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(9616) 株式会社共立メンテナンス

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ブリッジレポート:(9616)共立メンテナンス vol.26

(9616:東証1部) 共立メンテナンス 企業HP
石塚 晴久 会長
石塚 晴久 会長
佐藤 充孝 社長
佐藤 充孝 社長
【ブリッジレポート vol.26】2011年3月期上期業績レポート
取材概要「01/3期から10/3期にかけて同社の総資産は643億円から1,392億円へと2.16倍に拡大し、売上高も2.23倍に拡大した。しかし、営業利益は42.7%の・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年1月18日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社共立メンテナンス
会長
石塚 晴久
社長
佐藤 充孝
所在地
東京都千代田区外神田 2-18-8
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年3月 84,513 4,033 3,012 1,254
2009年3月 82,303 5,349 4,510 2,133
2008年3月 75,606 4,492 4,167 2,740
2007年3月 66,287 3,745 3,787 2,413
2006年3月 63,084 4,611 4,823 2,010
2005年3月 58,014 4,407 4,411 2,343
2004年3月 54,080 4,004 4,059 2,137
2003年3月 50,108 4,148 3,884 2,039
2002年3月 50,064 3,908 3,580 1,821
2001年3月 37,884 2,827 2,643 1,146
2000年3月 36,787 2,368 2,281 906
株式情報(1/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,405円 14,365,176株 20,183百万円 4.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
38.00円 2.7% 104.42円 13.5倍 2,087.12円 0.7倍
※株価は1/4終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
共立メンテナンスの2011年3月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
"ライフステージにおける様々な場面での「食」と「住」さらに「癒し」のサービスを通じて、広く社会の発展に寄与する"と言う経営方針の下、「現代版下宿屋」(食事付きの寮の運営)を中心にした寮事業、「温泉感覚を取り入れた大浴場」と「美味しい朝食」といった寮事業のノウハウを活かしたホスピタリティ重視のビジネスホテルや「リーズナブルで質の高いリゾートライフ空間の創造と提供」をテーマに掲げたリゾートホテルのホテル事業、オフィス(事務所)・レジデンス(住居)のビルメンテナンス、ビル賃貸及び賃貸代行、駐車場運営等の総合ビルマネジメント事業、外食やレストラン運営受託のフーズ事業等を展開。知名度と実績で他社を凌駕する主力の寮事業を安定収益源とし、ホテル事業の育成により成長を加速している。

事業の種類別セグメントと売上構成(2010/3月期)は次の通りである。
 
 
 
2011年3月期上期決算
 
 
経費削減の進展で営業利益が上振れ
売上高は前年同期比1.2%減の427.8億円。開発案件を厳選したデベロップメント事業の売上が大きく落ち込んだものの、新規事業所の寄与や既存事業所の底打ちでホテル事業の売上が増加した他、大口の留学生法人契約で寮事業の売上もわずかに増加した。利益面では、既存事業所の収益性改善によりホテル事業の利益が大幅に増加したものの、自社開発物件の減少や賃貸ビルの賃料低下でその他の事業(※)の損益が大幅に悪化した他、3月入寮生の増加(4月の契約金収入の減少要因となる)で寮事業の利益も減少した。支払利息の増加等で同15.2%の経常減益。資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額6.9億円など特別損失8.0億円を計上したため、四半期純利益は6.3億円と同47.2%減少した。設備投資は同48.4%減の14.0億円(期初予想25.5億円)、減価償却費は同9.6%増の21.3億円(同21.8億円)。
尚、上記のその他の事業は、寮事業及びホテル事業以外の事業の総称(総合ビルマネジメント事業、フーズ事業、デベロップメント事業、及びその他)。

期初予想との比較では、期中契約の増加や食材費のコントロール及び本部経費の削減で寮事業の利益が予想を上回った他、ホテル事業もビジネスホテルにおける予想以上の売上の回復と開業費用も含めたコストコントロールの進展で利益が上振れ。その他の事業も予想以上に経費削減が進んだ。
 
