ブリッジレポート
(2925) 株式会社ピックルスコーポレーション

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ブリッジレポート:(2925)ピックルスコーポレーション vol.9

(2925:JASDAQ) ピックルスコーポレーション 企業HP
荻野 芳朗 社長
荻野 芳朗 社長

【ブリッジレポート vol.9】2010年2月期業績レポート
取材概要「「ご飯がススム」シリーズが好調だ。既存取引先との取引拡大に加え、地方のスーパー等を中心に新規開拓も進んでいる。11/2期は大幅な販売の拡大を・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年5月25日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ピックルスコーポレーション
社長
荻野 芳朗
所在地
埼玉県所沢市くすのき台3-18-3
決算期
2月末日
業種
食料品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年2月 18,234 536 583 322
2009年2月 18,502 399 413 202
2008年2月 17,870 286 373 205
2007年2月 16,775 293 355 218
2006年2月 16,563 158 205 -37
2005年2月 18,186 74 146 144
2004年2月 18,038 268 285 99
2003年2月 18,047 101 98 36
2002年2月 16,542 548 514 230
2001年2月 16,895 302 287 266
株式情報(4/23現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
370円 6,394,774株 2,366百万円 6.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
10.00円 2.7% 51.70円 7.2倍 851.29円 0.4倍
※株価は4/23終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
ピックルスコーポレーションの2010年2月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
浅漬・惣菜の製造・販売及び青果物・漬物等の仕入販売を行なっている。「野菜の元気をお届けします」をスローガンに掲げ、コーポレートカラーの緑は新鮮感を表す。自社製品は、契約栽培によるトレーサビリティの確保された国産野菜(約70%が契約栽培)が中心で保存料・合成着色料は使用しない。また、製造現場では、工場内での温度管理の徹底や入室前の全従業員の服装・健康チェック、更にはISO9001、HACCPの取得や5S活動に取り組む等、「安全な食へのこだわり」は強い。

資本関係では、「きゅうりのキューちゃん」でお馴染みの東海漬物(株)が株式の49.6%を保有するが、取引はわずかにふる漬等の仕入があるのみ(10/2期は仕入高全体の4.3%)。むしろ同社を語る上で忘れてならないのが、セブン&アイ・ホールディングス(3382)で、10/2期は同グループ向けの売上が全体の47.1%を占めた。
10/2期の品目別売上構成は、製品売上が54%(浅漬41%、惣菜10%、ふる漬3%)、商品売上が46%(漬物39%、青果物7%)。
 
 
 
2010年2月期決算
 
 
前期比1.4%の減収、同41.0%の経常増益
惣菜やふる漬の販売が伸びた他、昨年10月に発売した「ご飯がススムキムチ」もプレセールス通りの順調な立ち上がりとなったが、利益貢献が低かった外食産業向けの青果物の取り扱いを抑制した事や消費の低迷等による仕入漬物の苦戦もあり連結売上高はわずかに減少した。ただ、利益面では、天候の安定や契約栽培への取組みにより原料野菜調達価格が安定した他、仕入商品原価の低減もあり売上総利益率が22.4%と1.6ポイント改善。テレビCMなど広告宣伝費の増加で販管費が増加したものの、利益率の改善により営業利益は同34.5%増加した。加えて投資有価証券償還損がなくなり営業外損益が改善した他、固定資産除却損の減少等で特別損益も改善し当期純利益は同58.9%増加した。予想との比較では、個人消費の冷え込みに加え、商品を中心にした販売単価の下落もあり売上高が予想を下回ったものの、製品、商品共に売上総利益率が改善。販管費も予想を下回った。
 
 
外食産業向けの青果物の取り扱いを抑制した事や消費の低迷による仕入漬物の苦戦もあり商品売上高が8,073百万円と同5.5%減少したものの、浅漬が中心だった既存取引先への惣菜販売が伸びた他、「ご飯がススムキムチ」の投入でスーパー等の新規開拓が進んだ事で製品売上高が10,161百万円と同2.1%増加した。
 
 
期末総資産は前期末比1,262百万円増の11,992百万円。「ご飯がススムキムチ」の販売好調に加え、期末が休日だった事もあり売上債権が増加した他、関西新工場の建設で有形固定資産も増加。期日が来た長期借入金の借り換えにより、設備投資資金を賄うと共に事業拡大に向け現預金を積み増した。
 
 
CFの面では関西新工場関連の投資で投資CFのマイナス幅が拡大したため、前期は507百万円の黒字だったフリーCFが89百万円のマイナスとなった。一方、必要資金を長期借入金で賄ったため、財務CFは519百万円の黒字となった。
 
 
2011年2月期業績予想
 
 
前期比7.2%の増収、同14.9%の経常増益予想
青果物販売を中心に引き続き商品売上が減少するものの、「ご飯がススム」シリーズ(「ご飯がススムキムチ」、「ご飯がススム辛口」、「ご飯がススムカクテキ」の3部作)の売上が大幅に拡大する他、コンビ二向け新商品の寄与で浅漬の売上も増加する。製・商品別では、製品売上高が同20.6%増の12,258百万円、商品売上高が同9.6%減の7,296百万円。利益面では、物流費の増加やテレビCM及び店頭での販促の積極化で販管費が増加するものの、増収効果と製品の売上構成比上昇による売上総利益率の改善により吸収、営業利益は同16.1%増加する見込み。設備投資は1,051百万円(前期は878百万円)を計画しており、減価償却費として375百万円(同288百万円)を織り込んだ。配当は1株あたり10円の期末配当を予定している。
 
