ブリッジレポート
(8860) フジ住宅株式会社

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ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.20

(8860:大証1部,東証1部) フジ住宅 企業HP
宮脇 宣綱 社長
宮脇 宣綱 社長

【ブリッジレポート vol.20】2010年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「世相を反映した低価格帯の中古住宅再生事業「快造くん」の販売好調に加え、広告宣伝費の抑制や保守的に見ていた金利の上昇がなかった事等で・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年11月17日掲載
企業基本情報
企業名
フジ住宅株式会社
社長
宮脇 宣綱
所在地
大阪府岸和田市土生町1丁目4番23号
決算期
3月
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年3月 45,300 2,584 2,388 1,361
2008年3月 48,793 2,723 2,413 2,097
2007年3月 52,221 4,233 4,090 911
2006年3月 41,333 3,229 3,196 1,312
2005年3月 43,954 3,208 2,799 1,661
2004年3月 34,387 2,034 1,891 684
2003年3月 32,905 1,198 1,028 545
2002年3月 33,419 899 692 297
2001年3月 31,433 2,928 2,681 1,503
2000年3月 34,268 1,596 1,117 -2,237
株式情報(11/5現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
365円 31,998,939株 11,680百万円 9.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
12.00円 3.3% 38.13円 9.6倍 458.80円 0.8倍
※株価は11/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フジ住宅の2010年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
地盤である大阪府下を中心に戸建分譲等、住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~200戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴がある。この他、金融機関とタイアップした土地有効活用事業、賃貸・管理事業、不動産ファンドや個人投資家向けの賃貸マンション販売事業、及び戸建分譲のノウハウを活かした中古住宅の改装販売等も手掛けている。各事業の内容は次の通り(下記の他に「その他の事業」が売上高の約0.5%を占める)。
 
(1)分譲住宅事業               09/3期売上構成比53%
用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築しており、「自由設計方式」と「街づくり」が特徴。近年では、消費者ニーズに対応した廉価な建売住宅の販売にも力を入れている。尚、地価上昇に伴う事業リスクの高まりから03年春以降、マンション用地の仕入を停止している。
 
(2)中古住宅の販売及び仲介事業          同 21%
「快造くん」のブランド名で展開している中古住宅の再生・販売が中心。地域密着営業により交差点単位での地域情報を収集し分析する。物件の鑑定力、仕入・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォームのマニュアル化による独自のノウハウ等が強み。
 
(3)不動産ファンド等向け賃貸マンション販売事業  同 2%
不動産ファンドや個人投資家を対象とした事業。不動産ファンド向けは、地価上昇によるリスクの高まりから、05年秋以降、土地の仕入を行っていない。現在は、資金運用手段として根強い需要があり、立地も都市部に限定されない個人投資向けに絞り事業展開している(以下、個人投資家向け一棟売賃貸マンション事業として表記する)。
 
(4)土地有効活用事業(建築請負)         同 9%
遊休地の有効活用を目的とした賃貸マンション・アパート等の建築提案を行なっている。市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の運営管理までを一貫してサポート。金融機関や既契約者からの紹介案件が多い。
コスト競争力の高い木造アパート「フジパレス」シリーズに08年11月単身高齢者専用賃貸住宅「フジパレスシニア」が加わり、より独自性が強まった。
 
(5)賃貸及び管理事業               同 15%
100%子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けている。安定収益源となるばかりでなく、土地有効活用事業や不動産投資ファンド及び個人投資家向け賃貸マンションの販売等との相乗効果も高い事業。
 
2010年3月期上期決算
 
 
中古住宅の好調とコスト削減により大幅増益
低価格帯の中古住宅「快造くん」の販売好調に加え、価格調整等の効果もあり、自由設計方式の戸建住宅も大きく伸びた。利益面では、低価格物件の好調や価格調整の影響等で売上総利益が低下したものの、増収効果とコスト削減により営業利益が前年同期比1.5倍に拡大。下期以降の売上となる受注契約高も21,702百万円と同10.2%増加し、期初計画を21.9%上回った。第2四半期末の配当は1株当たり6円を予定(当初予定は4円)。
尚、期初の上期業績予想は、連結売上高19,360百万円、営業利益364百万円、経常利益200百万円、四半期純利益112百万円。また、今期より会社の選択ではなく改正制度の改訂により請負工事の一部で売上計上基準を、引渡し基準から工事進行基準に変更している。これにより売上高が253百万円、営業・経常・税前利益が79百万円押し上げられた。
 
