ブリッジレポート
(2714) プラマテルズ株式会社

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ブリッジレポート:(2714)プラマテルズ vol.1

(2714:JASDAQ) プラマテルズ 企業HP
井上 正博 社長
井上 正博 社長

【ブリッジレポート vol.1】2010年3月期業績レポート
取材概要「同社のライバルは大手商社の合成樹脂部門等が中心。同社も大手商社グループに属するが、独立企業としての機動力を活かした事業展開により成熟し・・・」続きは本文をご覧ください。
2010年7月13日掲載
企業基本情報
企業名
プラマテルズ株式会社
社長
井上 正博
所在地
東京都品川区北品川4-7-35 御殿山トラストタワー
決算期
3月 末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 47,145 663 621 388
2009年3月 52,550 893 809 489
2008年3月 56,861 1,089 943 704
2007年3月 52,022 1,219 1,115 652
2006年3月 50,673 1,054 1,005 569
2005年3月 46,804 790 746 403
2004年3月 43,720 659 566 309
2003年3月 42,614 685 642 240
株式情報(6/14現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
354円 8,548,416株 3,026百万円 7.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 3.7% 49.13円 7.2倍 666.56円 0.5倍
※株価は6/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
プラマテルズの2010年3月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
合成樹脂関連商品の専門商社。原料メーカーから仕入れた樹脂原料をセットメーカーや成形メーカー及び樹脂の二次加工メーカーに販売しており、最終用途は自動車、電子・電機・OA機器、玩具、住宅建材等。総合商社双日(株)グループにおいて合成樹脂部門を担う双日プラネット(株)が株式の46.5%を保有し、双日プラネットグループにおける販売部門としての位置付けだが、双日プラネット(株)からの仕入は年々減少傾向にあり(仕入比率:09/3期13.9%→10/3期10.0%)、同社独自のビジネス展開をしている。
 
<沿革>
1951年3月、合成樹脂の販売を目的とした日本樹脂(有)として設立され、52年3月に株式会社に改組。61年3月にニチメン(株)の出資を受け、94年12月にはニチメン(株)が55.5%の支配株主となった。95年9月のニチメン樹脂販売(株)への商号変更を経て、2000年1月、プラマテルズ(株)に商号を変更。01年10月、JASDAQに株式を上場した。
積極的なM&Aや海外展開への取り組みも同社の特徴で、98年10月にニチメンプラスチック(株)と合併し、同年11月に(株)富士松を子会社化。00年1月には甲子産業(株)と合併し、03年1月には旭合成樹脂(株)の営業権を譲受。同年9月にフィルタレン(株)を設立して(株)化研より合成樹脂フィルターの営業権を取得し、同年10月より製造・販売を開始した。また海外展開では、02年4月に上海に駐在員事務所を開設し、03年1月に香港現地法人を設立。その後、フィリピン、シンガポールに展開し、06年2月にはベトナムに東洋インキ製造(株)と合弁でコンパウンド製造・販売会社を設立。09年1月に深、同年8月に大連へも展開し、現在、連結子会社8社、持分法適用会社1社とグループを形成。アジア進出を進める日系企業への供給体制の充実を図っている。
 
 
<コア・コンピタンス>
優良仕入先を確保しており、顧客ニーズや品質向上につながる情報等をフィードバックする事で信頼関係を構築。仕入先との共同提案により販売量・販路の拡大を図っている。加工では、ベトナムの合弁会社を中心に顧客満足度調査の実施等、定期的な品質管理体制の見直し・改善に取り組み、安定した品質の商品を提供している。また、在庫管理・物流では、大手優良顧客を中心にニーズの把握を徹底する事で少量多品種の即納体制を確立。販売では、年々高度化するニーズやスペック要求を踏まえた提案営業により仕入先と販売先をつなぐ架け橋となっている。
 
 
<同社の強み>
(1)高付加価値品中心の取り扱い
取り扱いは大きく合成樹脂原料と合成樹脂製品及び関連製品に分かれ、10/3期の売上構成比は76.9%と23.1%。特に付加価値の高いエンジニアリング系樹脂とスチレン系樹脂が全体の56.2%を占めている。
また、個別ベースではあるが、販売先別構成比は、概ねOA・事務機器34%、家電・電子16%、自動車6%、医療器7%、建材9%、容器・化粧品3%、玩具・その他25%。
 
 
 
(2)安定した利益率
商材構成比やその他戦略投資等により、原材料のナフサ価格にかかわらず安定した売上総利益率を維持できるのも同社の強みである。
 
 
(3)限定的な為替の影響
輸出と輸入で為替の影響が相殺されるため、為替変動が同社の業績に与える影響は限定的。円が対USドルで1円高くなるとドル建て輸出に伴う売上総利益が月額ベースで50万円目減りするが、ドル建て仕入の原価も同50万円減少するため、利益への影響が相殺される。
 
