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(4955) アグロ カネショウ株式会社

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ブリッジレポート:(4955)アグロ カネショウ vol.19

(4955:東証2部) アグロ カネショウ 企業HP
櫛引 博敬 社長
櫛引 博敬 社長

【ブリッジレポート】アグロ カネショウ vol.19
(取材概要)2007年9月11日掲載
「ともすると、「農薬=悪」と連想しがちですが、世界的な食糧増産の必要性が叫ばれる中で、環境との調和に配慮しつつ農作物を病気や害虫から守り、食糧・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
アグロ カネショウ株式会社
社長
櫛引 博敬
所在地
東京都港区赤坂 4-2-19
決算期
12月
業種
化学(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2006年12月 12,851 576 497 272
2005年12月 12,154 442 385 114
2004年12月 10,742 536 366 186
2003年12月 7,322 -220 -208 -278
2002年12月 7,792 113 150 41
2001年12月 7,733 242 279 63
2000年12月 8,300 662 709 423
1999年12月 7,821 642 656 224
株式情報(8/31現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
830円 6,697,058株 5,559百万円 2.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20円 2.4% 29.11円 28.5倍 1,718.88円 0.5倍
※株価は8/31終値。発行済株式数は直近中間期末の発行済株式数から自己株式を控除した株数。
 
アグロカネショウの2007年12月期中間決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
人と自然と環境にやさしい農薬づくりに取り組む農薬専業メーカー。農薬は果樹・野菜向けを主体とし、農家密着型の営業展開により他の農薬メーカーと差別化を図っています。
 
 
<グループ>
 
グループは、同社の他、連結子会社2社、非連結子会社1社で構成されています。
連結子会社は、03年に独BASF社から事業買収した土壌処理剤を取り扱う、三井物産(8031)との合弁会社「Kanesho Soil Treatment(KST)」及び04年に子会社化した染料、医薬、農薬等の受託製造・販売を行う三和化学工業(株)です。非連結子会社は、この3月に新設したグリーン カネショウ(株)があります。
 
 
<特徴>
2006年の日本における農薬の出荷金額は、約3,300億円。農薬業界には、総合化学メーカー、医薬品メーカー、外資系化学メーカー等がありますが、同社は業界唯一の農薬専業メーカーです。同社の特徴として、果樹・野菜分野に集中、農家密着型営業、海外展開の3点を挙げることができます。
同社はダニ防除用農薬に強く、99年に自社開発のダニ剤「カネマイト」(マイト:miteとは英語でダニ)の登録を取得し、海外展開もしています。加えて、03年には独BASF社から土壌処理剤事業を買収、これらが原動力となり日本国内の農薬出荷金額が漸減傾向にある中で業績拡大が続いています。
技術普及を基盤とする販売活動と新製品を創り出す研究開発に取り組む事で、2012年12月期に"単体当期純利益6億円"という中期ビジョンを持っています。
 
 
農薬の必要性
 
無農薬栽培や有機栽培といった言葉をよく耳にしますが、「農薬で病害虫や雑草の防除対策をしないと、世界の農産物の収穫量の30%以上が失われてしまう」と言われています。例えば、社団法人 日本植物防疫協会によると、農薬を使用しなかった場合の販売農作物の減収率は、水稲27.5%、麦35.7%、桃にいたっては100%との事です。また、農薬の使用は過酷な農作業からの開放にもつながり、農業を半世紀で25分の1に省力化しました。
 
 
 
成長ドライバー
 
同社は、中期ビジョン達成のための成長ドライバーとして、1.研究開発体制の強化、2.生産体制の再構築、3.農家密着型営業の強化、4.海外展開の推進を挙げています。
 
 
1.研究開発体制の強化
農薬会社が成長を続けるには、より効果が高く、安全な農薬を世に出し続ける必要があります。同社は、土壌処理剤を2003年に独BASF社より「バスアミド」及び「D-D」を買収。06年1月には自社開発剤「ネマキック」を登録申請しており、農薬登録が期待される08年以降の業績に寄与する見込み。ダニ剤については、1999年に「カネマイト」の発売を開始しており、新規ダニ剤「AKD-2136」を10年に上市すべく開発を進めています。更に、12年以降に新たなダニ剤2剤の上市を予定しています。
 
