ブリッジレポート
(2468) 株式会社フュートレック

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ブリッジレポート:(2468)フュートレック vol.9

(2468:東証マザーズ) フュートレック 企業HP
藤木 英幸 社長
藤木 英幸 社長

【ブリッジレポート vol.9】2009年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「好業績を続けている同社ではあるが、携帯電話市場の成熟と急激な自動車販売の落ち込みで足下の事業環境が厳しさを増してきた。ただ、既にNTTドコモ・・・」続きは本文をご覧ください。
2008年12月16日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フュートレック
社長
藤木 英幸
所在地
大阪市淀川区西中島 6-8-31
決算期
3月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年3月 1,598 264 277 159
2007年3月 1,253 249 256 162
2006年3月 1,443 173 165 99
2005年3月 1,059 69 79 33
2004年3月 907 9 6 -1
2003年3月 736 12 12 3
2002年3月 435 17 34 29
株式情報(12/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
185,000円 23,648株 4,375百万円 8.4% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,300.00円 1.2% 9,307.51円 19.9倍 88,990.50円 2.1倍
※株価は12/5終値。
 
フュートレックの2009年3月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
携帯電話用音源LSI(音を鳴らすための半導体)の開発・販売を中心に、分散音声認識技術を用いた音声認識事業、各種LSIの受託開発等を行っている。携帯電話用音源LSI事業では、LSIを製造して売るのではなく、IP化して販売している。「IP化して販売する」とは、LSIの設計データとそのLSIを駆動させるためのソフトウェア(組込ソフトウェア)を知的財産権化して販売するという事で、言わば、LSIの設計図をライセンス提供しているようなものだ。このため、大規模なLSI工場を建設する必要はなく、開発・設計に経営資源を集中できる。販売先は通信キャリアや半導体ベンダー、携帯電話端末メーカーである。

グループは、同社の他、組込みソフトウェアとアウトソーシングの(株)シンフォニック、及び音声認識技術事業のサービスを手掛ける(株)ATR-Trekの連結子会社2社。
 
<沿革>
会社設立は2000年9月。01年3月には現在の主力商品となっている音源IPを完成し、ライセンス販売を開始した。02年5月、ソニーからメモリースティックROMの製造権・販売権を取得。04年には松下電器産業から3D音響IPライセンスを受けて提携。05年1月にNTTドコモと音源の利用許諾契約を締結。NTTドコモの携帯電話は同社の音源で統一される事となった。また同年同月、大手予備校が実施する模擬試験向けコンテンツをメモリーカードへ書き込む業務を受託し、メモリーカードを販売するビジネスに参入。同年12月に東証マザーズに株式を上場した。06年5月には、NTTドコモと資本・業務提携契約を締結。これにより、当社の株式の10%以上をNTTドコモグループが所有する事となり、NTTドコモが開発する様々なサービスに協力する事になった。

ハード音源等、半導体の設計からスタートした同社だが、ソフト音源や分散音声認識技術などソフトウェア分野へ活動範囲を広げている。ソフトウェア技術をベースにした音声認識システムの販売や音声翻訳サービスの提供等も始めており、中期的には「技術開発型会社」から「技術開発型サービス会社」へと業態転換を進めていく考え。
 
<事業の概要>
事業部制を敷いており、音源事業の第一事業部、受託開発事業とカード事業の第二事業部、音声認識事業の第三事業部に分かれる。09/3期上期の売上構成比は、それぞれ61.2%、18.7%、20.1%。
 
1.第一事業部(携帯電話音源LSI設計データと組込みソフトウェアの開発・設計)
携帯電話用音源IPのライセンス販売、組込みソフトウェア(車載用ソフトウェア)の受託開発を行なっている。同社が受け取る対価には、LSI設計データと組込ソフトウェアの使用許諾契約時に発生するイニシャル収入(初回のみ)、顧客の生産台数に応じて発生するロイヤルティ収入(生産1台当たり)、IPをユーザーのインターフェイスに合わせる実装設計(カスタマイズ)に伴う収益、及び音源動向の情報提供やコンテンツ作成のアドバイス等に伴うコンサルティング収入がある。
 
2.第二事業部(研究開発を兼ねた受託開発事業及びカード事業)
受託開発事業は、付加価値の高いセンサや携帯関連の受託開発が中心だが、単なる受託開発ではなく、新たな技術の習得や商品開発につなげるための研究開発として位置付けている。受託開発の1事業であった音声認識事業が、事業部として独立した他、08/3期にはバーニアADコンバータ(VAD)が開発フェーズを終え、販売フェーズに入った。また、カード事業は、大学受験生向け模擬試験の英語リスニングテストで使われるメモリーカードや携帯電話のコンテンツ入りメモリーカードの書き込み事業を行っている。
 
