ブリッジレポート
(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

プライム

ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.7

(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ 企業HP
山本 祥之 社長
山本 祥之 社長

【ブリッジレポート vol.7】2011年6月期上期業績レポート
取材概要「改正貸金業法や改正割賦販売法への対応一巡、収益の圧迫要因であった過払請求引当金のピークアウト、トランザクションの増加による更新先・・・」続きは本文をご覧ください。
2011年3月1日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インテリジェント ウェイブ
代表取締役
社長執行役員
山本 祥之
所在地
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
決算期
6月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2010年6月 4,956 358 387 211
2009年6月 5,527 228 235 187
2008年6月 6,695 417 403 -5
2007年6月 6,367 389 407 -295
2006年6月 7,137 1,482 1,452 947
2005年6月 5,174 678 688 264
2004年6月 5,257 371 365 156
2003年6月 5,891 1,177 1,161 539
2002年6月 5,505 1,854 1,846 1,003
株式情報(2/8現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
28,200円 263,400株 7,428百万円 4.8% 1株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
500.00円 1.8% 448.56円 62.9倍 17,656.71円 1.6倍
※株価は2/8終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
インテリジェント ウェイブの2011年6月期上期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
クレジットカードの決済システムに強みを持つソフトウェア開発会社。リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、更には高度なセキュリティ技術を技術基盤としており、証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する他、カード不正利用検知システムや内部情報漏洩対策システム等も手がける。大日本印刷(株)が議決権の50.61%を保有する筆頭株主。子会社は、米国の販売子会社と韓国の開発・販売会社子会社の2社(いずれも連結子会社)。
 
<事業内容>
事業は、カードビジネスのフロント業務、システムソリューション業務、及びセキュリティシステム業務に分かれ、10/6期の売上構成比は、それぞれ48.6%、37.8%、13.6%。
 
カードビジネスのフロント業務
クレジットカード会社、銀行、大手小売業等向けに、「NET+1」をベースにしたカード決済にかかるフロント業務のシステム構築を行っている。フロント業務のシステムとは、カード利用者の信用照会(オーソリゼーション)等、クレジットカード会社が加盟店や信用情報センターとの接続に必要なシステム。「NET+1」はハードと自社開発のパッケージソフトからなり、大手クレジットカード会社向けではシェア70%の実績を有する。
 
システムソリューション業務
証券取引所等から提供される市況データや気配値等を素早く社内の各端末に配信する「市況情報配信システム」、クレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」等の自社製品及び他社製品(海外商品)を用いたシステム構築を行っている。
 
セキュリティシステム業務
自社製品である内部情報漏洩対策システム「CWAT」や「EUC Secure」を中心にセキュリティ関連の製品・サービスを提供しており、親会社である大日本印刷(株)と共にセキュリティ関連の新事業(サービス)の開発も進めている。
 
<カードビジネスのフロント業務の特徴>
クレジットカードの利用に際しては、その都度、与信限度額や返済状況の確認作業が行われ、また、キャッシシングの際には口座残高の確認も必要となる。こうした確認作業はネットワークを介してリアルタイムで行われ、特にクレジットカードの場合、世界的なネットワークを介しての作業となる。また、システムが止まるとカードが使えなくなるため、24時間365日システムを止めないための技術やノウハウも必要だ。つまり、「カードビジネスのフロント業務」には、リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術やシステムを止めないためのノンストップ技術、ノウハウ、そして何よりも顧客となる金融機関等からの信頼性が不可欠なため参入障壁は高い。単年度での振れはあるものの、ハードウェアが5年程度で更新を迎える事に加え、技術やネットワークの進歩、或いは様々な社会犯罪等への対応で更新需要が絶えず発生している。
 
 
2011年6月期上期決算
 
 
前年同期比4.9%の減収、61百万円の経常損失
事業環境の改善に加え、ハードウェアの更新需要の取り込みも進んだカードビジネスのフロント業務の売上が増加したものの、ソフトウェア開発や自社開発パッケージの減少でシステムソリューション業務の売上が落ち込んだ他、商談の停滞でセキュリティシステム業務の売上も減少した。利益面では、業務効率化と諸経費の削減を進めたものの、利益率の高い自社開発パッケージの減少による売上総利益率の悪化(△1.4ポイント)が響き営業損失が増加。匿名組合投資利益138百万円がなくなる一方、資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額24百万円を計上した事等で特別損益も悪化した。
ただ、複数のクレジットカード会社の設備更新に伴うハードウェアの更新需要の取り込みに成功した事でカードビジネスのフロント業務をけん引役に売上が大きく上振れ。同業務におけるソフトウェア開発の効率化もあり、損失が期初予想を大幅に下回った。
 
 
 
カードビジネスのフロント業務
売上高は前年同期比5.6%増の12.6億円、セグメント利益は同6.2%増の4.9億円。改正貸金業法や改正割賦販売法への対応が一巡し、クレジットカード会社各社にシステム投資の動きが出てきた。複数の更新需要の取り込みでハードウェア販売が伸びた他、保守の売上も増加。増収効果に加え、ソフトウェア開発業務の効率化も進み、利益率が改善した。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発   610百万円 → 600百万円
自社開発パッケージ  36百万円 →  16百万円
保守         200百万円 → 204百万円
ハードウェア販売   319百万円 → 435百万円
 
システムソリューション業務
売上高は前年同期比17.6%減の6.5億円、セグメント利益は同55.3%減の67百万円。上期の減収は当初から予想された事でほぼ予想に沿った着地。内訳は、証券系事業が3.3億円(前年同期は3.9億円)、カード系・その他事業が3.1億円(同4.0億円)。利益面では、パッケージの減少が響いた他、受託案件の利益率も悪化した。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発   451百万円 → 392百万円
自社開発パッケージ  60百万円 →  27百万円
保守         137百万円 → 155百万円
ハードウェア販売   81百万円 →  16百万円
 
