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(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

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ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.4

(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ 企業HP
山本 祥之 社長
山本 祥之 社長

【ブリッジレポート vol.4】2010年6月期第3四半期業績レポート
取材概要「10/6期の業績については、セキュリティシステム業務で進行している大型商談の契約時期で下振れる可能性があるが、その場合でも、カードビジ・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年5月25日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インテリジェント ウェイブ
代表取締役
社長執行役員
山本 祥之
所在地
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
決算期
6月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2009年6月 5,527 228 235 187
2008年6月 6,695 417 403 -5
2007年6月 6,367 389 407 -295
2006年6月 7,137 1,482 1,452 947
2005年6月 5,174 678 688 264
2004年6月 5,257 371 365 156
2003年6月 5,891 1,177 1,161 539
2002年6月 5,505 1,854 1,846 1,003
株式情報(5/14現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
34,800円 246,782株 8,588百万円 4.6% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
500.00円 1.4% 713.18円 48.8倍 16,665.44円 2.1倍
※株価は5/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
インテリジェント ウェイブの2010年6月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
クレジットカードの決済システムに強みを持つソフトウェア開発会社。リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、更には高度なセキュリティ技術を技術的な基盤としており、証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する他、カード不正利用検知システムや内部情報漏洩対策システム等も手がける。
グループは、同社の他、米国の販売子会社と韓国の開発・販売会社子会社の2社(いずれも連結子会社)。
 
<事業内容>
事業は、カードビジネスのフロント業務、システムソリューション業務、及びセキュリティシステム業務に分かれ、09/6期の売上構成比は、それぞれ46.7%、37.3%、16.0%。
 
カードビジネスのフロント業務
クレジットカード会社、銀行、大手小売業等向けに、自社開発パッケージ「NET+1」をベースにしたカード決済ネットワークシステムの構築を行い、大手クレジットカード会社向けではシェア70%の実績を誇る。
 
システムソリューション業務
証券取引所等から提供される市況データ等を素早く社内の各端末に配信する市況情報配信システム「FACE」、クレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」等の自社製品及び他社製品(海外商品)を用いたシステム構築を行っている。
 
セキュリティシステム業務
自社製品である内部情報漏洩対策システム「CWAT」の他、USBメモリ「Cstickシリーズ」やウイルス対策ソフト「Virus Chaser」といった他社製品の販売を行っている。
 
※カードビジネスのフロント業務の特徴
クレジットカードの利用に際しては、その都度、与信限度額や返済状況の確認作業が行われ、また、キャッシシングの際には口座残高の確認も必要となる。こうした確認作業はネットワークを介してリアルタイムで行われ、特にクレジットカードの場合、世界的なネットワークを介しての作業となる。また、システムが止まるとカードが使えなくなるため、24時間365日システムを止めないための技術やノウハウも必要だ。つまり、同社のビジネスには、リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、ノウハウ、そして何よりも顧客となる金融機関等からの信頼性が不可欠なため参入障壁は高い。
また、技術やネットワークの進歩に加え、様々な社会犯罪等への対応で更新需要が絶えず発生しており、振れはあるものの趨勢的に市場の拡大が続いている。
 
2010年6月期第3四半期決算
 
 
収益性が大幅に改善、減収ながら営業利益が3.3倍に拡大
売上高は前期比15.6%減の3,314百万円。クレジットカード、証券、金融といった主要顧客のシステム投資抑制でカードビジネスのフロント業務やシステムソリューション業務の売上が減少。セキュリティシステム業務も製造業向けの大型商談が中断する等で苦戦が続いた。
利益面では、セキュリティシステムの落ち込み等で売上総利益率が0.8ポイント低下したものの、研究開発費(△220百万円)や諸経費の削減、及び業務の効率化等で販管費が同24.0%減少。売上の減少と売上総利益率悪化の影響を吸収して営業利益は116百万円と同3.3倍に拡大した。為替差損の減少や投資事業組合運用損が無くなり営業外損益が改善した他、匿名組合投資利益の増加(34百万円→138百万円)等で特別損益も改善したものの、法人税等調整額が大幅に増加した。
 
 
 
カードビジネスのフロント業務
主要顧客であるクレジットカード会社各社は、過払金返済請求に伴う資金負担に加え、改正貸金業法及び改正割賦販売法への対応に追われ、同社の事業領域であるフロント業務に係るシステム投資は抑制が続いた。このため、収益源であるフロント業務向けのソフトウェア開発や自社パッケージを中心にほぼ全てのカテゴリで売上が減少したものの、外注費や諸経費の削減を進めると共にプロジェクト管理を徹底した事で収益性が改善(売上総利益率が前年同期の36.1%から44.7%に改善)、営業利益は同6.2%増加した。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発
自社開発パッケージ
保守
ハードウェア販売
1,125百万円
75百万円
306百万円
493百万円
 →
 →
 →
 →
995百万円
63百万円
303百万円
346百万円
 
システムソリューション業務
証券各社のシステム投資は全般に低調だったが、東証の新売買システム「arrowhead」への対応でミドルウェア「RIX」の販売が大手証券を中心に堅調に推移した他、クレジットカードの不正利用検知システム「ACE Plus」の販売も計画通りに推移した。利益率の高い自社開発パッケージや保守の売上が伸びた事と、カードビジネスのフロント業務と同様に固定費・変動費両面での削減が進んだ事で収益性が大幅に改善した(売上総利益率36.1%→44.7%)。尚、売上高12.5億円の大まかな内訳は、証券系事業が約6億円、カード系・その他事業が約6.5億円。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発
自社開発パッケージ
保守
ハードウェア販売
896百万円
84百万円
169百万円
6百万円
 →
 →
 →
 →
735百万円
134百万円
210百万円
81百万円
 