3.第三事業部(音声認識事業)
06年12月に(株)国際電気通信基礎技術研究所(以下、ATR)と業務提携した事を受けて、07年4月に受託開発事業から分離・独立した。ATRが保有する音声認識の技術とフュートレックが保有する携帯電話関連の技術及びフュートレックグループが保有するサーバーシステム開発技術を融合した音声認識・音声翻訳等の事業を進めている。システムの使用許諾契約時に発生するイニシャル収入や毎月の生産数及びサービス数に応じたロイヤルティ収入が収入源となる。さらにフュートレックグループ自身がコンテンツプロバイダとなった「しゃべって翻訳」のサービス提供を始めている((株)ATR-Trek)。
尚、音声認識とは、機器に向かって音声で入力すると、様々な発音・声質から言葉を聞き分け、語彙を特定し、文字等に変換するものである。携帯電話での想定されるサービスとしては、携帯電話に話しかけるだけでメールの入力ができたり、携帯電話の操作ができたりなど、様々なサービスの実現が期待されている。
 
 
2009年3月期第2四半期決算
 
 
前年同期比28.4%の増収、同138.2%の経常増益。
3セグメント全ての売上が順調に増加。音声認識事業の上振れ等で売上総利益率が大幅に上昇、販管費の増加を吸収して営業利益は同2.5倍に拡大した。ただ、08年8月に上方修正した予想には届かなかった。原因は二つあり、一つは、修正発表後の携帯電話販売台数の落ち込みにより、第1四半期(4-6月)に6,800千台を数えた販売台数が、第2四半期は4,370千台と2,430千台減少した事。もう一つは、一部ライセンス案件及び受託案件が下期にずれた事である。
 
 
①第1事業部(音源部門)  売上高:544百万円(前年同期比18.8%増)
上期の音源搭載台数は、国内11,170千台、海外6,186千台。ただ、国内は第2四半期に入り携帯電話販売台数が減少、上期の販売台数は期初計画を989千台下回った。一方、海外向けは未だ低機能タイプが多く単価が低いものの、ここにきて音源搭載が増えており、上期の実績は期初計画を3,046千台上回った。
車載用ソフトウェアの受託開発は計画を若干上回ったものの、足下、自動車の販売不振の影響が出てきた。同社では、自動車の進化は今後も続くものの、当面、厳しい状況が続くと見ている。
尚、これまで使用許諾を受けていたライセンスの一部を取得し、無形固定資産(ソフトウェア)に計上した。今後3年間は、使用許諾料(支払ライセンス料)に替えて償却費(均等償却)を計上する。
 
②第2事業部(受託開発・カード部門) 売上高:166百万円(前年同期比22.1%増)
内訳は、受託開発部門が104百万円、カード部門が62百万円。受託開発部門では車載用センサに注力してきたが、やはり自動車販売不振の影響が出てきた。このため、通期の計画達成は微妙な状況。一方、カード部門は成長性で見劣りするものの、利益率が高く安定した収益が期待できる。
また、バーニアADコンバータ(VAD)が開発フェーズを終え、販売フェーズに入ったが(5月に試作品を納入)、納入先が車載関連のメーカーであったためその後の進捗が遅れている(ここでも自動車販売不振の影響が出ている)。バーニアADコンバータ:VADは、従来の製品と異なり、電圧値ではなく時間軸によって測定するので回路が簡潔。このため、小型化が可能でICの軽薄短小ニーズに応えた製品。
 
③第3事業部(音声認識部門) 売上高:179百万円(前年同期比84.5%増)
音声認識フロントエンドソフトが、ドコモの2008年秋冬発売モデル22機種中17機種(国内メーカー産はすべて)に搭載された。
 
2009年3月期業績予想
 
 
通期の業績予想に変更は無く、前期比21.4%の増収、同45.0%の経常増益予想。
第3四半期に入り音源IPが回復する見込みだが、携帯電話販売の苦戦が続いている上、自動車販売の不振が深刻さを増しており、下期は全般に厳しい事業環境が予想される。
 
 
カード部門が堅調に推移する他、音源IPも力強さは欠けるものの回復が見込まれる。一方、車載用ソフトウェア及び車載用センサの受託開発、バーニアADコンバータ等で自動車販売不振の影響が懸念される。
音声認識はNTTドコモ08年冬モデル以降も音声認識エンジン(同社が提供するソフトウェア)の搭載が決定している。コンテンツプロバイダ等へのバックエンドシステム(サーバに搭載するソフトウェア)の販売を強化する他、携帯電話以外の分野も視野に入れて事業を強化する。また、新フロントエンジン(端末側に搭載するソフトウェア)の開発・投入により更にハイエンドの音声認識を目指す。
 
