極的に展開し、「バスアミド微粒剤」「D-D92」を全世界へ向けて販売を行なうとのことです。

主力のダニ剤である「カネマイトフロアブル」については、現在のところ、韓国、台湾、アメリカ、エクアドルへ輸出をおこなっておりますが、本年度末にはヨーロッパに登録を予定しております。同社は、アメリカ向け、ヨーロッパ向けそれぞれに5~10億円程度の輸出が将来的には可能だと考えております。

海外売上高は、前期実績350百万円だったものが、今期は530百万円と予想しております。特に、アメリカや南米では、国内では使用していないバラや花類(アルストロメリア)なども大きなターゲットとなり、カネマイトフロアブルの利用範囲が広がることが期待されております。

 

・国内事業

ダゾメット剤(バスアミド微粒剤、ガスタード美粒剤)の販売・供給を積極的に展開。「D-D92」の販売も注力するとのことです。

販売にあたっては、農家密着型営業「トライアングル作戦」をさらに推進していくとの事です。これは、自然環境との調和を図りつつ農薬を正しく理解し、食糧生産活動に従事してもらうよう、「農家」「JA・会員店等」「アグロカネショウ」の3者が親密に情報交換し、需要の開拓と販売促進を図るものです。この体制としては、現在、本社のほか8支店、7営業所を全国に配置、70名のTCA(営業技術普及担当者)が各地域をカバーします。

 

・株主還元

1株につき20円を予定するとの事です。櫛引社長は、「利益は3分割し、①配当、②内部留保、③従業員への還元に、それぞれ配分すべきだ」とおっしゃっております。その観点から、現状の利益水準を鑑み、今期も20円配当を維持する予定とのことです。

 

○ 今後の期待材料

センチュウ防除剤「ネマキック粒剤」を今年1月31日に農薬登録の申請をしました。「ネマキック粒剤」は、同社の研究陣が平成元年に開発に着手し、平成2年にセンチュウに活性のある物質を見いだし、特許を申請したものです。農薬研究の分野では本格開発まで進むことができるものはごくわずかだといわれております。同社では、平成20年の販売目標を立てて、最大で年間15億円程度の売上を期待しているとのことです。

 


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