ブリッジレポート
(8860) フジ住宅株式会社

プライム

ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.22

(8860:大証1部,東証1部) フジ住宅 企業HP
宮脇 宣綱 社長
宮脇 宣綱 社長

【ブリッジレポート vol.22】2010年3月期業績レポート
取材概要「10/3期の業績予想は09年1~3月の厳しい経済情勢が続く事を前提に策定したが、地域密着による住まいの多角経営の強みが発揮され業績予想を2度上方修・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年5月18日掲載
企業基本情報
企業名
フジ住宅株式会社
社長
宮脇 宣綱
所在地
大阪府岸和田市土生町1丁目4番23号
決算期
3月
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 48,614 2,137 2,118 1,237
2009年3月 45,300 2,584 2,388 1,361
2008年3月 48,793 2,723 2,413 2,097
2007年3月 52,221 4,233 4,090 911
2006年3月 41,333 3,229 3,196 1,312
2005年3月 43,954 3,208 2,799 1,661
2004年3月 34,387 2,034 1,891 684
2003年3月 32,905 1,198 1,028 545
2002年3月 33,419 899 692 297
2001年3月 31,433 2,928 2,681 1,503
2000年3月 34,268 1,596 1,117 -2,237
株式情報(5/10現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
335円 31,998,769株 10,720百万円 8.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
14.00円 4.2% 45.31円 7.4倍 469.02円 0.7倍
※株価は5/10終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フジ住宅の2010年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
地盤である大阪府下を中心に戸建分譲等、住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~200戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴がある。この他、金融機関とタイアップした土地有効活用事業、賃貸・管理事業、個人投資家向けの賃貸マンション販売事業、及び戸建分譲のノウハウを活かした中古住宅の改装販売等も手掛けている。各事業の内容は次の通り(下記の他に「その他の事業」が売上高の約0.6%を占める)。
 
(1)分譲住宅事業           10/3期売上構成比46%
用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築しており、「自由設計方式」と「街づくり」が特徴。近年では、消費者ニーズに対応した廉価な建売住宅の販売にも力を入れている。尚、地価上昇に伴う事業リスクの高まりから03年春以降、マンション用地の仕入を停止している。
 
(2)中古住宅の販売及び仲介事業          同 27%
「快造くん」のブランド名で展開している中古住宅の再生・販売が中心。地域密着営業により交差点単位での地域情報を収集し分析する。物件の鑑定力、仕入・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォームのマニュアル化による独自のノウハウ等が強み。
 
(3)個人投資家向け一棟売賃貸マンション販売事業  同 3%
元は不動産ファンドを対象とした事業。不動産ファンド向けは、地価上昇によるリスクの高まりから、05年秋以降、土地の仕入を行っておらず休止中。現在は、同様のビジネスモデルで1棟あたり1億円前後の賃貸アパートを中心に資金運用手段として根強い需要があり、立地も都市部に限定されない個人投資向けに絞り事業展開している。
 
(4)土地有効活用事業(建築請負)         同 10%
遊休地の有効活用を目的とした賃貸マンション・アパート等の建築提案を行なっている。市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の運営管理までを一貫してサポート。金融機関や既契約者からの紹介案件が多い。コスト競争力の高い木造アパート「フジパレス」シリーズに08年11月単身高齢者専用賃貸住宅「フジパレスシニア」が加わり、より独自性が強まった。
 
(5)賃貸及び管理事業               同 14%
100%子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けている。安定収益源となるばかりでなく、土地有効活用事業や個人投資家向け賃貸マンションの販売等との相乗効果も高い事業。
 