(2)株主対応について
①配当
同社は「配当性向」を経営の重要な指標と位置づけ、その目標値を20%から30%に引き上げた。
 
配当実績(1株当たり配当の推移)
07/3期 当初予定800円→1,100円に上方修正
08/3期 当初予定1,200円→1,600円
09/3期 予定2,300円
 
②自社株取得
株主への利益還元と資本効率の向上を図る事を目的に、2008年10月23日より自社株取得を行っている(~2009年3月31日迄)。上限は500株、上限金額100百万円で、2008年10月23日~10月31日までに82株を取得した。
 
音声認識事業について
 
(1)同社音声認識の特徴
パラレルデコレーティング技術
ATRの開発実績に基づく音声認識エンジンは、話し声を複数の認識器に同時に入力し、その中から最善の結果のものを選ぶ事ができる。複数の認識器は、複数の話す早さ、複数の話者年齢、性別、ノイズの大小など様々な組合せが可能で、使う人の違いや、ノイズ環境の違いがあっても、常に正確な認識を行う事が可能だ。
 
ノイズリダクション
周辺の音をどれだけカットできるかで、雑踏でどれだけ使えるか(実用度)が決まる。同社の音声認識は、ATRの高性能ノイズリダクション技術を採用しており、極めて実用性が高い。
 
 
(2)音声認識事業の収益モデル
 
システムの使用許諾契約時に発生するイニシャル収入や毎月の生産数及びサービス数に応じたロイヤルティ収入が収入源となる。更に子会社(株)ATR-Trekがコンテンツプロバイダとして提供する「しゃべって翻訳」のサービスも始めている。システムは携帯電話等に搭載するフロントエンドエンジン(ソフトウェア)とコンテンツプロバイダ向け等のバックエンドシステム(ソフトウェア)がある。
 
(3)同社グループが供するコンテンツ
NTTドコモの携帯電話に同社グループが提供する音声翻訳サービス「しゃベって翻訳」(一部未搭載機種有)が搭載されている。
 
【iMenu】→「メニュ一/検索」→「辞書/便利ツール」→「便利ツール」→「しゃベって翻訳」
【料金】 利用料金は150円/月(税別)、日中DX版は200円/月(税別)
※60日間は無料でご利用可能。
 
 
 
(4)音声認識事業の推移
 
2007年11月NTTドコモ905iの一部に音声認識フロントエンド採用
2007年11月ゼンリンデータコムバックエンドシステム提供
2007年11月「しゃべって翻訳日英版」サービス開始
 
2008年2月NTTドコモ705iの一部に音声認識フロントエンド採用
2008年6月NTTドコモ906i全てに音声認識フロントエンド採用
2008年6月「しゃべって翻訳日中版」サービス開始
2008年8月「しゃべって翻訳日中DX版」サービス開始
2008年11月NTTドコモ2008年秋冬モデル以降にも音声認識フロントエンド採用
 
フュートレックグループの今後の方向性
 
ハード音源等、半導体の設計からスタートした同社だが、現在、ソフト音源や分散音声認識技術などソフトウェア分野へ活動範囲を広げている。更に、ソフトウェア技術をベースにした音声認識システムの販売や音声翻訳サービスの提供等も始めており、中期的には「技術開発型会社」から「技術開発型サービス会社」へと業態転換を進めていく考え。

同社グループは、社会の変化に柔軟に対応して、その時代に求められる商品を追求し、継続的に発展していく会社を目指している。
 
 
取材を終えて
好業績を続けている同社ではあるが、携帯電話市場の成熟と急激な自動車販売の落ち込みで足下の事業環境が厳しさを増してきた。ただ、既にNTTドコモユーザーの手元には、同社のフロントエンドエンジンの普及が始まっており、今後、年を追う毎に普及が進む。また、フォーマットの問題でソフトバンクモバイルやauの端末への搭載ができなかった音源IPと異なり、音声認識のフロントエンジンは全てのキャリアの端末に搭載が可能。端末への搭載が進めば、様々なサービスが開発され、バックエンドシステムの販売拡大に波及するものと思われる。つまり、潜在需要は膨大で、未だ成長余地は大きい。また、中期的には車載関連ビジネスの回復・拡大も期待できる。
更なる技術力の向上と営業力に磨きをかける事で、「技術開発型会社」から「技術開発型サービス会社」への進化がより現実的なものとなろう。