 
 
通商産業省の工業統計(10年2月発表)によると、野菜漬物製造業出荷額は4,209億円。また、食品新聞の漬物品目別推定出荷額(09年8月発表)によると、08年の出荷額は全体で3,800億円だった。これらの統計から、漬物業界の市場規模は約4,000億円と推定される。また、食の欧米化や志向の多様化等で趨勢的に市場の縮小が続いてきたが、ここにきて和食の見直しや健康志向の高まり等を背景に浅漬や惣菜を中心に底打ち感が出てきた。
一方、企業規模で見ると、中小が乱立している状態で、売上高(年商)が100億円を超えているのは5社にとどまり、これら上位5社の売上高合計も700億円にとどまる。しかし、全漬連の会員企業数は減少を続けており(ピーク時の約2,000社から現在は約1,200社)、今後、大手のシェアアップによる寡占化が徐々に進んでいくものと見られている。同社は現在4%程度のシェアを早期に10%程度に引き上げたい考えで、新製品開発と生産能力の増強により新規取引先の開拓と既存取引先の深耕に取り組んでいる。
 
(3)今後の施策
消費の低迷から量販店は新規出店を抑制する一方、少量化や低価格PB商品の拡充を進めており、また、中国産食品への不安感も減退しつつある。消費者も低価格商品へのニーズや少量化商品ニーズが強いが、その一方で、安心、安全、健康に対する意識も高い。こうした中、同社は消費者ニーズに合わせた商品開発の促進、量販店に対する他社との差別化商品の投入や提案力の向上、更には惣菜製品の販売先拡大により更なる業容拡大を図る考え。
 
 
①商品開発
「ご飯がススム」シリーズ
“ご飯によく合い、ご飯が進む”をコンセプトにした「ご飯がススム」シリーズ(主原料は国産を使い、保存料・着色料不使用)の販売を強化する。
 
 
昨年10月に発売した「ご飯がススムキムチ」は、りんごをふんだんに使用した甘味とアミ塩辛等の魚介の旨味が、具沢山ヤンニョムによってご飯とよく絡み、ついついおかわりしたくなるこってりとした味わいが特徴。受けて、子供からシルバー層まで幅広い消費者層から高い評価を得ている。ただ、その一方で、「辛味が足らない」と言うキムチ党からの評価もあり、10年2月22日に「ご飯がススム こうちゃんのキムチ!!辛口」を投入。更に3月1日には、りんごのフルーティーな甘味、アミ塩辛等の魚介の旨味はそのままに、程よい酸味をきかせた大根のキムチ(カクテキ)「ご飯がススム こうちゃんのカクテキ!!」を発売した。
4月15日(木)から5月6日にかけて、関東地区(日本テレビ)、関西地区(朝日放送)、中部地区(中京テレビ)、北海道地区(札幌テレビ)、東北地区(宮城テレビ)でテレビCMの放送を予定している他、量販店とのタイアップによる店頭での販促も強化する。
 
 
「ご飯」をキーワードにした“ご飯がススム”の第2弾を3月1日に投入した。パッケージを開けて温かいご飯にかけるだけでおいしく食べる事ができる(一食完結、希望小売価格158円)。
 
 
地域ブランド活用の一環であり、北海道発(北海道子会社開発)の商品。健康面からも注目を浴びる「がごめ昆布」を使用しており、魚介類のうま味と甘味、そして辛味のバランスが絶妙な逸品。敢えて説明するまでもなく、材料は国産で、保存料や合成着色料は不使用。首都圏等での北海道フェア等で販売していく。
 
野菜をキーワード惣菜製品の積極的な開発と市場投入
既存商品の継続的な改善に加え、惣菜商品ラインナップの強化を図る。
 
 
 
 
全国の消費者の要望に応えるためネット販売を開始した。今期はネット販売に関する調査・検討が中心となり、この結果を踏まえて、来期以降、本格的な取り組み開始する。
 
 
関西地区の拠点である子会社(株)彩旬館の商号を(株)ピックルスコーポレーション関西に変更すると共に新工場を建設し本社機能を含めた全ての機能を移転した。4月に稼動した新工場はHACCPに対応しており、老朽化が進んでいた旧工場に比べて、生産能力がほぼ倍増する見込み。山崎の豊富な地下水を使用し、排水処理は環境に蛎殻を利用した優しいシステムを導入。また、国道171号線沿いで、名神高速の大山崎インターに近く立地の面でも優れている。
11/2期は減価償却費の増加で営業損失が見込まれるものの、売上高は20.8%増加する。
 
 
 
取材を終えて
「ご飯がススム」シリーズが好調だ。既存取引先との取引拡大に加え、地方のスーパー等を中心に新規開拓も進んでいる。11/2期は大幅な販売の拡大を見込んでいるが、予想以上の好スタートで早くも上振れ期待が出てきたほど。この背景にあるのは製品の良さはもちろんだが、全国に展開する製造・販売ネットワークである。と言うのも、発売から半年を待たずに全国販売が可能なのは、漬物業界では全国ネットワークを有する同社ぐらいだからだ。今後は「ご飯がススム」シリーズの更なる拡販と共に、新たに開拓した取引先に対する浅漬や惣菜等の販売による顧客深耕にも期待したい。また、賞味期限を延長した惣菜やセブン&アイ・ホールディングス向けプライベートブランドの本格投入により、ここ数年苦戦していたコンビニ向けの拡大期待も高まっている。
野菜価格が高騰しているが、契約栽培のため長期化しない限りほとんど影響はない。