2010年3月期決算
 
 
前期比7.3%の増収、同11.3%の経常減益
比較的販売単価の高い自由設計方式の戸建住宅が苦戦したものの、消費者の低価格ニーズを捉えた中古住宅「快造くん」が大きく伸びた他、小規模の建売住宅の売上も増加。この他、不況下でも根強い需要のある資産家向けの個人投資家向け一棟売賃貸マンションの販売や低家賃の高齢者専用アパート「フジパレスシニア」をけん引役に土地有効活用事業の売上も増加した。ただ、低価格物件の売上構成比の上昇や価格調整の影響等で売上総利益が2.1ポイント低下。中古住宅の販売に伴う販売手数料や人件費等を中心にした販管費の増加もあり、営業利益は同17.3%減少した。当期純利益が同9.1%の減少にとどまったのは、補修工事費(110百万円)が無くなり営業外損益が改善した事や税効果会計の影響による。尚、受注高(販売契約高)は前期比20.6%増の45,101百万円。中古住宅が同29.6%増加した他、自由設計方式の戸建住宅も18.6%増加した。
 
(2)事業別動向
不動産販売事業(戸建住宅、中古住宅、個人投資家向け一棟売賃貸マンション)
売上高は36,634百万円と前期比6.0%増加したものの、小規模の建売住宅の構成比の上昇や自由設計方式の戸建住宅の価格調整等で営業利益は1,472百万円と同29.6%減少した。
戸建住宅は引渡し物件の販売単価の低下で売上高が22,183百万円と同7.7%減少したものの、受注高は同14.2%増の24,992百万円と販売は順調に推移した。中古住宅は、堺市方面や大阪市内での仕入、販売の拠点として開設したフジホームバンク堺店、同泉北店、同大阪店の各営業店の運営が軌道に乗り、受注戸数・引渡し戸数共に大きく増加。金額ベースでは、受注高が同29.6%増の12,784百万円、売上高が同35.5%増の12,572百万円。この他、資産家向けを中心に根強い需要がある個人投資家向け一棟売賃貸マンションは、売上高が同31.5%増の1,539百万円、受注高が同108.4%増の2,112百万円。
 
土地有効活用事業
コストパフォーマンスの高さから人気の高い高齢者専用賃貸住宅「フジパレスシニア」の受注(24棟、3,859百万円)が順調に推移し、受注高が4,952百万円と前期比10.4%増加。売上高も4,948百万円と同23.9%増加した。利益面では粗利率の高い「フジパレス・シリーズ」の引渡しが大幅に増加した事で、営業利益が1,062百万円と同44.5%増加した。
 
賃貸及び管理事業
土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件の取扱い件数の増加に伴い、売上高が6,741百万円と前期比3.2%増加したものの、賃貸住宅市場悪化に伴う入居率の低下や集客費用の増加に加え、自社賃貸物件の修繕費等の負担もあり営業利益は276百万円と同48.9%減少した。
 
その他事業
中古住宅の仲介手数料やローン事務手数料に加え、前期よりテストマーケティングを開始した住宅リフォームの売上74百万円を計上した事等で、売上高は289百万円と前期比45.9%増加、営業利益も46百万円と同30.3%増加した。
 
 
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比457百万円増の50,362百万円。昨夏以降、潮目の変化を読み取り、有利子負債を積み増して低価格で供給できる土地の仕入れを積極的に進めたため、現預金と有利子負債が増加した。尚、資金調達力を活かし入札参加者(競合)の少ない中で地方公共団体の入札物件を中心に11/3期以降の契約・売上対応の利益率の高い分譲用地を相当部分仕入れる事ができたが、販売・引渡しが順調に推移したため棚卸資産はわずかに減少した。CFの面では、税負担の増加(130百万円→1,145百万円)により営業CFが減少。投資CFはほぼ前期並みにとどまったため、フリーCFも大幅に減少したものの263百万円の黒字を確保。短期借入金の返済を進めたため財務CFがわずかに減少したものの、現金及び現金同等物期末残高は6,547百万円から6,835百万円に増加した。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
住宅資金の贈与税非課税枠拡大等も追い風となり、4期ぶりの増収・増益へ
前期に販売(受注)が伸びた自由設計方式の戸建住宅の売上(引渡し)が増える他、引き続き中古住宅も高い伸びが続く見込み。また、小規模の建売住宅も価格訴求力を武器に堅調な推移が見込まれ、売上高が57,000百万円と同17.2%増加。前期と同程度の利益率を維持できる見込みで営業利益は2,515百万円と同17.7%増加する。配当は1株当たり2円増配の年14円を予定(上期末配当7円)。
 
