ブリッジレポート
(8860) フジ住宅株式会社

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ブリッジレポート:(8860)フジ住宅 vol.24

(8860:大証1部,東証1部) フジ住宅 企業HP
宮脇 宣綱 社長
宮脇 宣綱 社長

【ブリッジレポート vol.24】2011年3月期上期業績レポート
取材概要「好調な販売が続いている。その要因として、住宅ローン減税や住宅版エコポイント制度の効果を挙げる事ができるが、価格調整が進んだ事も大きい。同社・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年1月11日掲載
企業基本情報
企業名
フジ住宅株式会社
社長
宮脇 宣綱
所在地
大阪府岸和田市土生町1丁目4番23号
決算期
3月
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 48,614 2,137 2,118 1,237
2009年3月 45,300 2,584 2,388 1,361
2008年3月 48,793 2,723 2,413 2,097
2007年3月 52,221 4,233 4,090 911
2006年3月 41,333 3,229 3,196 1,312
2005年3月 43,954 3,208 2,799 1,661
2004年3月 34,387 2,034 1,891 684
2003年3月 32,905 1,198 1,028 545
2002年3月 33,419 899 692 297
2001年3月 31,433 2,928 2,681 1,503
2000年3月 34,268 1,596 1,117 -2,237
株式情報(11/2現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
303円 31,998,605株 9,696百万円 8.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
18.00円 5.9% 60.32円 5.0倍 488.27円 0.6倍
※株価は11/2終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
フジ住宅の2011年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
地盤である大阪府下を中心に阪神間、和歌山県北部地域で、戸建分譲等の住宅・不動産事業を展開。主力の戸建分譲は、分譲ながら間取りや設備仕様等、建築基準法の範囲内で最大限に顧客の要望を取り入れる「自由設計方式」と50~200戸規模で街並みの統一性を重視した開発を行う「街づくり」に特徴がある。この他、金融機関とタイアップした土地有効活用事業、賃貸・管理事業、個人投資家向けの賃貸マンション販売事業、及び戸建分譲のノウハウを活かした中古住宅の改装販売等も手掛けている。各事業の内容は次の通り。
 
分譲住宅事業(11/3期上期売上構成比37.9%)
用地仕入・許認可の取得から、宅地造成、設計、建築、販売までの一貫体制を構築しており、「自由設計方式」と「街づくり」が特徴。マンション分譲も事業領域だが、地価上昇とその後の供給過剰と需要の低下に伴う事業リスクの高まりを予見し、03年春以降、マンション用地の仕入を停止している。
 
住宅流通事業( 同 35.8%)
「快造くん」のブランド名で展開している中古住宅の再生・販売を中心に廉価な建売住宅の販売を手掛けており、中古住宅に付随した土地を更地売却した際の売上や仲介手数料も含まれる。地域密着営業により交差点単位での地域情報の収集・分析力をベースとした物件の鑑定力や仕入・販売価格の査定の速度と正確性、更にはリフォームのマニュアル化による独自のノウハウ等が強み。
 
土地有効活用事業( 同 13.0%)
賃貸住宅の建築請負と個人投資家向け一棟売賃貸マンションに分かれる。賃貸住宅の建築請負では、遊休地の有効活用を目的とした賃貸マンション・アパート等の建築提案を行なっており、市場調査・企画・設計・建築・竣工引渡後の運営管理までを一貫してサポート。コスト競争力の高い木造アパート「フジパレス」シリーズに08年11月単身高齢者専用賃貸住宅「フジパレスシニア」が加わり、より独自性が強まった。金融機関や既契約者からの紹介案件が多い。また、個人投資家向け一棟売賃貸マンションでは、1棟あたり1億円前後の賃貸アパートを中心に展開。資金運用手段として根強い需要がある。
 
賃貸及び管理事業( 同 13.1%)
100%子会社フジ・アメニティサービス(株)が手掛けている。安定収益源となるばかりでなく、土地有効活用事業や個人投資家向け賃貸マンションの販売等との相乗効果も高い事業。
 
注文住宅事業( 同 0.3%)
建替え案件を中心にした注文住宅建築及びリフォームを手掛ける。これまでテストマーケティングを行ってきたが、11/3期より新たなセグメントとして独立させた。
 
 
2011年3月期上期決算
 
 
前年同期比19.9%の増収、同18.4%の経常増益
売上高は前年同期比19.9%増の273.0億円。分譲住宅事業及び土地有効活用事業において引渡しが順調に進んだ他、割安感のある中古住宅も堅調に推移。適用物件の増加で工事進行基準売上高も増加した。利益面では、工事が順調に進んだ事等で売上総利益率が改善。人件費や広告宣伝費、中古住宅の販売好調に伴う販売手数料等を中心にした販管費の増加を吸収し、営業利益は13.4億円と同14.8%増加した。受取手数料の増加等で営業外損益が改善したものの、投資有価証券評価損2.2億円など特別損失2.3億円を計上したため、四半期純利益は同1.2%減少した。受注高は同37.1%増の299.4億円(計画240.0億円)、受注残高は前年同期末比29.8%増の318.1億円。

期初予想との比較では、分譲住宅事業及び土地有効活用事業において工事が順調に進み引渡しが前倒しとなった事や工事進行基準売上高の上振れもあり売上高が予想を超過。加えて、好調な販売を受けて広告宣伝費が予想を下回るなど諸経費を保守的に見ていた事もあり、営業利益以下の各利益が予想を大幅に上回った。
 
