ブリッジレポート
(4829) 日本エンタープライズ株式会社

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ブリッジレポート:(4829)日本エンタープライズ vol.4

(4829:東証2部) 日本エンタープライズ 企業HP
植田 勝典社長
植田 勝典社長

【ブリッジレポート】日本エンタープライズ vol.4
(取材概要)2008年4月22日掲載
「ソリューションが伸びましたが、売上ボリュームの大きいコンテンツの苦戦を補う事ができませんでした。同社は07/5期にかけて5期連続の増収・増益を・・」続きは本文をご覧ください。
企業基本情報
企業名
日本エンタープライズ株式会社
社長
植田 勝典
所在地
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-8
決算期
5月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2007年5月 3,677 774 783 447
2006年5月 3,416 694 688 418
2005年5月 3,018 587 570 348
2004年5月 1,958 205 168 226
2003年5月 1,752 134 131 58
2002年5月 1,704 51 53 23
2001年5月 1,417 301 262 126
株式情報(4/10現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
9,460円 377,000株 3,566百万円 18.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
200円 2.1% 702.92円 13.5倍 7,092.29円 1.3倍
※株価は4/10終値。
 
日本エンタープライズの2008年5月期第3四半期について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
会社概要
 
モバイルコンテンツ事業を展開しています。音楽やゲーム・動画などのコンテンツを制作し携帯等を通じて配信するコンテンツサービスと、企業のコンテンツ制作・運営や業務効率化のためのシステム構築等を手掛けるソリューションが2本柱です。また、海外展開にも力を入れており、特に中国においては子会社を設立して、現地有力企業との提携によるコンテンツ配信など多角的に事業を進めています。
 
コンテンツサービス事業
携帯電話等のキャリア(移動体通信事業者)が運営するi-mode、EZweb、Yahoo!ケータイ、CLUB AIR-EDGEといったインターネット接続可能な携帯電話の公式サイトにコンテンツを提供し、月額課金あるいはダウンロード課金制により、その代金をキャリアから受取っています。同社の代表的なコンテンツとしては、「うた&メロ取り放題」、「@LOUNGE RECORDS」といった音楽系コンテンツ、総合ゲームコンテンツ「最強!GAME王国」及び総合デコレーションメールコンテンツ「デコデコメール」などの公式コンテンツがあります。
 
ソリューション事業
自社コンテンツを提供しているコンテンツサービスとは違い、ソリューションでは他社コンテンツの制作・運営(ソリューションコンテンツ)、企業の業務効率化に役立つシステムの構築(ソリューション)、広告、及び物販等を行っており、携帯電話はもちろん、パソコン等のあらゆるメディアに対応したソリューションを提案しています。
 
2008年5月期第3四半期業績
 
<ハイライト>
コンテンツ事業においては、集客力の拡大と主力分野である音楽の強化に努めました。ソリューション事業においては、大手クライアントからの受注が継続的に拡大した他、中国との連携による電子書籍や店頭アフェリエイト等も拡大。案件の精査等で、サポートセンターの利益率も改善しました。
また、海外事業では、日本との連携による中国でのコンテンツ制作が拡大した他、教育事業や本格的な3G時代に向けた準備を進めました。
 
 
<連結業績>
 
 
ソリューション事業が伸びたものの、音楽系コンテンツの苦戦等によるコンテンツサービスの落ち込みをカバーできませんでした。一方、利益面では、ソリューション事業の寄与で売上総利益率が62%弱に上昇したものの、売上の減少が響いて売上総利益は減少。一方、広告宣伝費、人件費、更にはオフィス増床など来期以降を見据えた先行投資負担に加え、サポートセンターの移転費用計上等もあり販管費が増加したため、営業利益は前年同期比28.2%減少しました。
 
<四半期売上高の推移>
 
 
<セグメント別売上高>
1.コンテンツサービス
 
 
画像・ツールが横ばいで推移する中、音楽とゲームの売上が減少。音楽は、着うたフルの拡販に努めたものの、成果が出るまでには至らず、着うた45秒の減少を補う事ができませんでした。
尚、画像・ツールには、デコレーションメールが含まれています。
 
