ブリッジレポート
(2317) 株式会社システナ

プライム

ブリッジレポート:(2317)システムプロ vol.4

(2317:東証1部) システムプロ 企業HP
逸見 愛親 会長
逸見 愛親 会長

【ブリッジレポート vol.4】2009年10月期第2四半期業績レポート
取材概要「09年春・夏モデルの受注が予想を下回った事を主因に上期及び通期の業績予想が下方修正された。しかし、足下、秋・冬モデルの引き合いが強い・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年6月30日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社システムプロ
会長(代表者)
逸見 愛親
所在地
横浜市西区みなとみらい 2-2-1
決算期
10月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2008年10月 9,603 1,816 2,153 1,275
2007年10月 7,930 1,595 1,555 849
2006年10月 5,917 961 967 602
2005年10月 4,180 717 691 561
2004年10月 3,093 677 643 391
2003年10月 2,461 516 511 280
2002年10月 1,940 398 380 196
2001年10月 1,524 180 175 93
株式情報(6/18現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
42,450円 223,330株 9,480百万円 25.2% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
2,400円 5.7% 3,786.87円 11.2倍 25,641.01円 1.7倍
※株価は6/18終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
システムプロの2009年10月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「データ通信系のファームウェア(組み込みソフト)」開発に強みを持ち、情報システム構築等のシステムインテグレーション事業を育成中。組み込みソフトとは、携帯電話やデジタル家電等に搭載されるマイクロコンピュータ(マイコン)を作動させるためのソフトで、マイコンと共に機器に組み込まれるソフトである。
連結子会社で組み込みソフトの開発・評価を手掛ける(株)ProVisionの他、基幹系システムに強みを持つカテナ(株)、オンラインゲーム・コンテンツ・プロバイダ事業の(株)ジークレスト、外注先としての機能を担う北洋情報システム(株)の持分法適用会社3社でグループを形成している。
 
<事業内容>
事業は、移動体高速データ通信システム事業と情報システムサービス事業に分かれ、売上構成比は、前者が69%、後者が31%(09/10期上期)。
移動体高速データ通信システム事業
移動体通信キャリア、端末メーカー、端末メーカーにライセンスしているソフトウェア製品開発販売会社等を顧客としており、携帯電話端末の仕様策定、新機能の設計・開発及び評価を行っている。この場合の機能とは、機能を実現させるための組み込みソフトの事で、メール機能やブラウザ機能で豊富な実績を有する他、マルチメディアプレーヤー機能、デジタルテレビ機能、GPS機能等にも強みを有する。
 
情報システムサービス事業
ネットショッピングや人材派遣等、インターネットを使ったビジネス(ポータルサイト等)を展開している企業向けのオープン系システム(大規模データベース連動型Webサイト開発等)を得意としているが、基幹系に強みを持つカテナ(株)との協業により、情報システム全般のソリューションを提供できるSIer(システムインテグレーター)機能を強化中である。
<沿革>
1983年3月にマイコンのソフト開発を目的としたヘンミエンジニアリング(株)として設立された(84年2月、現商号に変更)。80年代後半にかけて通信分野へ展開し、88年2月に日本初の対戦型オンラインゲーム「麻雀クラブ」を開発。96年4月には、対戦型オンラインゲームで培った通信システムの技術を活かして携帯電話用ソフトの受託開発を開始した。2000年以降、情報システムサービス事業(当時はネットワーク・ソリューション事業)に展開。07年2月には、基幹系のシステムに強みを持つカテナ(株)と資本・業務提携(持分法適用関連会社化、出資比率が35.9%へ上昇)を結び同事業の強化を図った。資本政策では、02年8月、大証ナスダックジャパン市場に上場。04年11月の東証2部上場を経て、05年10月、東証1部に指定替えとなった。
 
