ブリッジレポート
(2468) 株式会社フュートレック

スタンダード

ブリッジレポート:(2468)フュートレック vol.3

(2468:東証マザーズ) フュートレック 企業HP
藤木 英幸 社長
藤木 英幸 社長

【ブリッジレポート】フュートレック vol.3
(取材概要)
「主力の音源事業が計画を下回りましたが、MNP商戦に対応したNTTドコモの新製品投入の遅さは我々にも予想外でした。ただ、1年程度のレンジで・・・」 続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
株式会社フュートレック
社長
藤木 英幸
所在地
大阪市淀川区西中島 6-8-31
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2006年3月 1,443 173 165 99
2005年3月 1,059 69 79 33
2004年3月 907 9 6 -1
2003年3月 736 12 12 3
2002年3月 435 17 34 29
株式情報(12/25現在データ)
株価 時価総額 発行済株式数 単元株数 決算データ年月 1株配当
219,000円 5,023百万円 22,940株 2006年3月 600.00円
配当利回り PER(連) 1株利益(連) PBR(連) 1株株主資本(連) ROE(連)
0.27% 46.55倍 4,704.36円 2.93倍 74,687.65円 7.92%
フュートレックの2007年3月期中間決算について、会社概要と共にブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
システムLSI(大規模半導体集積回路)及び半導体素子の開発・設計・製造・販売等を行っています。ただ、自社で開発・設計したLSIを製造して売るのではなく、IP化して販売しています。「IP化して販売する」とは、LSIの設計データとそのLSIを駆動させるためのソフトウエア(組込ソフトウエア)を知的財産権化して販売する事です。言わば、自社で開発したLSIの設計図を販売しているようなもので、主な販売先である半導体メーカーや携帯電話メーカー等は、この設計図を元に、携帯電話で音楽を鳴らすために必要なLSIを作ります。
IP化して売るのであれば、大規模なLSI工場を建設する必要はなく、開発・設計に経営資源を集中させる事ができます。
 
<会社理念>
社名の「フュートレック(FueTrek)」には、「携帯機器を、もっと Fun、Useful、Easy にする“キーテクノロジー”の提供」と言う経営理念が込められています。
 
 
<沿革>
2000年4月、システムLSIの設計技術やノウハウを生かした受託設計を目的に設立されました。
01年3月に携帯電話用音源IPの販売を、翌02年4月には携帯電話用3DグラフィックスIPの販売を、それぞれ開始。また、同年5月にはメモリースティックROMの製造権及び販売権を取得し、販売を開始しました。
04年4月、松下電器産業から「3D音響IP」ライセンスを受け提携、翌05年1月、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下NTTドコモ)と音源の利用許諾契約を締結しました。
また、同1月、大手予備校が実施する模試向けコンテンツをメモリーカードに書き込む業務を受託、メモリーカードサービスに参入しました。2005年12月、東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場。翌06年5月にNTTドコモと資本・業務提携契約を締結しました。これにより、NTTドコモ携帯の音源標準化のみならず、現在、音声・音響製品の共同開発に着手しております。
 
 
<事業の概要>
事業は音源事業、カード事業、受託開発事業に分かれ、2007年3月期中間決算における売上構成比は、それぞれ56.3%、15.7%、28.0%でした。
 
 
1.音源事業
携帯電話用音源LSI設計データと組込ソフトウエアの開発・設計・販売を行なっています。携帯電話用音源LSI設計データと組込ソフトウエアのパッケージを音源IPや3D音源IPとして知的財産権化して、携帯電話端末メーカーなどにライセンス販売します。
 
 
当事業の収入は、LSI設計データと組込ソフトウエアの使用許諾契約時に発生するイニシャル(初回のみ)、顧客の生産台数に応じて発生するロイヤルティ(生産1台当たり)、IPをユーザーのインターフェイスに合わせる実装設計(カスタマイズ)に伴う収益、及び音源動向の情報提供やコンテンツ作成のアドバイス等に伴うコンサルティングがあります。
 
 
2.カード事業
大学受験生向け模擬試験の英語リスニングテストで使われるメモリーカードや携帯電話のコンテンツ入りメモリーカードの書き込み事業を行っています。
 
 
(注)CPRM対応:Content Protection For Recordable Media対応、著作権保護機能対応の意味
 
3.受託開発事業
付加価値の高いセンサや携帯関連等の受託開発を行っています。もっとも、単なる受託開発ではなく、新たな商品開発の一環として行っており、アナログ信号をデジタル信号に変換するIC(バーニアADコンバータ)のデザイン等の新商品が生まれています。
 
 
<グループ>
企業グループは同社とソフトウエアの開発を行う連結子会社の(株)インストームによって構成されています。
 
2007年3月期中間決算
 
<連結>
 
前年同期は連結決算を行っておりません。
経常利益及び中間純利益は期初計画を大きく上回りました。
 
2007年3月期業績予想
 
<連結>
 
期初予想に変更はありません。減収・増益の予想です。
 
<セグメント別予想>
 
カード部門の減収要因
前期はカードを仕入れて加工(データの書込み)を行なった後に、カードの仕入れ額込みで販売しましたが、今期は前期に使用したカードを回収してデータを書き直して販売するため、売上計上されるのが加工料のみとなるからです。付加価値が減少しているわけではありません。
 
