ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.3

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート】日本エンタープライズ vol.3
(取材概要)2008年2月12日掲載
「薄利多売をせず、しっかりと利益を上げながら売上を増やしていくのが同社ビジネスの特徴です。しかし、主力の音楽分野は、競争激化によりコンテンツを・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(1/29現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
9,750円 377,000株 3,676百万円 18.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
200円 2.1% 702.92円 13.9倍 6,812.62円 1.4倍
※株価は1/29終値。
 
日本エンタープライズの2008年5月期中間決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
モバイルコンテンツ事業を展開しています。音楽やゲーム・動画などのコンテンツを制作し携帯等を通じて配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営や業務効率化のためのシステム構築等を手掛けるソリューションが2本柱です。
また、海外展開にも力を入れており、特に中国においては子会社を設立して、現地有力企業との提携によるコンテンツ配信など多角的に事業を進めています。
 
<沿革>
1989年にパソコンの販売、及びソフトウェアの開発・販売を目的として設立され、その後、携帯電話やPHSの販売、携帯電話向けコンテンツ制作へと展開し業容を拡大。2001年2月にナスダック・ジャパン(現ヘラクレス)へ、2007年7月に東証2部へ株式を上場しました。
 
<事業内容>
事業は、自らコンテンツを作り配信するコンテンツサービス事業と他社のモバイルサイトのコンサルティング、構築運用、ユーザーサポート、サウンド制作等のソリューション事業に分かれます。
 
コンテンツサービス事業
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイ、CLUB AIR-EDGEといったインターネット接続可能な携帯電話の公式サイトにコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリアから受取っています。同社の代表的なコンテンツとしては、「うた&メロ取り放題」、「@LOUNGE RECORDS」といった音楽系コンテンツ、総合ゲームコンテンツ「最強!GAME王国」及び総合デコレーションメールコンテンツ「デコデコメール」などの公式コンテンツがあります。
 
ソリューション事業
自社コンテンツを提供しているコンテンツサービスとは違い、ソリューションでは他社コンテンツの制作・運営(ソリューションコンテンツ)、企業の業務効率化に役立つシステムの構築(ソリューション)、広告、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提案しています。
 
2008年5月期中間決算
 
<第2四半期のトピックス>
コンテンツサービス
着うたサイト「うた&メロ取り放題」の退会防止対策の実施や着うたフルサイト「@LOUNGE RECORDS」のプロモーションの推進により、音楽分野のてこ入れを図りました。
 
ソリューション
ソリューション :GYRE等の大型案件を推進。店頭アフェリエイトの
  契約店舗数・成約数が拡大
ソリューションコンテンツ :大手クライアントからの受注が継続・拡大
広告 :公式サイトの広告枠の受注が拡大した他、一般サイトも拡大
物販 :レーベル化に伴うCD販売好調
 
海外
電子書籍の大量生産体制の構築や食品・医薬品の安全情報の提供スキーム構築(CCTVと提携)を推進した他、教育機関との連携を強化しました。また、今後の事業拡大を見据え中国子会社のオフィスを移転しました。
 
<連結業績>
 
 
減収・減益となりました。
 
音楽分野の苦戦が響き売上高が減少したものの、利益率の良いソリューション案件の受注に成功した事や提供するコンテンツの権利を自社で保有する独自のビジネスモデルの強化により売上総利益率が62.0%と前年同期に比べて3.7ポイント上昇した事で前年同期並みの売上総利益を確保しましたが、広告宣伝費や人件費の増加により販管費が増加したため、営業利益は前年同期比24.0%減少しました。
尚、営業外費用に東証2部上場費用17百万円を計上しました。
 
<セグメント別動向>
コンテンツサービス
画像やツールが増加したものの、音楽やゲームの減少が響き、前年同期比20.7%の減収となりました。
 
ソリューション
企業向け大型案件に加え、広告売上や物販等が増加した事で、売上高は同11.6%増加しました。
 
<業績予想の修正>
 
 
次の理由により、中間期の実績が期初予想を下回った他、通期の予想を引き下げました。
 
コンテンツサービス
着うたフルサイトの会員拡大が遅れている事に加え、ゲームサイトの利用が予想を下回りました。
着うたフルサイト、ゲームサイト、デコメールサイト等の各サイトで回復に向けた施策を講じていますが、効果が現れるのは、来期以降になる見込みです。
 