 
分譲住宅
工事が順調に進み引渡しが前倒しとなった物件もあり売上高が103.4億円と前年同期比13.8%増加したものの、一部の物件で価格調整を行った影響でセグメント利益は4.1億円と同19.9%減少した。一方、今後の売上につながる受注は同80.2%増の175.8億円、受注残高は前年同期末比78.0%増の214.7億円。
 
住宅流通
フジホームバンク大阪店の仕入・販売エリアの拡大、フジホームバンク泉北店の岸和田市への移転、更には10年9月には「おうち館和泉店」をオープンする等、仕入れ・販売共に体制を充実。売上高が97.7億円と前年同期比16.1%増加し、セグメント利益が6.5億円と同7.9%増加した。
 
土地有効活用
工事進行基準の適用物件の増加に加え、工事が順調に進み引渡しが前倒しとなった物件もあり売上高が35.3億円と前年同期比89.6%増加、セグメント利益は5.6億円と同3.2倍に拡大した。
 
賃貸及び管理
主として土地有効活用事業にリンクした賃貸物件及び管理物件の増加に加え、稼働率の改善もあり売上高が35.8億円前年同期比6.5%増加。ただ、諸経費の増加でセグメント利益は1.0億円と同44.0%減少した。
 
注文住宅
注文住宅・リフォーム事業のテストマーケティングに係る売上高0.6億円(前年同期比62.7%増)を計上。セグメント利益は0.1億円(同4.7%増)となった。
 
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比12.7億円増の516.4億円。仕入れが順調に進み棚卸資産が増加した他、9月に「おうち館和泉店」をオープンした事等で有形固定資産も増加した。ただ、引渡しが順調に進んだ事もあり、これら資金需要に手元資金で対応したため有利子負債は前期末と同水準にとどまった。CFの面では、「おうち館和泉店」など設備投資の増加で投資CFのマイナス幅が拡大したものの、引渡しが順調に進んだ事で営業CFのマイナス幅が大幅に縮小。フリーCFは6.8億円のマイナスとなったものの、前年同期比で大幅に改善した。有利子負債の減少や配当金の支払いで財務CFもマイナスとなったが、現金及び現金同等物の上期末残高は59.5億円と前期末比8.8億円の減少にとどまった。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
下期も好調な販売が続く見込み。上方修正された通期予想は前期比22.0%の増収、同68.5%の経常増益
「プレミアムフォレスト岸和田中央公園」など優良物件の寄与もあり、足下の販売も好調。たな卸資産の入れ替えが進み価格調整が一巡する他、販売好調により広告宣伝費など販売諸経費も想定したほどには膨らまず、下期は利益率の改善も進む見込み。通期の経常利益は前期比68.5%増の35.7億円を見込んでおり、現行の中期計画における13/3期の目標値である36億円を2年前倒しでほぼ達成する事になる。配当は1株当たり11円の期末配当を予定(年18円)。
 
 
 
取材を終えて
好調な販売が続いている。その要因として、住宅ローン減税や住宅版エコポイント制度の効果を挙げる事ができるが、価格調整が進んだ事も大きい。同社の主力事業である分譲住宅の売上高を戸数で割ってみると、前年同期の3,738万円から3,390万円に低下している。地価高騰時に取得した物件は販売に際して価格調整を行ったため利益率が低く、その影響で上期の営業利益率が4.9%にとどまったが、下期はリーマンショック後の地価下落時に取得した物件の引渡しが中心となるため、営業利益率が6.9%に改善する見込みだ。
また、分譲住宅における豊富な受注残と、中古住宅も含めた足下の好調な販売を考えると、来期も増収基調が続くものと思われ、利益面では営業利益率が期を通して高水準で推移する見込み。このため、来期は07/3期の最高益(営業利益42.3億円、経常利益40.9億円)を視野に入れた展開となろう。ただ、徐々に仕入れ環境が厳しさを増している事に加え、来期のどこかで需要が一服する可能性もあるため、同社では既に再来期に向けた取り組みが始まっている。具体的には、中古住宅の強化であり、この上期に実施した フジホームバンク大阪店の仕入・販売エリアの拡大、フジホームバンク泉北店の岸和田市への移転、及び「おうち館和泉店」のオープン等はその布石である。ちなみに「フジホームバンク」は中古住宅の買取の営業所で、「おうち館」は南大阪で展開する中古住宅の情報展示場兼販売の営業所である。
今上期の中古住宅の販売価格を単純計算してみると、1,590万円(前年同期は1,574万円)。立地条件により物件毎の差はあるにせよ、5LDK前後の物件が1,500万円台で購入できるのだから根強い需要があるのもうなずける。ただ、中古住宅は販売価格の設定が難しく、当然、その原価となる仕入時の物件の査定も難しい。また、多過ぎず(在庫過多は資金負担増に加え、市況変動によるリスクも高まる)、少な過ぎず(少ないと商機ロスが発生する)、在庫のさじ加減も難しい。いずれもマニュアル通りの形式的な対応ではなく、経験の蓄積による臨機応変な対応が求められるため、事業の成否を握るのはビジネスモデルではなく、人材の育成であると言う。同社の場合、フジホームバンクは、大阪市浪速区、堺市、岸和田市(いずれも大阪府)の3店舗、「おうち館」は泉大津市、泉佐野市、岸和田市の3店舗と大阪市から大阪南部の限られたエリアに集中しており、交差点単位での価格状況を把握する等、人材の育成を含め、時間をかけてじっくり事業基盤を固めてきた。人材の育成が進んでいる事から、中期成長力の確保に向けアクセルを踏み込む考えだ。