ブリッジレポート
(4323) 日本システム技術株式会社

プライム

ブリッジレポート:(4323)日本システム技術 vol.11

(4323:東証2部) 日本システム技術 企業HP
平林 武昭 社長
平林 武昭 社長

【ブリッジレポート vol.11】2010年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「2010年3月期第2四半期決算は、売上高、営業利益、経常利益ともに上場来の最高を達成したが、業界環境、経済状況を考慮すれば健闘したと言・・・」続きは本文をご覧ください。
2009年12月29日掲載
企業基本情報
企業名
日本システム技術株式会社
代表取締役社長
平林 武昭
所在地
〒530-0005 大阪市北区中之島2-2-7
決算期
3月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年3月 10,449 806 852 447
2008年3月 10,705 931 945 426
2007年3月 9,711 389 405 138
2006年3月 7,917 111 125 605
2005年3月 8,189 522 502 319
2004年3月 7,767 540 537 67
2003年3月 7,064 676 635 194
2002年3月 6,939 658 606 181
2001年3月 6,285 834 814 282
株式情報(11/27現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
789円 4,739,153株 3,739百万円 10.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
25.0円 3.2% 98.12円 8.04倍 885円 0.89倍
※株価は11/27終値。発行済株式数は直近期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
日本システム技術の2010年3月期第2四半期累計業績について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ソフトウェアの受託開発(09/3期売上構成比62%)、教育機関向け業務パッケージの開発・販売(同19%)、及び情報システム関連機器等の販売(同19%)を行っている。
 
<沿革>
設立は、1973年3月。JAST(同社)の特徴である教育機関向け業務パッケージには、90年代前半から取り組んでおり、94年10月に学校事務支援統合システムパッケージソフト「GAKUENシリーズ」の販売を、98年8月に大規模大学向けERP「GAKUEN REVOLUTION(学務)」の販売を、2000年2月に学校関係者間の情報ネットワークを実現する統合型Webサービスシステム「UNIVERSAL PASSPORT」の販売を、それぞれ開始。01年11月のジャスダック上場を経て、03年2月に東証二部に株式を上場した。
 
<特徴>
1.理念重視の経営
「情報化の創造・提供による社会貢献」をモットーとして、いかなる企業系列にも属さない完全独立の立場を堅持することにより、業種、技術分野、プラットフォーム等を問わず、常に最新の技術に挑戦しつつ、自由な立場で幅広い分野の開発業務に取り組むことを経営の基本方針としている。

この基本方針に則り、顧客、株主、社員、社会がそれぞれWin-Win(双方有益)の関係を築くべく、「四方良し」の理念を掲げ、それぞれの価値を最大化し、全体としての企業価値を高めることにより、安定的成長を実現することを目標としている。

また、このような成長の原動力となるのは従業員一人一人の情報システム開発に対する情熱と顧客への誠心誠意のサービス製品であり、そのためには人間力の研鑽が何よりも先行すべきである、との信念に基づいた「人づくり」経営に徹することにしている。
 
(経営理念の基本的考え方)
「天爵を修めて人爵これに従う」=天爵を修めることで、はじめて人爵を与えられる。人爵を得て、その結果として天爵を与えられることはない。
 
2.広範な情報サービスの提供
メーカーや系列等一切の成約を受けず、自由な立場で広範な分野でサービスを提供することが出来る。
 
(サービス内容)
1.ソフトウェア開発←(項番と書出し位置との間隔狭まりませんか…以下同様)
2.システムコンサルテーション
3.システム管理運用
4.システムインテグレーションサービス
5.ソフトウェアパッケージの開発・販売
6.情報機器の販売、ネットワーク構築
 
(事業セグメント)
1.ソフトウェア事業(ソフトウェアの受託開発) ⇒ SIerの側面
① ビジネスアプリケーション分野     (事務処理系システム)
② エンジニアリングアプリケーション分野 (制御、技術系システム)
③ イベントアプリケーション分野  (スポーツ・文化イベント関連システム)
④ アウトソーシングサービス    (情報システムの一括運営管理)
 
