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(8860) フジ住宅株式会社

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ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.12

(8860:東証1部,大証1部) フジ住宅 企業HP
今井 光郎 社長
今井 光郎 社長

【ブリッジレポート】フジ住宅 vol.12
(取材概要)2007年11月13日掲載
「地価の上昇や物件取得競争の激化により事業用地の仕入れに厳しさが増している事に加え、住宅ローン金利の先行きも不透明な状況となってきました。過去の経験・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
フジ住宅株式会社
社長
今井 光郎
所在地
大阪府岸和田市土生町1丁目4番23号
決算期
3月
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年3月 52,221 4,233 4,090 911
2006年3月 41,333 3,229 3,196 1,312
2005年3月 43,954 3,208 2,799 1,661
2004年3月 34,387 2,034 1,891 684
2003年3月 32,905 1,198 1,028 545
2002年3月 33,419 899 692 297
2001年3月 31,433 2,928 2,681 1,503
2000年3月 34,268 1,596 1,117 -2,237
株式情報(11/1現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
383円 36,612,765株 14,023百万円 6.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
17円 4.4% 56.54円 6.8倍 400.38円 1.0倍
※株価は11/1終値。
 
フジ住宅の2008年3月期中間決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
地盤である大阪府下を中心に戸建分譲等、住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~200戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴があります。この他、戸建分譲のノウハウを活かした中古住宅の改装販売や金融機関とタイアップした土地有効活用事業等も手掛けており、建築の設計管理・請負、及び賃貸管理を手がける連結子会社2社で企業グループを形成しています。
 
<事業概要>
現在の事業は、「分譲住宅事業(戸建・マンション)」、「土地有効活用事業(建築請負)」、「賃貸及び管理事業」、「不動産ファンド等向け賃貸マンション販売事業」、「中古住宅の販売及び仲介事業」に分かれます。
 
1.分譲住宅事業(戸建・マンション)
用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築しています。既に説明したとおり、「自由設計方式」と「街づくり」が特徴です。マンション事業については、地価上昇に伴う事業リスクの高まりを受けて5年前に撤退し、地価上昇の影響が少ない郊外の戸建分譲に注力すると共に、営業エリアを大阪府下全域と兵庫県南部へ拡大しました。
 
2.土地有効活用事業(建築請負)
対象顧客は既契約者、金融機関や既契約者からの紹介による土地所有者で、賃貸管理と分譲住宅事業のノウハウを活かして、美観性が高く、居住性に優れた木造賃貸アパート「フジパレス」、「エンフィールド」、RC造賃貸マンション「エフ・コンスパイヤー」、さらには2006年1月に木造賃貸住宅「フジパレス戸建」を商品化し、事業を展開しています。単なる建築請負ではなく、サブリースを前提とした土地所有者との運命共同事業として、徹底した市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の建物の運営管理までのトータルルサポートシステムを顧客個々の状況に合わせた「安定・安全・安心」の事業として提案しています。
 
3.賃貸及び管理事業
賃貸マンションの建物管理や入居者募集、賃料回収、事務等の管理業務及び分譲マンションの管理組合からの運営受託等を、100%出資子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けています。安定収益となるばかりでなく、事業のノウハウが土地有効活用事業や不動産投資ファンド等向け賃貸マンションの販売及び分譲マンションの事業促進に役立っています。
 
4.不動産ファンド等向け賃貸マンション販売事業
分譲住宅事業、土地有効活用事業、賃貸及び管理事業等で培ってきたノウハウを生かした事業で、不動産ファンドや個人富裕層を対象としています。不動産ファンド向けは、建物の完成時点での引渡しだけでなく、新築物件を一定期間保有し、稼動実績を付けた販売をします。個人富裕層向けには、1棟3億円前後の小ぶりの賃貸マンションを販売しています。ただ、不動産ファンド向けは、地価上昇を受けて、2005年秋以降、土地の仕入を行っておらず、地価が調整されるまで新たな仕入れを行わない考えです。継続的に拡大を図る事業と言うよりも、需要動向を見ながら、臨機応変に対応していく事業です。
 
5.中古住宅の販売及び仲介事業
中古住宅再生事業としての手法を確立している改装付中古住宅「快造くん」が人気を博しています。地域密着型の営業による交差点単位での地域情報とその分析による物件の鑑定力、仕入、販売価格の査定の速度と正確性及びリフォームのマニュアル化による独自のノウハウが強みです。また、06年2月に新業態の中古住宅を中心とする豊富で鮮度の高い住まい探しの情報拠点として「お・う・ち・館」を開設。物件情報の提供のみならず住宅ローン及び持家の売却相談や無料査定に至るまで、専門のアドバイザーによるコンサルティングスペースとして提供しています。
 
2008年3月期中間決算
 
<連結>
 
今期は都心部の地価高騰を踏まえて安全運転に徹する一方、人材の育成に力を入れています。このため、当初から減収・減益を予想していましたが、予想は慎重になり過ぎたようです。
 
「快造くん」のブランドで展開している中古住宅再生事業が販売戸数、利益率共に予想以上に推移した他、不動産ファンド等向け賃貸マンション事業及び土地有効活用事業において引渡しが前倒しとなった物件もありました。
加えて、2010年3月期までに販管費を中心に10億円の経費削減目標を設定していましたが、この中間期に全社的な固定経費削減が前倒しで進められました。前期に新卒定期採用を開始し第一期生24名を採用、そして今期は55名が入社しており、早期の戦力化に向けた先行投資が必要となります。このため、販管費の増加が避けられないところでしたが、上記のコスト削減により前年同期比2.5%の増加にとどまりました。
尚、税効果会計の影響により中間純利益が経常利益を上回りました。具体的には、バブル期に2,378百万円で取得した大阪府熊取町の固定資産の土地(過年度に2,274百万円の減損処理済みで簿価104百万円)の売却が決定し、改めて94百万円の特別損失が発生しますが、通期で税務上の損失が実現し、税効果会計の適用により、当期純利益が925百万円増加する見通しとなったためです。
 
