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(9616) 株式会社共立メンテナンス

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ブリッジレポート:(9616)共立メンテナンス vol.20

(9616:東証1部) 共立メンテナンス 企業HP
石塚 晴久 会長
石塚 晴久 会長
佐藤 充孝 社長
佐藤 充孝 社長
【ブリッジレポート vol.20】2009年3月期業績レポート
取材概要「09/3期は懸案であったホテル事業が黒字転換した。10/3期もホテル事業は大幅な増益が見込まれるが、厳しい事業環境を鑑みて連結業績予想は保守的・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年6月23日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社共立メンテナンス
会長
石塚 晴久
社長
佐藤 充孝
所在地
東京都千代田区外神田 2-18-8
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年3月 82,303 5,349 4,510 2,133
2008年3月 75,606 4,492 4,167 2,740
2007年3月 66,287 3,745 3,787 2,413
2006年3月 63,084 4,611 4,823 2,010
2005年3月 58,014 4,407 4,411 2,343
2004年3月 54,080 4,004 4,059 2,137
2003年3月 50,108 4,148 3,884 2,039
2002年3月 50,064 3,908 3,580 1,821
2001年3月 37,884 2,827 2,643 1,146
2000年3月 36,787 2,368 2,281 906
株式情報(6/12現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,615円 14,366,631株 23,202百万円 7.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
38.00円 2.4% 164.97円 9.8倍 1,995.59円 0.8倍
※株価は6/12終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
共立メンテナンスの2009年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
"ライフステージにおける様々な場面での「食」と「住」さらに「癒し」のサービスを通じて、広く社会の発展に寄与する"と言う経営方針の下、「現代版下宿屋」(食事付きの寮の運営)を中心にした寮事業、ホテル事業、総合ビルマネジメント事業、外食やレストラン運営受託のフーズ事業等を展開。知名度と実績で他社を凌駕する主力の寮事業を安定収益源とし、ホテル事業の育成により成長を加速している。

事業の種類別セグメントと売上構成(09/3期)は次の通りである。
 
 
2009年3月期決算
 
 
前期比8.9%の増収、同8.2%の経常増益。
新規オープンしたドーミーイン(ビジネスホテル)5事業所及びリゾートホテル1事業所の寄与と既存事業所の好調でホテル事業の売上が伸びた他、主力の寮事業も学生寮事業を中心に堅調に推移した。利益面では、ビジネスホテルが高い稼働率を維持した事や販路の拡大とコスト管理の徹底でリゾートホテルが黒字転換した事等で営業利益が同19.1%増加。ただ、不安定な金融環境を睨み資金を前倒し調達した事等で金融費用が増加、特別損益の悪化もあり当期純利益は同22.2%減少した。設備投資は同17.9%減の10,813百万円、減価償却費は同26.2%増の3,695百万円。期末配当は1株当たり19円を予定している(年38円)。
 
特別損益の悪化要因
前08/3期はSPC3社の清算に伴う固定資産売却益(1,350百万円)など特別利益1,859百万円を計上する一方、減損損失(370百万円)や投資有価証券評価損(235百万円)など特別損失645百万円を計上。09/3期は、特別利益が違約金収入(128百万円)など239百万円にとどまる一方、減損損失(115百万円)、投資有価証券売却損(101百万円)、同評価損(342百万円)など特別損失672百万円を計上した。
 
(2)セグメント別動向
寮事業
事業所数は前期比14ヶ所増の401ヶ所(受託除く)、定員数は同1,403名増の30,166名。売上高は前期比5.0%増の37,515百万円、減価償却費が増加したものの一事業所単位でのコスト管理の徹底により営業利益は5,716百万円と同4.7%増加した。
 
学生寮事業              売上高22,139百万円(前期比7.8%増)
慶応義塾大学、明治大学、東京工芸大学、東京都市大学、明星大学等と新たに提携、同社学生寮の利用実績学校数は1,573校となり、契約者数は16,736名と前期比4.7%増加した。
 
