ブリッジレポート
(8860) フジ住宅株式会社

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ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.16

(8860:大証1部,東証1部) フジ住宅 企業HP
今井 光郎 社長
今井 光郎 社長

【ブリッジレポート vol.16】2009年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「上期は大幅な減益となったが、この原因は売上高の減少で、事業環境の悪化を踏まえて、慎重な仕入・販売を行なってきたため。売上総利益率が低下・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年11月18日掲載
企業基本情報
企業名
フジ住宅株式会社
社長
今井 光郎
所在地
大阪府岸和田市土生町1丁目4番23号
決算期
3月
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 48,793 2,723 2,413 2,097
2007年3月 52,221 4,233 4,090 911
2006年3月 41,333 3,229 3,196 1,312
2005年3月 43,954 3,208 2,799 1,661
2004年3月 34,387 2,034 1,891 684
2003年3月 32,905 1,198 1,028 545
2002年3月 33,419 899 692 297
2001年3月 31,433 2,928 2,681 1,503
2000年3月 34,268 1,596 1,117 -2,237
株式情報(11/6現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
240円 32,341,849株 7,762百万円 14.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
17.0円 7.1% 39.98円 6.0倍 418.39円 0.6倍
※株価は11/6終値。発行済株式数は直近第2四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フジ住宅の2009年3月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
地盤である大阪府下を中心に戸建分譲等、住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~200戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴がある。この他、金融機関とタイアップした土地有効活用事業、賃貸・管理事業、不動産ファンドや個人投資家向けの賃貸マンション販売事業、及び戸建分譲のノウハウを活かした中古住宅の改装販売等の事業を手掛けている。各事業の内容は次の通り。
 
(1)分譲住宅事業(戸建・マンション)
用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築しており、「自由設計方式」と「街づくり」が特徴。地価上昇に伴う事業リスクの高まりから5年前にマンション用地の仕入を停止。現在、地価上昇の影響が少ない郊外の戸建分譲に注力すると共に、営業エリアを大阪府下全域と兵庫県南部へ拡大中。
 
(2)土地有効活用事業(建築請負)
遊休地の有効活用を目的とした賃貸マンション・アパート等の建築提案を行なっている。単なる建築請負ではなく、市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の運営管理までを一貫してサポート。金融機関や既契約者からの紹介案件が多い。フジパレス・ブランドの木造アパートが中心で、木造のため建築資材価格高騰の影響も軽微。
 
(3)賃貸及び管理事業
100%子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けている。安定収益源となるばかりでなく、土地有効活用事業や不動産投資ファンド及び個人投資家向け賃貸マンションの販売等との相乗効果も高い事業。
 
(4)不動産ファンド等向け賃貸マンション販売事業
不動産ファンドや個人投資家を対象とした事業。不動産ファンド向けは、新築物件を一定期間保有し稼動実績を付けた後に販売するが、地価上昇によるリスクの高まりから、05年秋以降、土地の仕入を行っていない。現在は、資金運用手段として根強い需要があり、立地も都市部に限定されない個人投資向けに絞り、資材価格高騰の影響が少ない木造アパート中心に事業展開している(以下、個人投資家向け1棟売賃貸マンション事業として表記する)。
 
(5)中古住宅の販売及び仲介事業
「快造くん」のブランド名で展開している中古住宅の再生・販売が中心。地域密着営業により交差点単位での地域情報を収入し分析する。物件の鑑定力、仕入・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォームのマニュアル化による独自のノウハウ等が強み。
 
2009年3月期第2四半期決算
 
 
前年同期比7.2%の減収、同51.1%の経常減益。将来の売上につながる受注契約高は19,694百万円と同5.7%増加した(期初予想17,386百万円を13.3%超過)。
下期に売上計上を予定していた物件の一部で前倒し計上されるものがあるとして、9月1日に上方修正した予想値(売上高18,870百万円、営業利益380百万円、経常利益320百万円、四半期純利益190百万円)を上回る着地となった。第2四半期末の受注契約残高は前年同期比2.3%減の27,276百万円。売上総利益率が若干低下したのは、相対的に利益率の低い物件の引渡しが集中したためで下期は回復する。
1株当たり8円の中間配当を予定している。
 
尚、不動産業界では、一般にマンション・住宅等の引渡し(売上計上)が、1月~3月(第4四半期)に集中する傾向があり、通期の予想に対する進捗率は参考にならない。
 
セグメント別動向
中古住宅が好調に推移した他、引渡しが増えた土地有効活用事業や管理物件が増加した賃貸及び管理事業の売上が増加したものの、全般的にはこれまでの慎重な仕入・販売を反映して売上高が減少した。
 
 
不動産販売事業
受注契約高は前年同期比6.6%増の17,583百万円、売上高同18.8%減の13,631百万円、営業利益同82.2%減の247百万円となった。
 
戸建住宅は、強みである自由設計方式の住宅に加え、小規模新築建売住宅の販売が順調に推移、受注契約高は12,567百万円と同6.1%増加した(受注総戸数:341戸 → 362戸)。引渡しの減少で売上高は同24.3%減の8,961百万円(引渡し戸数:339戸 → 271戸)となり、通期の売上予想に対する進捗率は35.5%。

