ブリッジレポート
(8931) 和田興産株式会社

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ブリッジレポート:(8931)和田興産 vol.7

(8931:JASDAQ) 和田興産 企業HP
和田 憲昌 会長
和田 憲昌 会長
小阪 堅三 社長
小阪 堅三 社長
【ブリッジレポート vol.7】2010年2月期上期業績レポート
取材概要「上期は前年同期比で大幅な減収・減益となったが、たな卸資産は08年8月末に比べて約48億円、期初との比較では約42億円減少した。また、有利子負債も・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年11月24日掲載
企業基本情報
企業名
和田興産株式会社
会長
和田 憲昌
社長
小阪 堅三
所在地
〒650-0023 神戸市中央区栄町通4-2-13
決算期
2月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年2月 32,333 2,577 1,548 118
2008年2月 29,564 4,020 3,063 1,613
2007年2月 30,629 3,318 2,736 1,357
2006年2月 25,256 2,769 2,366 1,292
2005年2月 22,965 2,594 2,203 1,162
2004年2月 23,723 2,226 1,689 912
2003年2月 22,080 2,100 1,499 652
2002年2月 22,630 2,296 1,846 917
2001年2月 22,926 3,399 2,941 1,315
株式情報(10/16現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
357円 10,000,000株 3,570百万円 0.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 4.2% 30.00円 11.9倍 1,363.75円 0.3倍
※株価は10/16終値。
 
和田興産の2010年2月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
兵庫県神戸市を地盤に、明石市、芦屋市、西宮市、尼崎市、で、マンション分譲を中心に、不動産賃貸、土地有効活用等のソリューション、及び木造戸建分譲等を手掛ける。マンション分譲は、「ワコーレ」ブランドで50戸前後の中規模マンションが中心。神戸市内では、8年連続で「供給戸数」第1位、11年連続で「供給棟数」第1位の実績を誇り、2009年8月末現在の累積供給実績は300棟(11,012戸)。事業はマンション分譲を中心とする不動産販売事業と、住居、店舗、事務所、駐車場(月極・時間駐車)等の賃貸を中心とする賃貸その他事業に分かれ、2009年2月期は、不動産販売事業が売上高の91.8%を、売上総利益の76.8%を占めた。
 
 
<沿革>
1899年1月、神戸の大地主であった和田家が神戸市にて不動産賃貸業を創業。1966年12月に和田興産(有)として法人化され、79年9月に和田興産(株)に改組。分譲マンションの一棟販売で実績をつくり、91年3月、自社ブランド「ワコーレ」ブランドによる分譲マンション事業を本格化。95年1月の阪神淡路大震災を受けて、96年6月には震災復興のための優良建築物等整備事業にも従事した。04年12月、JASDAQ市場に株式を上場。
 
 
2010年2月期上期決算
 
 
前年同期比32.2%の減収、同92.9%の経常減益となった。
主力の不動産販売事業において引渡戸数が減少した事に加え、販売価格見直し等の影響で売上総利益率も悪化、販管費の削減に努めたものの営業利益は同78.9%減少した。尚、前年同期は100億円プロジェクトの引渡しがあり、売上高100億円、売上総利益21億円の押し上げ要因となった。分譲マンションは、過去に販売契約を結んだ物件が引き渡されて、はじめて売上が計上される。このため、上期の販売動向や今後の業績を考える上では、売上・利益よりもマンションの発売戸数、契約戸数、及び受注残戸数の方が大切。上期は、発売戸数が同22.8%増、契約戸数が同26.9%増と共に高い伸びを示しており、前年同期に58.2%減だった受注残戸数も同2.7%増加している。また、利益率の悪化は販売価格見直しが要因である。

期初予想との比較では、引渡戸数が予想を28戸下回った事で分譲マンションの売上が予想を約900 百万円下回る一方、賃貸マンション(収益物件)の売却等により、その他不動産販売の売上が予想を約300百万円上回った。利益面では、収益物件の売却益の計上等が上振れ要因となった。
 
 
<不動産販売事業>
分譲マンション販売
 分譲マンション 引渡戸数     267戸(前年同期比 32.9%減)
 同       契約戸数     311戸(同     26.9%増)
 同       発売戸数     285戸(同     22.8%増)
 同       受注残戸数    230戸(同     2.7%増)
 同       仕入戸数     197戸(同     46.5%減)
 
引渡戸数が計画を28戸下回った(内16戸は期ズレ、9月引渡)事で売上高が予想を下回ったものの、販売は回復基調にあり契約戸数が前年同期比26.9%増加。前期に評価損を計上した物件の売却が進んだ。発売戸数も285戸と同22.8%増加し、他社の供給が減少した事もあり、神戸市内での供給シェアは20%(198戸/920戸=20.5%)を超えた。ただ、採算重視の慎重な仕入に徹した事ため、仕入戸数は197戸と同46.5%減少した。
 
その他の不動産販売(戸建て住宅及び1棟卸マンション等の販売)
収益物件の売却等が寄与し、売上高が前年同期比28.7%増加。09/2期に本格的な事業展開を開始した木造戸建分譲では、4月に神戸市内で戸建プロジェクト用地(41戸分)の契約を締結した(12月決済)。
 