ソリューション
企業向けソリューション案件の一部で遅延が発生しました。サポートセンターの再構築を行っている事もあり、中間期の遅れを取り戻せない見込みです。
<四半期売上高の推移>
 
 
大型案件の寄与に加え、広告・物販の売上が増加した事でソリューションの売上高は四半期ベースで過去最高となりました。
 
<コンテンツサービス売上高推移>
 
 
主力の音楽やゲームの苦戦が響きました。キャリア別の売上構成比は、KDDIの比率が低下する一方、ソフトバンクモバイルやNTTドコモの構成比が上昇。全体の顧客バランスが良化しました。
 
<ソリューション売上高推移>
 
 
国内事業の概況と今業績の展開
 
<コンテンツサービス>
1.モバイルコンテンツビジネスの変遷
 
 
当初は単一機能で利用されていたコンテンツですが、技術の進歩によりリッチ化が進み、現在、様々なコンテンツが連携・統合されて利用される多様化の時代を迎えています。
このため、有料コンテンツや有料サービスの利用率の高い顧客にターゲットを絞り、様々なコンテンツを連携させて提供していく考えです。言い換えると、コンテンツの横展開によるユーザーの深堀です。
 
2.公式サイトでの事業展開
これまで同社は、キャリアの公式サイトを中心にコンテンツの提供を行ってきました。しかし、公式サイトの優れている点は信用力や回収力ですが、昨今、市場の成熟化や競争激化、更には、検索機能の強化や一般サイトの台頭により集客力が低下しています。このため、同社では成長性の高いカテゴリに注力すると共に、「カルチャー」と「ブランド」をキーワードにコンテンツをシームレス化していく考えです。その他、CD販売によるリアルプロモーションに代表されるリアルとの連動、或いは一般サイトへの本格的参入等も考えています。
 
(1)成長性の高いカテゴリへの注力
現在、展開している「@LOUNGE RECORDS」の横展開、CDレーベル展開によるリアルプロモーションの強化、及び異業種とのコラボレーションを進めます。また、携帯アレンジサービスの「まとめて☆チェンジ」において、新規調達や自社素材の収集によりコンテンツラインアップの拡充を図ると共に、リッチ化への対応や新しいサイトの立上げに取り組んでいく考えです。
 
 
(2)物販(レーベル事業)
楽曲の原盤を保有する強みを活かして、リアルとの連動を進めます。カバー楽曲を集めたCD「@LOUNGE RECORDS」の第1弾は販売枚数が14,000枚を突破。1月16日には第2弾を発売、3月には第3弾のリリースが予定されています。
 
 
今後は、CD購入者特典、特定販路との連携による特典、回収代行決済への対応等、公式サイトとの連携を強化して公式サイトの集客力アップにつなげていく考えです。
 
 
(3)広告(一般サイト)
一般サイトをキャリアメニューに依存しない新たな収益源として育成していく考えです。一般サイトは、直近3年間で利用率が急進しており、閲覧量は既に公式サイトを上回っています。
 
 
これまで同社は、一般サイトへの対応を慎重に進めてきましたが、マーケット規模が拡大してきた事から対応を本格化させていく考えです。オールラウンドの幅広い年齢層を対象とし、コンテンツの2次利用による「ポータル化」や「ユーザビリティ」の向上に努め、公式サイトへの誘引を図ります。
 
<ソリューション>
1.概況
(1)新規顧客の開拓及び既存顧客との取引拡大
表参道(東京都渋谷区)に展開する新商業施設「GYRE(ジャイル)」のオフィシャルモバイルサイトの企画・設計、及びシステム構築を受注した他、既存大手クライアントからの受注が拡大しました。
 
(2)トヨタ関係
案件の大型化・高度化に比例して、企画立案から納品までの期間が長期化しています。
 
(3)サポートセンター
サポート、デバッグ・検証、サウンド制作業務等の効率化に取り組んでいます。採算性向上を最優先課題とし、案件の見直しも進めています。
 
(4)子会社「キャンティック」の設立
店頭キャンペーンの企画立案を中心に、専門スタッフによる業務支援、人材育成など、企業の販売促進活動の支援事業を行なう(株)キャンティックを設立しました。
 