2009年10月期第2四半期決算
 
 
前年同期比1.1%の減収、同13.8%の経常減益。
端末メーカーやソフトウェア製品開発販売会社からの受注が減少したものの、販売奨励金負担の軽減で業績好調な移動体通信キャリアからの受注が堅調に推移し、ほぼ前期並みの売上高を確保した。利益面では、不採算案件の一巡による情報システムサービス事業の利益率改善やセキュリティ事業からの撤退(前年同期に損失を計上)、更には販管費の削減も進み営業利益は同7.9%増加した。経常利益及び当期純利益が減少したのは、カテナ(株)が投資有価証券評価損を計上した事による持分法投資損益の悪化が主な要因。中間配当は、当初の予定通り1株当たり1,200円を実施する。
 
 
移動体高速データ通信システム事業
足下の業績が好調な移動体通信キャリア各社は3.9G(3.9世代)へのインフラ整備を進めており、同社の受注も堅調に推移した。しかし、端末販売の減少等で苦戦が続く端末メーカーやソフトウェア製品開発販売会社はコストの大幅な削減を図っており、同社においても受注の減少と共に値引き要請が強まった。売上総利益が減少したのは、大型の好採算案件が寄与した前年同期は、通常よりも利益率が高かったため。
 
情報システムサービス事業
企業業績の悪化によりIT投資を抑制する動きが強まっており、業務システムの開発で延期や規模縮小が相次いだ。加えて、広告収入の減少でポータルサイト等の新規コンテンツ開発も減少したため、売上高は前年同期比9.2%減少した。ただ、不採算案件の一巡とプロジェクト管理の徹底により売上総利益が増加した。
 
(3)グループ企業の状況
(株)ProVision及びカテナ(株)が苦戦する一方、(株)ジークレスト、北洋情報システム(株)が堅調に推移した。
(株)ProVision
出資費率:
システムプロ80%、北洋情報システム20%
09/10期第2四半期は売上高613百万円(連結売上高への寄与は175百万円)、経常利益10百万円。携帯電話端末の品質検証業務を手掛けており、親会社の外注先としての位置付けだが、案件の減少を受けて外販を強化中。社員数252名(4月末現在)。
 
カテナ(株)
出資費率:
システムプロ37.8%(持分法適用会社)
金融向けソリューション開発、保守・運用業務、及び機器・ソフト販売を手掛ける。09/3期は売上高37,211百万円、経常利益2,039百万円。本業の業績は比較的堅調に推移したものの、投資有価証券評価損を計上した事等で、持分法投資損失64百万円が連結決算に反映された。「Google Apps」(注)の正規販売代理店となった事に加え、システムプロと共同で「クラウドソリューション」サービス事業に参入した。
 
(株)ジークレスト
出資費率:
システムプロ30.1%(持分法適用会社)、サイバーエージェント59.8%
コンテンツ・プロバイダ事業、オンラインゲーム事業、及び携帯向けコンテンツ事業を手掛けており、ゲームポータルサイトのカスタマイズ及び運用をシステムプロが支援している。既存コンテンツの充実と新規コンテンツの投入により結果、単月売上が2億円を突破。持分法投資利益31百万円が連結決算に反映された。
 
北洋情報システム(株)
出資費率:
システムプロ25.0%(持分法適用会社)
札幌市に本社を置き、システムプログループにおける組み込みソフト開発・評価等のオフショアとしての位置付け。09/8期上期は売上高1,193百万円、経常利益160百万円。持分法投資利益17百万円が連結決算に反映された。
(注)Google Apps(グーグル アプス、またはグーグル アップス)
グーグルによって提供されているサービス。従来のオフィススイート(オフィスソフトの一種)に似た機能を持つ、Gmail、Googleカレンダー、トーク、ドキュメント、サイトといったwebアプリケーション等のグーグル製品を独自ドメインで利用する事ができる。無料で利用可能なStandard Edition、1アカウントにつき年間50USドルのPremier Edition、及びStandard EditionとPremier Editionの機能が組み合わされ、教育機関やNPO向けに無料で提供されているEducation Editionがある。(参考文献:フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」)
 