<賃貸その他事業>
 
収益性、効率性の観点から賃貸資産の入れ替えを進めており、この一環として、個人富裕層を対象に小規模・経年物件を売却する一方、希少なファミリータイプ物件を取得(8月契約、9月末決済)。また、神戸市内の賃貸マンション2棟(計118戸)が新たに稼動した。既存物件の稼動は順調で、賃貸マンション入居率は第2四半期末で95.3%(前期末96.8%)と高水準を維持している。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
たな卸資産と有利子負債の削減を進めた結果、第2四半期末の総資産は53,184百万円と前期末比4,238百万円減少した。資金の回収を図るべく、前期に評価損を計上した物件を含み仕掛販売用不動産を5,003百万円圧縮したため、営業CFが大幅に改善。加えて、事業用固定資産を売却した事で投資CFも黒字となり、フリーCFが4,957百万円の赤字から4,375百万円の黒字に転換した。この資金の大半を有利子負債の返済に充てたため財務CFが赤字となったものの、有利子負債が同3,635百万円減少。現預金は同544百万円増加した。
 
 
2010年2月期業績予想
 
 
前期比1.0%の減収、同80.6%の経常減益予想。
上期は営業利益段階で287百万円、経常利益段階で153百万円、それぞれ期初予想を上回ったが、第3四半期以降の分譲マンション市場の動向を慎重に見極める必要性から期初予想を据え置いた。
売上高はほぼ前期並みを確保するものの、分譲マンション事業における販売価格見直しの影響等で営業利益及び経常利益は大幅に減少する見込み。ただ、当期純利益は前期実績を上回る。
配当は前期と同額の1株当たり15円を予定。
 
 
分譲マンション事業
売上高25,000百万円、売上総利益2,400百万円を見込んでいる。
近畿圏の分譲マンション供給は低調。在庫圧縮に追われ、資金調達も厳しい中堅デベロッパーの供給が激減している。一方、販売価格の見直しや住宅取得に対する支援制度の拡充により契約は回復基調にある。また、同社が地盤とする神戸市は、都市魅力度ランキングの上位にランキングされる等、住宅地としての魅力が高く、他地域からの人口流入による人口増が続いている。
 
同社の累積供給数   芦屋市 7棟(152戸)、西宮市19棟(564戸)、神戸市213棟(9,016戸)
 
こうした中、同社は今期をボトムとして来期以降の緩やかな成長軌道に乗せるべく、前期に評価損を計上したたな卸資産の契約・引渡に注力する一方、採算性を重視した仕入に注力する考え。下期の販売の中心となるのは、神戸・阪神間における一次取得者向け中小規模マンション(1棟30~60戸の物件)である。仕入は粗利率18%の確保を目処に採算を重視し、大手との競合が少ない中・小の物件にフォーカスする。
 
 
その他不動産販売事業
地価下落による割安感から需要堅調な戸建住宅の開発を強化すると共に、中古マンション事業を開始する。前者においては、08年3月に新設した戸建事業推進室が物件(戸建住宅)開発を行っており、年末に竜ヶ台プロジェクト(神戸市・57戸)の分譲を開始する他、今期中に五色山プロジェクト(神戸市・41戸)の開発許可を取得できる見込み。また、後者においては、住宅地として人気が高く、中古市場相場が安定した地区を対象とし、賃貸事業で培ったリニューアルのノウハウを活かしていく考え。
 
賃貸事業
売上高2,400百万円、売上総利益1,100百万円を見込んでいる。
中期的な目標である2,600戸体制を視野に入れつつ、希少な都心のファミリー物件や中規模以上の物件の取得に力を入れる一方、小規模・経年物件を売却し資産の入れ替えを進める。また、仕入は利回り12%を目処に、築10年未満の築浅収益物件を中心に進める。事業全体で売上総利益率50%、入居率95%が目標。
 
 
 
取材を終えて
上期は前年同期比で大幅な減収・減益となったが、たな卸資産は08年8月末に比べて約48億円、期初との比較では約42億円減少した。また、有利子負債も、08年8月末の356億円から47億円減少しており、厳しい事業環境の中で着実に財務の健全化を進める一方、配当も行っている。同社も急激な市況悪化の影響を免れる事はできなかったが、致命傷を受けずに済んだのは、住宅を中心にエンドユーザー向けの実需をベースとした不動産事業を堅実に展開してきた結果、地元において事業主としての信頼性や分譲マンションのブランド力を培ってきたことによる。加えて賃貸事業が収益の柱として成長していることも大きな要因と考える。
また、住宅金融支援機構から資金を調達できた事も収益を確保できた一因だが(このため、買い叩きを余儀なくされるバルクセールでの処分を回避できた)、これとても住宅金融支援機構の厳しいコーポレート審査をパスする必要があり、優れた経営基盤があればこそ。景気の二番底懸念などマクロ経済に不安はあるものの、同社においては通期業績の達成に期待したい。