社員寮事業              売上高9,511百万円(同2.7%増)
寮利用による社内一体化等質的側面からニーズが高まった一方で、景気変動による個室契約調整(期中に空室が出た場合の解約)もあり、期末の契約者数は7,411名と同1.3%減少した(実績企業数1,203社)。
 
ドミール(ワンルームマンションタイプ寮)事業 売上高3,456百万円(同1.9%増)
新たに4事業所をオープン。学生寮入居者の卒業後の住み替え需要や寮利用者からの紹介等で入居者数が3,888名と同5.2%増加した。
 
受託寮事業              売上高2,407百万円(同4.9%減)
当事業では、企業・学校が保有している寮を受託請負により管理運営している。景気悪化に伴う解約等もあり売上高が減少した。
 
ホテル事業
新たにドーミーイン(ビジネスホテル)5事業所及びリゾートホテル1事業所がオープン。事業所数は49ヶ所、客室数は6,618室(前期比1,261室増)となり、売上高は25,148百万円と前期比23.5%増加した。ビジネスホテルが高い稼働率を維持した事や販路の拡大とコスト管理の徹底でリゾートホテルが黒字転換した事で、新規オープンに伴う開業準備費用等を吸収して、営業損益が黒字転換した(営業利益は同560百万円増の103百万円)。
 
ドーミーイン事業(ビジネスホテル事業) 売上高10,795百万円(前期比23.7%増)
宿泊特化で省力化を追求する業界の流れの中で、「温泉感覚を取り入れた大浴場」と「美味しい朝食」にこだわり、出張宿泊や深夜業務宿泊等の企業ニーズへの対応に加え、女性専用サービスの拡充や家族旅行の利用促進等にも取り組んでいる。09/3期は、新たに「天然温泉 六花の湯 ドーミーイン熊本」、「天然温泉 岩木桜の湯 ドーミーイン弘前」、「さぬきの湯 ドーミーイン高松」、「天然温泉 樽前の湯 ドーミーイン苫小牧」、「天然温泉 阿智の湯 ドーミーイン倉敷」の5事業所をオープンし、既存事業所と合わせたドーミーインシリーズ全32事業所が高い稼働率を維持した(平均稼働率80.1%、このうち新規オープンの5棟は72.3%)。
 
リゾート事業(リゾートホテル事業)   売上高14,352百万円(同23.4%増)
「リーズナブルで質の高いリゾートライフ空間を創造し提供する」というテーマを掲げ、「癒しの宿」を展開している。09/3期は、新たに「ラビスタ函館ベイ」をオープンすると共に、販路の拡大やコスト管理の徹底等で前期までにオープンした大型ホテルの収益改善が進み、リゾート事業の黒字化に成功した。
 
その他の事業
総合ビルマネジメント事業  売上高12,182百万円(前期比0.7%増)、
              営業利益629百万円(同8.6%増)
フーズ事業         売上高4,785百万円(前期比1.4%増)、
              営業損失80百万円
デベロップメント事業    売上高11,938百万円(前期比11.8%減)、
              営業利益419百万円(同12.4%増)
その他事業         売上高4,648百万円(前期比3.7%増)、
              営業利益209百万円(同12.9%減)
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
不安定な金融環境を睨み、08年9月末に長期借入金260億円を先行して調達した事などで有利子負債や現預金が増加した他、事業所の増加で有形固定資産も増加した。この他、09年3月末に三井住友銀行をアレンジャーとする向こう2年間のコミット型シンジケートローン契約(300億円)を締結した。
尚、有利子負債は増加したものの、ネット有利子負債(有利子負債-現預金)を純資産で割ったD/Eレシオは1.9倍で、ほぼ前期(1.8倍)並みを維持している。また、営業CFは7,661百万円と前期の約2.3倍弱に拡大した。
 
 
 