下期の事業戦略
 
(1)足下の状況
情報システムサービス事業は、受託コンペ案件の増加など明るい材料もあるが、全般に厳しい状況が続いている。一方、移動体高速データ通信システム事業は、足下、通期の業績予想を下方修正した4月下旬とは状況が一変しており、夏以降の組み込みのエンジニア不足が懸念されるほどだ。具体的には、次世代のロードマップを見据えた提案が高い評価を受けて、移動体通信キャリアから大型案件の受注に成功、端末メーカーからも新たな戦略案件を受注した(ソフトウェア製品開発販売会社向けが引き続き厳しい状況が続いている)。
 
(2)各セグメントにおける現状と今後の戦略
移動体高速データ通信システム事業
これまで携帯端末へ経営資源を集中してきたが、今後は来るべきユビキタス社会を視野に入れた経営資源の配分を行なう。次世代端末のノウハウを蓄積する意味もあり、次世代のインフラ(基地局)関連を手掛ける他、航空、衛星通信、海上・鉄道無線、STB(セットトップボックス)、家電、カーエレクトロニクス等の非携帯分野へも参入していく。足下、LTE(Long Term Evolution:3.9世代携帯電話で採用される通信規格)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、Android(OS、ミドルウェア、ユーザーインターフェース、Webブラウザ、電話帳等の標準的なアプリケーションを含むグーグル提供の携帯電話用ソフト)、NGN(次世代ネットワーク)等の案件が好調な他、研究開発(次世代携帯電話の研究、メーカー共通の基盤やソフトウェア開発)、プログラミングを含む設計・開発、品質保証(消費者の手に渡る前に検証し品質を確保する)が回復傾向にある。
実際、09/10期通期の予想工程別売上構成比は、研究開発の構成比が11.7%(前期8.2%)と期初予想の4.1%から大きく上方修正されている(その後の工程である、開発、評価の増加につながるものと思われる)。また、キャリア別では、新ブランド「iida(イーダ)」を立ち上げたauの構成比が27.0%から35.2%に上昇する見込み(NTTドコモ:24.3%⇒28.5%、ソフトバンク:37.2%⇒32.4%、その他:11.4%⇒3.9%)。
 
 
情報システムサービス事業
足下、大手Sier系やメーカー系(開発・品質検証)の苦戦が続いているものの、カテナの取引先(3,000社超)を利用した企業向けソリューションや好不況の影響を受けにくい基幹系システムの保守・運用業務が堅調に推移している他、エンドユーザー系(ポータル、マッチングサイト、E-コマース、Netビジネス)やモバイル分野での業務系、SNS、ポータル、コンテンツと言ったモバイルソリューションに明るさが見えてきた。
同社はローコストオペレーションの強みに加え、サービスの拡充と質的向上により価格競争力を強化する事で受注拡大を図る考えだ。
 
 
2009年10月期業績予想
 
 
4月28日に下方修正された通期の業績予想に変更はなく、前期比9.9%の減収、同32.6%の経常減益予想。
開発案件の多かった携帯電話やカーエレクトロニクス分野での大幅な需要減少で、組み込み系ソフト開発会社の淘汰が進んでおり、主力の移動体高速データ通信システム事業が残存者利益を享受できる状況になってきた。加えて、移動体通信キャリア向けの大型案件の受注もあり、下期から来期にかけて底打ちから回復に向かう見込み。
来期以降のV時回復を念頭に、この下期は経験豊富なエンジニアを中心に積極的な採用活動を展開する考え。期末配当は、予定通り1株当たり1,200円(年2,400円)を実施する予定。
 
 
取材を終えて
09年春・夏モデルの受注が予想を下回った事を主因に上期及び通期の業績予想が下方修正された。しかし、足下、秋・冬モデルの引き合いが強いようで、移動体高速データ通信システム事業は夏以降フル稼働が予想される。今後、LTEやWiMaxなど次世代高速データ通信への取り組みが本格化してくる事もあり、下期は100名程度を目処に人員の採用を行う考えだ。100年に一度の経済不況等と言われるが、業務システム等のエンジニアと異なり、組み込み系のエンジニアはこういう時でないと流動化しないと言う。
4月下旬に作成された通期の業績予想は足下の状況が反映されていないため保守的なものとなったが、今後の業績に対する会社側の自信が人員採用計画に現れていると考える。