セキュリティシステム業務
売上高は前年同期比17.6%減の1.5億円、1.9億円の損失(前年同期は2.5億円の損失)。情報漏洩対策システム「CWAT」の商談件数は増加傾向にあるものの、既存の商談で決定が先送りとなるケースが多く、自社開発パッケージの売上が減少した。
 
主なサブセグメントの増減
ソフトウェア開発   13百万円 → 23百万円
自社開発パッケージ  37百万円 → 22百万円
保守         105百万円 → 92百万円
仕入パッケージ    28百万円 → 14百万円
 
 
業法改正への対応が一巡し、クレジットカード会社各社にシステム投資の動きが出てきた事で上期の受注高は18.6億円と前年同期比11.0%増加。上期末の受注残高も15.3億円と前年同期末に比べて3.6%増加した(前期末比では11.5%減)。
 
 
上期末の総資産は前期末比1.9億円増の56.4億円。借方では、売上債権の回収が進み現預金が増加した他、余剰資金の一部を投資有価証券投資に充てたため投資その他が増加した。一方、貸方では、仕入債務が増加した。CFの面では、損益が悪化したものの運転資金の減少で3.1億円の営業CFを確保した。匿名組合出資金の払戻による収入の減少で投資CFが悪化したものの、フリーCFも前年同期の31百万円から2.6億円に増加。配当の支払いで財務CFがマイナスとなったものの、現金及び現金同等物の上期末残高は22.1億円と前期末比1.2億円増加した。
 
 
 
2011年6月期業績予想
 
(1)事業環境
クレジットカード会社各社は、既に説明した通り改正貸金業法や改正割賦販売法への対応が一巡した事に加え、収益の圧迫要因であった過払請求引当金も、ここにきて大きく減少している。一方、過去数年間、システムの更新を先送りしてきたが、カード取引の増加と共にトランザクションも増加しており更新の先送りは限界に来ている。また、懸案であったバックアップシステムの構築に向けた動きも見られると言う。
 
 
 
前年同期比17.3%の増収ながら、同19.8%の経常減益予想
カードビジネスのフロント業務で前年同期比減収を見込んでいるものの、証券系業務を中心にシステムソリューション業務の売上が増加する他、4月以降に保守売上が計上されるセキュリティシステム業務の売上も伸びる。この結果、連結売上高は32.5億円と前年同期比17.3%増加するが、前年同期はソフトウェア開発が極めて順調だったカードビジネスのフロント業務の利益を保守的に見ているため、営業利益は同19.6%減の2.9億円にとどまる見込み。
 
 
通期の業績予想を修正しなかったため、結果としてカードビジネスのフロント業務が減収・減益予想となったが、会社側では、開発及び営業が順調な「Linux NET+1」(オンライン接続システムとして高い実績を持つ「NET+1」のLinux 対応版)の寄与等による売上・利益の積み増しを目指している。
一方、システムソリューション業務では、証券分野で海外パッケージを活用した証券ソリューションの商談が活発化しており、従来の大手証券に加え、中小の証券会社や銀行・信託銀行へと引き合いが広がっており下期の業績に寄与する見込み。また、クレジットカードの不正利用検知システム「ACE Plus」を銀行口座の不正利用の監視に対応させた「ACE Plus for Bank」が、導入コストの低さとコストパフォーマンスの高さから高い評価を受けている。この他、「ACE Plus」については海外展開も進めており、韓国で「ACE Plus」の販売を始めた他、東南アジアでの販売準備も進めている。
セキュリティシステム業務では、「CWAT」及び「EUC Secure」の拡販を図る。「CWAT」については、事業法人向けで厳しい状況が続く見込みだが、情報漏えい問題からセキュリティへの関心を高めている官公庁ニーズの取り込みに注力する。一方、「EUC Secure」については、外部へのメールにファイルを添付する際の自動暗号化機能等を付加する等、情報管理ソリューションとしてカスタマイズへ積極的に対応する事で受注拡大を目指す。
 
(3)大日本印刷(株)との協業
親会社である大日本印刷(株)との協同営業を強化し、大日本印刷(株)の顧客に同社の製品・サービスの拡販(クロスセールス)と印刷周辺のシステム開発の受注に取り組んでいる。また、新規事業も育成し、11/6期はクロスセールスや受託開発で3億円、12/6期7億円(うち新規事業2.3億円)、13/6期9億円(同4億円)の売上を計画している。
 
 
 
通期業績予想に変更は無く、前期比7.5%の増収、同35.4%の経常減益予想
3セグメント全てで売上が増加するものの、ソフトウェア開発が極めて順調だった前期の反動でカードビジネスのフロント業務の利益が減少する他、下期は増益に転じるシステムソリューション業務も上期の苦戦が響き通期ではわずかながら減益が見込まれる。配当は1株当たり500円の期末配当を予定している。
 
 
 
取材を終えて
改正貸金業法や改正割賦販売法への対応一巡、収益の圧迫要因であった過払請求引当金のピークアウト、トランザクションの増加による更新先送りの限界、更にはバックアップシステムの構築と、クレジットカード会社がシステム投資を本格化させる条件が整ってきた。加えて、「Linux NET+1」や「ACE Plus for Bank」といった新製品は、コストパフォーマンスに敏感なユーザーニーズに応えた製品だけに今後の販売に期待が持てるし、取引先の拡大にもつながるものと思われる。会社側が慎重なだけに、見落としているリスクがあるのでは?と若干の不安が無い訳ではないが、我々は、上期のペースを維持できれば、通期の着地は売上高が55億円~57億円、営業利益及び経常利益が5億円程度になると考える。