 
中期経営計画
 
 
従来は全ての事業において、大阪府下でも市場規模の小さい南大阪地域を主な営業エリアとしていたが、今後は需要層が厚く市場規模の大きい、大阪北部、東部地域及び阪神地域の深耕を図る。また、過去の地価高騰時に仕入れた物件の引渡しが11/3期で完了し、12/3期及び13/3期は低価格で仕入れた優良物件を中心に自由設計方式の戸建住宅の引渡しが増加するため高い利益成長を実現する。
 
(1)経営方針
「大きな景気変動下でも揺るがない経営体質の保持」と「在庫コントロールと経営の多角化促進による収益構造の転換による経営の更なる安定化」を経営方針として掲げている。
 
①在庫コントロール
「地価の急激かつ大きな下落に耐え得る在庫水準の指標」を目安に在庫を調整する。
 
 
②経営の多角化による収益構造の転換
・保有土地の値下がりリスクの軽減のための不動産開発事業の縮小ではなく、回転の早い中古住宅再生事業、土地を保有しない土地有効活用事業及び安定収益源の賃貸・管理事業を伸ばし、これら事業の比率を更に高める。
・新規事業、非不動産販売事業の一環として、リフォーム及び建替え市場の調査及び事業化の推進。
 
 
(3)内部統制及びコンプライアンス体制の充実
社長直轄の「内部統制推進委員会」及び「リスク・コンプライアンス推進委員会」の活動を通じ、内部統制及びコンプライアンス体制のより一層の充実とリスク管理の強化を図る。
 
(4)配当政策
11/3期は1株当たり年14円配当を予定(上期7 円、期末7 円)。12/3期以降も内部留保と株主還元の両面を考慮し、業績に見合った配当で株主還元を実施する。
 
(5)事業別の重点施策(当期よりセグメントの分類を、商品単位から事業部単位へ変更)
 
 
 
賃貸及び管理事業 :賃貸、賃貸管理、施設管理、分譲マンション管理組合運営受託
賃貸入居者斡旋業者との関係強化による集客増と賃貸稼働率の向上に取り組むと共に、管理の質を落さず、規模の利益を追求したコストダウンを推進する。また、管理物件の修繕の受注による収益の増加も図る。
 
その他事業
リフォーム、建替え市場の調査及び事業化の促進
 
 
 
取材を終えて
10/3期の業績予想は09年1~3月の厳しい経済情勢が続く事を前提に策定したが、地域密着による住まいの多角経営の強みが発揮され業績予想を2度上方修正した。具体的には、自由設計方式の戸建住宅が当初の予想通り苦戦したものの、低価格物件ニーズを捉えた事と新規店舗開設効果により中古住宅「快造くん」が販売戸数・粗利益率共に想定を大きく上回った他、土地有効活用も工事が順調に進み引渡しの前倒しが進んだ。また、昨年の夏以降、地価下落と低価格物件への根強い需要を踏まえ、守りから攻めに転じ優良物件に絞り積極的に土地の取得を進めた。11/3期はその効果が現れ、4期ぶりの増収・増益に転じる見込み。
依然として一次取得者層を中心に値ごろ感のある物件には根強い需要がある事、今後住宅資金の贈与税非課税枠拡大等の政策効果が期待できる事、更には、たな卸資産の入れ替えが進んでいる事等から11/3期以降も順調な業績推移が見込まれる。このため、高い利益成長を見込んだ中期経営計画ではあるものの、その達成確度は高いと考える。