<国内合成樹脂販売数量動向>
 
同社ビジネスの動向を考える上で参考となる国内の合成樹脂販売数量(10年2月実績)は、中国等の新興国をけん引役とした世界的な景気の回復により全体で4割超の増加(08年2月の約9割水準にまで回復)。エンジニアリング樹脂が約2倍に増加した他、スチレン系樹脂も5割近く増加する等、高付加価値商材が高い伸びを示した。
 
 
2010年3月期決算
 
 
減収・減益ながら、下期は主要販売先で需要が回復
売上高は前期比10.3%減の47,145百万円。下期に入り、電子・電機、自動車業界、建築業界など主要需要先の需要が回復したものの、世界的な景気の悪化を受けた上期の苦戦をカバーできなかった。ただ、海外売上高に限れば、下期以降の香港の好調や大連の稼動(2ヶ月)等で9,093百万円と同8.3%増加した。利益面では、下期以降の高付加価値商材の回復で前期と同水準の売上総利益率を維持したものの、売上の減少が響き売上総利益が減少。経費の削減に努めたものの、固定費が負担となり営業利益は同25.7%減少した。ただ、金融費用(99→67百万円)や為替差損(28→4百万円)の減少等で営業外損益が改善した他、投資有価証券売却益(42百万円)の計上等で特別損益も改善したため、当期純利益は同20.6%の減少にとどまった。配当は1株当たり7円の期末配当を実施(年13円)。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
期末総資産は前期末比3,712百万円増の21,877百万円。下期以降の売上の回復に伴う運転資金の増加や積極的な海外展開に伴う資金需要を賄うべく短期借入金を中心に有利子負債を積み増した。CFの面では、投資有価証券の売却等で投資CFが黒字となったものの、利益の減少や売上の回復に伴う運転資金の増加で営業CFがマイナスとなった。有利子負債を積み増したため財務CFがプラスとなったものの、現金及び現金同等物期末残高は前期末比458百万円減少した。尚、支払サイトの長い優良顧客を対象にしたビジネスでは業績回復時に営業CFがマイナスとなる事は特段珍しい事ではない。今後、順次、売上債権の回収が進む事で、回収・再投資のサイクルが確立され営業CFの改善が進むものと思われる。ROEは7.1%、自己資本比率は26.0%。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
前期比18.8%の増収、同11.0%の経常増益予想
自動車・家電・OAメーカー等を取り巻く環境の好転と回復傾向にある足下の合成樹脂原料の需要を踏まえ、売上高は前期比18.8%増の56,000百万円を見込んでいる。高付加価値商材を中心にアジア進出を進める日系企業への供給体制の拡充を図ると共に、中国での販路拡大に取り組む考え。汎用樹脂原料の回復が見込まれるため売上総利益率が0.2ポイント低下する他、中国を中心にした積極的な海外展開と前期に実施した拠点拡充に伴い販管費が増加するものの増収効果で吸収、営業利益は同10.0%増加する見込み。前提となる為替レートは1USドル=90円~95円。配当は1株当たり年13円を予定(上期末6円、期末7円)。
 
 
 
 
取材を終えて
同社のライバルは大手商社の合成樹脂部門等が中心。同社も大手商社グループに属するが、独立企業としての機動力を活かした事業展開により成熟しつつある国内マーケットにおいて順調に販売を拡大してきた。大手商社グループの信用力と大手総合商社に無い機動力を有する事が同社の強みである。同社がコア・コンピタンスとして挙げている「仕入先への顧客ニーズや品質向上につながる情報等のこまめなフィードバック」や「販売先へのニーズやスペックを踏まえた提案営業」等はフットワークの良さを示す一例で、仕入先や販売先との信頼関係の構築に役立っている。
リーマンショック以降の世界的な景気悪化を受けて09/3期の後半から10/3期の上期にかけては苦戦を強いられたものの、10/3期の下期以降、中国を中心にしたアジア各国の経済成長を受けて合成樹脂の需要が回復傾向にあり、11/3期は3期ぶりの増収・増益に転じる見込み。中期的な成長力を確保するためには中国などアジアでのビジネス拡大が不可欠だが、同社は02年の上海駐在員事務所開設以来、アジア進出を進める日系企業をサポートしてきただけに基盤整備は進んでいる。今後は生産拠点としてだけでなく、消費地としての中国マーケットの拡大も念頭に入れ、ベトナムと香港の連携や物流拠点としての機能強化等にも力を入れていく考え。11/3期業績は利益面で上振れ余地を残しているものと思われ、中国事業の進捗と共に今後の展開に注目したい。