事業部門別概況
 
<音源事業>
1.市場と市場規模
携帯電話の2005年の世界出荷台数は8億1,720万台でした。日本市場は4,625万台で、世界市場の5.6%の市場規模です。
 
 
2.上期の計画と実績
 
 
2006年9月より、同社の音源IPを採用した「SH -Mobile G1」チップ及びアプリケーションプロセッサを搭載したFOMA端末の販売が始まりました。G1チップは、ドコモ音源統一化の足掛かりとなるLSIです。
ただ、モバイルナンバーポータビリティ(MNP)を控えた買い控えの影響と、新機種の発売予測時のズレ(NTTドコモの一部の新機種投入がMNP開始後になってしまった事)により、出荷台数が下期へズレ込みました。このため、売上高が計画を下回ってしまいました。
 
3.上期の分析
(1)国内販売台数
計画 4,390千台
実績 4,207千台
 
約1ヶ月の販売台数のズレが発生しました。
10月のモバイルナンバーポータビリティ(MNP)を控えた買い控えの影響と、新機種の発売が同社の予測よりも遅かったため、7、8月度の出荷台数が伸びませんでした。
ただ、買換え需要は着実に伸びていることから、下期に挽回できる見込みです。
 
 
(2)海外販売台数
計画 2,610千台
実績 1,750千台
 
5、6月に出荷を見込んでいた機種の販売不振により、同社音源搭載台数も伸び悩みました。
海外は急な方針転換や生産計画の変更が生じやすいため、今後も注意をしながら推移を見守る必要があるとの事です。
 
 
<今後の計画と見通し>
国内において、携帯電話の付加価値を向上させ、音響関係において確固たる地位を築くべく活動を加速させます。また、海外では、ソフト音源ビジネスの拡大により、海外ビジネスの更なる進展を図ります。
 
1.国内
今期中にNTTドコモの携帯電話全てに同社の音源IPが搭載され、台数が確保されます。音源を核に音響に関するIPを開発し、搭載を目指します。
 
2.海外
現在、アプローチしている海外半導体ベンダーに加え、海外端末メーカーへのアプローチを積極的に行っていく考えです。海外市場においては、プラットフォームメーカーの影響力が大きいため、そのメインプラットフォームへの同社音源IPの標準搭載を目指します。
プラットフォームメーカーとは、端末メーカーにそのマザーボードとなる基板(プラットフォーム)を供給している企業です。
 
<カード事業>
 
英語教育におけるリスニングテストの重要性や統一した条件下でのテストの必要性に対する認識の高まりから、売上は堅調に推移しています。
ただ、既に説明したように1年毎に売上高が増減するビジネスモデルであるため、カード仕入先との調整により、改善を検討中です。
 
<受託開発事業>
 
センサ分野の受託開発において、計画を上回る販売を実現しました。
また、NTTドコモとの業務・資本提携に基づく、音声・音響製品の開発に着手した他、音声、オーディオ、センサ等の用途を視野にバーニアADコンバータの開発を進めています。
 
新規IP バーニアADコンバータ
同社は技術的に難しかったアナログ信号をデジタル信号に変換する回路(下の図の赤色のA/D部)の小型化に成功しました(特許取得済み)。これにより、小型化が限界に近づいていたA/Dコンバータの更なる面積の縮小が可能になりました。新たな機能が次々に追加される携帯電話ですが、その一方で機器の小型化・薄型化も進んでいます。このため、搭載されるLSIにも小型化や多機能化、更には省電力化等が要求されています。
 
 
ADコンバータは、センサから出力されるアナログ信号を受ける部分に使われており、あらゆる機器に搭載されています。このため、市場規模は非常に大きいと見ています。例えば、自動車1台に50~60個のADコンバータが使われているそうです。
同社が開発したバーニアADコンバータは、あらゆるデジタル機器に登載が可能で、デジタル部の面積を大幅に縮小する事ができます。
 
ターゲットとする用途
音声、オーディオ、センサ等の用途を視野に開発を進めています。
 
 
開発進捗状況
開発は順調に進んでおり、現在、最終段階の全体回路設計を行っています。
 
 
取材を終えて
主力の音源事業が計画を下回りましたが、MNP商戦に対応したNTTドコモの新製品投入の遅さは我々にも予想外でした。ただ、1年程度のレンジで見れば、期初予想との大きな乖離は無いと思われます。
また、携帯電話端末の販売は、国内では通信会社が一旦買い取って、その後、エンドユーザーに販売します。しかし海外では、通信会社を通さず、他の情報通信機器と同じように各メーカーから出荷された製品は流通経路を通って(卸→小売)、エンドユーザーの手に渡ります。このため、投入した機種が不人気であれば、メーカーはすぐに生産を止めてしまうそうです。この影響を受けて、同社の上期の海外販売は計画通りに行きませんでした。
ただ、国内よりも遥かに市場規模が大きいだけに、海外展開は今後の同社の業績拡大に大きく寄与するものと思われます。バーニアADコンバータと共に、業績拡大のけん引役として、注目していきたいと思います。