ブリッジレポート
(4783) NCD株式会社

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ブリッジレポート:(4783)日本コンピュータ・ダイナミクス vol.21

(4783:JASDAQ) 日本コンピュータ・ダイナミクス 企業HP
伊藤 敬夫 社長
伊藤 敬夫 社長

【ブリッジレポート vol.21】2010年3月期業績レポート
取材概要「日本経済新聞によると、上場企業の10/3期は売上高が11%減少したものの、コスト削減により経常利益が24%増加した。増益は売上の増加よりも・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年7月6日掲載
企業基本情報
企業名
日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社
会長
下條 武男
社長
伊藤 敬夫
所在地
東京都品川区西五反田 4-32-1
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 11,542 56 129 26
2009年3月 12,521 415 460 212
2008年3月 9,539 553 581 315
2007年3月 9,292 261 315 186
2006年3月 8,851 409 424 199
2005年3月 7,607 321 348 228
2004年3月 7,570 340 368 160
2003年3月 6,859 322 283 74
2002年3月 6,168 293 292 152
2001年3月 5,088 247 182 46
2000年3月 4,447 307 339 149
株式情報(6/22現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
264円 8,721,602株 2,303百万円 0.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 4.9% 11.46円 23.0倍 322.58円 0.8倍
※株価は6/22終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
日本コンピュータ・ダイナミクスの2010年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
独立系ソフトウェア開発会社のパイオニア。コンサルティングからシステム運用までを手掛けるシステム開発事業、システムの運用管理とテクニカル・サポートを主体としたサポート&サービス事業、及び自転車駐輪場システムの開発・運用を行なうパーキングシステム事業を展開。システム開発事業やサポート&サービス事業は優良顧客との継続的な取引が特徴。また、国内トップシェアを誇るパーキングシステム事業は成長性に富み、収益性も高い。
グループは、同社及び(株)日本システムリサーチ、天津恩馳徳信息系統開発有限公司、及び(株)ゼクシスの連結子会社3社(いずれも出資比率100%)。社名の"日本コンピュータ・ダイナミクス"には、「コンピューターをダイナミックユースして社会に貢献する(Dynamic use of Computer)」と言う創業時の思いが込められている。
 
<長期継続を特徴とする顧客資産が強み>
システム開発事業やサポート&サービス事業では、長期継続を特徴とする優良な顧客資産が同社の強みの一つ。主な取引先として、東京ガス、西部ガス、富士ゼロックス、商船三井、アリコジャパン、高砂熱学工業、三井住友海上火災、角川GHD、日本水産、エスアールエル、福岡県庁等を挙げる事ができる。
 
<顧客業界と同社が手掛けるシステム>
エネルギー業界   料金調停システム、資産管理システム等
保険業界      契約管理システム、クレーム管理システム等
運輸業界      運行管理システム、倉庫管理システム等
出版業界      著作権管理システム等
全業界       財務会計システム、人事システム等
 
<IT企業としては異色のパーキングシステム事業で社会貢献>
駐輪場の設計、ラックや精算機の開発、更には運用までを一貫して手掛けている。時間貸し駐車場の自転車版とも言える事業だが、駐輪場の売上は自転車1台を1日駐輪して100円程度。このため、コンピューターを使うには安過ぎて採算が合わないと言われ、IT業界とは縁の無い世界だった。しかし、自治体等からのシステム開発に対する強い要望に加え、放置自転車問題が深刻化する中で社会貢献の意味もあり参入。先行企業としての優位性と業界No.1の実績に基づく提案力を強みとしており、現在、同社を語る上で欠く事のできない事業となっている。
 
 
2010年3月期決算
 
 
減収・減益ながら予想を上回る着地
売上高は前期比7.8%減の11,542百万円。営業強化や代理店との協力体制の強化でパーキングシステム事業の売上が大きく伸びたものの、新規開発案件の凍結や保守業務の縮小、更には顧客からの価格要請の強まり等でIT関連事業(システム開発事業、サポート&サービス事業)の落ち込みをカバーできなかった。利益面では、業務量の減少による稼働率の低下と前期から続いている大型案件の採算悪化により売上総利益率が低下。経費削減に努めたものの、営業利益は56百万円と同86.4%減少した。営業外損益の改善は、雇用調整助成金(55百万円)の計上等による。
 
予想との差異
首都圏等の好調でパーキングシステム事業が予想を上回った他、IT関連事業も事業部間の枠を取り払い営業情報を共有する等、受注確保を優先課題として取り組んだ成果が現れた。限界利益の増加が損益に反映され、各損益段階で予想を上回った。
 