 
寮事業
売上高は前年同期比0.6%増の197.4億円、営業利益は同5.8%減の29.6億円。3月入寮生の増加で契約金収入が減少したものの、大口の留学生法人契約等による期中の契約数の増加で微増収を確保した。利益面では、諸経費の削減が進んだものの、売上の伸び悩みで新規物件の開業費用等が負担となった。
 
ホテル事業
売上高は前年同期比12.7%増の158.6億円、営業利益は同92.5%増の7.4億円。ドーミーイン(ビジネスホテル)事業において、企業の出張抑制やインフルエンザ等の影響で低下した既存事業所の稼働率が回復基調にある上、前期にオープンした6事業所と当期にオープンした5事業所(帯広・旭川・長崎・京都駅前・下関)の立ち上がりも順調。リゾート(リゾートホテル)事業も稼働率が改善。8月には「草津温泉 季の庭・木の葉」がオープンした。
 
 
その他の事業
総合ビルマネジメント事業
売上高は前年同期比2.9%減の54.9億円、営業損失39百万円。前期に大口解約のあったビル賃貸部門の入居テナント稼働率が回復しつつあるものの、賃料の低下が響いた。
フーズ事業
売上高は前年同期比8.6%減の20.3億円、営業損失84百万円。個人消費の低迷等で売上が減少する中、外食店舗の新規開業費用が負担となった。
デベロップメント事業
売上高は前年同期比37.3%減の25.5億円、営業利益は同94.0%減の9百万円。自社グループで手掛ける開発案件の厳選化に伴い売上高が減少。減収の影響に加え、建築原価の上昇が利益を圧迫した。
その他事業
売上高は前年同期比19.7%減の18.1億円、営業損失1百万円。IT人材派遣の苦戦等が響いた。
 
(3)財政状態及びキャッシュ・フロー(CF)
上期末の総資産は前期末比51.7億円減の1,340.3億円。新規開発物件の厳選と設備投資の抑制に努めた結果、資金効率が改善し総資産が減少。CFの面では、運転資金の減少や投資案件の厳選で営業CF、投資CF共にマイナス幅が縮小。一方、新たな借り入れを抑制したため、財務CFの黒字幅は縮小した。
 
 
 
2011年3月期業績予想
 
 
前期比4.6%の増収、同32.8%の経常増益予想
建築工事(デベロップメント事業)の減少等でその他の事業の売上が同7.4%減少するものの、新規事業所の寄与に加え、既存事業所も堅調な推移が見込まれるホテル事業の売上が同16.9%増加する他、期初の稼働率が伸び悩んだ寮事業も期中契約の増加で同2.1%の増収が見込まれる。利益面では、売上の増加に加え、コスト削減の進展と稼働率の改善で寮事業の利益が同12.0%増加する他、ホテル事業も損益が10億円強改善する見込み。設備投資は同76.2%減の31.4億円を計画しており、減価償却費は同6.6%増の43.3億円。配当は1株当たり19円の期末配当を予定している(上期末配当と合わせて年38円)。
 
 
 
寮事業
売上高は前期比2.1%増の383.4億円、営業利益は同12.0%増の56.0億円。11年3月の入寮数が5,653室と前年同月比1,667室増加する見込みで、同月の入寮関連収入が同3億円増加する。利益面では、下期だけでオペレーションの効率化や諸経費の削減等による損益改善効果3億円が見込まれる他、新規開業コストも前年同期比1.8億円減少する見込み。尚、同社は、3月入寮数の増加と次項に示す「来期期初稼動改善のための具体的な施策」の遂行により11年4月の期初稼働率が94.7%と10年4月実績(92.9%)を1.8ポイント上回ると見ている。
 