(2)事業別動向
不動産販売事業   売上高:17,863百万円(前年同期比31.0%増)、営業利益:1,057百万円(同327.1%増)
顧客の住宅間取りや設備仕様に対する様々なニーズに対応した自由設計・オプション方式(以下、自由設計方式)の住宅や中古住宅の引渡しが順調に進み、売上・利益が大きく伸びた。販売面では、環境が大きく好転したわけではないが、値ごろ感のある物件に対する需要は根強く、拠点開設効果もあった中古住宅の販売が好調に推移。価格調整を行った自由設計方式の住宅も棟数ベースで同14%強増加した。
自由設計方式と小規模の新築建売住宅を合わせた戸建住宅は、低価格物件の需要シフトもあり受注契約高が11,910百万円と同5.2%減少(棟数ベースでは8.3%増)したものの、売上高は11,357百万円と同26.7%増加した。
中古住宅は、堺市方面及び大阪市内での仕入、販売の拠点として開設したフジホームバンク堺店・泉北店・大阪店の各営業店が軌道に乗り販売拡大に寄与、受注契約高は同38.6%増の5,799百万円、売上高は同49.1%増の5,951百万円となった。尚、事業セグメントが異なるものの、小規模の新築建売住宅と中古住宅は同じ事業部が手掛けている。この上期に小規模の新築建売住宅の契約高が減少したのは、中古住宅に注力した結果でもある。
個人投資家向け一棟売賃貸マンションは引渡しの減少で売上高が453百万円と同22.9%減少したものの、受注契約高は1,059百万円と同39.7%増加した。
 
土地有効活用事業   売上高:1,407百万円(前年同期比30.5%減)、営業利益:238百万円(同38.3%減)
高齢者専用賃貸住宅フジパレスシニアをけん引役に受注契約高が2,865百万円(20件)と同35.8%増加したものの、引渡し件数の減少(前年同期20件→13件)により売上高、営業利益共に減少した。尚、月12万円程度の負担で医療ケアや食事サービスを受ける事ができるフジパレスシニアの評価は高く、更なる事業拡大に期待が高まる。
 
賃貸及び管理事業   売上高:3,360百万円(前年同期比5.4%増)、営業利益:194百万円(同14.5%減)
土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件の取扱い件数の増加等で売上高が増加したものの、自社賃貸物件の修繕費の発生等が負担となり営業利益が減少した。
 
その他事業     売上高:143百万円(前年同期比49.3%増)、営業利益:20百万円(同138.9%増)
中古住宅の仲介手数料やローン事務手数料に加え、前期よりテストマーケティングを開始した住宅リフォーム事業に係る売上高24百万円を計上した。
 
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比610百万円増の50,514百万円となり、自己資本比率は29.1%となった。借方では、9月に25億円程度のまとまった用地仕入(大阪府の入札物件)を行った事等で、たな卸不動産が増加する一方、現預金が減少(前年同期比では、ほぼ同水準)。貸方では、第2四半期末を迎えて現預金を積み増した事で短期借入金が増加した他、利益の計上で純資産も増加した。
一方、CFは、利益の増加や資産効率の改善により、営業CFのマイナス幅が大幅に縮小。フリーCFが前年同期の5,166百万円のマイナスから1,217百万円のマイナスに改善した。尚、通期の営業CFは、2,654百万円の黒字が見込まれている。
 
 
 
2010年3月期業績予想
 
 
前期比3.8%の増収、同12.1%の経常減益予想
中古住宅が大きく伸びる他、来期引渡し予定だった物件が前倒しとなる土地有効活用事業の売上も増加する。ただ、不動産販売事業において低価格住宅の構成比が高まる事や自由設計方式の住宅で市場ニーズに応じた価格設定での販売を進める事等で利益率の低下が予想され、営業利益は同14.1%減少する見込み。1株当たり6円の期末配当(年12円)を予定している。
尚、従来、同社の業績は下期偏重型であるが、今期は自由設計方式の住宅で上期に前倒しの案件があった事等で例年ほどの下期偏重にはならない。
 
通期業績予想の根拠
上期の売上実績に第2四半期末の受注契約残高のうち下半期売上計画分16,192百万円を加えた38,967百万円が既に当期の売上として見込まれており、年間売上計画の82.9%に達する。加えて、10月以降の受注契約と賃貸管理の売上が当期の売上に加わるため、通期の売上予想47,000百万円に無理は無い。
 
 
 
取材を終えて
世相を反映した低価格帯の中古住宅再生事業「快造くん」の販売好調に加え、広告宣伝費の抑制や保守的に見ていた金利の上昇がなかった事等で上期は売上・利益共に期初予想を大幅に上回った。厳しい事業環境が続く中での好業績の要因として、会社側では「地域に密着した住まいのトータルクリエイター(住宅事業の多角化)としてのバランス経営」を挙げている。どういう事かと言うと、事業環境や消費者ニーズを鑑みて、比較的販売価格の高い自由設計方式でブレーキを踏む一方、値ごろ感のある小規模の新築建売住宅や中古住宅でアクセルを踏み込んだ。ただ、地価の下落を踏まえて、下期以降は守りから攻めに転じる考え。資金調達力を生かし、現状の売価でも適切な利益を確保できる自由設計方式の戸建用地の仕入を積極化する。たな卸資産の入れ替えが進み利益率の改善が見込まれる来期は増益に転じる可能性が高い。