 
新しく農薬を開発するためには、上市まで最低でも10年の期間を要し、15億円以上の直接費用がかかります。06年1月に登録申請した「ネマキック」の場合、農薬登録時の安全性評価システムが大きく変わった事もあり、申請までに18年を用し、費用は15億円を超えました。2003年の食品安全基本法の制定や食品衛生法の改正により、内閣府に食品安全委員会が設置され、人畜や食品への安全性のみならず環境への影響等の安全性審査のための試験成績が今まで以上に要求されるようになり、農薬登録の取得まで更に時間がかかっています。
 
2.生産体制の再構築
生産拠点として、国内に所沢(埼玉県)、福島(福島県)、直江津(新潟県)の3工場を展開していますが、所沢工場については、周囲を住宅に囲まれて来たため、生産設備を福島工場に移転します。また、老朽化している研究設備も改築することで強化していきます。
 
3.農家密着型営業の強化
同社の営業の特徴は、農家密着型の営業です。本社の他、6支店、11営業所を全国に配置し、総勢70名のTCA(営業技術普及担当)が担当地域をカバーしています。 TCAは会員店、農協、小売店とのコミュニケーションを密にし、農家に出向いてデモンストレーションを行うなど、現場への普及活動を積極的に行い、販売店への注文につなげる営業体制を構築しています。
 
 
一般の農薬メーカーは、メーカーを起点とする川上から川下への商品を流し込むプッシュ型の販売方法を取っていますが、同社は、「トライアングル作戦」(同社、農家、そして販売に当たる会員店・販売店・JA等代理店の3者のコミュニケーションを密にして情報を共有)により、農家を起点として需要を汲みだすプル型の営業体制を構築しています。
 
 
 
4.海外展開の推進
海外においては、「カネマイト」の拡販に努めています。世界のダニ剤市場は、2004年で約600億円、「カネマイト」のシェアは4%(第7位)です。2007年12月期の海外売上高は753百万円を計画しています。海外での販売は、国によって農薬登録制度が異なるため、国毎での登録が必要です。「カネマイト」は、1999年4月に韓国で登録され、2004年7月にはアメリカでも食用作物に登録する事ができました。
また、EUでは原体登録を08年に取得予定で、製品登録は、06年12月にオーストリアで食用作物に、07年6月に花卉用としてオランダで登録を得ています。全世界14ヶ国で既に登録を取得しており、更に14ヶ国で登録を取得する計画です。
 
 
2007年12月期中間決算
 
<連結>
 
 
8月3日に業績予想を上方修正しており、修正値に沿った着地となりました。 土壌処理剤「バスアミド」及び「D-D」の売上が伸びた他、「カネマイト」の海外販売が好調に推移しました。ただ、研究開発費や海外での農薬登録維持費用等の増加による販管費の増加で営業利益は前年同期比1.6%の増加にとどまりました。経常利益も同4.9%の増加にとどまったものの、特別損失の減少(前年同期は過年度損益修正損等31百万円を計上)により中間純利益は同13.2%増加しました。設備投資は46百万円(前年同期は64百万円)、研究開発費は492百万円(同314百万円)でした。
 
*中間業績予想の修正
 
 
海外子会社の欧州地区での売上増加、収益性の高い製品が上期に前倒しとなった事、及び当初見込んでいた試験研究費が下期にずれ込んだ事等が修正の理由です。
 
2007年12月期決算
 
<連結>
 
 
農薬の上期の売上は通期の売上の6割程度であるため、通期の業績予想に変更はありません。しかし、研究開発費や海外での農薬の登録維持費用等の増加で増収ながら、減益となる見込みです。
 
<製品別売上高の推移>
 
 
<販管費の推移>
 
 
取材を終えて
ともすると、「農薬=悪」と連想しがちですが、世界的な食糧増産の必要性が叫ばれる中で、環境との調和に配慮しつつ農作物を病気や害虫から守り、食糧増産を進めるために農薬は必要不可欠な存在と言えます。 通期の業績予想は据え置かれましたが、過去数年間の営業利益の推移を見ると、04/12期が5.3億円、05/12期が4.4億円、06/12期が5.7億円、そして今07/12期が4.4億円です。このサイクルに従えば、来期の営業利益は5.9億円程度になりそうです。天候や為替の影響を受ける同社の業績ですが、土壌処理剤「バスアミド」及び「D-D」の販売好調に加え、欧州でのカネマイトの登録が進むなど海外展開も順調なようですから期待したいと思います。