ブリッジレポート
(4317) 株式会社レイ

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ブリッジレポート:(4317)レイ vol.18

(4317:JASDAQ) レイ 企業HP
分部 日出男 社長
分部 日出男 社長

【ブリッジレポート vol.18】2009年2月期中間決算業績レポート
取材概要「同社グループは、国内でも有数の競争力を誇る編集スタジオを有し、そのクオリティの高さからTVCMの編集分野で高い評価を受けている。国内経済が・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年11月4日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社レイ
社長
分部 日出男
所在地
東京都港区六本木 6-15-21
決算期
2月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年2月 9,576 -628 -497 -635
2007年2月 9,861 31 -35 -28
2006年2月 9,533 782 773 416
2005年2月 8,237 386 380 226
2004年2月 7,649 434 429 207
2003年2月 6,761 142 126 34
2002年2月 8,184 800 763 429
2001年2月 7,030 634 599 266
2000年2月 6,169 309 262 73
株式情報(10/21現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
73円 13,233,464株 966百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.0円 6.8% 7.49円 9.7倍 113.18円 0.6倍
※株価は10/21終値。発行済株式数は直近中間期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
レイの2009年2月期中間決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
経営戦略の立案・遂行と各事業会社の管理業務の代行を中心とする(株)レイと、事業体である子会社6社でグループを構成。TVCMやセールスプロモーション等の企画制作を行う広告ソリューション事業と保有する各種映像インフラを活用し実制作を行うテクニカルソリューション事業を展開している。
TVCM等の映像制作、映像機器による演出と機器レンタル、映像編集加工、及びコンテンツの製作・販売等を行っている。企画制作だけでなく、充実したポストプロダクション機能を備えている事が特徴。
 
広告ソリューション事業
企業のSP(セールスプロモーション)、キャンペーン、展示会、ショールーム等の企画制作を行う。担当する子会社及び同社の事業部は、次のとおり。グループ企業間で部門が重なっているのは、クライアントの競合を避けるため。
 
 
テクニカルソリューション事業
広告ソリューション事業が提案する企画制作を実現する事業。デジタル映像編集スタジオを保有し撮影から加工までの一貫した制作体制が整備されている。また、映像関連インフラを保有し、各種催事に使用するデジタル映像機材のレンタルも手掛けている。
 
 
2009年2月期中間決算
 
 
コンテンツ事業の事業見直しや景気悪化によるTVCM関係の受注減少で売上高が前年同期比4.2%減少したものの、コンテンツ事業関連の損失が無くなった事、同事業に関連する人件費の減少及び事業所の統廃合による賃借料・諸費用の減少等で営業損益及び経常損益が黒字転換した。中間純損失となったのは、減損損失等で特別損失41百万円を計上した事に加え、法人税・住民税の負担及び税効果会計の影響による。
尚、営業・経常損益が黒字転換したものの、減価償却費やリース料の増加及び価格要請の強まり等で実質的な付加価値率は低下しており課題も残った。

期初予想との比較では、景気悪化による広告宣伝費削減の影響を受けてTVCMの制作やスタジオ編集(ポストプロダクション)が減少したものの、キャンペーンや展示会等の販促活動及びコンサート等の各種催事関係、更にはDVDやブルーレイを使ったタイトル制作が伸びて、売上高はほぼ予想通りの着地。利益面では、広告宣伝費の削減でTVCMの企画制作や利益貢献の大きいスタジオ編集が想定ほど伸びず、予想を大きく下回った。

会計上の利益のみならず、キャッシュ・フローも大きく好転した。前年同期に157百万円のマイナスであった営業CFが、損益の改善と売上債権の回収が進み663百万円のプラス(黒字)に転換。大型コンサート関係の機材購入で投資CFが199百万円のマイナス(前年同期は19百万円のプラス)となったものの、フリーCFは464百万円のプラスとなり、前年同期の138百万円のマイナスから大きく改善。借入金の返済等を進めたものの、現金及び現金同等物の中間期末残高は945百万円となり、前期末(777百万円)比168百万円増加した。
 
セグメント別の状況
 
広告ソリューション、テクニカルソリューション共に、景気悪化によるTVCM関連の落ち込みが響いた。後者が増収となったのは、第2四半期に大型コンサートや既存展示会関係の売上が伸びたためだが、利益面では収益性の高いTVCM編集の落ち込みをカバーできなかった。
 
広告ソリューション事業
SPイベント部門
大手広告代理店を中心に営業を強化し、キャンペーンや発表会等のボリュームゾーンの受注拡大に取り組んだ。第1四半期は常設施設の大型案件の受注等があったものの、市場環境の悪化から大型展示会が減少する等で苦戦を強いられた。しかし第2四半期はキャンペーン等の受注が拡大、売上・利益共に増加した。

TVCM部門
広告代理店との協力関係を梃子に事業拡大を目指したが、景気悪化による企業の広告宣伝費削減の影響を受けて受注が減少、価格要請も厳しく採算も悪化した。尚、他の広告代理店向け営業を強化するべく、プロモーションのためのCM制作等を行い、これを広告宣伝費として計上した事も利益の圧迫要員となった。
 
テクニカルソリューション事業
映像機器レンタル部門
当部門は同社グループで最も事業の歴史が古く安定的に収益を計上する部門である。今期は量よりも質的な向上(JOB単価のUP)を目指す方針の下に活動した。第1四半期は大型展示会減少等の影響を受け苦戦したものの、第2四半期において大型コンサートや既存展示会関係の巻き返しもあり増収・増益となった。