 
キャリア別シェアは、KDDIが54%、NTTドコモが31%、ソフトバンクが15%。特に大きな変化はありませんでした。
 
2.ソリューション
レーベル化に伴うCD販売の好調で物販が伸びた他、大手クライアントからの継続的な受注によりソリューションコンテンツも拡大しました。受託系案件の端境期となったソリューションが前四半期比で減少したものの、第3四半期までの累計では順調に拡大。足下の引き合いも豊富な事から、来期も堅調に推移する見込みです。
 
 
<四半期経常利益の推移>
 
 
第3四半期は売上が減った事で経常利益率も低下しました。ただ、第4四半期から来期にかけて、売上の底打ちと原価低減効果の顕在化が見込まれ、経常利益率も回復に向かう見込みです。
 
国内事業の概況と今業績の展開
 
<音楽コンテンツの市場動向と同社の音楽事業>
 
1.市場動向
音楽コンテンツの市場は、着メロが減少し、着うたが成熟する中、着うたフルが伸びています。ただ、着うたフルもサイト数が増加しており、競争が激化しています。このため、コンテンツプロバイダ各社は、品質・コンセプト・価格を兼ね備えたコンテンツの提供により差別化を図る必要があります。
 
2.同社の音楽事業
同社は原盤権を有する強みを活かして、F1層(Female-1:20~34歳の女性)を対象に高音質なカバーアレンジ楽曲を様々なツールを通して提供していく考えです。具体的には、パソコン向けダウンロードサービス、CD化、店舗販売(店頭アフェリエイト)を通して、顧客の囲い込みからクロージングまでをカバーしていく考えです。
 
 
3.コンテンツの概況
デコレーションメール、着うた、着うたフルにおいて、リアル連動をテーマに、来季に向けた基礎固めを行っています。
 
集客力強化
SoftBank「タダデコ」に、「デコメール」素材を独占的に配信する事で集客力の強化に努めています。尚、「タダデコ」とは、ソフトバンクモバイル(株)が、提供するデコレーションメール用メール素材の無料ダウンロードサービスです。素材の提供を通してSoftBankのユーザーを日本エンタープライズのサイトに誘導し、課金サービスの利用につなげていきます。また、来期以降、他のキャリアとの提携を強化して、同様のサービスを提供していく考えです。
 
音楽を複合的に楽しめる魅力的なコンテンツ制作
歌詞デコレや待受Flashの提供(DoCoMo、SoftBank)、或いはカテゴリチェンジ 「着うた・アレンジ」⇒「着メロ・J-POP」(KDDI)等、コンテンツの充実に取り組んでいます。
エンターテイメント系のポータルサイトと位置づけて、堅実なサイト運営を目指します。
 
ブランド強化による飛躍
メニュー名称を「うた\315@LOUNGE」に変更して、廉価版「315円コース」の提供を始めました。間口を広げて、ユーザーの拡大を図ります。また、CD「pure flavor #2」を発売しました。
 
 
<ソリューション>
1.レーベル事業
 
 
CDの販売枚数が3万枚を突破しました。これは、当初の予想を上回るもので、来期以降、更なる拡大が期待できます。CD販売にとどまらず、コンテンツを根幹として派生する様々なソリューションを提供していく考えです。
 
 
2.概況(個別)
(1)ソリューション
 
①開発・構築
電子書籍の市場拡大に伴い、大手CPからの受注が増加した事で、07年6月に1,700ページだった電子書籍の月間受注ページ数が、08年1月には13,000ページに増加。この他、企業ニーズの高まりを背景に、新規案件、大型案件の獲得に注力した結果、第3四半期累計の売上高は前年同期比8%増加しました。
 
②2次利用
第3四半期累計の売上高は前年同期比385%増加しました。ケータイを活用した販促活動の増加を受けて、その際に使用されるコンテンツ素材の需要が増加した事が要因です。
 
③店頭アフェリエイト
第3四半期累計の売上高は前年同期比84%増加しました。店頭アフェリエイトの契約店舗数の拡大に伴い成約件数が増加(07年6月7,000件⇒07年12月17,500件)した事が要因です。
 