2010年3月期業績予想
 
 
前期比8.4%の増収、同4.0%の経常増益予想。
引き続きホテル事業で高い売上・利益の伸びが続く他、寮事業も4年制大学との提携拡大を背景に堅調な推移が見込まれる。金融費用等の増加で経常利益が同4.0%の増加にとどまるものの、特別損益の改善により当期純利益は同11.1%増加する見込み。設備投資は同33.0%減の7,241百万円、減価償却費は同13.2%増の4,183百万円を計画。配当は1株当たり38円(中間配19円を含む)を予定している。
 
(2)セグメント別予想
寮事業
学生寮は首都圏を中心に全国で13棟及びリニューアルによる増築1棟を計画しており、期末総定員は414棟、31,217室(前期比1,051室増)。引き続き四年制大学との提携拡大を図る他、従来からの基盤である専門学校や予備校との提携関係強化に取り組む。社員寮の期初契約数は、景気の影響によるマンスリー契約の減少(同0.6%減の923名)をカバーして、7,713名と同1.6%の増加でスタート。需要の多い首都圏を中心に好立地物件の開発を進める。また、ドミール事業については大都市圏での開発供給を加速する。
利益面では減価償却費(140百万円)の増加に加え、事業環境を踏まえて個室契約調整等の影響による社員寮の稼働率の低下等(80百万円の減益要因)を見込んでいるものの、生産性の改善(60百万円)と食費の値上げ効果(210百万円)等で吸収する考え。
 
ホテル事業
ビジネスホテルは引き続き全国主要都市部を中心に積極展開を進める考えで6事業所のオープンを予定。リゾートホテルは、「飛騨花里の湯 高山桜庵」を4月にオープンした。既存ホテルと共にサービスの充実を図り各事業所で収益管理を徹底する。
 
 
 
 
中期展望
 
金融システムが安定化に向かいつつあり、実体経済も一部に明るさが見えてきた。こうした中、同社は持続的な成長を支える経営基盤の強化に取り組んでいく考え。具体的な施策として、既存事業の収益力強化、財務健全性の強化、及び確実な資金調達パイプの確保の3項目を挙げている。
 
(1)既存事業の収益力強化
販売価格の適正化に取り組むと共に、徹底的にコストパフォーマンスを追及する。
 
①販売価格の適正化
寮事業とホテル事業における価格の見直しを進める。特に地方や設備の老朽化で稼働率の低いホテルについては、お客様満足度の施設充実にあわせた価格帯の設定見直しを行う。
②徹底的なコストパフォーマンスの追及
コスト管理の徹底、事業所のスクラップ&ビルドの推進、及びスモールガバメントの実現に取り組む。スモールガバメントの実現にあたっては、本社経費にメスを入れる。具体的には、グループ会社間の移動を含めた再配置による人員の適正配置、及びあらゆる経費の見直しと削減を進める。
 
(2)財務健全性の強化
開発案件を厳選すると共に、同社のビジネスモデルである有効活用サブリースへ傾斜する。また、売却手法を多様化して資産の売却を進め、有利子負債を削減する。
 
(3)確実な資金調達パイプの確保
08年9月末に長期借入金260億円を先行して調達した事に加え、09年3月末に三井住友銀行をアレンジャーとする向こう2年間のコミット型シンジケートローン契約(300億円)を締結した。
 
取材を終えて
09/3期は懸案であったホテル事業が黒字転換した。10/3期もホテル事業は大幅な増益が見込まれるが、厳しい事業環境を鑑みて連結業績予想は保守的なものとなった。また、設備投資も絞り込む考えだ。先行投資が続いたホテル事業が利益体質に転じたこの時期に、今一度、収益性や財務の健全性の見直しを進めようというもので、今回の説明会で中期展望が示された理由もこの辺りにあるものと思われる。
尚、保守的な業績予想となった10/3期だが、収益の鍵となる4月の寮事業期初稼働率が92.9%となり、まずまずのスタートをきったとの事である。この9月には30周年記念を迎え、更なる飛躍を期す同社に注目したい。