(5)店頭アフェリエイトの拡大
携帯電話ショップの新たな収入源として認知度が向上しており、契約件数の拡大が続いています。また、自社でも積極的にコンテンツ販売を進めるべく、直営のリアル店舗「M's station渋谷センター街店」をオープンしました。
 
2.今後の受託領域
販促の場となりつつある携帯電話ショップを、ケータイ世代へのマーケティング拠点として効果的に利用していく考えです。例えば、携帯電話ショップは、証券や保険等の加入を伴うサービス、各種チケットや旅行予約等のデジタルコンテンツに近い商材、求人情報や住宅情報等の実質的な購入場所として期待できます。
 
 
海外事業の概況と今後の展開
 
<中国の携帯電話市場の動向>
1.携帯電話契約件数
07年12月と予想されていた520万件を9月に突破する(情報産業部の調査)等、中国の携帯電話契約数は当初の予想を上回る速度で拡大が続いています。
 
 
2.3G規格「TD-SCDMA」
10都市で建設が進められているテストネットワークのうち、河北省秦皇島市、福建省アモイ市、広東省広州市の4都市で建設が完了しました。現在、ネットワーク最適化作業が進められており、秦皇島市では1月末にも完了する予定です。ただ、本格的なサービス開始には時間がかかる見込みです。
 
<中国モバイルコンテンツ事業>
中国子会社を経済特区に移転して事業の基盤固めに取り組んだ他、食品・医薬品の安全情報提供、教育事業を進めました。
 
1.中国子会社の移転
メリットを享受するべく子会社を経済特区に移転し、電子書籍等の大量生産が可能なデジタル化ファクトリーの構築を進めた他、豊田通商との合弁会社「瑞思豊通」を設立しました。
 
2.食品・医薬品の安全情報提供
CCTV(中国中央電視台:中国の国営テレビ局)と瑞思放送(北京)数字信息科技有限公司の協業により、食品・医薬品の安全情報の提供スキームの構築を進めました。
 
3.教育事業
モバイルコンテンツの技術者養成を目的に、現地の大学等と提携して教育事業を展開しています。
 
 
今後は、短期コースのバリエーションを拡充して、社会人を対象にしたカリキュラム開発、3G対応学部の新設の支援、更には、国際的な産学連携の高大一貫教育プロジェクトの推進等に取り組んでいく考えです。
 
2008年5月期業績予想
 
<連結>
 
 
業績予想を修正しました。音楽やゲームの苦戦等で減収が予想されますが、来期以降の成長を見据えて先行投資を続けていく考えです。
 
具体的には、ソリューションの好調により売上総利益率は前期の55.7%から58.5%に2.8ポイント上昇するものの、コンテンツサービスにおける音楽やゲームの苦戦で売上高の減少が見込まれるため、売上総利益も19億円と前期比7.2%減少する見込みです。
一方、着うたフルサイト「@LOUNGE RECORDS」のプロモーションや検索対応の強化に加え、店頭アフェリエイト事業や中国事業の基盤整備等を進めるため、広告宣伝費を中心に販管費が14億円と同9.9%増加する見込みです。
この結果、営業利益は498百万円と同35.7%の減少が見込まれます。
 
取材を終えて
薄利多売をせず、しっかりと利益を上げながら売上を増やしていくのが同社ビジネスの特徴です。しかし、主力の音楽分野は、競争激化によりコンテンツを提供する各社が薄利を余儀なくされている状態です。このため、原盤保有の強みを活かしたレーベル事業の展開等によりシナジーを高めていく他、広告宣伝の強化等で販促を図っていく考えです。また、中期的な成長を考えた場合、既存事業の強化と共に店頭アフェリエイト事業や中国事業の育成等で収益源の多様化を図っていく必要もあります。
2005年5月期から2007年5月期にかけて高い成長が続きましたが、一旦は立ち止まって今一度足元を固める時期にきているようです。