中古住宅は、堺市・大阪市内へのエリア拡大方針に基づき、中古住宅の仕入・販売拠点として07年1月に開設した堺店、08年6月に開設したフジホームバンク大阪店等の寄与もあり、受注契約高が4,184百万円と同13.2%、売上高も3,992百万円と同14.2%、それぞれ増加した。

個人投資家向け一棟売賃貸マンションは、受注契約高が同1.5%減の758百万円(6棟)、売上高は同期比54.1%減の587百万円。前期に物件を全て売却し、現在、仕入・販売を停止している不動産投資ファンド向けがなくなったため、売上高が減少したものの、個人投資家向け一棟売賃貸マンションの販売が堅調に推移した。個人投資家向けは、資金運用手段として個人富裕層からの需要が強い有望な事業分野である事から、今後も需要の旺盛な堺市を中心に供給を継続していく考え。
 
土地有効活用事業
受注契約高は2,110百万円(21件)と同1.6%減少したものの、20件(前年同期8件)の引渡を行ない売上高は同308.5%増の2,027百万円。営業損益は前年同期の294百万円の損失から385百万円の利益に転じた。
 
賃貸及び管理事業
土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件が増加、売上高は同5.2%増の3,188百万円、営業利益は同0.2%増の227百万円となった。
 
この他、中古住宅の仲介手数料やローン事務手数料等の売上高96百万円(前年同期比5.1%減)、営業利益8百万円(前年同期9百万円減)を計上した。
 
 
財政状態
 
主な増減科目と増減理由は次の通りである。
 
現預金(長短借入金)
好調な中古住宅や小規模新築建売住宅の事業資金確保に加え、新興不動産会社の破綻が相次ぐ等で建設・不動産会社を見る目が厳しくなっているため、敢えて借入を増やして現預金を積み増す事で資金調達力を示した。尚、同社の資金調達コストは、長期、短期共にTIBOR(東京の銀行間取引金利)をベースとする変動金利。事業期間が短い中古住宅や小規模新築建売住宅向けの資金が中心であった事もあり、短期で集中的に借り入れを行なった。
 
販売用不動産 事業期間の短い中古住宅や小規模新築建売住宅及びモデルハウスの棚卸資産
第2四半期末に向けて中古住宅や小規模新築建売住宅の販売が伸長、下期引渡しの棚卸資産が増えた。
 
仕掛販売用不動産 自由設計の分譲住宅やアパート・マンション等、建築確認取得後の棚卸資産
建築確認の取得が進み、前期末に比べて増加した。自由設計の戸建住宅は受注契約後に建築確認を取得するので、仕掛販売用不動産の大部分は受注契約済み
 
開発用不動産 自由設計の分譲住宅やアパート・マンション等、建築確認取得前の棚卸資産
慎重な仕入を続ける中、受注即ち建築確認の取得が進み前期末に比べ減少した。
 
買入債務
協力会社の資金繰り支援を目的に手形支払いを廃止し、現金決済としたため大幅に減少。手形サイト期間の金利分の値引きを条件に実施したものの、実際には金利分以上のコストダウン効果があった。
 
純資産
自社株買いによる自己株式の増加で減少。
 
同社の棚卸資産は、販売用不動産、仕掛販売用不動産、及び開発用不動産である。多様な不動産事業を手掛けている同社の場合、棚卸資産全体で捉えるのではなく、上記の勘定科目毎に内容を吟味しないと判断を誤る。 例えば、9月末の棚卸資産合計は368億円となり、前期末の348億円から増加した。このため、棚卸資産全体で捉えると、売上が減少傾向にある中で棚卸資産が増加した事になり資産の健全性という点で疑問が生じるが、事業戦略を踏まえて勘定科目毎に分析するとその増減の理由が理解できる。
 
具体的には、棚卸資産のうちの販売用不動産は、事業期間が短いため値下がりリスクが少なく、資産の回転も速い古住宅や小規模新築建売住宅が大半を占める。厳しい事業環境にあっても、その事業特性から引き続き力を入れていく考えであり、第2四半期末の残高が増加したが、今後も金額が増加する可能性が高い。
 
一方、事業規模が大きく、事業期間も長い大規模分譲等は、現在の事業環境ではリスクが大きいため慎重にならざるを得ない。大規模分譲等が含まれるのは、仕掛販売用不動産と開発用不動産である。9月末のその合計額は約270億円で、前期末比横ばいにとどまった。売上が減少する中で残高が横ばいでは、資産が滞っているように感じるが、既に説明したとおり、確認取得前の資産(開発用不動産)が減少し、取得後の受注契約済みの資産(仕掛販売用不動産)が増加しているのだから、資産は滞りなく回転している。
 