④サポートセンター(デバッグ・検証、ユーザーサポート、サウンド制作)
施設の移転や選別受注、更には業務工程の見直し等により利益率の改善を図った事で、第2四半期から第3四半期にかけて、経常利益率が6ポイント改善しました。
 
(2)ソリューションコンテンツ
既存大手クライアントからの受注が継続・拡大しました。
 
(3)MSP
ソリューション及びソリューションコンテンツの拡大に伴い、MSPの売上高が前年同期比20%増加しました。
 
(4)広告
サイトの媒体力が向上した結果、広告売上が前年同期比87%拡大しました。ただ、フィルタリング問題を受けて、一般サイトについては慎重に対応しています。
 
(5)物販
レーベル化に伴うCD販売好調を受けて、売上高は前年同期比2,200%増加しました。現在、販売ルートを開拓しつつ、リアルとの連動を強化しています。
 
<企業向けソリューションの今後の受託領域>
媒体としての認知度向上を受けて、今後、携帯電話は、企業のマーケティング・販促ツール、或いは管理ツールとして利用が進むもの思われます。このため、同社では、企業サイト、GPS、ブランドケータイ、リアル連動、FeliCa、業務管理等の分野で、企業の利益につながるモバイルソリューションを展開していく考えです。
 
 
海外事業の概況と今後の展開
 
<中国の携帯電話市場動向>
中国の携帯電話契約件数は引き続き拡大トレンドにあり、2G(第2世代携帯電話)コンテンツが増加してきました。ただ、その一方で、違法業者の乱立に伴うキャリアによる規制強化等もあり、コンテンツプロバイダ各社の経営環境は必ずしも楽観できない状態です。こうした中で市場の期待を集めているのが、3G(第3世代携帯電話)の普及です。3Gへの移行が進めば、日本のようなリッチコンテンツの配信が可能になり、モバイルコンテンツ市場は一段の拡大が見込まれます。
中国の3G規格は、日本や欧米とは異なる「TD-SCDMA」と言う独自の規格です。この4月に北京等8都市において、ITネットワークの試験運用が開始され、2万人のユーザーに無料で端末が配布されました。また、電話番号を扱う店舗やテストに参加するユーザーへの奨励金制度が設けられる等、政策面からも普及を後押ししています。
同社では、キャリアや通信事業を管轄する情報産業部との情報交換を密にして対応を進めていく考えです。
 
<中国におけるモバイルコンテンツ事業>
同社は中国において、コンテンツ制作と教育事業を進めています。コンテンツ制作は、日本向けと中国向けに分かれ、前者は電子辞書事業を、後者はFlashアニメ、Flashゲーム、Java、BREWアプリ(ゲーム、ツール)等の開発を手掛けています。また、教育事業では、現地の大学や教育機関との連携によりデジタルコンテンツ制作者の養成事業を進めています。
コンテンツ制作を進める一方、コンテンツ制作者の育成を支援する事で、次世代コンテンツのノウハウを習得すると共に、安価な制作体制を構築して日本でのソリューション競争力を強化していく考えです。
 
 
2008年5月期業績予想
 
<連結>
 
 
通期の業績予想に変更はありません。
 
取材を終えて
ソリューションが伸びましたが、売上ボリュームの大きいコンテンツの苦戦を補う事ができませんでした。同社は07/5期にかけて5期連続の増収・増益を達成しましたが、この間、キャリアの公式サイトの集客力が徐々に低下していました。対応策として、コンテンツのテコ入れや一般サイトの強化に取り組みましたが、フィルタリング等の問題もあり、その効果は遅れ気味です。このため、通期でも減収・減益が見込まれますが、利益面で通期予想に対する進捗率は高く、業績上振れの期待が出てきました。高い進捗率にもかかわらず、業績予想を据え置いたのは、期末にかけて売上を予定している大型案件があり、検収が期ずれする可能性を完全には否定できない事等が理由のようです。
来期業績については、収益源である音楽事業の回復がポイントになると考えます。