セキュリティシステム業務
既存顧客のセキュリティ投資の抑制等でソフトウェア開発や自社パッケージを中心に売上が大きく落ち込み、営業損失が拡大した。ただ、第4四半期に入り、一時止まっていた内部情報漏洩対策システム「CWAT」の大型商談が再び動き始めた。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発
自社開発パッケージ
保守
ハードウェア販売
95百万円
181百万円
202百万円
4百万円
 →
 →
 →
 →
20百万円
58百万円
185百万円
0百万円
 
 
力強さの面で今一つ物足りなさはあるものの、緩やかな事業環境の改善と自助努力により受注は着実に回復しており方向性は良好。第3四半期末の受注残高は6四半期ぶりに前年同期を上回った。
 
 
(5)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
第3四半期末の総資産は前期末比160 百万円減の4,851百万円。借方では、受注の回復でたな卸資産が、余資の運用で投資有価証券が、それぞれ増加する一方、現預金が減少。貸方では、外注費の削減等で仕入れ債務が減少した。CFの面では、受注の回復によりたな卸資産が増加する一方、外注の削減等で仕入債務が減少した事等で営業CFが減少。余資の運用で投資CFもマイナス幅が拡大したため、フリーCFが118百万円のマイナスとなった。配当の支払いで財務CFもマイナスとなり、現金及び現金同等物期末残高は1,434百万円と前期末に比べて249百万円減少した(前年同期比では51百万円の増加)。尚、フリーCFのマイナスは余資運用によるもので、実質的には黒字。キャッシュは潤沢で、無借金の健全経営が続いている。
 
 
 
2010年6月期業績予想
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比9.5%の減収、同30.7%の経常減益予想
通期予想に対する進捗率は、売上高66.2%(実績ベースの前年同期は71.1%)、営業利益77.3%(同14.9%)、経常利益74.2%(12.3%)。カードビジネスのフロント業務及びシステムソリューション業務が順調に推移しており、セキュリティシステム業務は現在進行している内部情報漏洩対策システム「CWAT」の大型商談の契約締結を織り込んだ。配当は1株当たり500円の期末配当を予定している。
 
 
 
(2)事業環境と今後の取組み
カードビジネスのフロント業務
クレジットカード各社は改正貸金業法への対応に目処を付けており、改正割賦販売法への対応については現在進行中だが改正貸金業法に比べると負担が軽い。このため、第4四半期以降、総合金融業としての手数料ビジネス拡大に向けた投資等が徐々に増えてくると、同社では見ている。
 
システムソリューション業務
今後、大手証券以外で東証の新売買システム「arrowhead」への対応投資が予想される他、大証の次世代システムに関連した需要の取り込みにも注力する。また、大手証券を中心にニーズの高まっている海外でのビジネス展開への対応も強化する考えで、海外パッケージベンダーとの提携についても準備を進めている。
 
セキュリティシステム業務
資本業務提携を行った大日本印刷(株)と連携を強めていく考えで、具体的には、「EUC Secure」の共同マーケティング、大日本印刷(株)のICカードによるPCセキュリティと「CWAT」の連携、幅広い顧客に専門性の高いソリューションの提供を挙げている。この他では、組織力の強化、周辺業務システムの受注に向けた対応、アジア市場向けのシステム開発等にも取り組む。
 
尚、2月12日から4月2日にかけての株式公開買い付け(TOB)により大日本印刷(株)が同社株式の50.61%(133,307株)を保有する筆頭株主となり、(株)インテリジェント ウェイブは大日本印刷(株)の連結子会社となった。今後、セキュリティ分野でシナジーを追及していく他、大日本印刷(株)の顧客向けシステム開発も拡大していく考え。
 
海外事業
・東南アジア、中国市場への取り組み
証券、カード会社等の顧客企業の現地オペレーション拡充に伴うシステム投資を取り込む。このため、海外ユーザーの情報収集とマーケティングに注力すると共に、現地パートナー企業の選定と絞込みを行う。
 
・米国子会社の体制変更
事業計画の見直しのために体制を変更。
 
取材を終えて
10/6期の業績については、セキュリティシステム業務で進行している大型商談の契約時期で下振れる可能性があるが、その場合でも、カードビジネスのフロント業務及びシステムソリューション業務が順調に推移しており、収益性の改善も進んでいるため、利益面では上振れる可能性が高いと考える。
来期(11/6期)については、企業業績の回復につれて(日経新聞によると、上場企業の11/3期は40%の増益見通し)、収益力強化に向けたIT投資が活発化してくるものと思われ、更なる業績の改善が見込まれる。また、中期的には、大日本印刷(株)との資本業務提携効果が顕在化してこよう。わずかな出資ではなく過半数の株式を保有し連結子会社化した事に大日本印刷(株)の意気込みを感じる。セキュリティ分野でのシナジーのみならず、大日本印刷(株)の顧客をシステム開発全般で取り込む事ができれば、同社のビジネスフィールドは一気に広がり成長期待が高まる。