主な子会社の状況
(株)ゼクシスは、既存顧客の新規案件等の受注が減少したものの、継続案件の落ち込みを小幅にとどめ、ほぼ想定通りの売上・利益を確保した。(株)日本システムリサーチは要員派遣の需要低迷で売上が減少したものの、利益を確保した。
 
 
システム開発事業
既存顧客の新規投資抑制と保守業務の縮小に加え、業績悪化からIT投資を絞り込む企業が多く新規の顧客開拓も進まなかった。受注の減少による待機技術者の増加に加え、手戻りの発生等による前期からの継続案件の採算悪化等で利益率も悪化した。
 
サポート&サービス事業
顧客からの価格要請等により、売上および売上総利益は減少した。また、ユーザーのシステム運用部門に代わり24 時間365 日の障害対応やシステム運用・保守まで、ITインフラ全体をサポートするマネージドサービスセンター業務も、期中の成約案件は少なかったものの、今後の成約につながる引き合いや見学希望は多い。
 
パーキングシステム事業
サポートセンターを含めた駐輪場管理体制の整備等の利用者の利便性向上に向けた取り組みや、これまでの導入実績が評価され首都圏での受注が伸びた他、大阪、名古屋等の首都圏以外の都市部で代理店売上が順調に拡大した。ただ、代理店売上の構成比が上昇した事やSuica対応精算機の開発費負担等で利益率が低下した。
 
 
(4)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比871百万円増の8,965百万円。主な増加要因はパーキングシステム事業の拡大に伴うリース債権及びリース資産の増加。一方、受注・売上の減少で売上債権及び仕入債務が減少した。CFの面では、運転資金の減少や税負担の減少で622百万円の営業CFを確保した。投資CFのマイナス幅が拡大したものの、前期は142百万円のマイナスだったフリーCFも378百万円の黒字に転換。短期借入金の積み増し等で財務CFも小幅なマイナスにとどまり、現金及び現金同等物期末残高は前期末比352百万円増加した。尚、投資CFのマイナス幅が拡大したのは、設備投資に大きな変化は無かったものの、定期預金の払戻しが減少したため。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
前期比0.5%の増収、同92.9%の経常増益予想
パーキングシステム事業の売上増が見込まれる他、引き続き厳しい事業環境が予想されるシステム開発事業及びサポート&サービス事業も最悪期は脱しており、大きな落ち込みは無いと見ている。利益面では、前期の受注の落ち込みでシステム開発事業において期初に技術者の待機が発生するものの、不採算案件の一巡等で利益率が改善。営業利益は前期比3.5倍に拡大する見込み。配当は1株当たり13円を予定している(上期末6.5円、期末6.5円)。
 
(2)セグメント別見通し
システム開発事業
前期の受注の落ち込みで期初に技術者の待機が発生するものの、新規業務獲得に向けた営業統括組織の立ち上げによる営業強化で巻き返しを図る。利益面では、不採算案件の一巡に加え、開発標準やプロジェクトマネジメント標準等の仕組みの整備、及びこれらを活用したプロジェクト管理の徹底により利益率の改善が見込まれる。
 
サポート&サービス事業
既存顧客業務における単価や技術者の削減要求及び契約の見直し等厳しい状況が続いているものの、受注環境は改善傾向にある。価格要請に対しては技術的に高度なサービスへの転換を進め吸収していく考え。また、クラウドコンピューティングに対する需要の取り込みにより、マネージドサービスセンターの契約増を図る。
 
パーキングシステム事業
前期に実施したサポートセンターの充実や電子マネー決済への対応(自社開発のSuica対応精算機の導入)等、利用者の利便性向上に向けた取り組みをアピールする事で受注拡大につなげていく考え。また、自転車に関する総合サービスの一環としてエコポート事業の事業化にも取り組む。エコポート事業とは、サービスエリアを設定し、エリア内に自転車の貸し出し・返却の拠点を複数箇所設置し、自転車の利用時間に応じて課金するサービス。利用者は各拠点に設置してある自転車を自由に利用・返却できる。
 
 
取材を終えて
日本経済新聞によると、上場企業の10/3期は売上高が11%減少したものの、コスト削減により経常利益が24%増加した。増益は売上の増加よりもコスト削減を優先した結果であり、IT投資もその例外ではなく、同社に限らず情報サービス各社の10/3期決算はこの影響を大きく受けた。しかし、日本経済新聞によると、11/3期は売上が6%増加し、経常利益が35%増加する見込み。企業活動は縮小均衡から拡大均衡に転じる事で、IT投資も回復に向かうものと思われる。受注から売上までのタイムラグを考えると、実際の売上・利益へ反映されるのは下期以降と思われ、11/3期は回復の途上との位置付けになる。もっとも、11/3期は売上・利益の増減よりも、「来12/3期以降の成長のために、どれだけの布石を打つ事ができるか」がポイントになると考える。