ポストプロダクション部門
主力であるTVCM編集に加え、新市場であるBlu-Rayの受注拡大に向けて体制を整備した。その成果もあり、DVDやBlu-Ray制作の受注・売上が大幅に増加した。ただ、景気後退の影響を受けて収益性の高いTVCM編集の落ち込みが響いた。DVDやBlu-Ray制作は成長余地が大きいが、外注費もかさむため原価率が高い。
 
2009年2月期業績予想
 
 
前期比5.7%の減収ながら、経常損益が8億円弱改善する見込み。
金融不安等もあり更なる景気の悪化が予想されるものの、同社グループにおいては、足下、堅調な受注が続いている。制作コストの管理を強化すると共に、TVCM以外でコンピュータグラフィックス等を活用した受注の拡大に取り組む考え。
 
セグメント別予想
 
広告ソリューション及びテクニカルソリューションのコアビジネスに回婦し、経営資源の集中を図る事で、黒字確保に努める考え。
広告ソリューション事業
SPイベント部門
(1) 事業戦略
  大手広告代理店を中心に営業を強化し、キャンペーン、発表会等のボリュームゾーンの受注拡大を図る方針を継続。
(2) 現時点での成果
  従来の情報通信関連企業の展示会等中心の受注から、家電関連企業や化学関連企業、更には自動車等の発表会、キャンペーン等を受注するなどユーザーの業種が広がりをみせている。
(3) 業績予想分析
  イベントシーズンである秋の繁忙期の受注は堅調に推移している。常設施設の受注もある事から売上の伸びが予想されるものの、昨今の景気後退の影響から上期に比べ営業利益率が若干下がると見ている。
TVCM部門
(1) 事業戦略
  広告代理店との関係強化による受注拡大とコストコントロールの徹底による利益確保。
(2) 現時点での成果
  制作予算書の管理体制の強化により、上期後半以降、採算が改善傾向にある。
(3) 業績予想分析
  受注も改善傾向にあり、コストコントロールの徹底による採算の改善と相まって前年通期並みの営業利益率を確保できる見込み。
テクニカルソリューション事業
映像機器レンタル部門
(1) 事業戦略
  目標に掲げていた「ローエンドを中心とした客層の増加」は一定の成果を得られた。このため、ミドルエンドを中心に更なる質的な向上(JOB単価のUP)を目指す。
(2) 現時点での成果
  従来の情報通信関連企業の展示会、キャンペーン等中心の受注からエンタテインメント系、ファッションショー、学会等に受注が広がりつつある。
(3) 業績予想分析
  イベントシーズンである秋の繁忙期の受注は堅調に推移しており、大型コンサートの受注もある事から売上の増加が見込まれる。ただ、上期に実施した映像演出機器の投資に伴い減価償却費が増加するため営業利益率の低下が見込まれる。
ポストプロダクション部門
(1) 事業戦略
  CM編集は系列化が進み、市場の拡大は厳しく、加えて景気の変動を受けやすい。このため、CM編集で確立したブランドを利用して、CGや撮影の分野での受注拡大を目指す方針。
(2) 現時点での成果
  海外モーターショーのCG制作やWebの直クライアント受注等で一定の成果が現れており、スタジオ稼働率が好転しつつある。
(3) 業績予想分析
  DVD・Blu-Ray制作の受注が好調に推移している事に加え、スタジオ編集の受注状況にも改善が見られる事から前年下期並みの利益は確保できる見込み。
経営戦略
同社は、経営戦略として「人材の育成」及び「設備投資」に重点を置いている。今後の取り組みは次の通りである。
 
人材の育成
人材開発委員会の設置及びTL(チームリーダー)研修、GM(グループマネージャー)研修等を開催し、核となる人材の育成に努めている他、チーム体制を敷きチーム単位での指導・育成を行っている。また、人材の流動性が高い業界ではあるものの、社員の定着率の向上にも取り組んでおり、この一環として、社内報告制度のネットワーク化を図った事で社内的な課題を全社員が共有し解決していく体制等の整備を進めている。
 
設備投資
テクニカルソリューション事業においては、営業上の競争優位、制作生産性の向上、ノウハウの蓄積等のため、最新鋭の映像演出機器及び映像編集設備への投資が欠かせない。このため、財務上のバランスを考慮しつつ、今後も積極的な設備投資を行っていく考え。尚、来期以降、4年前のスタジオ関係の投資にかかるリース料負担が軽減され収益改善に寄与する見込み。
 
取材を終えて
同社グループは、国内でも有数の競争力を誇る編集スタジオを有し、そのクオリティの高さからTVCMの編集分野で高い評価を受けている。国内経済が成熟化しつつある中で、先行きTVCM制作の市場が大きく伸びる可能性は少ないが、編集業務で培った「デジタルに強いレイグループ」のブランド力を生かして、編集の前工程とも言える撮影や近年の市場拡大が目覚しいコンピュータグラフィック等、技術とブランド力を生かせる市場は多い。また、大手広告代理店との取引拡大余地も大きい。
ただ、こうした施策を進める上で課題となるのが、営業力である。現状では、技術力と営業力にギャップがあり、高度な技術力を活かし切れていない。コンテンツ事業から撤退して広告ソリューションとテクニカルソリューションのコア事業に経営資源を集中する事や人材の育成に注力する事は、中期的には弱点の強化につながっていくものと考えるが、一朝一夕には成し得る事ではなく暫く我慢が必要。