<事業別動向>
事業別売上高は次の通りです。
 
 
1.不動産販売事業  売上高16,780百万円(前年同期比9.9%増)、営業利益1,391百万円(同20.2%増)
(1)戸建住宅
受注契約高は11,846百万円(同2.5%減)、引渡し戸数は339戸(前年同期374戸)、売上高は11,839百万円(同4.1%減)となりました。尚、この中間期に販売を開始した「ジーズランド光明池」(和泉市・全183戸)の受注契約戸数が129戸となり、既に70%の契約を終えています。
 
(2)中古住宅(中古住宅再生事業「快造くん」)
堺市方面への事業拡大により引渡し戸数が212戸となり前年同期159戸から大幅に増加、1戸当たりの粗利益率が当初予想を1.5ポイント上回りました。
 
(3)不動産投資ファンド等向け賃貸マンション
個人富裕層向け一棟売り賃貸マンション4棟の引渡しを行ないました。
 
土地有効活用事業  売上高496百万円(同82.1%減)、営業損失294百万円(同613百万円減)
前期の受注不振が響き、引渡し件数が8件にとどまりました。ただ、営業体制及び銀行等紹介機関の整備・強化が奏功、受注契約高が2,144百万円と同1,867百万円の大幅な増加となりました。前年同期は、1,485百万円の受注契約高を計上したものの、大型案件の解約が重なったため受注契約高の純額は277百万円にとどまりました。
同事業は銀行からの紹介案件が中心ですが、金利先高感から銀行側の腰が引けているような状態でした。このため、改めて銀行への営業を強化した結果、潜在需要が顕在化したわけです。当期下半期以降の受注増を受けて、下半期の引渡しは16件に増加、売上高1,766百万円を予定しています。
 
賃貸及び管理事業  売上高3,030百万円(同11.6%増)、営業利益226百万円(同25.9%増)
土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件の取扱い件数が増加、稼働率の向上及び管理諸経費の削減もあり、利益も高い伸びとなりました。
 
その他事業セグメント  売上高101百万円(同9.8%減)、営業損失9百万円(同12百万円減)
事務体制の効率化による諸経費の削減を実施いたしましたが、中古住宅の仲介が33件(前年同期49件)の成約にとどまり、仲介手数料収入及び事務手数料収入が減少しました。
 
<財政状態>
 
積極的な仕入れにより、たな卸資産が増加しました。分譲用地の主な仕入れは、大阪府和泉市(208戸分)、同 河南町(183戸)、同 八尾市(83戸)等です。 また、遊休土地(大阪府泉南郡熊取町)の譲渡に伴い、土地が前年同期比で減少しています(前期末に減損処理しているため、期末比では微減)。 一方、仕入れの資金を長短借入金で賄いました。純資産は前期末比6.4%増の146億58百万円、自己資本比率は27.4%と同0.4ポイント上昇しました。
 
2008年3月期業績予想
 
<連結>
 
大幅な減収・減益は避けられません。しかし、中古住宅再生事業「快造くん」の利益率の向上やコスト削減の進展、更には、固定資産の売却に伴う法人税等調整額の戻し入れの発生等で、期初予想を大幅に上回る見込みです。
 
<事業別売上高予想>
 
取材を終えて
地価の上昇や物件取得競争の激化により事業用地の仕入れに厳しさが増している事に加え、住宅ローン金利の先行きも不透明な状況となってきました。過去の経験から言って、こうした環境下での無理な拡大策は賢明ではありません。一旦は踊り場を作って、急な業績拡大で伸びきった兵站を整える事が次のステップにつながります。こうした観点から、今期は無理な拡大策はとらず、人材の育成など組織力の強化・充実に重点を置いています。このため、前期の最高益更新から一転して、大幅な減益となる見込みですが、長期的には正しい決断であり、また、事業環境の悪化を顧みず、無理な業績予想を発表して後で下方修正するよりも、と言った感もあります。しかし、当然と言えば、当然ですが、業績予想の発表を受けて株価は大きく下落しました。同社は業績悪化にも拘らず従来通りこの中間期も機関投資家向け決算説明会に加え、札幌・東京・名古屋・大阪・広島・福岡で合計8回、2,702名を対象とした個人投資家向け会社説明会を実施。会社側の考えを伝え、投資家の意見に耳を方向け、甘んじて批判にさらされてきました。株価の下落により株主の皆さんが受けた心痛は察するに余りありますが、事業環境を踏まえた業績予想に関する判断の妥当性、及び株価下落に対応した真摯な姿勢には共感を覚えます。 ところで、ブリッジレポートの読者の皆さんは、同社が株主アンケートの回答者に対して「スダチ1㎏」をプレゼントしているのをご存知ですか。実質的な株主還元として個人株主の皆さんに好評なようです。実は、株主ではありませんが、私もおすそ分けに預かりました。さわやかな酸味が焼き魚や肉料理とよく合いましたが、酸っぱさの中にある"ほのかな甘み"がおいしさのポイント。マネジメント同様、なかなかいい味を出していました。