時間の経過と共に建築確認取得前の資産が取得後の資産となり、取得後の資産は順次販売される。その一方で、仕入れは慎重な姿勢を続けているため、今後、仕掛販売用不動産及び開発用不動産は減少に向かう見込みだ(販売好調な個人投資家向けや土地有効活用事業の物件も含まれるため、引渡しの時期によっては必ずしも減少しない事もあるが)。
 
キャッシュ・フロー(CF)
営業CFは4,991百万円のマイナス(資金の減少)となったが、この要因は棚卸資産の増加と仕入債務の減少である。棚卸資産の増加は第2四半期末にかけて中古住宅や小規模新築建売住宅の販売が好調であったためで、下期には引渡しが進む。下期も3月末に向けて引渡しが増加するため、棚卸資産は減少する見込み。また、仕入債務も、支払いサイトが一巡すれば影響が無くなる。このため、下期は営業CFがプラス(黒字)に転じる見込み。
 
2009年3月期業績予想
 
 
前期比8.6%の減収、同7.6%の経常減益予想。引き続き慎重な仕入・販売を継続する考えで、通期の業績予想に変更は無い。
 
第2四半期末の受注契約残27,276百万円のうち下期に売上計上が予定されているのは17,869百万円。これに上期の売上高18,943百万円を加えると36,812百万円となり、通期の予想売上高の82.5%に達する。更に、上期の実績から考えて、賃貸・管理で3,200百万円程度の売上計上が可能と思われる(上期実績3,188百万円)。このため、既に40,000百万円程度の売上高は固まっていると考えていい。この他、事業期間が短いため、期中受注期中売上が可能な中古住宅(上期の期中受注期中売上は1,780百万円)や小規模新築建売住宅で期中受注期中売上が見込める事から、売上高が下振れする可能性は少ない。無理に売上を伸ばす必要がなければ、売り急ぐ事もないため、利益も確保しやすいと考える。
 
尚、中古住宅及び小規模新築建売住宅は、2月末までに契約できれば、3月末までに引渡しが可能。また、両事業の売上高合計は上期の売上高の5/6相当で60億円前後になると言う。
 
トピックス
 
新商品『フジパレスシニア』の販売開始
同社は、高齢化社会の新しい土地活用の事業として、08年11月1日(土)より『フジパレスシニア』(低賃料タイプ・高齢者専用賃貸住宅)を販売開始する。土地有効活用の商品としては、木造アパート『フジパレス』、『フジパレス戸建』に続く商品である。
『フジパレスシニア』は、一人暮らしの高齢者が安心して暮らせる住まいとして、高齢者のニーズに対応するサービスを備えた高齢者専用の賃貸住宅。介護、看護、医療機関等との提携により入居者への24時間緊急対応可能なサポート体制の整った低額な家賃設定の高齢者専用賃貸住宅を、高品質・低コストの住みやすい木造2階建てで実現する。従来では郊外の立地で賃貸住宅用地に適さなかった土地にも建築が可能な商品として、これまで遊休地を利用できなかった土地所有者にも『フジパレスシニア』の建築を提案していく考え。
驚くべきは家賃(利用料)の安さで、食事付きで何と、1月115,000~125,000円。
 
1.入居者へのサービス
介護、看護、医療機関等と連携した24時間緊急対応可能なサポート体制の下で、年金収入のみの高齢者が、食事の提供を受けながら安心して快適な生活を送る事ができるサービスの提供を目指す。
 
2.土地所有者のメリット
(1)従来活用できなかった利用度、市場性の低い土地、例えば、駅から遠隔地で、商業施設や集合住宅、駐車場等の土地利用に適さない土地を有効活用する事ができる。
(2)低価格・高品質の建物とフジ住宅グループの一括借上により安定収益が得られる。
(3)高齢者が安心して住める住宅が不足している中、高齢者の受け入れ体制が整った賃貸住宅は、多くの高齢.者とその家族の役に立つ事ができ地域社会への貢献にもなる。
 
3.フジ住宅のメリット
従来、立地面で事業化に至らなかった案件の事業化と良質な高齢者向け賃貸住宅の供給により、地域社会へ貢献すると共に、土地所有者の事業支援と業績の向上つなげる事ができる。
 
4.初年度受注目標
20棟:3,500百万円
 
 
取材を終えて
上期は大幅な減益となったが、この原因は売上高の減少で、事業環境の悪化を踏まえて、慎重な仕入・販売を行なってきたため。売上総利益率が低下したものの、事業環境の悪化や小規模の新築建売住宅が増加した事等を考えれば、ある程度の利益率低下は止むを得ない。むしろ、わずかな低下にとどまったことから、流動性確保のため売り急いでいる様子ではない事、ブレーキを踏みつつも利益を確保しながら売上が進捗している事がうかがえる。引き続き厳しい事業環境が予想されるものの、財政状態も透明性が高く特段大きな不安はない。