2.パッケージ事業(ソフトウェアパッケージの開発、販売) ⇒ パッケージメーカーの側面
戦略的大学経営システムの開発・販売、導入支援、保守等

3.システム販売事業(ハード、ソフトの販売、ITインフラの構築) ⇒ 販社(BtoB)の側面
ハードウェア・ソフトウェアパッケージの販売、保守、ネットワーク構築等
 
3.大手優良企業群との長期取引
下表のように、大手企業群と長期取引が多いのも同社の特色。しかもすべてが直接取引である。 長期取引であるため、先方顧客からは同社が「コア・パートナー」となっている場合が多く、そのため不況期でも受注が大きく落ち込むことが少ないのだろう、と会社側は述べている。
 
 
上記の8社合計で売上高の約46%(09年9月中間期)を占めるとの事。
 
 
大阪と東京の2本社制を敷いており、早くから海外に開発拠点を展開している事も特徴。また、2006年8月には、大学向けマーケットを中心とする文教分野での業容拡大を図るべく、首都圏の大規模大学を中心に、システム機器等の販売で実績のあるアルファコンピュータ(株)の全株式を取得した。これにより、パッケージ、情報機器及びネットワーク等を一貫して提供する大学向けSI(システム・インテグレーション)事業の大規模展開が可能となった。

なお提携先である(株)ビー・エヌ・アイ・システムズおよび無錫華夏計算機技術有限公司への出資は2009年7月に終了(持株を全て売却)したが、両社との事業上のアライアンスは変わらず継続している。
 
 
大学向け経営改革ソリューションとして提供している統合業務パッケージは、94年10月の発売以来、295校(09年11月24日現在)への導入実績を有し、文教マーケットにおいて高い評価を受けている。

特徴は、大規模な総合大学から小規模の短期大学に至るまで、主要業務を全方位でカバーしているため、パラメーターの設定だけで大学個々のニーズに柔軟に対応できる事。つまり、カスタマイズの必要がないため、ユーザーは導入時及びその後の運用・メンテナンスに関わるトータルコストを削減する事ができる。なお、1案件あたりの導入金額は数10万円~数億円と、導入規模により広範囲にわたる。

少子化問題への取り組み戦略のひとつとして、大学各校は優秀な学生を確保するべく、学生向けサービスや経営品質の向上に取り組んでいる。しかし、全国に約1,200校あると言われる大学・短大の大半がメインフレーマー等による手作りのシステムやカスタマイズを前提としたパッケージを使っていという。品質・価格両面での優位性から競合は少ないようで、販売拡大の余地は大きいと思われる。現在20%台のシェアを、早期に30%に引き上げたい考え。
 
 
6.その他の特長
 
(人材重視) ⇒ 品質安定、低コスト体質
●新卒中心の採用と長期的な人材育成
●人材流動の激しい業界内で高い定着率を維持

(品質、信頼へのこだわり) ⇒ 高いリピートオーダー率、大手顧客との長期取引
●「一括丸投げ」は行わず、社員中心のプロジェクト編成
●請け負った案件は顧客が満足するまでやり抜く、途中退場はしない

(特徴的な営業戦術) ⇒ 受託開発パッケージ販売・機器販売の共存共栄に成功
●既存顧客はSE自らリピート案件を発掘(営業なき営業)
●新規顧客は専門営業がソリューション提案
●パッケージ事業は代理店販売が主体

(徹底したコスト管理) ⇒ 問題の早期発見による不採算案件の最小化、低コスト体質
 
2010年3月期第2四半期累計業績
 
注:以下の業績関連の表、グラフおよび説明においては、

  08/9期=2009年3月期第2四半期累計
  09/9期=2010年3月期第2四半期累計  を表しています。
 
<連結業績>
 
2009年3月期の業績結果は上表のようになったが、営業増益の要因は、全般的なコスト低減、システム販売事業の付加価値アップ、パッケージ事業の好調継続などによる、と会社側は述べている。また当期純利益が大幅増益となったのは、提携先の投資有価証券売却益75百万円を計上したことによるが、資本関係解消後も友好的な関係は変わっていないとの事。