 
ホテル事業
売上高は前期比16.9%増の314.5億円、営業利益6.7億円(前期は3.4億円の損失)。下期は稼働率の改善と客単価の上昇でビジネスホテル)事業の既存事業所の損益が大幅に改善する見込み。またリゾートホテル事業においては、マスメディアの活用、北海道エリアの地域強化策、インバウンド強化、商品プラン強化等のプロモーションの継続により更なる稼働率改善にも取り組む。
通期では、ビジネスホテル事業において、09/3期オープンの5事業所の営業利益が2.8倍に拡大(1.1億円→3.1億円)する他、10/3期オープンの6事業所も営業損益が大幅に改善し(△5.0億円→△1.9億円)、営業CFが黒字転換する見込み(△1.0億円→1.0億円)。また、リゾートホテル事業も、09/3期オープンの函館ベイの営業損益が改善すると共に営業CFが増加する他、10/3期オープンの高山も営業損益が改善し(△2.4億円→△0.9億円)、営業CFが黒字転換する見込み(△0.1億円→0.9億円)。
 
 
 
その他の事業
売上高は前期比7.4%減の276.3億円、営業利益は同12.5%減の6.3億円。下期の損益改善により通期では黒字を確保できる見込み。総合ビルマネジメント事業が賃貸代行のフリーレント終了及び稼動率の改善により前期の下期に比べて営業損益が4.0億円改善する他、デベロップメント事業も外部受注の強化で営業損益が1.3億円改善する見込み。一方、新店舗の開店費用でフーズ事業の損益が0.1億円悪化する他、グループ会社2社吸収合併に伴う損失0.6億円が発生する。
 
 
(3)今後の展望
現状を経営のターニングポイントと位置づけ、更なる成長のための抜本的な構造改革を進める考え。具体的な施策として、①主幹の寮事業の再強化及び構造改革、②スクラップとリニューアルを優先し、新規開発を厳選、③物件売却の推進による有利子負債削減、の3項目を挙げている。
 
①主幹の寮事業の再強化及び構造改革
既存顧客の基盤固めを図ると共に、更なる4年制大学の学生の取り込みと留学生・就職活動中の学生の取り込みを図る。
 
 
②スクラップとリニューアルを優先し、新規開発を厳選
寮事業の様々なニーズを掘り起こして従来にない顧客創造を図るべく、業態転換に取り組む。
 
 
11/3期は、寮・ドミール202室をシェアハウスに、ウェルネスライフ77室を琴似Levi(複合型高専賃住居)に転換すると共に、契約満期を迎える429室の契約を解消する。続く12/3期は、寮・ドミール762室の業態転換を図る計画しており、内訳は、シェアハウス241室、GAME&アニメ64室、インターナショナルハウス320室、コニュニティハウス137室。また、今後、契約満期を迎える寮・ドミールについて、毎期100~200室規模で契約を解消していく。

一方、新規開発については、環境の変化に対応した効率的な投資運営と同社のビジネスモデルである有効活用サブリースへの傾斜を基本方針とし、改めて設定した開発基準の下で進めていく。具体的には、リース物件については売上高経常利益率10%超を基準とし、自社所有物件についてはセールス&リースバックを前提に、想定賃料から税金・保険料を差し引いたネット賃料をベースとしたCAPレートを基準とする。CAPレートは、例えば、寮・首都圏:7%、ホテル・地方都市:8%等、セグメントや地域毎にテーブルを設定する。
 
③物件売却の推進による有利子負債削減
年間の開発投資をキャッシュ・フローの範囲内に抑制し、来期までに140億円の物件売却を行い有利子負債を削減する。
 
 
 
取材を終えて
01/3期から10/3期にかけて同社の総資産は643億円から1,392億円へと2.16倍に拡大し、売上高も2.23倍に拡大した。しかし、営業利益は42.7%の増加にとどまり、営業利益率は7.5%から4.8%に低下した(ピークは03/3期の8.3%)。ホテル事業の育成も進み、順調に事業規模が拡大し売上を伸ばしてきた同社だが、その陰で利益管理が甘くなっていた事は否定できない。しかし、それだけに今後の収益性の改善余地は大きいと思われる。今後の取り組みとして挙げている寮事業における業態転換を含めたスクラップ&リニューアルの推進と、ホテル事業も含めた開発基準の徹底による効果に期待したい。大きな売上の伸びが無くても、利益へのインパクトは大きいはずだ。