事業セグメント別の動向は以下のようになった。
 
<事業セグメント別業績動向>
 
(ソフトウェア事業)
金融、製造業向けは前期の反動もあり減収であったが、サービス・流通および通信業向けは増収。ただし、不採算案件の影響は従来水準よりやや多めであり、そのため営業利益率は低下した。

(パッケージ事業)
売上面では、EUC(関連システムの個別受託開発)および保守が2桁増収となった。また製造原価および研究開発費の顕著な減少により営業利益率は大きく改善した。

(システム販売事業)
大学向け機器販売案件を中心に増収となったが、高付加価値案件(主に公共系向け)の割合減少で減益となった。
 
<分野別売上構成推移>
分野別の売上高構成比は下表および下図のようになった。
 
 
 
<パッケージ事業の売上構成>
 
またパッケージ事業の売上構成は下表のようになり、「PP販売」を除くすべてのカテゴリーで増収となった。
 
 
 
<最終顧客の業種別売上構成推移>
 
顧客の業種別売上構成は下表のようになったが、多分野バランス展開による安定成長戦略を継続している。
 
 
(通信):エンジニアリングアプリケーション分野(主に携帯向け)を中心にトータルで約10%増収
(金融):17%減
(サービス・流通):大型Web系があったことなどから36%増
(製造):44%減
(官公庁他):システム販売事業の業種別構成の変化により35%減
(教育機関):パッケージ事業の好調により21%増収
 
<売上先構成>
 
売上先(顧客別)構成は下表のようになった。
 
 
 
2010年3月期業績予想
 
<連結業績>
 
会社側では2010年3月期の業績を下表のように予想しており、当初予想を変えていない。 外部環境は混乱の局面だが、増収・増益を達成出来ると予想している。
 
 
<当初想定との差異分析および展望>
当初の想定と何がどのように異なり、今後どのような施策をとっていくのか、会社側では以下のように分析、対応している。
 
 
<安定性の自己分析>
 
このような不況下にもかかわらず、安定した業績を達成出来ることについて、会社側では当社の強みを以下のように分析している。
 
【顧客】
大企業向けB2BのSI受託中心ながら、顧客、分野、産業何れも一極集中なし
   (20%超シェアの顧客なし) ⇒ 絶大なヘッジ力、二枚腰の業績
売上高の約50%は取引10年超の安定顧客+毎期新規性の高い大型案件取り込む
最近の不況による影響が軽微な顧客、分野を持っている(文教、サービス、公共)
 
【内部ビジネス】
自社流開発①:見積審査や個別原価計算の仕組み ⇒ 不採算案件が少ない
   (3百万円超での赤字プロジェクト数は09/3期、09/9期とも1%未満)
自社流開発②:「巻取り」の極意 ⇒ 他社の赤字案件を当社で黒字案件化
小さな本社:本社間接部門総人員=23/629名(総務、人事、経営企画、財務、審査)
 
【財務】
日常運転資金は実質無借金経営(コミットメントライン契約の継続は容易)
貸倒れ債権はゼロ
当初予想からの業績のブレの少なさ(下表参照)
 
【社員】
業界平均を大きく下回る離職率(年間5~8%)
新卒採用計画も大きくブレない(現在~来期50~70名位を想定)
 
(業績の当初予想/実績対比)
 
 
 
取材を終えて
2010年3月期第2四半期決算は、売上高、営業利益、経常利益ともに上場来の最高を達成したが、業界環境、経済状況を考慮すれば健闘したと言えよう。業態のバランスが取れていること、長年取引の顧客が多いことなどが要因と思われる。

通期(2010年3月期)については、会社側では当初から増収、増益を予想していたが、中間期でもこの予想は変えていない。景気動向から不透明感は残るが、上半期の健闘を考えれば達成は可能と思われる。

年間配当25円を公約しているが、業績予想、手元現預金等からすれば、もっと増配が可能だろう。上記のように、厳しい経済環境にもかかわらず増益を続けているのだから、今後は潤沢な手元資金の有効活用が課題になると思われる。株価も低位に留まっており、バリュエーション的には割安といえよう。